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スマホのランキングデータから見えてくるもの

今や半導体チップを大量消費する電子機器はスマートフォンになった。いろいろな調査機関が世界市場でのランキングを調べて発表している。これらはもちろんのこと、互いに完全に一致することはない。セミコンポータルにも「スマホの出荷台数、パソコンの4倍に」との記事(参考資料1)があり、半導体を大量消費するスマホの姿を浮き彫りにしている。ただ、同じように追う以上、種々調査機関での結果が似ていることになるのは間違いない。

図1 スマートフォンのメーカー別出荷台数 出典:Fortune 2015年4月号

図1 スマートフォンのメーカー別出荷台数 出典:Fortune 2015年4月号


フォーチュン誌の注目点は中国メーカーの台頭だ。その目立つ中国を赤で示したがメーカーの名を挙げれば、Lenovo-Motorola、Huawei、Xiaomi、Coolpad、ZTEそしてTCLの6社だ。挙げられている10社の中の6社だ。すぐにわかることだが、この中国6社が有利な理由は、アウェーでなくホームグラウンドの中国で言語、文化の点から有利なこと、そして中国の人口が多い故に、極めて効率の良いマーケッティングが可能な点だ。記事が予言しているのは今後、安価なスマホが中国を中心に広がること。日経BPコンサルティングなど調査機関によれば、2台所有する人々も含め、日本のスマホの普及率は40〜50%程度のようだ。中国の山村では旧世代のガラケーが多くスマホの普及は遅れているようだ。ガラケーは飽和しているので簡単には普及率が上がらない。それでもスマホのユーザーも斬増するだろうとの思惑で、結果として中国の普及も進むというのがフォーチュン誌による観測で、中国6社が乱入しているのだ。

10社の中で奮闘しているわが国のメーカーはソニーだけである。ソニーの偉大な点はスマートフォン市場戦略で最初から世界戦略を敢行したことと言える。スマートフォンは電子機器として普及する際に個人所有である点を考慮すれば、日本市場だけを狙うと数量が伸びないだろうと、すぐに気づくはずだ。人口のより少ない韓国のメーカーは、尚更だ。だから成功しているサムスンやLGは世界戦略に重点を置く。中国で奮闘する6社のどの機種が抜け出るかは競馬のレースのように面白い展開になるだろう。

ソニーの平井一夫社長は、2013年10月にロイターなどとのインタビューで、スマートフォンで世界3位になる目標を示唆した。スマホ販売でソニーは、韓国サムスン電子、米アップルのスマホ2強に続く世界3位を目指している。上述のように中国勢との戦いが厳しく3位の目標はいまだに遠いが、それでも同社は日本のトップでありその他の日本メーカーが国内で小さなパイを奪いあっても人口の点から限界がある。

Newton誌本年4月号にiPhone 6大解剖の記事が出た(参考資料3)。これは、スマホを代表する機種だが圧倒される内容だ。この原稿の主旨とは異なるので詳しく紙面を割くことはしないが、膨大な電子パーツのコンテンツであり、ラジオより小型だが格段に高度な内容であると感じた。気づいた主なコンポーネントを書き出せば下記になる。タッチパネル、カメラ、アンテナ、スピーカー、ロジックボード、指紋センサ、電子コンパス、ジャイロ、加速度センサ、気圧センサ、ベースバンドプロセッサ、パワーアンプ、SIMカード、CPUとGUを内包するA8アプリケーションプロセッサ、クアルコム製LTEモデムなどである。実に1000個を越す部品点数だ。これらのパーツを市場から調達できる時代になった。従って新興メーカーでも設計力さえあれば、部品を調達してアセンブルすれば製品として売出すことが出来る環境が生まれている。

参考資料
1. スマホの出荷台数、パソコンの4倍に (2015/03/15)
2. Scott Cendrowski, “Phone wars enter the dragons,” pp-110, Fortune, April, 2015
3. 大島篤、「スマホ大解剖」、p.16、Newton 4月号、2015

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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