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新型コロナウイルス・インパクト日々拡大、半導体業界に及ぼす影

一時休戦状態の米中貿易摩擦に英国のEU離脱(Brexit)を迎える中、半導体市場の盛り返しの兆し&期待が膨らんできているところに、中国湖北省武漢市発の新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大の強烈なインパクトがやってきた。中国国内に留まらず、我が国そして全世界への動き&波紋から、たまらず世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を発するに立ち至っている。

半導体関連業界も事態の深刻化の拡がりを受けて、折も折春節休業の期間の延長、アジアのオフィスの一時閉鎖、中国への渡航制限強化など各社の慌ただしい対応が日々増して見られている。鎮静化を祈らざるを得ないが、当面の推移そして半導体業界への影響に日々目が離せないところである。

≪現下の推移&対応について≫

急に時のキーワードとなったコロナウイルス、ネットに目を通した範囲、電子顕微鏡で見るとウイルス表面から花弁状の突起が出ており、太陽のコロナのように見えることに由来するとのこと。2003年の重症急性呼吸器症候群 (SARS: severe acute respiratory syndrome)も、コロナウイルス科に分類される新型のウイルスが起因病原体として特定された経緯。今回のものは、2019新型コロナウイルスとして世界保健機関(WHO)2019-nCoVと命名、武漢コロナウイルス(Wuhan coronavirus)、武漢海鮮市場肺炎ウイルス、武漢肺炎ウイルスなどとも呼ばれている、とある。2020年1月時点で、日本の厚生労働省では単に「新型コロナウイルス」と呼んでいるとのこと。
1月27日の週の該新型コロナウイルスについての概況および危機意識の高まりの推移である。

◇Global stocks fall as dangerous coronavirus spreads(1月27日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→月曜27日の株価および石油価格が急落、貿易戦争に関して暗雲が立ち込めたように、中国における危険なウイルスの拡がりがグローバル経済を巡る投資家の不安を掻き立てている旨。中国で少なくとも80人が死亡、世中に感染させているコロナウイルスの急な出現が、ここ数ヶ月金融市場を落ち着かせている静けさに穴をあけている旨。

◇中国の新型肺炎、世界経済に影−死者56人・患者2000人超 日本は4例目(1月27日付け 日経 電子版 02:00)
→中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の死者は26日までに56人となり、患者数は2千人を超えた旨。習近平(シー・ジンピン)指導部は政策総動員で感染拡大を封じ込める構えだが、内外で止まらない旨。重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)が流行した2003年当時と比べ中国の存在感は格段に高まっている旨。日米両政府が武漢市に在留する自国民を退避させるなど、人の往来にも影響が出てきた旨。週明けの市場は感染拡大が世界経済にどう波及していくかを注視する展開になりそうな旨。

◇新型肺炎、治療法の開発急ぐ、既存薬で対応も (1月28日付け 日経 電子版 11:00)
→中国・武漢を中心に流行する新型肺炎の感染拡大が続いている旨。28日までに中国での感染者数は4000人超、死者数は100人を超えた旨。感染源やウイルスの特徴を巡ってはいくつか報告も出ているが、明確になるまでは至っていない旨。効果があるとみて既存薬を投与する動きがでてきたが、治療法の開発は途上で、解明に向けた国際協調も求められる旨。

◇中国の新型肺炎感染、SARS上回る、世界6000人超す (1月29日付け 日経 電子版 10:03)
→中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の同国内の感染者数は28日時点で累計5974人に達し、前日から1459人増え、2002〜03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)感染者数を上回った旨。中国の国家衛生健康委員会が29日発表した旨。死者数は前日から26人増えて132人になった旨。中国メディアは、海外でも50人以上の感染者が確認されたと報じており、世界の感染者数は6000人を超えたもよう。

◇Supply Chain Poised for Coronavirus Disruption -Supply chains adjust for coronavirus, Brexit, trade war(1月30日付け EE Times)
→Electronics業界に重大な危機事態:米中貿易戦争、欧州でのBrexit、そしてコロナウイルスが引き起こすsupply-chainと3つの重大問題の旨。

◇Companies with China ties start to feel virus impact-Global economy starts to feel effect of coronavirus (1月30日付け The Associated Press)
→多くの業界がコロナウイルス発生の圧力を受けてきている旨。いくつかのAppleサプライヤおよび中国でApple製品を販売するいくつかの店舗が閉鎖、航空会社が中国への便を減らしており、そして旅行者がマカオのカジノへの旅行をキャンセルしている旨。米連邦準備理事会(FRB)も、金利を据え置いてコロナウイルス注視である。

◇Fed chair sees China virus as possible risk to world economy-Powell: Coronavirus could threaten global economy(1月30日付け The Associated Press)
→Federal Reserve(FRB)議長、Jerome Powell氏。コロナウイルス発生が、中国経済およびあらわれ始めているグローバル経済の戻しを混乱させる可能性の旨。「どれだけ拡がるか、そして貿易パートナーおよび世界中に向けてどんな経済的影響が中国であるか、非常に不安定」と同氏。

