セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

米中、日韓摩擦下の各社業績発表、米中提携、今後への読み

北京での協議も進展なく、輸入製品全体に及んでくる制裁関税「第4弾」の9月発動をTrump大統領が明らかにした米中摩擦の一方、半導体関連3品目の輸出規制に加えて輸出管理の優遇対象国、「ホワイト国」から韓国を外す政令改正を決定して韓国からの大きな反発を招いている日韓摩擦と、ますますともに袋小路に入って先が読めない展開となっている。この状況の中、多分に摩擦インパクトを受ける各社の四半期業績が発表され、また、米国・クアルコムと中国・テンセントの間ではゲーム端末、5Gを巡る半導体関連の提携があらわれている。揺らぐ市場環境の中でいろいろな変動要因を踏まえて、当面の事業展開をどう図るか、様々な切り口の読みが相次いでいる。

≪入り組む摩擦インパクト≫

注目の大手プレーヤーの業績発表が行われており、まず、アップルの4〜6月期である。iPhoneが販売高のmajorityでなくなっており、サービス部門などの伸びで3四半期ぶりの増収を確保している一方、3四半期連続の減益となっている。iPhoneの中国での販売不振が引き続き大きく影響している。

◇Apple delivers upbeat outlook despite shrinking iPhone sales (7月30日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇Apple's iPhone Sales Down Again (7月31日付け EE Times)
→Appleの第三四半期におけるiPhones販売高が$26 billion、販売高全体の48%。iPhoneがApple販売高のmajorityでないのは、2012年以来初めてのこと。

◇Apple's services, wearables shore up results as iPhone drops below half of sales (7月31日付け Reuters)
→Apple社のiPhone販売高が7年ぶりのこと、四半期売上げの半分を下回ったが、同社CEO、Tim Cook氏は火曜30日、その変化は単一製品から図った多角化がうまく進んでいるとし、Wall Street targetsを上回る業績を予測の旨。

◇アップル、3四半期ぶり増収、4〜6月 (7月31日付け 日経 電子版 05:40)
→米アップルが30日発表した2019年4〜6月期決算。売上高が前年同期比1%増の$53.809 billion(約5兆8400億円)、3四半期ぶりの増収、最終利益は同13%減の$10.044 billionと3四半期連続の減益。主力の「iPhone」は中国の販売不振で減収が続いたが、アプリ配信などのサービス部門などの伸びで売上高を補った旨。

◇Apple's Sales Rise as iPhone Slumps (8月1日付け EE Times India)

サムスンは、スマホおよびDRAMなど半導体の低迷から、減収そして大きく落ち込む減益、と以下の通りである。米中摩擦が覆う市場の暗雲に、日本の輸出規制強化そして「ホワイト国」の重荷と、今後の市場戦略展開への大きな打撃が予想されるところである。

◇Samsung posts 55.6% drop in second-quarter profit as it copes with weak demand and a trade dispute (7月30日付け TechCrunch)

◇Samsung Suffers Hit From Softening Smartphone Demand -Samsung cites Galaxy phone, chip slumps for drop in income-The South Korean tech giant's net profit fell 53%, which still beat estimates, as uncertainty looms regarding the U.S.-China trade conflict and Japan's new trade curbs (7月31日付け The Wall Street Journal)
→Samsung Electronicsが、直近四半期におけるモバイル事業operating profitsについて前年同期比42%減と発表、全体収益がスマートフォン出荷および半導体部門における低迷から同50%を上回る低下の旨。同社は、flagshipのGalaxy S10 phoneなど"premium製品"に向けた需要弱含みを挙げている旨。

◇サムスン、半導体部門が7割減益、4〜6月-3年ぶり低水準 (7月31日付け 日経 電子版 10:19)
→韓国サムスン電子が31日発表した2019年4〜6月期連結決算。売上高が前年同期比4%減の56兆ウォン、営業利益が6兆6千億ウォン(約6千億円)と同56%減った旨。主力の半導体部門の営業利益が71%減少し、2016年7〜9月期以来、約3年ぶりの低水準に落ち込んだことが響いた旨。自社製スマートフォンを中心とするIT&モバイル部門も42%減益とふるわなかった旨。
サムスンはスマホなどにデータを記憶する半導体メモリと「ギャラクシー」ブランドで販売する自社製スマホが2本柱で、それぞれ2018年の世界シェアは1位。だが、両事業の不調で2018年10〜12月期に四半期として約2年ぶりに減益となって以来、2本柱が揺らぐ構図が続く旨。

◇サムスン、成長戦略に痛手、4〜6月、半導体営業益71%減、日本の輸出規制、顧客流出リスクに (8月1日付け 日経)
→韓国サムスン電子が31日発表した2019年4〜6月期決算は、稼ぎ頭の半導体部門の営業利益が前年同期比71%減った旨。市況低迷に加え、日本の輸出規制強化が重荷。株価もライバルの半導体受託生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)に出遅れている旨。非メモリ事業でTSMCを追撃することを成長戦略の柱に据えていただけに、痛手になりそうな旨。

そして、米中摩擦のキーワードの1つ、Huaweiであるが、この上半期、1-6月について前年同期比23%の増収となっている。中国国内でのスマホ販売が伸びて、全体でもアップルとの差を拡げて2位である。米中摩擦の影響は年末以降との見方があり、今後に注目するところである。

