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変容するファンドリのビジネスモデル

プロセスノードが28nmになりfinFETが登場した結果、超LSIの集積度は凄まじく上がった現在、ファンドリに深刻な問題が発生している。finFETは3次元的な構造を利用して集積度を上げることが可能だ(図1、参考資料1)。ファウンドリ問題を記述する前にファブレス企業とファンドリの関係を筆者なりに整理し理解をしたのでそれを共有しておこう。

図 finFETの基本構造 出典:稲葉聡著「Advanced FINFET Process Integration Technology for 32nm Node and Beyond" finFET」(参考資料1)

図 finFETの基本構造 出典:稲葉聡著「Advanced FINFET Process Integration Technology for 32nm Node and Beyond" finFET」(参考資料1)


今や超LSIチップ上のトランジスタ数が20億個を越えつつある。市場の要請からすれば、もっと高機能でもっと複雑な動作でもっと安価なチップが必要なのだ。

業界では周知のように1980年代後半からファブレス型の業者などがアメリカ等で増えてきた。彼らはあるセグメントの市場に特に詳しく、その立場を利用して市場に受け入れられそうで、しかもまだ存在しないチップを想定し基本設計する。そしてファブレスデザインハウスはファウンドリと打ち合せ、そのプロセスメニューを選び、上記のチップの各フォトマスクをデザインしワークステーション内のGDS llフォーマットデータとして出力する。このテープがマスクショップに支給されてマスクセットが作られ、マスクはファウンドリに渡る。

一方、1987年にモーリス・チャン氏はTSMCを創業、ファブレス企業にとって好都合のファウンドリが生まれた。ファウンドリはファブレス製のマスクを得てチップを試作することが可能になった。こうしてファブレス企業が試作ウェーハを入手できる環境が1980年代後半から整備されていた。ファブレス企業はウェーハをテストし良品が採れれば試作デザインが成功したことを祝うが、さもなければエラー部分を再設計しなければならない。設計し直したテープから改訂マスクを調達し、再びファウンドリに試作させ改訂ウェーハを入手し再びテストする。ファブレス企業はこのサイクルを繰り返した後、良好なマスクとウェーハが再現性良く連続して製造できる状態に進む。ファブレス企業にとって開発チップの売上が全てだ。売上が膨大であれば利益も膨大だ。こうしてファブレス企業とファウンドリ企業は「持ちつ持たれつ」で互いに助け合い共に発展してきた。

さて本題に入ろう。ファンドリのビジネスモデルに、今果たして何が起きているのだろうか?7月の報道(http://eetimes.jp/ee/articles/1207/05/news040.html)によると、ファブレス半導体ベンダーであるQualcommはTSMCからの納入が未達で困惑している。この時点では28nmノードの歩留まりはまだ良くなっていない。もし、歩留まりが高ければ納入の未達が発生しないのが半導体業界の常だ。もちろん、28nmのノードになるとウェーハ上にパターンがあって凹凸も加味されるとそのリソグラフィとエッチングなどの加工は限界に近い。3次元のfinFETにおいては製造経験が浅いこともあって、高い歩留まりは相当に難しい。デザインハウスが各社各様に微妙に違うレイアウトを持ち込むことも考えると、ファンドリが高い歩留まりに早いラーニングカーブで到達することは至難だ。こうして起きた動きはファンドリの仮想IDM化だと言う。IDMとは、Integrated Device Manufacturerのことであって東芝やインテルなど多数の会社が成功している半導体事業モデルである。IDMは新製品を企画し設計し、設計データからフォトマスクを入手し、自社保有のファブにて製造し、完成品を顧客に納入する。仮想IDMの状況は下記だ。

LaPedus氏が電子メディアSemiconductor Manufacturing & Designに報告した内容では、(http://semimd.com/blog/2012/07/31/firms-rethink-fabless-foundry-model/)ファウンドリはファブレスの設計チームとより密接な協業(コラボレーション)をすることが必要だ。設計チームはファブの近くに常駐し、製造問題が出たら直ちに駈けつけなければならない。さもなければFirst Siliconは得られない。TSMCが計画する仮想IDMとは、LaPedus報告によれば重要顧客別の個別ファブを作ることだという。グローバルファウンドリーズ社で考えているのは、ファブ内に作る専用モジュールだ。そしてIBMから20nmのfinFET技術を供与されたUMCは、新たに開始するファブ投資の10%分の資本を提出するように顧客に呼び掛けている。三星グループのファンドリである三星電子はアップル製品に向けたチップの専用ファブを作った。

Qualcommは既に述べたように機会損失が発生して懲りたのか、自社ファブを建設してより良い製造コントロールをするべく検討している、とLaPedus氏は述べている。果たしてできるのか?報道によればVLSI Research社のHutcheson氏は「Qualcommの売上実績ならその財力は持っている」としているが、「ファブレスがファブを建設して運用して成功するチャンスは高くない」と述べている。リスクは大きく費用もビリオンドルの世界だ。即ち$15B〜$25Bの投資が必要だ。そしてファブ運用の経験を持たないQualcommにはファブ事業は大きなリスクになる。それでも挑戦するのだろうか?Qualcommにとって悩ましいのは、コードネームSnapdragon(スナップドラゴン)のようなスマホ向けのチップでトップにある納入責任を果たさなくてはならないことだ。

半導体製造の難しさは歩留まりの不安定さであって、筆者の経験では突然に歩留まりが改善することもある。ただ、歩留まりは次の微細なノードになると、再び下がる傾向にある。最近、28nmの例で歩留改善したとの報告もあるようだが、この次は22nm/20nmである。これほど微細化が進むと、超LSI製造の難しさはさらに増すだろう。

コラボレーションが必要なファブレスとファウンドリが陥りやすいのは縦割の弊害だ。常駐するといっても別会社なら命令系統は別だし限界がある。先端ファウンドリの近未来はどうなるのか目が離せない。

参考資料
1. Advanced FINFET Process Integration Technology for 32nm Node and Beyond" finFET、稲葉聡氏、

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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