◇米、政策金利据え置き、FRB議長「新型肺炎を注視」 (1月30日付け 日経 電子版 04:01)
→米連邦準備理事会(FRB)は29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の現状維持を決めた旨。記者会見したパウエル議長は「米景気は拡大が続き、金融政策は現状が適切だ」と主張。当面は利上げや利下げを見送って、政策金利を据え置く考えを示した旨。ただ、新型肺炎の感染拡大には「世界景気への影響を注視する」と述べて警戒感をにじませた旨。世界保健機関(WHO)が緊急委員会を開き直して「緊急事態」を宣言するに至っている。

◇新型肺炎、世界の感染者8100人超、SARS上回る (1月30日付け 日経 電子版 23:20)
→中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎で、中国メディアによると、湖北省は30日夜、新たに317人の感染者を確認したと発表、世界の感染者数は8100人を超え、2002〜03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を上回った旨。世界保健機関(WHO)は30日に緊急委員会を再び開き「緊急事態」を宣言すべきか協議した旨。

◇Here Is What a WHO Global Health Emergency Means: QuickTake-The WHO declared the coronavirus outbreak an international emergency (1月30日付け Bloomberg)
→World Health Organization(WHO)のEmergency Committeeが、中国におけるコロナウイルス発生を“public health emergency of international concern”と宣言の旨。

◇WHO、新型肺炎で緊急事態宣言、拡大防止へ国際協力 (1月31日付け 日経 電子版 04:44)
→世界保健機関(WHO)は30日夜(日本時間31日未明)、中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」と宣言、中国以外にも感染が広がり始めた事態を重くみて、感染拡大防止には国際的な協力態勢が必要と判断した旨。ただ、現時点では中国への渡航や貿易の制限などは必要ないとした旨。宣言を受けての見方である。

◇Coronavirus Outbreak Can Drastically Impact the Technology Road Map for 2020, says GlobalData (1月31日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→データanalyticsのGlobalData発。WHOが緊急宣言を出して、コロナウイルス発生は今や重大な段階に入ってきている旨。該発生の経済的インパクトは究極的にどれくらい時間がかかるかに依るが、世界中のハイテク市場へのインパクトがすでに頭をもたげ始めている旨。そして春節明けも休止状態となっていく中国。スマホ約65%、パソコン約45%が中国での生産、インパクトとともに経済の孤立化が懸念される現時点である。

◇中国経済、春節明けも休止、新型肺炎で生産再開延期 (2月2日付け 日経 電子版 00:30)
→新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大で、中国の生産活動が停滞する恐れが出てきた旨。ウイルスの拡散防止のため春節(旧正月)休暇後も企業に休業延長や従業員の出勤を控えるよう指示をした省、直轄市、自治区は確認できた範囲で少なくとも全体の約8割の25になった旨。現在は9日までの休業が多いが再開が一段と遅れれば、電機などで中国を起点に世界のサプライチェーン(供給網)が目詰まりする可能性もある旨。

次に、中国をはじめとして各国での対応の動きを1月27日からの基本時間順である。

◇新型肺炎の死者増加、中国は春節連休を延長−日本は邦人帰国支援 (1月27日付け ブルームバーグ)
→新型コロナウイルスの感染による中国本土の死者数は、湖北省武漢市を中心に少なくとも56人に達した旨。中国当局は感染拡大ペースを抑えようと、春節(旧正月)の連休の無期延長を決定。26日には日本で4例目の感染が確認された旨。日本政府は同日、民間のチャーター便を使用し、武漢市在住の日本人の希望者全員を帰国させる方針を発表した旨。

◇新型肺炎、中国製造業に打撃、上海・蘇州で休業延長(1月27日付け 日経 電子版 23:00)
→新型コロナウイルスによる肺炎の拡大を受けて、中国の製造業への影響が懸念されている旨。中国政府は春節(旧正月)連休の延長を決め、上海市やイテク産業の集まる蘇州市は企業に休業の延長を通知した旨。ホンダなど中国進出の日本企業も生産計画の見直しを迫られる可能性がある旨。工場の稼働中止が長引けば、中国発の世界のサプライチェーン(供給網)に影響が及びそうな旨。中国政府は27日、春節(旧正月)に伴う連休を2月2日まで3日間延長すると発表、従来は1月24〜30日の予定で、春節の延長は極めて異例の措置となる旨。

◇United Airlines suspends 16 flights between SFO and China as coronavirus crisis worsens (1月28日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→United Airlinesが、米国と中国の間の48飛行便を一時中止、San Francisco International Airportと約4,500人が感染、100人を上回る死者が出ている不可思議なウィルスに襲われた中国の間の16便などの旨。

◇新型コロナウイルスの培養成功=ワクチンの早期開発も-豪研究所 (1月29日付け 時事通信 09:01)
→オーストラリア南東部メルボルンにあるピーター・ドハーティー (Peter Doherty)感染・免疫研究所は29日、中国で感染者が多発している新型コロナウイルスの培養に成功したと発表、中国外の施設では初めての旨。培養したウイルスは世界保健機関(WHO)を通じて世界の研究所と共有。ワクチンの早期開発につながる可能性がある旨。