◇Huawei warns on U.S. ban after China smartphone sales drive first-half revenue (7月30日付け Reuters)
→中国のハイテク大手、Huawei Technologiesが火曜30日に警告、母国でのスマートフォン販売急増から上半期売上げが23%増となったとはいえ、米国貿易blacklistingが短期的な売上げの伸びにインパクトを与える旨。

◇ファーウェイ、1〜6月は23%増収、米制裁でも堅調 (7月30日付け 日経 電子版 17:21)
→中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ、非上場)が30日発表した2019年1〜6月期の決算。売上高が前年同期比23%増の4013億元(約6兆3000億円)、売上高純利益率は8.7%。5月には米商務省がファーウェイに対する米国製品の輸出禁止措置を打ち出したが、年前半は堅調な業績を確保した旨。スマートフォンの出荷台数は24%増の1億1800万台となった旨。次世代通信規格「5G」に関しては50の商業契約を結び、15万以上の通信基地局を出荷した旨。

◇ファーウェイ、逆風下の増収、米制裁の影響は年末以降-1〜6月の売上高23%増 (7月30日付け 日経 電子版 22:45)

米中摩擦、Huaweiとの輸出禁止、そして顧客の半導体内製の動きと、さまざまな壁に見舞われている様相のQualcommは、売上げの落ち込みが続いている。

◇China, Huawei Hit Q'Comm Where it Hurts-Qualcomm results challenged by trade war, Huawei ban (8月1日付け EE Times)
→Qualcommが、今四半期売上げを$4.3 billion〜$5.1 billionと予測、アナリスト評価平均、約$5.63 billionを下回り、同社は、米中貿易戦争およびTrump政権のHuawei Technologiesとのビジネス取引禁止からくる課題に苦闘の旨。「Huawei輸出禁止は、ここ数ヶ月加速している4Gから5Gへの旋回軸とともに、業界の状態、特に中国において影響を与え、向こう2四半期は大きな逆風となると見ている。」と、アナリストに対しQualcommのCEO、Steve Mollenkopf氏。

◇クアルコムに忍び寄るファーウェイの影 (8月1日付け 日経 電子版 12:41)
→米クアルコムは7月31日、2019年7〜9月期の売上高が前年同期比で最大26%減ると発表、中国でスマートフォン向け半導体が減る旨。半導体を自前でつくる華為技術(ファーウェイ)のスマホのシェアが上昇し、OPPOなどクアルコムの顧客が苦戦していることが響く旨。米アップルによるインテルの事業買収も決まり、顧客の「内製リスク」が高まっている旨。

その苦境にあるQualcommが、中国・テンセントとゲーム機半導体、5G用途展開で提携を発表している。米中摩擦インパクトの中、双方携えて事業強化を図る取り組みである。

◇Qualcomm, Tencent agree to collaborate on gaming devices, 5G (7月30日付け Reuters)

◇Qualcomm Seeks Closer Ties With China's Tencent in Mobile Gaming-Qualcomm teams with Tencent for 5G and gaming devices (7月30日付け Bloomberg)
→QualcommがTencent Holdingsと協働、Qualcomm半導体搭載モバイル機器用のTencentのビデオゲーム最適化およびTencentが設計に着手しているAsus gaming phoneの5G版の開発を行う旨。「重要な5G用途、モバイルgamingは、まもなく次世代のconnectivityを利用する。」と、Qualcomm ChinaのChairman、Frank Meng氏。

◇テンセント、クアルコムと提携、ゲーム向け半導体など (7月30日付け 日経 電子版 16:00)
→中国ネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)は米半導体大手、クアルコムとゲーム分野で提携することで基本合意したと発表した旨。クアルコムの半導体を搭載したゲーム端末や、次世代高速通信規格「5G」を活用したゲームの技術開発などで協力する旨。米中貿易摩擦は長期化しているが、両社はそれぞれの得意分野で技術を持ち寄り、一段と事業を強化する旨。

摩擦による変動要因が増す中、今後に向けた市場の読み、そして取り組みが相次いで見られている。

来年、2020年発表のiPhonesはすべて5Gサポートとの見方である。

◇Report: All three iPhones coming in 2020 may support 5G (7月29日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Apple news website、MacRumorsによるアナリストnote発。来年発表予定の3つのiPhonesすべてが、5Gネットワーク技術をサポートする様相の旨。アジアfinancialサービスグループ、TF International Securitiesで働くAppleアナリスト、Ming-Chi Kuo氏は、当初3つの新しいiPhonesのうち2つが5Gをサポートするとしていたが、5Gをサポートする比較的高価でないAndroidスマートフォンと競うために、今やAppleは3モデルすべてについて5Gを提示すると思っている旨。

TSMCが、7-nm半導体の好調な受注から積極的な人材強化を行なおうとしている。

◇TSMC points to improved levels of demand for 5 and 7nm-TSMC sees greater demand for 7nm, 5nm chips -Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.(TSMC) has said that is sees 5nm and 7nm demand improving significantly, as worldwide 5G development accelerates. (7月29日付け New Electronics)
→TSMCが、第二四半期の間の7-nm features半導体の受注の上昇を発表、2019年capital expenditure(capex)予算を$11 billion超にもっていく旨。同社はまた、台湾で3,000人を採用、同社workforceを約5%高める計画の旨。

