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ITの生産性向上に裏で働く仮想化ソフト

ビジネスの現場でIT環境が止まってはならない。このノンストップ性を表す用語がミッションクリティカルである。メール用のプロキシサーバーが仮に一時間も止まれば業務メールがその間ストップしてしまう。この間、多忙な現場はテンヤワンヤになる。特に通信業者ならば損害賠償の案件になる。サーバーのハードディスクに不具合が発生してもサーバーのパフォーマンスが劣化しないようにすべきなのだ。システムがミッションクリティカルになっていれば止まることはほとんどない。

筆者個人の使うPCでハードディスクにトラブルが起こった時はPCが使えないので筆者が不運を嘆き、修理に出すはめになるが、ビジネスではITを止めてはならない。突然のシステム停止は復旧コストやムダ時間が発生する、機会損失が生じ、信用失墜の上に賠償が請求されればその関連の交渉なども発生し、ビジネスでは大きな障害になる。

実は仮想化ソフトが導入されてミッションクリティカルが実現されるようになった。仮想化ソフトはノウハウのかたまりで外にいる筆者などには詳細は不明だが、複数ある物理サーバーの物理的な壁を仮想的に取り払い、あたかも壁がないかのようにデータやプログラムをダイナミックに移動させるソフトウェア手法である、と言える。このプログラムが移動する間もシステムは止まらない。

標準的なサーバーにおいて、仮想化ソフトを使わない場合は、IDC(IT市場調査会社)の結果による平均使用率がキャパシティ全体を100%とした時に10-15%にとどまるといわれる。理由の1つは、同一サーバーで複数のアプリケーションを走らせるとあるアプリケーションが持つ脆弱性ためにその他のプログラムが影響を受けて被害が広がってしまうのでそれを避けるためだ。1サーバーに1アプリケーションを割当てるケースがいまだに多い。しかしながら10-15%の使用率のために、100%の電力消費や冷却をしていては効率が悪い。15%の効率では物理サーバーの数が増えるだけでメンテナンス人員もコストも増えるばかりだ。使用率15%は半導体製造では歩留りに匹敵する数値であることを考えると歩留まり15%が許されないのは理解しやすい。

それを解決するのに飛躍的に効果があったのが仮想化技術を中心に展開されて来たITの技術だ。従って、ここでソフトウェアの力は重要であることを多いに強調したい。

米アイシロン社の日本法人の河南 敏氏は本年7月に都内で講演しサーバーの利用効率80%越えを実現できることを述べた。Webの内容などを表示するWebサーバーには仮想化と組み合わせてスケールアウトという技術が応用できる。スケールアウトとは多数のサーバー(クラスタ)を、Availability(可用性)を高く保ちつつ高い効率で使う手法である。クラスタを構成する各サーバーには同じOSとミドルウェアを搭載し同一の基盤に作り上げると膨大な負荷を処理できる。ネット経由で膨大な量の入力が到来しても負荷処理はサーバーの数で分散され、従ってパンクせずに無事に処置できる。サーバーの数は10台ないし数千台に及ぶこともあるのだ。

個人が持つPCには普通、ミドルウェアは使われないので、ここでそれについて触れておきたい。実はミドルウェアもOS上で動作するソフトウェアのひとつで高度で具体的な機能を果たす。多くのアプリケーションプログラムで共通に必要な処理を実施するのでOSとアプリケーションソフトの中間に位置するものだ。

スケールアウトの例題として、ある企業のデータセンターでクラスタに300台のサーバーがある場合を考える。この会社は最近大きな処理が必要になったので新たに100台のサーバーを加えることになった。サーバーを止めずに無事に作業し100台を追加してつなぐことができた。ミッションクリティカルな環境なので追加作業でITシステムは止まらない。ユーザーもこの容量の改善に気がつかない。

仮想化技術が大きく進展したのは今世紀になってからだが、上記のアイシロンの他に米VMware社が仮想化製品を多数持っている。VMとは英語のVirtual Machineを想定させる。この会社社は米カリフォルニア州に本拠を置き1998年に設立されたが、2004年にEMCコーポレーションに買収された。2007年にニューヨーク証券取引所で株式公開している。今世紀になって仮想マシン環境構築用のソフトウェアで躍進する企業になった。

IT技術における日本人の貢献は少なく仮想化においても同様だ。OSもブラウザもMPUも検索技術も海外の製品を使っているのが実情だ。本年12月11日の日本経済新聞コラムも触れているが、2000年に制定されたIT基本法も10年を経て戦略的に機能したとはいえなく、さしたる成果がない。Googleの若いリーダーが4年前に発言した「クラウドコンピューティング」概念の応用によるサービスが世界に展開されてきた。ブロードバンドネットワークが普及し、半導体が高性能化し仮想化技術でもってクラウドコンピューティング全盛の時代を迎えている。 

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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