◇中国国内線2割欠航、新型肺炎、データ分析で判明 (1月29日付け 日経 電子版 23:30)
→新型肺炎の拡大で、中国の人・モノの流れが滞っている旨。日本経済新聞が中国国内の航空データを分析したところ、28日は国内線の欠航が2割弱になった旨。封鎖状態の武漢だけではなく、北京や上海などの大動脈に運航停止が広がる旨。トヨタ自動車やホンダは工場再開を2月10日以降に延期すると決めた旨。新型肺炎の収束は見えず、春節(旧正月)休暇が終わる3日以降も中国経済への打撃は避けられない情勢。

◇'It's not worth the gamble': Wuhan coronavirus shifts Bay Area companies' plans in China (1月30日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→cloud-computingのVeeva Systems社(Pleasanton, California)について。来月アジア中からの同社300人余りの従業員の集まりに向けて、会合場所および航空券を予約、しかし今、中国で少なくとも7,700人の命にかかわる感染そして中国以外少なくとも20ヵ国・地域への拡がりで、同社はギアを入れ替えの旨。

◇Santa Clara County reports first Northern California case of coronavirus(1月31日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Santa Clara Countyのpublic health department発。1人の男性がコロナウイルスで陽性判定、Santa Clara CountyおよびBay Areaで確認された最初の事例。

◇3 major U.S. airlines suspend China flights over coronavirus (1月31日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Delta Air Lines, American AirlinesおよびUnited Airlinesが金曜31日、コロナウイルスのグローバルな拡がりから米国と中国の間のサービスを中止の旨。

◇新型肺炎「指定感染症」2月1日施行、WHO緊急事態宣言 (1月31日付け 日経 電子版 09:13)
→安倍晋三首相は31日午前の衆院予算委員会で、中国を中心に感染が広がっている新型コロナウイルスによる肺炎について、感染症法で定める指定感染症の政令の施行を2月1日に前倒しすると表明、当初は2月7日の施行を予定していたが、世界保健機関(WHO)が新型肺炎について「緊急事態」に該当すると宣言したのを踏まえた旨。

◇NYダウ600ドル超安、新型肺炎拡大で景気懸念強まる (2月1日付け 日経 電子版 05:24)
→1月31日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日ぶりに大きく反落し、15時半現在は前日比600ドル超安の2万8219ドル02セントで推移している旨。新型肺炎の感染拡大で世界景気の先行き不透明感が強まった旨。投資家が運用リスクを回避する姿勢を強め、業績が景気動向に影響されやすい資本財・資源を始め幅広い銘柄に売りが強まった旨。

◇米、武漢からの帰国者を隔離、50年ぶり命令で拡散阻止(2月1日付け 日経 電子版 05:47)
→米政府は31日、中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎を巡り、「公衆衛生の緊急事態」を宣言、湖北省から帰還した米国人を2週間隔離するほか、中国に滞在歴がある外国人は入国を拒否する旨。隔離命令は50年ぶり。各国で人から人への感染例が増えているため、対策を強化してウイルス拡散を阻止する狙い。こんどは半導体業界関連各社の日々対応の動き、これも基本時間順に示す。

◇Foxconn says plans in place to meet production obligations after virus outbreak-Foxconn: Coronavirus outbreak won't affect production(1月28日付け Reuters)
→Apple社向けサプライヤ、Foxconnが、中国でのコロナウイルス発生に引き続いてApple社が該病気が生み出す不安を知らせたとしても、引き続きすべての製造義務に適合していく旨。

◇iPhone生産1〜6月1割増、廉価版が押し上げ−新型肺炎の影響に懸念も(1月28日付け 日経 電子版 13:15)
→米アップルが2020年1〜6月に、スマートフォン「iPhone」の出荷台数を計約8000万台と、前年同期に比べ1割強増やすことが部品メーカーなどへの取材でわかった旨。今春発売が見込まれる廉価版が押し上げ、日本などの部品メーカーに好影響が出る旨。ただ中国湖北省武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の影響が拡大すれば、生産に支障が出る懸念もある旨。

◇Apple's iPhone back to growth as company braces for coronavirus impact(1月29日付け Reuters)
→iPhoneは伸びを戻しているが、Appleはウィルスの打撃を負う中国でのさらなる混乱に備えている旨。

◇How Google, Apple, Facebook and Microsoft are responding to the coronavirus crisis(1月29日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Reuters、水曜29日発。Google社が、武漢(Wuhan)コロナウイルス発生に対する警戒として中国本土、台湾および香港の同社オフィスを一時閉鎖の旨。該ウイルスは世界中の株式市場を混乱させ、Facebook社, Apple社およびMicrosoft社などSilicon Valleyの最大手ハイテクemployersのいくつかのoperationsにインパクトを与えている旨。