先が読めない、読みにくい状況の中、IC Insightsは2020年半導体販売高6%増を見ている。

◇Cloudy Outlook Seen For IC Biz-Forecast: 2019 may be a wash for IC sales, 2020 to be better -The remainder of 2019 is mixed, but 2020 is looking better-at least for now. (7月29日付け Semiconductor Engineering)
→2019年後半は、半導体サプライヤおよび半導体製造装置ベンダーにとって暗くて陰気な見通しとなっている旨。IC Insightsは、メモリ半導体価格の改善および5G, artificial intelligence(AI)および高性能computingコンポーネントに向けた需要から、2020年の半導体販売高が2019年に対し6%増と見ている旨。

半導体業界は底を打ったと韓国での見方である。この後に摩擦による逆行要因が強まっている現時点ではある。

◇Has chip industry bottomed out? (7月29日付け The Korea Times)
→あまり活気に満ちていない半導体業界が伸びの勢いを取り戻すという期待が高まってきており、現地韓国の半導体メーカーの新しいビジネス戦略およびグローバル投資banking powerhousesおよび現地brokeragesからの報告が月曜29日力づけている市場コンセンサスの旨。

台湾のPC半導体メーカーでは、7-9月四半期の売上げ増が期待されている。

◇Taiwan PC chips makers eyeing at least 10% revenue surge for 3Q19 (7月30日付け DIGITIMES)
→業界筋発。IntelのCPU不足が緩和、台湾のPCsおよびnotebooks向け半導体ベンダーの多くが、第二四半期に業績が底を打って、第三四半期には二桁の前四半期比売上げ増加を期待している旨。

「5G」の普及をにらんだ投資が中堅の電子部品関連メーカーで活発化している現状である。

◇5G向け投資、中堅で活発に、部品小型化、高集積化… (7月30日付け 日経)
→次世代通信規格「5G」の普及をにらんだ投資が中堅の電子部品関連メーカーで活発になっている旨。5Gは大容量のデータを取り扱うため、スマートフォンなどは処理能力の向上が必要で部品点数が増える一方、製品サイズは抑えることが要求される旨。部品の高集積化や小型化につながる製品が求められており、積極投資を進める旨。パッケージ基板向け銅の表面処理剤で世界トップシェアのメックは中国・江蘇省で処理剤の新工場建設を計画、投資額は約25億円で2021年10月に稼働予定。

モバイルDRAMの価格については、年内は下がり続けるとの見方である。

◇Mobile DRAM prices continue slide-DRAMeXchange sees mobile DRAM prices continuing to drop (7月31日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。今四半期においてモバイルDRAMsの契約価格が第二四半期に比べて10-15%低下する見込み、第四四半期においても下がっていく、と予測する旨。スマートフォンの世界生産が今年、数量ベースで5%近く減るとみられる、と特に言及、DRAM需要を減らしていく旨。

摩擦インパクトの状況推移をよく見て、見定め、見直しを随時要するところである。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦関連】

米中貿易協議については開催前から進展の期待望み薄という見方が優勢という感じ方があったが、その通りの雲行きに辿り着いていく、以下だいたい時間順の関連する内容を含めた動きである。

◇U.S.-China Talks Set to Resume, But Neither Seems Eager for a Deal-Optimism for resolution low as US, China resume trade talks (7月29日付け Bloomberg)
→米国および中国のnegotiatorsが今週2日間の貿易協議を行う予定、commentatorsのほとんどが未解決の相違事項が打開されるという楽観論を表わしていない旨。「行き詰まりになる重要な点について、双方の間には依然非常に大きなgapがある。」と、Morgan Stanleyのchief Chinaエコノミスト、Robin Xing氏。

◇Trade jitters running high at U.S. companies ahead of new U.S.-China talks-Quarterly reports show US companies stressed about China trade war (7月29日付け Reuters)
→米中貿易戦争を巡る懸念が現在の四半期業績発表の時節で高まっており、Juniper NetworksおよびO’Reilly Automotiveなど各社が結果を嘆いているが、この嵐を切り抜ける方法を見い出してきているとしている旨。

◇米中、貿易協議30日再開へ、構造問題で溝深く (7月29日付け 日経 電子版 22:30)
→米国と中国は30日、中国・上海で閣僚級の貿易協議を再開する旨。対面での協議は決裂した5月上旬以来、ほぼ3カ月ぶり。米国産農産品の輸入で譲歩した中国に対し、米国が通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の制裁緩和に応じるかが当面の焦点。中国の産業補助金など構造問題は双方の主張の隔たりが大きく、合意への道筋は見えていない旨。

◇トランプ氏、中国を非難、農産品購入「予兆なし」 (7月30日付け 日経 電子版 22:35)
→トランプ米大統領は30日、米中貿易協議に絡み「中国は米国の農産品を今すぐ買い始めるはずだったが、予兆がない」とツイッターに投稿し、中国を批判した旨。6月末の米中首脳会談後に中国側がすぐに購入するとしていたが、実現していないことを問題視した旨。
トランプ氏は「我々のチームは現在交渉しているが、彼らはいつも自分たちの利益のために最後にディール(取引)を変えてくる。中国は非常にひどいことをしている」などと中国の姿勢を非難した旨。米中の閣僚級の貿易協議が中国・上海で再開したが、持久戦を覚悟したかのような中国側の姿勢に不満が募っている模様。

◇U.S. Government Bonds Rise After Fed Decision-Powell says rate cut does not signal a trend -Federal Reserve Chairman Powell discusses possible future cuts (7月31日付け The Wall Street Journal)
→Federal Reserveが、benchmark interest rateを0.25%引き下げ、金融危機移行初めての利下げ。Jerome Powell議長は、これは"長い一連の利下げの始まりではない"とコメント、株式市場の急落およびDonald Trump大統領からの批判を起こしている旨。

