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スマホからタブレットまで市場を席巻するタッチパネル

iPad miniなど画面が7インチ前後の小型タブレットが登場して来た。スマートフォンより画面が大きくホームページを閲覧する場合でもスマホよりも見やすい。300グラムと軽く片手での操作が可能なように設計されている。これに先行して市場に出ていた初代タブレットは、10インチ程度のやや大きな画面を有していて重くて片手での操作は難しい。

画面が7インチ前後のサイズの電子機器は、最近よく見かけるが、その例はカラオケボックスのリモコンやカーナビゲーションシステムそしてデジタルフォトフレームなどである。NECは、Medias Tab UL(重さ249グラム)をこの9月に発売した。これらの機器は全てアプリケーションプロセッサなどの半導体を中心にした部品で構成されており、機器メーカーは半導体企業の大事な顧客だ。そして備えている7インチの液晶ディスプレイは、当然ながら新会社Japan Displayをも活性化させている。そしてその液晶パネルは下記に述べるタッチパネルになっていて高度化している。

今年の11月30日の日経新聞電子版によると2016年頃には、国内のタブレット普及数は798万台だが、その半数を越える424万台が7、8型になると予想している。これらわが国で発売された製品では、上述の二機種に加えて、サムソン電子製があり、グーグルと台湾エイスースが共同開発したNexus 7などが知られている。アマゾンドットコムはキンドル・ファイアHDを今年中に上市するとしている。(参考資料1)。

これら7インチ製品の設計時の発想では都会の電車の中で立ったままでも使うことを可能にしたいとの思惑が感じられる。筆者もタブレット携帯の利便性を感じている。閲覧する項目はニュース、天気そして交通機関の路線検索だ。さらにネットにある英辞郎などは辞書として英文のWeb記事を読むのに大変に重宝である。紙の辞書は紙面が7インチサイズなら英単語数が最大で、15万語程度だがネット上の辞書である英辞郎なら100万語を優に越える。例えば、片手でMedias Tabを操作しつつ英文記事を読みそのまま切り替えて辞書の英辞郎を引く離れ業は7インチ製品なら可能だ。もし7、8インチ画面の専用の電子辞書を持っていても二つの機器を扱うことは車内で立ったままでは無理なので、筆者にとっては7インチのタブレットで英辞郎の助けを得るのがベストだ。もちろん、タブレットなので電話機能がなく通話はできない。

スマホやタブレットは操作性がPCよりも高いが、その理由はPCではできない指の操作が可能だからだ。TVコマーシャルで見せられているのでよく知られている。例えば、地図表示で拡大したい時はピンチアウトをする。これは、人さし指と親指で、地図画面の斜め方向にタッチしながら広げる動作だ。自分で写した写真の拡大にも使える。その逆は両指をタッチして狭める動作で画面のサイズは縮小される。名付けてピンチクローズだ。他に、タッチした指でディスプレイの画面上を掃くスワイプ動作でページをめくることが可能だ。PCと比べて直観的で孫や幼い子供がすぐ覚えてしまいこれで遊ぶことになる。即ち、タブレットの隠れた機能は子供のオモチャだ。

タッチパネルは、カラーディスプレイ上で指をタッチするとその場所にあるピクセルマトリックスのノード電位が容量カップリングにて変わる方式を使うことが多い。このため、指の動きはソフトウエアによって命令として発令されパネル上の指の正確な位置情報をプロセッサに正しく伝える。X-Yマトリックスの交点を検出する原理のイメージとしては、DRAMセルのビット情報がリード線を通じてセンスアンプに入力し増幅されてビットデータが正しく読み込まれるモデルと似ている。ここまでは従来からあるタッチパネルだが、iPhone では、2本指で方向の情報も加えている。これはX-Yマトリクスを時間的にスキャンしながら指の動きを時間変化として捉え、さらにその動きを拡大・縮小・頁めくりなどの動作に対応させるアルゴリズムも開発している点が新しい。

12月5日の讀賣電子版はシャープがIGZOディスプレイを備えるスマホやタブレットを開発すると発表した。財政改善が必須なシャープは支援が必要で、クアルコム社に求め同社は応じることにしたのだ。クアルコム社は欧米で多くの無線電話通信事業のライセンスを保有する優良企業とされる。ただ、シャープがその財政問題を解決するにはクアルコム社が提供する99億円では足りないとの指摘がある(参考資料2)。

IGZOディスプレイは東京工大の野村研二氏ら日本人の研究でも知られるように、最近開発されたものだ。表示は明るく通常液晶の1/10の電力で動作することも知られている。IGZOはその組成たるインジウム、ガリウム、亜鉛(Zinc)の酸化物(Oxide)の英語読みの頭文字だ。省電力特性が優れている結果、電池寿命が大幅に改善するために携帯機器に使用すれば、他のディスプレイに対して大きな差別化要因になる。IGZOはTFTトランジスタの半導体材料として使われる。電子移動度がかなり大きいという特徴を有し、それ故に明るく良好な省電力特性が可能なのだ。動作速度は速く微細加工に向くので小さなサイズのピクセルでHDTV用ディスプレイとしても有望だ。

スマホはLTE (Long Term Evolution)になって動作が速くなった。高速なのは20MHzの周波数帯を使用するためとのことだが、その原理は専門性が高く筆者の能力を越える。この技術領域は最初に述べたように市場が急拡大しており、開発の成果が即売り上げに大きく貢献する。したがって、メーカーは先を急ぎ開発品を市場に投入するので新製品はパレードを成して市場に参入して来る。


図1 メトロ(現在はModern)のユーザーインターフェース

図1 メトロ(現在はModern)のユーザーインターフェース


この情勢下でPCのOSを販売するマイクロソフト社はWindows 8を投入した。その起動後の最初の画面は二種ある。その一はXPやWindows 7の延長上にあるデスクトップ画面だが、もう一つは全く違ってメトロ(現在はModernと呼んでいる)とも呼ばれるタイル状のユーザーインターフェース(UI)だ(図1)。海外の派手な地下鉄の入り口を連想させる。Windows RT(アールティー、Run Time)はWindows 8のARMバージョンなのだ。このOSは、タブレットなどタッチスクリーンを搭載した端末用に特に開発されたOSとのことである。PCもスマホやタブレットに追随しタッチスクリーン化した製品を世に問う時代になったのだ。

参考資料
1. アマゾンで売られている7インチタブレット
2. シャープ・クアルコム共同開発ディスプレイの裏側にあるもの (2012/12/10)

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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