◇Google temporarily shutting down all China offices-Google closes its China offices during coronavirus outbreak (1月29日付け Reuters)
→Alphabet社のGoogleが水曜29日、中国における新型コロナウイルス発生から同社中国のすべてのオフィスを一時的に閉鎖する旨。

◇台湾IT、0.7%増収、昨年、主要19社、今年は新型肺炎など懸念 (1月30日付け 日経)
→世界のIT景気を占う台湾の主要19社の2019年年間の売上高を集計したところ、合計額は2018年比0.7%増えた旨。米中貿易摩擦が逆風となったが、次世代通信規格「5G」需要を取り込む台湾積体電路製造(TSMC)などが好調だった旨。ただ米中ハイテク摩擦や中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大などで先行きは不透明感が強い旨。2019年通年の19社の売上高合計額は12兆3166億台湾ドル(約44兆6500億円)、過半数の11社が増収を確保した旨。

◇台湾IT、3カ月連続減収、新型肺炎が新たな逆風、スマホレンズは好調持続(1月31日付け 日経産業)
→世界のIT景気を占う台湾サプライヤの動向に不透明感が増している旨。主要19社の2019年12月の売上高は前年同月比4.5%減と、3カ月連続の減収となった旨。次世代通信規格「5G」向けの半導体需要を取り込む台湾積体電路製造(TSMC)などは好調だが、需要全体は低調。中国湖北省武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の影響も懸念される旨。

◇Samsung Electronics extends holiday closure for 'some production facilities' in China(1月30日付け Reuters)
→Samsung Electronicsが、命に関わるコロナウイルス発生に対応、中国のいくつかの生産拠点についてLunar New Year holidayを延長する旨。

◇Taiwan backend houses brace for coronavirus impact-Sources: Backend firms prepare for coronavirus impact(1月31日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Advanced Semiconductor Engineering(ASE), King Yuan Electronics, Siliconware Precision Industries(SPIL)など台湾のIC backendサービスプロバイダーが、中国へのnon-essentialビジネス旅行を制限するなど用心してコロナウイルス発生に対応している旨。Powertech Technologyは、中国の子会社に向けてLunar New Yearの休みを延長している旨。

◇Delta Electronics delays return to work at China plants(1月31日付け DIGITIMES)
→powerソリューションプロバイダー、Delta Electronics(台湾)が、コロナウイルス発生に対する現地政府の規制に沿って中国における同社工場が生産を2月10日に再開する旨。

◇武漢肺炎でサムスン電子株がなぜ下落?(1月31日付け 韓国・中央日報)
→上向き始めた半導体景気が新型コロナウイルス感染症(武漢肺炎)という予想外の伏兵にあった。世界の半導体需要の半分以上を占める中国で武漢肺炎が拡散し、上向き始めた半導体市場がまた冷え込むという懸念が出ている。半導体が韓国の輸出の20%以上を占めるだけに、回復の兆しが表れていた韓国の輸出にも悪材料として作用する見込みだ。・・・日々の事態の推移と対応の動きに引き続き注目である。

≪市場実態PickUp≫

【Huaweiを巡る動き】

Trump政権のHuawei規制一層強化に対して米国業界が押しとどめる動きである。

◇Tougher Huawei Restrictions Stall After Defense Department Objects-Administration shelves tighter restrictions on Huawei-Proposed changes to further limit American shipments to Huawei have been delayed amid arguments they could backfire. (1月24日付け The New York Times)
→Trump政権が、IntelおよびMicron Technologyなどアメリカのサプライヤに対するHuawei Technologies向けmicrochips輸出制限の一層強化を延期の旨。国防総省および米国業界団体が、該規則変更の仕掛かりに反対、Office of Management and Budgetが取り下げの旨。英国は、Huaweiの「5G」装置を一部容認、Trump政権に対抗するスタンスを発表している。

◇UK Press on with 5G & Huawei, But Place a Cap on Traffic, Equipment(1月28日付け EE Times)
→長く待たれた英国政府の決定で、同国の5GネットワークスにおいてHuaweiの装置に道が開かれる旨。該ネットワークのnon-critical部分に限られる一方、使われる装置の量が制限される旨。英国政府のHuaweiなど‘high-risk vendors’(HRVs)の扱いとして、5Gの敏感な‘core’部分およびgigabit-capableネットワークスからは除外される旨。

◇U.K. Will Allow Huawei To Build Part Of Its 5G Network, Despite U.S. Pressure(1月28日付け National Public Radio)
◇英がファーウェイ一部容認、5G関連、米と亀裂 (1月28日付け 日経 電子版 21:38)
→英政府は28日、次世代通信規格「5G」の通信設備をめぐり、中国の通信大手華為技術(ファーウェイ)などの製品を一部容認すると発表、アンテナなど基地局を中心に使用を限定することで、安全保障上の懸念を回避できると判断した旨。完全排除を求めてきた米国の反発が予想される旨。欧州連合(EU)離脱後の米国との通商交渉に影響する可能性もある旨。European Union(EU)もHuaweiを完全には排除しないガイドラインを示して、Huaweiが当然ながら歓迎している。