◇Trade war keeps China's factories in reverse gear for third month-Drop in Chinese factory activity extends into 3rd month (7月31日付け Reuters)
→7月の中国における工場outputが、3ヶ月連続で縮小の旨。National Bureau of Statisticsは、purchasing managers' index(PMI:購買担当者景気指数)が49.7で6月の49.4から増加したが、拡大に向かう移行の目安となる50には届かなかった旨。

米中協議の方は、なんとも素っ気ない雰囲気を感じるところである。

◇米中貿易協議、進展乏しく、わずか5時間で終了 (7月31日付け 日経 電子版 19:00)
→米国と中国の閣僚級貿易協議が31日、2日間の日程を終えた旨。中国による米国産農産物の輸入拡大や通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の制裁緩和を話しあった旨。ただ、交渉時間は計5時間あまりと短く、大きな進展はなかったとみられる旨。次回は9月に米国で開く旨。協議は本丸の構造問題の手前で足踏みし、出口が見えない状況。

◇中国景況感、3カ月連続で50割れ、貿易摩擦が重し (7月31日付け 日経 電子版 10:37)
→中国国家統計局が31日発表した2019年7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は6月より0.3ポイント高い49.7。前月より改善したものの、拡大・縮小の節目となる50は3カ月連続で下回った旨。米国との貿易摩擦で新規受注の低迷が続いている旨。

◇世界貿易額2.6%減、1〜3月、米中摩擦が顕在化、2019年版ジェトロ報告 (7月31日付け 日経産業)
→日本貿易振興機構(ジェトロ)が30日公表した2019年版の「世界貿易投資報告」によると、2019年1〜3月の世界貿易額は前年同期比2.6%減と2016年7〜9月以来のマイナスとなった旨。米中の貿易摩擦に伴う影響が2018年下期以降顕在化した旨。

Trump大統領の追加関税「第4弾」の御旗が振り上げられようとしている。

◇Trump says U.S. will hit China with more tariffs (8月1日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

上にもあるが、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ関連である。

◇米FRB、10年半ぶり利下げ、0.25%、資産縮小も終了 (8月1日付け 日経 電子版 03:01)
→米連邦準備理事会(FRB)は31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き下げ、10年半ぶりの利下げに踏み切った旨。貿易戦争のリスクを警戒し、景気悪化を未然に防ぐ旨。パウエル議長は「景気循環の途中の調整」と述べ、長期の利下げ局面入りは否定した旨。ただ、基軸通貨ドルを抱えるFRBの利下げは、世界的な「金融緩和競争」を招く可能性もある旨。

◇世界で緩和姿勢強まる、ブラジルも利下げ (8月1日付け 日経 電子版 06:25)
→ブラジル中央銀行は31日、政策金利を約1年4カ月ぶりに引き下げることを決めた旨。米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げを決定したのに追随した形。すでにアジア・オセアニアでは利下げの動きが出ており、今後は欧州も含め世界的に緩和の流れが強まりそうな旨。
各国とも経済成長が減速する中で、金融緩和による刺激策の実施に迫られていたが、通貨安を招く恐れがあるとして金利引き下げを先延ばしにしてきた旨。今後は米の利下げが決まったことで、さらに緩和の波が続く可能性もある旨。

◇FRB10年半ぶり利下げ、早くも追加緩和圧力 (8月1日付け 日経 電子版 11:48)
→米連邦準備理事会(FRB)は31日、金融危機の直後以来となる10年半ぶりの利下げに踏み切った旨。ただ、パウエル議長は「政策のサイクル半ばでの調整と捉えている」と述べ、本格的な追加利下げに慎重な考えも示した旨。トランプ大統領は「失望した」と早くも不満を表明し、金融市場も大幅な株安で応える旨。FRBへの追加緩和圧力は当面弱まりそうにない旨。

「第4弾」の御旗がついにあげられて、またぞろ米中双方の活発な応酬である。

◇米、対中関税「第4弾」9月1日に発動、トランプ氏表明 (8月2日付け 日経 電子版 02:38)
→トランプ米大統領は1日、ほぼすべての中国製品に関税を課す「対中制裁第4弾」を9月に発動すると表明した旨。新たな制裁対象は約3000億ドル分で、関税率は10%。米中は7月末の閣僚級協議が不調に終わり、トランプ氏は「中国が農産物の購入を実行しない」などと強い不満を示した旨。米中の関税合戦はさらに激化し、世界景気の下押しが避けられない旨。

◇China pledges countermeasures as Trump escalates trade war again (8月1日付け BNN Bloomberg (Canada))
→Donald Trump大統領の貿易戦争の不意のエスカレーションを受け、米国が中国製品の残りに余分の追加関税を主張するなら、北京政府は必ず対抗するとしている旨。

◇Trump Threatens New Chinese Tariffs, Rattling Investors Across Markets -Levies would extend to nearly all Chinese imports, potentially affecting American consumers (8月1日付け The Wall Street Journal)

◇China threatens retaliation for Trump's planned tariff hike (8月2日付け Politico)
→中国が金曜2日、米国Donald Trump大統領の関税引き上げが計画通り進めば、報復するとする一方、該2大グローバル経済圏の間のとげとげしさが更新されて株式市場を急下落にもっていっている旨。

◇China vows fight against Trump's latest tariffs as stocks sink (8月2日付け Reuters)

