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エコロジーの時代に発電、蓄電、送電そして省電が見直される

半導体利用に欠かせない電力技術の更なる見直しが進む。しかもビジネスチャンスも発生する。まず発電だが、原子力ルネサンスが見直され加速されて来た。

1986年のソ連邦におけるチェルノブイリ原子力発電所事故は炉心溶融(メルトダウン)が起こり人類にとって誠に悲惨な体験となった。特に欧州ではドイツなどを中心に原子力発電からの撤退が宣言されたこともあった。一方、米国は1979年にスリーマイル島原子力発電所事故を経験した。メルトダウンには至らず原子炉冷却材喪失に留まったが、それでもその後米国の新たな原発は止まってしまった。一方、わが国では原子力発電をやめようという世論は盛上らずにその後も続けたため、ゆっくりではあるが着実に原発の技術は蓄積されてきた。

日本原子力産業協会の資料では世界の原発のシェアは米27%、フランス17%、日本12%、韓国5%などとしている。日本よりも人口が2.4倍多く個人の電力消費も格段に多い米国と比べると日本は相当の原発国家であるといえる。地球環境保全の観点が強調される昨今、人々は過去の事故の悲惨さを克服して原発をもう一度やって見ようとの機運が生まれてきた。ただし、原発においては過去の経験から事故を起こさない、というこれまで以上に厳格なフェイルセーフの仕掛けをその制御系に採り込まなくてはならないと思う。それは電子制御を中心にしたメカニクス&エレトロニクス以外に考えられないので半導体の出番につながる。

原発で最も重要なのは核のゴミと言われる放射性廃棄物の処理において世界では低コストで高信頼の手法がまだ見つかってはいないことだ。しかしながら原発再登壇の機運を受けて低コスト・高信頼の処理技術の開発は焦眉の急になっている。わが国はこの技術を先駆けて開発すべきだ。果実は明確で世界で商売ができるようになると考える。石油が飲料水よりも安いといわれるアラブ首長国ですら原子力発電所建設を決定し、域内4カ所で実施する原発建設の国際公募を仕掛けたからだ。日仏米と韓国が入札に応じ、今回はダークホースだった韓国が戦略的な提案をして勝利した。今回は取れなかった海外ビジネスだが将来はわが国が開発する放射性廃棄物の処理などを組み合わせた総合力を活用すれば有利に展開されるはずだと思っている。

地球環境保全の強い願望のなか、PVと称される太陽光や自然界のエネルギーをそのまま利用する発電が今後は間違いなく進む。その太陽光発電といえども問題がない訳ではない。大きく二つの問題がある。家庭も社会も大部分のユースポイントでは交流しか使えない。一方、半導体のPN接合を使うPVは直流だ。

二つ目の問題は日照の問題だ。夜は日照がない上に、雨も降りその場合発電はストップする。したがって相当の工夫が必要になる。この二つの問題の解決策は大容量蓄電技術だ。即ち、要素技術として大容量のバッテリーやキャパシタ技術が登場する。ユースポイントでのAC化には半導体IGBTやSiCのパワーMOSFETを使うインバータが登場する。

今は個人が家の屋根にソーラーパネルを搭載する時代でもある。電力会社はソーラーパネルからのDC発電電力を交流の形で買い上げてくれるようになった。2003年4月施行のRPS(Renewable Portfolio Standard)法が最近わが国でも具体的に適用されるようになった。「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」が正式名称である。これにより屋根に太陽電池を導入する家庭は補助金がもらえ、更に余剰電力を買い上げてもらえる。ソーラーパネル電力の売電もしくは節電で数百万円のパネル設置費が15年ほどの寿命期間以内に償却されればめでたくグリッドパリティ(損益均衡)が達成される。夜間と曇天や雨の厳しい自然条件に耐えてグリッドパリティを実現するのは容易ではないと筆者は思わざるを得ない。幸運にもグリッドパリティを実現した家ではその後のパネル寿命が稼ぐ売上金を楽しみに暮らせる。

英語で送電網をパワーグリッドと称する。前に書いたが、スマートグリッドに対する投資が今後増加する機運だ
ここでスマートグリッドについてもう一度定義を考えてみたい。送電は発電所から消費者に電力を届ける仕事だが、それに必要な制御をデジタル化して双方向通信を介することによって効率化し電力需要と供給の過不足アンバランスを解消する仕掛けだ。デジタル電力積算計は通信機能を持ち、半導体が主体で構築され家庭などに設置するので大きな需要が見込まれるが、日本はその輸出市場のシェアを伸ばして欲しいと思う。そのためにISO/IECなどの国際規格を積極的に取得すべきだ。

筆者のアメリカの友人はハワイに別荘を持っている。ハワイでは電力需要が消費に追い付かない、と彼は不満げだ。では大規模原発を作るのか?いや大規模火力が良いか?いずれも楽園の観光地ハワイに向くはずがない。太陽電池はいまだに出力不足だ。電力逼迫を元からなくすには、島々の外からの送電が解決策だろう。無線送電は電磁誘導や磁界共鳴が研究されているが、送電網に適用するには時期尚早だ。

では海底ケーブルでのAC送電をするのか?でも送電損失がへたをすると3割にも及ぶ。どうするか?直流送電なら、表皮効果を生じないため導体利用率がよく、電力あたりの電流が小さいため電圧降下・電力損失が小さく損失は1割を超えないだろう。したがって今後は直流送電がもっと検討されよう。

一般紙である讀賣新聞が新たな省エネLSIの開発計画を本年2月17日に報じた。それによると東芝、NECエレクトロニクスなどのLSIメーカー4社が共同で省エネ効果が高い次世代のLSIの開発に乗り出す。消費電力は省エネ現行品のわずか1割しかない。これによりIT機器は大幅な省エネを達成できるようになる。動作電圧は0.4Vを目指す。政府も参加し、つくば市のナノテクロジー研究拠点を提供する。筆者が期待するのは計画終了の5年後には、4社の能力が増し、0.4V動作が可能な回路IPを設計できるようになる。新LSIの物理構造、製造プロセス、設計回路が決まる。参加する4社はこの成果を基礎に相当量の回路群を構築し応用の花を咲かせ大きな果実を得ることになるだろう。多いに期待している。

エイデム 代表取締役 大和田 敦之

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