◇Huawei says it welcomes EU guidelines on 5G security-Huawei applauds EU guidelines for 5G infrastructure security (1月29日付け Reuters)
→中国のテレコム装置メーカー、Huaweiが水曜29日、欧州におけるビジネスを制限する様相はあるが米国の全面禁止の要求には及ばないEuropean Union(EU)の5Gガイドラインを歓迎の旨。

◇EU deals another blow to U.S., allowing members to decide on Huawei's 5G role-EU issues 5G gear guidelines, doesn't exclude Huawei(1月29日付け Reuters)
→European Union(EU)がメンバー各国に対し、次世代ワイヤレスネットワークスの中核からHuawei Technologiesなど5Gテレコムシステムのhigh-riskベンダーを制限あるいは除外するよう勧めたが、5Gハードウェア&ソフトウェアの供給からHuaweiを完全には禁止しなかった旨。英国は、Huaweiの5Gネットワークスのnon-core部分供給を認めており、国家セキュリティの理由で該包囲された中国の会社を完全に除外する米国の圧力に負けていない旨。英国・BTグループが、Huawei対応に要する費用をあらわしている。

◇英BT、ファーウェイ機器交換に700億円、使用制限で (1月31日付け 日経 電子版 04:09)
→英通信大手BTグループは30日、中国・華為技術(ファーウェイ)製の通信機器の交換に、今後5年で5億ポンド(約710億円)のコストが生じることを明らかにした旨。フィナンシャル・タイムズなど英メディアが報じた旨。英政府が次世代通信規格「5G」の通信設備でファーウェイ製品の使用制限を決めたことを受け、対応を迫られる旨。

【Brexit前夜】

英国の1月末のEU離脱(Brexit)が確定、現地1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)にBrexitが始まる中での関連記事である。世界の政治&経済に影響を与える要因の1つとして、今後に注目することになる。

◇英、1月末離脱確定へ、欧州議会が協定案可決(1月30日付け 日経 電子版 03:28)
→欧州議会は29日の本会議で、英国の欧州連合(EU)からの離脱を定めた協定案を賛成多数(賛成が621、反対が49、棄権が13)で可決した旨。英側ではすでに関連法案が成立し、手続きを終えている旨。EU側では議会の可決後、英国を除く加盟27カ国が30日に承認し、手続きが完了する旨。英国の1月末のEU離脱が確定する旨。

◇英離脱、綱渡りの交渉なお、合意期限まで335日 (1月30日付け 日経 電子版 16:00)
→英国が31日、欧州連合(EU)を離脱、今後の焦点は英・EUの将来関係を巡る交渉に移る旨。自由貿易協定(FTA)に加え、医薬品の規制や漁業権など課題は山積する旨。年末に期限切れとなる移行期間中に決着できなければ、再び無秩序な離脱のリスクに直面する旨。2月から12月末まで残り335日。綱渡りの交渉が続く旨。

◇Brexit: UK to quit EU at 23:00 GMT, as PM promises 'new dawn'-Brexit got ready to begin(1月31日付け BBC)
→英国の有権者が最初にEuropean Union(EU)を離れる票決を出してから1,317日。今夜Londonで時計が午後11時を打つと、Brexitが始まる旨。

◇英離脱、戦後秩序に幕、EUは結束へ正念場 (1月31日付け 日経 電子版 18:00)
→英国が1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)に欧州連合(EU)から離脱する旨。拡大を続けてきた欧州統合が初めて逆回転する歴史的な節目を迎える旨。EUは残る加盟国での結束を探り、英国は単独での生き残りにかけるが方向性は定まらない旨。世界の政治秩序にも影が忍び寄る旨。

【注目の業績発表から】

最高益、過去最高が相次いであらわれるIT巨人関連、以下の通りである。

◇最高益アップル、中国肺炎の影、クック氏「販売に影響」(1月29日付け 日経 電子版 10:57)
→米アップルが28日発表した2019年10〜12月期決算。売上高が前年同期比9%増の$91.8 billion(約10兆円)、最終利益は同11%増の$22.2 billion。新たな課題が浮上しており、過去最高益を更新したが、中国で感染拡大が続新型肺炎が経営リスクになりつつある旨。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は決算の電話会見で「この数日で中国全域の販売に影響が出た」と説明した旨。中国には「iPhone」などの生産拠点も集中しており、販売と生産の両面で影響が広がる恐れがある旨。

◇Facebook、最高益でも株価急落、鬼門の「選挙イヤー」 (1月30日付け 日経 電子版 11:11)
→米フェイスブックが29日に発表した2019年10〜12月期決算は、売上高(前年同期比25%増の$21.082 billion)、純利益ともに四半期ベースで過去最高を更新した旨。ただ、29日の米株式市場の時間外取引で株価は急落し、投資家はフェイスブックの将来に不安を投げかけた旨。成長鈍化に加えて、同社にとって鬼門といえる「選挙イヤー」を迎えたことが背景にある 旨。