◇対中関税「第4弾」しびれ切らす米、持久戦打開狙う (8月2日付け 日経 電子版 23:25)
→トランプ米大統領は1日、中国への関税をほぼ全製品に広げる「制裁第4弾」を9月に発動すると表明した旨。2020年の再選を狙うトランプ氏が対中交渉の膠着に焦りを強め、強硬手段に出た旨。意表を突かれた中国は対抗措置を検討する旨。両国間協議の打開策は見えず、2018年7月の第1弾発動から1年強で貿易戦争は最悪の局面を迎えた旨。

◇対中関税「第4弾」、米企業に代償必至、景気減速懸念 (8月4日付け 日経 電子版 01:18)
→米国が9月の発動を決めた対中関税「第4弾」を受け、米景気の減速懸念が強まっている旨。中国からの輸入総額の約5割を占め、これまでの制裁関税より規模が大きく、消費財の値上げを迫られ、米企業業績の下押しも避けられない旨。トランプ政権は関税を武器に中国に譲歩を迫るが、設備投資や個人消費が鈍って米経済が深い痛手を負うリスクがある旨。

◇Exclusive: Foxconn eyes sale of $8.8 billion China plant amid trade war woes - sources-Trade war may force Foxconn to sell China plant, sources say (8月2日付け Reuters)
→Foxconn Technology Groupが、引き続く貿易戦争から中国における同社の新しい$8.8 billionディスプレイ工場の売却を検討している旨。

摩擦インパクトの波及はまだほんの入り口やも知らず。Trump大統領は、追加$300 billionについて10%の関税であるが、漸次"well beyond" 25%に上げていく可能性をちらつかせている。

【日韓摩擦関連】

国民の理解をということで連日のようにテレビのニュース関連番組で取り上げられている日本と韓国の間の摩擦の事態であるが、次も分かりやすく表わされた本件解説記事である。

◇日韓衝突、揺らぐ「半導体連合」 (7月29日付け 日経 電子版)
→日本政府は半導体製造などに不可欠な3品目について、韓国向け輸出の優 遇措置を解除した旨。韓国は自由貿易に違反すると撤回を要求。日本は安全保障上の措置として主張し、双方の言い分が対立、外交問題に日韓産業界が築いてきた「半導体連合」が揺らいでいる旨。次の内容:
 1.半導体が看板商品
 2.製造現場は日本頼み
 3.日本企業の「韓国詣で」
 4.諸刃の剣?

関連含めてこれもだいたい時間順に以下示していく。

◇SEMI Urges Restraint by Japan and Korea in Light of Recent Trade Actions (7月30日付け SEMI)
→SEMIのpresident and CEO、Ajit Manocha氏。「我々は日韓両政府に対し、SEMIメンバー、両国の経済およびグローバルsupply chainに対するエスカレーションのインパクトの可能性を伝えており、相違の打開を促している。SEMIの重点は、グローバルmicroelectronics supply chainがそのまま力強く損なわれないことを確実にすること。」

◇日韓、安保でも相互不信、軍事協定の延長見通せず (7月30日付け 日経 電子版 11:00)
→日韓両政府の経済分野での対立が安全保障協力に影響を及ぼし始めている旨。北朝鮮のミサイル発射など有事に備えて連携する軍事情報包括保護協定(GSOMIA:General Security of Military Information Agreement)の更新期限が8月末に迫るなか、韓国側が見直しを示唆し先行きが見通せなくなってきた旨。韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題も尾を引いており、日韓の防衛交流も滞っている旨。

◇サムスン電子が半導体減産説を否定、「日本輸出規制の影響予測は困難」 (7月31日付け 韓国・聯合ニュース 15:35)
→韓国のサムスン電子は31日、日本政府の韓国に対する半導体材料などの輸出規制強化に関連し、不確実性により輸出規制強化が事業に与える影響を正確に予測することが難しいとした上で、人為的な減産を検討しない方針を示した旨。

米国政府の仲介に向けた内容である。

◇米、日韓対立仲介の意向、ホワイト国除外延期促す (7月31日付け 日経 電子版 05:54)
→ポンペオ米国務長官は30日、輸出規制や元徴用工訴訟問題で対立が深まる日韓両政府に対し、仲介に乗り出す考えを示した旨。東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合に参加するためバンコクに向かう機内で記者団に明らかにした旨。「両国はすばらしいパートナー国だ。前進する道を見つけるよう勧める予定だ」と述べた旨。日韓の関係悪化を食い止める糸口を探るとみられる旨。日米韓3カ国は31日、8月2日にバンコクで3カ国外相会談を開く方向で調整に入った旨。

◇米国務長官、日韓の仲介探る、安保協力への波及懸念 (7月31日付け 日経 電子版 23:12)
→輸出規制強化や元徴用工問題で対立を深める日本と韓国に対し、ポンペオ米国務長官が仲介に乗り出す姿勢をみせた旨。ASEAN地域フォーラム(ARF)が開かれるバンコクで8月1日に日韓外相会談、2日に日米、米韓、日米韓の外相会談を相次ぎ開く旨。日本政府の判断に影響を及ぼすかどうかは不透明。

上にもあるが、SEMIの対応の動きである。

◇SEMI Urges Restraint by Japan and Korea in Light of Recent Trade Actions (8月1日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→SEMIのVice President of Global Industry Advocacy、Mike Russo氏記事。

◇日本の対韓輸出規制、「紛争拡大なら措置」=半導体の国際業界団体 (8月1日付け ソウル聯合ニュース)
→半導体業界によると、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の副社長は1日までに公式ホームページに掲載した文章で、日本政府による対韓輸出規制の強化に対し「紛争が拡大するなら国際貿易の原則に従い措置を取る」と総力対応を予告した旨。
日本政府が7月1日に半導体などの製造に必要な材料3品目の韓国向け輸出規制強化を発表した直後、SEMIは会員企業などで対応チームを構成し、業界に与える影響を評価したと説明。日本と韓国の貿易担当者にも業界の懸念を伝えたとし、紛争が広がれば措置を取る準備ができていると明らかにした旨。

日韓、そして日米韓の外相会談関連である。

◇日韓外相が会談、輸出規制発表後で初の協議 (8月1日付け 日経 電子版 08:51)
→河野太郎外相は1日、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相とバンコクで会談した旨。日本の対韓輸出規制や元徴用工訴訟問題について協議する旨。日本政府は輸出管理上の優遇措置を受けられる「ホワイト国」から韓国を除外する方針を示している旨。康氏は日本の輸出規制の撤回を求めるとみられる旨。

◇元徴用工・輸出規制で平行線、日韓外相が会談 (8月1日付け 日経 電子版 19:30)
→河野太郎外相と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は1日、日本政府による対韓輸出管理の厳格化の発表後、初めて会談、元徴用工訴訟問題でも原則論に終始し、議論は平行線だった旨。日本が輸出管理上の優遇措置を受けられる「ホワイト国」から韓国を除外すれば、さらなる関係悪化は避けられず対立の出口は見えない旨。
両国とも一歩も引かない背景には国内世論の支持がある旨。日本経済新聞社の7月の世論調査で韓国向け半導体材料の輸出管理を「支持する」が58%と「支持しない」の20%を上回った旨。経済産業省が実施したホワイト国からの韓国の除外に対する意見公募には4万件超の意見が寄せられ、大半が賛成意見だった模様。

◇米国務長官「日韓が対話で解決を」、日米韓外相会談 (8月2日付け 日経 電子版 22:00)
→日米韓3カ国の外相は2日、訪問先のバンコクで30分、会談した旨。ポンペオ米国務長官は「両国とも米国の大事なパートナーだ。日韓両国が話し合って問題解決に向け努力してほしい」と語った旨。会談後に河野太郎外相が明らかにした旨。

日米韓外相会談と同日、韓国の「ホワイト国」扱い除外が閣議決定されている。

◇韓国の「優遇対象国」除外を閣議決定、輸出管理厳格化 (8月2日付け 日経 電子版 10:17)
→政府は2日、輸出管理を簡略化する優遇対象国から韓国を除外する政令改正を閣議決定した旨。半導体材料の韓国向け輸出管理の厳格化に続く第2弾となる旨。7日に公布し、28日に施行する旨。韓国向けの輸出の際に食品と木材を除くほぼ全ての品目で経済産業省が個別審査を求めることができるようになる旨。韓国政府は強く反発している旨。

◇日韓、「安全弁」経済に亀裂、揺らぐ相互依存−輸出優遇、28日に除外 (8月3日付け 日経 電子版 01:00)
→日本政府は2日、韓国向け輸出管理の厳格化を閣議決定した旨。韓国は猛反発し対抗措置の構えをみせる旨。韓国での元徴用工判決に端を発した日韓対立は激化の一途をたどる旨。歴史問題のたびに「安全弁」になってきたのが経済の結びつきだが、今回は双方が標的にする事態に陥っている旨。日韓関係は1965年の国交正常化から半世紀を過ぎ、危険水域に入った旨。

8月2日付け化学工業日報にて、韓国半導体産業協会(KSIA)のアン・ギヒョン常務による、日韓の「50年の絆」絶つは愚か、との大見出しの記事が見られて、大きな温度差を感じている。政治面、経済面の困った絡み合い、今後の推移に注目である。

【hyperscalers】

“スーパー”を超えた“ハイパー”なスケールの事業者、AmazonやApple、Facebook、Googleなど、大規模なコンピューティング能力を備える必要のある巨大企業を指す「hyperscalers」。半導体業界との絡み合いの視点に注目している。

◇Memory Makers Setting Up to Handle Hyperscale Demands (7月30日付け EE Times India)
→hyperscalersは、設備投資を必要とせずして大規模なアーキテクチャー変更を欲している旨。

◇Tech Titans in the Driving Seat-Locked in an AI arms race and sitting on piles of cash, hyperscalers are beginning to set the agenda in semiconductor process technology. (7月31日付け EE Times India)
→インターネットおよびcloud-computing大手、Facebook, Amazon, Microsoft, およびGoogleが今月始めのSemicon Westに来場、展示フロアを歩き回り、プレゼンを見学、そして最新fab toolsおよび半導体処理技法をささっと調べている旨。該大手hyperscalersの1社そこらで半導体展示会に来場するのはめずらしくないが、すべてがいっしょにあらわれるのは稀の旨。

◇Swimming with Whales in the Semiconductor Industry (8月1日付け EE Times India)
→世界の7大データセンター、別名"Big 7" hyperscalers(Amazon, Google, Microsoft, Facebook, Alibaba, Tencent, およびBaidu)が、巨大な半導体市場を作り出して、半導体業界を新たな性能の高みおよびコストfloorsに引っ張っている旨。彼らはまた半導体ベンダーをしてより小規模、より多角的なユーザのニーズから反らしてきている、と恐れる向きがある旨。