◇Microsoft38%増益、OS更新で売上高は過去最高 (1月30日付け 日経 電子版 06:53)
→米マイクロソフトが29日に発表した2019年10〜12月期の純利益は前年同期比38%増の$11.649 billion(約1兆2700億円)。売上高は同14%増の$36.96 billionで、四半期ベースで過去最高。クラウド事業の拡大に加えて、パソコン用基本ソフト(OS)の世代交代に伴う「ウィンドウズ」の販売増が業績を押し上げた旨。

◇Amazon8%増益、10〜12月、クラウド事業「AWS」好調 (1月31日付け 日経 電子版 06:48)
→米アマゾン・ドット・コムが30日発表した2019年10〜12月期決算。全体の売上高は前年同期比21%増の$87.437 billionで、過去最高を更新、純利益が同8%増の$3.268 billion(約3500億円)、増益は2四半期ぶり。営業利益の7割を占めるクラウドサービス「AWS」が大きく伸びた旨。ネット通販事業は物流網の拡大に伴うコストや人件費が増加したものの、新規会員の獲得や販売増による売上高の伸びで吸収した旨。対照的に、メモリ半導体の急激な低迷に見舞われたSamsungおよびSK hynixと韓国2社の2019年業績である。

◇Samsung Electronics' operating profit halves in 2019 on chip downturn -Samsung reports 2019 operating profit of $23.5B (1月30日付け Xinhua News Agency (China))
→Samsung Electronicsの2019年operating profitが$23.5 billionで2018年から52.8%減、売上げが5.5%減の$194.6 billion、net incomeが51%減の$18.3 billion。

◇サムスン、純利益38%減 10〜12月期、半導体不振続く(1月30日付け 日経 電子版 11:07)
→韓国サムスン電子が30日発表した2019年10〜12月期の連結決算は、純利益が5兆2300億ウォン(約4800億円)と前年同期に比べ38%減った旨。市況悪化に伴い半導体部門の営業利益が同56%減となったことが響いた旨。同期間の売上高は同1%増の59兆8800億ウォン。次世代通信網「5G」普及の恩恵を受ける通信部門の営業利益は同67%増だったものの、振れ幅の大きい半導体の減益を補いきれなかった旨。

◇SKハイニックス、昨年の営業利益は前年比87%減…10-12月期「アーニングショック」(1月31日付け 韓国・中央日報)
→SKハイニックスの昨年の営業利益が世界的な半導体不況の余波で大幅に減少、31日公示した連結基準で、売上高が26兆9907億ウォンで前年比33.3%減少、純利益が2兆164億ウォンで87%減少、営業利益が2兆7217億ウォン (約2500億円)と、前年比87%減少。

◇SK hynix's 2019 operating profit plunges 87% -SK Hynix posts 2019 operating profit of $2.2B, down 87% (1月31日付け The Korea Herald (Seoul))

【最先端微細化への取り組み】

Intelが、2-2.5年で微細化プロセスの更新を目指す、と同社CEO、Bob Swan氏が現時点の取り組みをあらわしている。最先端で先行というTSMCには実質後れていないという見方も示されている。

◇Intel to return to 2-2.5 year process cadence -Intel returns to process progress, with 7nm set for 2021 -Intel intends to return to a 2 to 2.5 year process cadence.(1月27日付け Electronics Weekly (UK))
→「我々は2-2.5年のリズムに戻りたい。」と、IntelのCEO、Bob Swan氏。「10-nmを打ち上げてまもなく、我々の最初の7 nanometer製品が2021年後半打上げを期待、CPUsがぴったりとついてくる。従って10-nmが立ち上がってきている。clients向けに10nm+に進み、そして2021年に2年のリズムで7nmに進んでいく。」Intelの10-nmプロセスは当初2016年の予定であった旨。それは一般には生産で最も進んだプロセスであるTSMCの7-nmプロセスと同じ先端度と考えられている旨。Intelは、10-nmの投入遅れで苦しんでいると思われない旨。先週2019年売上げ$72 billionを発表、同社のデータセンター市場シェアがTSMCの7-nmを用いるAMDのサーバ半導体で侵食されていると見えない旨。

Samsungについて、EUVリソのDRAM生産への適用予定が以下の通りである。

◇Samsung Electronics Expected to Apply EUV to DRAM Production This Year -Report: Samsung will use EUV in volume DRAM production(1月29日付け BusinessKorea magazine online)
→Samsung Electronicsが、半導体製造プロセスを合理化、競争力を強化するために今年初めて次世代DRAM生産ラインにextreme ultraviolet(EUV)露光装置を適用する予定の旨。業界watchersは、Samsung Electronicsが今年あるいは来年始めから10-nm(1z) DRAMsあるいは1a DRAMsの生産向けにEUV露光装置を用いる見込みとしている旨。昨年3月に業界初の1z DRAMの開発を発表、Samsung Electronicsは2019年後半にその量産を始めるとしていた旨。「Samsungは現在1yおよび1x DRAMsの生産に向けてEUV露光装置をテストしているが、該装置の実際の適用は今年末あたりで1a DRAMsから始まると見ている。」と、ある証券会社のresearcher。