【Huawei関連】

またここでも、Huawei関連に注目。まずは内製モバイルSoCsの採用比率増加の状況である。

◇Huawei sharply boosts adoption ratio of in-house mobile SoCs-Sources: 60% of Huawei phones to have HiSilicon APs (7月26日付け DIGITIMES)
→supply chain筋発。Huaweiの携帯電話の60%が2019年後半にHisiliconのAPsを搭載の見込み、今年前半は45%、2018年後半は40%を下回っていた旨。これは、2019年の全体出荷見通し270 million台に基づくと、Huawei handsetsの150 million台超が同社半導体部門、Hisiliconが展開するKirinモバイルSoCsを採用することになる旨。

IntelのHuawei向け販売について、米国政府への働きかけである。

◇Intel says it's been selling products to Huawei and has applied for licenses to sell more-Intel applies for licenses for its Huawei sales (8月1日付け CNBC)
→Intelは、Huawei Technologiesにgeneral-computingプロセッサを販売するライセンスに向けてDepartment of Commerceに申請の旨。「しかし現時点承認を得るためにライセンスを申請、我々の製品に向けて本当に数少ないライセンスを提出している。そして、米国政権は先週、好都合なやり方で業界からのライセンスを処理しようとしていると発表、我々はそれで勇気づけられている。」と、インタビューの中でIntelのCEO、Bob Swan氏。

4-6月の世界スマホ出荷台数データであるが、Huaweiが2位を維持、アップルとの差を拡げている。

◇ファーウェイ、スマホ出荷世界2位を維持、4〜6月 (8月1日付け 日経 電子版 04:03)
→米調査会社、IDCは31日、2019年4〜6月の世界のスマートフォンの出荷台数が前年同期比2.3%減の3億3320万台だったと発表、買い替えサイクルの長期化などで市場は成熟しており、7四半期連続で減少した旨。中国・華為技術(ファーウェイ)は中国での出荷台数を伸ばし、米アップルを抑えて2四半期連続で世界シェア2位を維持した旨。トップ3:
 1 サムスン電子 7550万台 前年同期比5.5%増 シェアは22.7% …1.7ポイント上昇
 2 ファーウェイ 5870万台      8.3%増     17.6% …1.7ポイント上昇
 3 アップル   3380万台      18.2%減     10.1% …2.0ポイント低下

【新しいコンソーシアム】

LiFi(Light Fidelity)のmass market IoT取り入れの展開を目指すELIoT(Enhance Lighting for the Internet of Things)、および進化したultra-wideband(UWB)技術に向けたinteroperable ecosystem標準の推進を図るFiRa Consortiumに注目している。

◇ELIoT to commercialise LiFi-Consortium launches EU project to boost use of LiFi tech (7月30日付け Electronics Weekly (UK))
→ビジネスおよびacademiaのEUコンソーシアムが本日、LiFi(Light Fidelity)のmass market IoT取り入れの展開を目指す3年のプロジェクト、ELIoT(Enhance Lighting for the Internet of Things)を発表の旨。
約$6.7 millionの出資を受ける該プロジェクトを支えるコンソーシアムには、Deutsche Telekom, Eindhoven University of Technology, NokiaおよびOxford Universityなどが入っている旨。

◇FiRa Consortium Aims to Revive UWB, Drive Interoperability (8月1日付け EE Times)
→スポンサーメンバー4社が引っ張る新しいFiRa Consortiumは、fine ranging応用における進化したultra-wideband(UWB)技術に向けたinteroperable ecosystem標準の推進を図る旨。


≪グローバル雑学王−578≫

元陸上自衛隊陸将の筆者の目で、米中経済戦争を軍事的視点で読み解いている書、

『軍事的視点で読み解く 米中経済戦争』
 (福山 隆 著:ワニブックス「PLUS」新書) …2019年3月25日 初版発行

も、あと今回と次回、大詰めになる。米中経済戦争の今後についてどうなるか、双方国内の政治基盤の確立・維持がなにより、そのもとで時間がかかる様相を感じざるを得ないが、著者は5つのシナリオが想定されるとして以下それぞれ分析している。大方が考える【シナリオ1】米中で妥協が図られ引き分ける場合から、究極の非常事態【シナリオ5】米中経済戦争が軍事対決にエスカレートする場合に及んでいる。【シナリオ5】では、米国の対中軍事対処策として2つが挙げられ、「エアシーバトル構想」および「オフショアコントロール戦略」である。米中が日本の頭越しに軍事衝突、日本だけが途轍もない被害を被る、という絶対に起きてはならないシナリオとなっている。


第七章 米中経済戦争の今後の展望―――5つのシナリオ

・米中経済戦争の今後の展望について、想定される5つのシナリオ

【シナリオ1】米中で妥協が図られ引き分ける場合
・米国側としての妥協の動機は、2020年の大統領選挙
 →現実主義者のトランプは、経済戦争問題では、世論の動向を見ながら、「票になる」と思えば中国と妥協する可能性
・中国は、民主主義国家の弱点――大統領選挙――を捉え、行うであろう2つの工作
 →第1:経済戦争問題でトランプの足元を見ながら、中国に有利な条件をのませ、時間稼ぎをする
 →第2:米国世論に対する工作――選挙介入(非公然な内政干渉)――を行う
・この米中妥協は一時的なもの

【シナリオ2】米中が拮抗する冷戦状態、「新冷戦」が継続する場合
・経済戦争を契機に、米中は「新冷戦」状態に
 →このシナリオが成り立つのは、米中双方が「決定的な非常事態」に陥らない場合
・中国側の「決定的な非常事態」
 →1.経済的に"破産状態"になる場合
  2.習近平政権が維持できなくなる場合
  3.共産党独裁が崩壊する場合

【シナリオ3】米国が勝利する場合
・米国が完全に勝利し世界覇権を維持し、中国が降伏するというシナリオ
 →中国は「ナンバー2以下」に甘んじることに
 →中国は素直に米国の軍門に下るよりも、軍事対決にまでエスカレートする可能性(シナリオ5)が高い
・中国共産党は権力を失い、国家は分裂する可能性が高い
 →3つの地域間の亀裂
  …政治支配層が住む北京地域
  …沿岸から200km以内の繁栄地域
  …200km以遠の貧困地域
・巨大地震にも似たインパクトの中国の分裂
 →日本にとって、望ましいシナリオとは言い難い

【シナリオ4】中国が勝利する場合
・中国が完全に勝利し世界覇権を奪取し、米国が降伏し、「ナンバー2以下」に転落するというシナリオ
 →想像もできないことだが、米国も国家分裂の危機に陥るかも
・一方の中国、新たな世界秩序(パクス・シニカ)が始まることに
 →世界では自由・民主主義が廃れ、日本や西欧民主主義国家が専制・独裁国家に転じるかも
・米中経済戦争はまさに人類史の流れを左右する一大決戦

【シナリオ5】米中経済戦争が軍事対決にエスカレートする場合
・米中が経済戦争から軍事対決にエスカレートするシナリオ
 →荒唐無稽なものではないよう
・米国の対中軍事対処策には、2つの選択肢
 →第1:中国本土内にまで侵入して激しく攻撃する「エアシーバトル構想」
 →第2:中国を遠方から包囲する「オフショアコントロール戦略」

□エアシーバトル構想
・米海空軍を主体とするエアシーバトル構想
 …AirSea Battle:ASB:米国防総省が中国の軍拡に対応して構築している戦略の名称
 →台頭著しい中国軍が採用する「接近阻止・領域拒否戦略(A2/AD:Anti-Access/Area Denial)」に対抗するために開発
・「接近阻止・領域拒否戦略」
 →米軍の一定距離内への接近を阻止、中国が定めた水域内における米軍の自由な行動を阻害する戦略
・中国軍は、米軍戦力の骨幹となる空母を目標として、新兵器の開発・装備や新たな戦術の創造を模索
 →米国の対抗策は、ASB構想を導入、中国領域内の主要軍事拠点に対して、海と空からの攻撃能力を大幅に強化
・ASBの最重要ポイント
 →恫喝する中国軍を抑え、払い除けて、地球規模で世界が共有している資産(海や空)――グローバル・コモンズ――における行動の自由を獲得し、維持すること
 →「西太平洋上に、中国に勝手に"垣根"をつくらせない」
・米軍の戦い方
 →第1段階:米軍は中国ミサイルの"飽和攻撃"の被害を回避するために、在日米軍基地などからミサイルの射程圏外の遠方に退避、日本や台湾などに「自らの国は自ら守る」ことを求める
 →第2段階:中国に対して「懲罰を科す」ために、反撃する
  →軍事作戦としての合理性よりも"政治的判断"が優先される

□オフショアコントロール戦略
・米国の第2の対中軍事対処策、オフショアコントロール戦略
 …offshore control:OSC:中国の海上貿易を阻止し、アメリカ側につく味方の国々の領土を守るということ
・OSCの作戦ステージ構成…「拒否」「防衛」「支配」
 →「拒否」ステージ…中国による第1列島線内の東・南シナ海などの海洋の使用を潜水艦や機雷等で拒否
 →「防衛」ステージ…日本や台湾などの第1列島線上の島嶼(領土・領海・領空)を防衛する
 →「支配」ステージ…第1列島線の島嶼領域の外(東または東南)側の空域および海域を支配する
・中国の輸出入はGDPの50%、中国共産党の正統性は経済成長(右肩上がり)を基盤としているので、経済的な圧力は紛争の解決に向けた大きな圧力に
 →封鎖の外側で世界経済が中国抜きで再編されてしまえば、さらに事態は中国にとって悪化することに
・OSC戦略は、「対中国遠隔包囲策」

□2つの構想・戦略が日本に及ぼす影響
・米軍のASB構想またはOSC戦略採用
 →日本にとっては極めて大きな問題
・第1の問題:米中が軍事衝突すれば、日本だけが戦場となり、サンドバッグのように中国から"飽和状態"のミサイル攻撃を受ける可能性が高い
・第2の問題:米軍が、戦争勃発の直前に、中国ミサイルの"飽和状態"の被害を回避するために、在日米軍基地などからミサイルの射程圏外の遠方に逃げてしまうこと
・日本だけが中国の弾道ミサイルで袋叩きにあう羽目に
 →米中激突の事態においては、数千kmの彼方にある米国民には"火の粉"は一切降り注がず、ひたすら"日本国民の頭上"に降り注ぐことに
 →加工貿易立国の日本は、企業活動はおろか国民の食糧確保にも事欠くようになるのは明らか
 →アメリカ・トランプの政策判断の基本は「アメリカ・ファースト」、日本人の生命や財産よりもアメリカのそれが最優先
・第3の問題:米軍が反撃するかどうか
 →米中は核戦争を回避、サッサと日本の頭越しに講和をするかも

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.