【知財係争関連】

カリフォルニア工科大(Caltech)が、AppleおよびBroadcomを相手取ったWi-Fi半導体用特許侵害の訴えで勝ちを収めている。

◇Caltech wins $1.1B patent infringement suit against Apple and Broadcom(1月30日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→California Institute of Technology(Caltech)が水曜29日、Silicon Valleyの最大手2社を相手取った特許侵害に向けて$1.1 billion陪審評決を勝ち取った旨。iPhoneメーカーのApple社(Cupertino)および半導体メーカー、Broadcom社(San Jose)が絡むWi-Fi半導体用特許であり、hundreds of millions台の機器で使われている旨。
Facebookは、顔認識技術を巡る集団訴訟の収拾に向けて支払いに合意している。

◇Facebook to pay $550 million to settle facial recognition suit (1月30日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Facebookが水曜29日、Illinoisでの顔認識技術の使用を巡る集団訴訟の決着に向けて$550 millionの支払いに合意、個人団体にはsocial networkのdata-mining practicesについての問題を再び上げる大きな勝利の旨。

【我が国の遅れの回復に向けて】

「5G」をはや通り越して「6G」の先陣争い、そしてGoogleの「量子超越」達成で一層加速した感のある量子技術開発、ともに我が国の取り組みが米中などに対し遅れているという認識での動きが続いている。

◇「6G」はや主導権争い、日本、失地回復へ官民会議 (1月27日付け 日経 電子版 20:00)
→国内で今春に商用化される高速通信規格「5G」の次の世代となる「6G」をめぐり、世界で早くも主導権争いが始まった旨。総務省は27日、2030年ごろの実用化をにらみ、官民による有識者会議の初会合を開いた旨。5Gの技術開発や商用化で遅れた日本は失地回復をめざす旨。米中なども研究開発を始めており、足元で大きく開いた差を埋めるのは容易ではない旨。

◇政府、量子技術開発で行程表、実用化へ企業関与カギ、20年後、「脳の構造解明」「交通渋滞解決」(1月27日付け 日経)
→次世代の高速計算機「量子コンピュータ」をはじめとする量子技術の実現に向け、政府は今後10〜20年を見据えた研究開発の行程表(ロードマップ)を決定した旨。日本は基礎研究で優れた成果をあげてきたが、米中などに比べ、実用化の取り組みでは後れが目立つ旨。行程表を実行に移すには、企業も巻き込んだ体制づくりが欠かせない旨。


≪グローバル雑学王−604≫

現在のイラクの一部にあたり、チグリス川とユーフラテス川の間の沖積平野であるメソポタミア(Mesopotamia)は、世界四大文明の1つとまず思い起こすが、まつわる神話について、

『世界の神話』
 (沖田 瑞穂 著:岩波ジュニア新書 902) …2019年8月22日第1刷発行

より2回に分けて読み迫っていく1回目である。古代メソポタミア文明は、初期の中心となったのは民族系統が不明のシュメール人であり、地域的に、北部がアッシリア、南部がバビロニアで、バビロニアのうち北部がアッカド、下流地域の南部がシュメールとさらに分けられるとのこと。メソポタミア神話は、シュメール人、東方セム語アッカド人、アッシリア人、バビロニア人と後に移住してきたアラム人カルデア人の信仰した宗教であり、彼らの共有し、発展させた神話体系であるとのこと。世界がどのように創り出されたか、英雄の功績を謳う叙事詩、と神々の名前と関係を辿りながらの読み進めである。


2 メソポタミアとその周辺の神話 …2分の1

・メソポタミア文明…ティグリス川とユーフラテス川流域に栄えた古代文明
・紀元前3000年、シュメール人が楔型文字を考案、シュメール語を粘土板に表記、神話を残した
・紀元前2000年代後半から、アッカド語を話すセム系民族がメソポタミアで勢力を増した
・メソポタミア南部にバビロニアを、北部にアッシリアを築き、紀元前1000年まで盛衰を繰り返した

⇒「エヌマ=エリシュ」
 …バビロニアに伝わる「エヌマ=エリシュ」という言葉からはじまる創世神話
 …世界がどのようにして創られたのかを語る神話
 …世界のはじめのときには、真水の男神アプスーと海水の女神ティアマトだけがあった
 *アプスーとティアマトは、お互いの水を混ぜて神々を生んだ
 *若い神々は騒々しく、アプスーはティアマトの反対にもかかわらず、若い神々を滅ぼそうとした
 *両神の子孫であるエア神が、アプスーを呪文によって眠らせて殺害
 *エアから男神マルドゥクが生まれた
 *ティアマトは多くの神々を味方につけ、怪物を創造して復讐の準備をはじめた
 *神々はおじけづき、マルドゥクにティアマトと戦うことを頼んだ
 *マルドゥクはティアマトの体内に風を送り込み、ふくれあがったティアマトに矢を放って身体を裂いた
 *二つに切り裂き、一つを天に、もう一つを大地に
 *マルドゥクは神々の職能や天体の運行などを定めた
 *ティアマトの将軍であったキングを捉え、その血から人間を創造し、神々に仕えさせることにした
…原初の女神ティアマトは、新しい世代の男神マルドゥクに殺害され、その身体の各部分が世界の構成要素に
 →「世界巨人型」創世神話
…中国では盤古、インドではプルシャ、北欧ゲルマンではユミルの神話が、同じタイプの神話
…この神話は、古い女神信仰が、新しい男神の信仰へと移行したことを示す話であるとも
…人類は旧石器時代の古くから、女神を信仰していたが、鉄器時代に入るころに、男神への信仰へと取って代わられた、あるいは移行した

⇒「イナンナの冥界降り」
 …メソポタミアの最古層の文明、シュメールの話
 …イナンナという豊穣の女神が死者の世界に降っていくという話
 …イナンナは、後にセム系のアッカド語でイシュタルと呼ばれる女神
 *あるとき女神イナンナは、豪華な宝石と衣裳を身にまとって冥界へと降りて行った
 *一つずつ宝石や衣裳を奪われて全裸になったイナンナは、冥界の女神で彼女の姉、エレシュキガルの前に連れて来られた
 *エレシュキガルはイナンナに死の眼を向けた
 *地上には異変が起こり、動物にも人間にも子供が生まれなくなった
 *水の神エンキが、生命の草と生命の水をかけさせた
 *イナンナは生き返ったが、冥界から出るには一人の代理人を冥界に送らなければならない
 *イナンナは、夫のドゥムジを霊たちに渡した
―イナンナは冥界で衣裳や装飾品を奪われるたびに、自分の力を失っていった
―地上の豊穣の女神が、地下の死の女神に敗北した話
―ドゥムジは半年間冥界にとらわれることになったが、残りの半年は、ドゥムジの優しい姉のゲシュティンアンナが代わりに冥界に降りる
―ドゥムジは、死と再生を年毎に繰り返す植物(作物)の神
―植物の神の「死と再生」のサイクルの神話は、オリエントからギリシアを中心に広く分布

◎「ギルガメシュ叙事詩」

・神話の大きなジャンルの1つ、叙事詩
 …英雄の功績などをうたいあげた詩
・ギリシア   →ホメロスの『イリアス』と『オデュッセイア』
 インド    →『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』
 メソポタミア →『ギルガメシュ叙事詩』…世界最古

⇒「半神の王、ギルガメシュの冒険物語」
 *ギルガメシュは、3分の1は人間、3分の2は神で、ウルク国の横暴な王
 *母神アルルが、ギルガメシュと競わせるために野人エンキドゥを粘土から造った
 *彼らは戦いののちに親友となり、杉の森の番人である怪獣フワワを倒した
 *その後、女神イシュタルがギルガメシュを誘惑、彼はこれを拒否、激怒したイシュタルは、父神アヌと母神アントゥムに訴え、ギルガメシュを滅ぼすために「天の牛」を造って地上におろした
 *ギルガメシュとエンキドゥはこの「天の牛」を殺してしまった
 *神々は、エンキドゥに死の運命を定めた
 *ギルガメシュは、永遠の命を得たという賢者ウトナピシュティムのもとへ旅立った
 *ウトナピシュティムは、若返りの効用がある草のありかを教えた
 *ギルガメシュはウルクへの帰途、苦労して取ったその草を蛇に食べられてしまった
―ギルガメシュの「若返りの草」を取って食べてしまった蛇
 →蛇の脱皮と関係
 →食べると脱皮して若返ることができるという効用のある草
―蛇は脱皮して、いつまでも若く長生きできるとされる
―沖縄の宮古島にたいへんよく似た話
 →蛇が「若返りの水」を浴びる一方、人間が「死に水」を浴びることに
 →人間は脱皮ができないので死ななければならなくなった
―脱皮をめぐる死の起源のモチーフ
 →他にインドシナやインドネシア、メラネシア、ポリネシア、南米などにも分布

⇒「洪水神話」
 *神々は嵐の神エンリルの提案に従い、大洪水を起こして数の増え過ぎた人間を滅ぼすことにした
 *情け深いエア神は、賢者であったウトナピシュティムに秘かにそのことを知らせ、船を造って洪水を逃れるように教えた
 *ウトナピシュティムは大きな箱の形をした船を造り、すべての生き物の雄と雌、自分も家族と一緒に乗り込み、船の入り口をかたくふさいだ
 *洪水がすっかり引いたことを知ったウトナピシュティムは、箱船から出て、香を焚いて神々に感謝の祈りをささげた
―『旧約聖書』の「ノアの箱船」の話とそっくり
―起源が『ギルガメシュ叙事詩』にあるとされる大洪水の話
 →ギリシア:「デウカリオンの洪水」
 →インド:「マヌの洪水」

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