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米中摩擦の中の5月半導体販売高が、5ヶ月連続減、7ヶ月ぶり前月比増

新たな制裁見送り&貿易協議再開を決めた米中首脳会談後の余韻が残り、予断を許さない雲行きが覆う中で、米国Semiconductor Industry Association(SIA)からの月次世界半導体販売高が発表されている。この5月について$33.1 billion、前年同月比14.6%減と今年に入ってずっとの5ヶ月連続の落ち込みであるが、前月比では1.9%増と7ヶ月ぶりの僅かながらの増加を示している。対Huawei禁止措置が緩和されたが限定範囲であり、これまでの米中摩擦の市場インパクトの蓄積によるボディブローが一層あらわれてきている現状である。一方、半導体材料の輸出規制で我が国が韓国への対抗措置を実施、サプライチェーンの足並みの乱れにまた1つ輪がかかっている。

≪5月世界半導体販売高と米中会談後の余韻≫

米国・SIAからの今回の発表内容が、次の通りである。

〇5月のグローバル半導体販売高が前年比14.6%減−地域市場全部で前年比減、しかしながら、グローバル販売高が前月比で僅かに増加 …7月1日付け SIA/Latest News

Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、2019年5月の世界半導体販売高が$33.1 billion、前年同月、2018年5月の$38.7 billionから14.6%減、前月、2019年4月の$32.5 billionを1.9%上回る、と発表した。月次販売高はWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。SIAは、半導体製造、設計および研究における米国のleadershipを代表している。

「5月のグローバル半導体販売高は前年同月比かなり減少して、前年比ベースでは5ヶ月連続のマイナスとなっている。」と、SIAのpresident and CEO、John Neuffer氏は言う。「前月比ベースではグローバル販売高は控え目に増加し、Americas市場への販売高は7ヶ月ぶりに増加、ただしAmericas市場への販売高前月比は大きく落ち込んでいる。」

2019年5月販売高の地域別では、次の通り前年同月比ではすべて減少、前月比ではChinaがかなり伸ばし、AmericasとJapanが僅かに増加、EuropeとAsia Pacific/All Otherは減少している。

Europe
前年同月比 -9.0%/
前月比-0.4%
China
-9.8%/
5.4%
Asia Pacific/All Other
-12.6%/
-1.1%
Japan
-13.6%/
0.9%
Americas
-27.9%/
1.4%
                        【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域
May 2018
Apr 2019
May 2019
前年同月比
前月比
========
Americas
8.24
5.87
5.95
-27.9
1.4
Europe
3.70
3.38
3.36
-9.0
-0.4
Japan
3.35
2.87
2.89
-13.6
0.9
China
13.16
11.27
11.88
-9.8
5.4
Asia Pacific/All Other
10.27
9.07
8.97
-12.6
-1.1
$38.72 B
$32.45 B
$33.06 B
-14.6 %
1.9 %
--------------------------------------
市場地域
12- 2月平均
3- 5月平均
change
Americas
6.35
5.95
-6.3
Europe
3.37
3.36
-0.3
Japan
2.99
2.89
-3.4
China
10.71
11.88
10.9
Asia Pacific/All Other
9.43
8.97
-4.8
$32.85 B
$33.06 B
0.6 %
--------------------------------------

※4月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
https://www.semiconductors.org/wp-content/uploads/2019/07/May-2019-GSR-table-and-graph-for-press-release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

これを受けた業界各紙の取り上げであるが、低迷状況からか地味な反応となるのは致し方なしである。

◇Chip Sales Fall for Fifth Straight Month (7月1日付け EE Times)

◇Global Semiconductor Sales Decrease 14.6 Percent Year-to-Year in May (7月2日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)

2016年後半から2年あまり史上最高を更新し続ける勢いの熱い活況が続いた半導体業界であるが、これまで通りの販売高の推移の見方を続けると以下の通りとなる。昨年11月から販売高が前月比マイナスとなって以降、12月、今年に入って急激に落ち込む経緯があらわれているが、2月以降は$32 billion台に押しとどまり、5月になってやっと前月比増加に転じている。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
(月初SIA発表)
2016年 7月 
$27.08 B
-2.8 %
2.6 %
2016年 8月 
$28.03 B
0.5 %
3.5 %
2016年 9月 
$29.43 B
3.6 %
4.2 %
2016年10月 
$30.45 B
5.1 %
3.4 %
2016年11月 
$31.03 B
7.4 %
2.0 %
2016年12月 
$31.01 B
12.3 %
0.0 %
$334.2 B
 
2017年 1月 
$30.63 B
13.9 %
-1.2 %
2017年 2月 
$30.39 B
16.5 %
-0.8 %
2017年 3月 
$30.88 B
18.1 %
1.6 %
2017年 4月 
$31.30 B
20.9 %
1.3 %
2017年 5月 
$31.93 B
22.6 %
1.9 %
2017年 6月 
$32.64 B
23.7 %
2.0 %
2017年 7月 
$33.65 B
24.0 %
3.1 %
2017年 8月 
$34.96 B
23.9 %
4.0 %
2017年 9月 
$35.95 B
22.2 %
2.8 %
2017年10月 
$37.09 B
21.9 %
3.2 %
2017年11月 
$37.69 B
21.5 %
1.6 %
2017年12月 
$37.99 B
22.5 %
0.8 %
$405.1 B
 
2018年 1月 
$37.59 B
22.7 %
-1.0 %
2018年 2月 
$36.75 B
21.0 %
-2.2 %
2018年 3月 
$37.02 B
20.0 %
0.7 %
2018年 4月 
$37.59 B
20.2 %
1.4 %
2018年 5月 
$38.72 B
21.0 %
3.0 %
2018年 6月 
$39.31 B
20.5 %
1.5 %
2018年 7月 
$39.49 B
17.4 %
0.4 %
2018年 8月 
$40.16 B
14.9 %
1.7 %
2018年 9月 
$40.91 B
13.8 %
2.0 %
2018年10月 
$41.81 B
12.7 %
1.0 %
2018年11月 
$41.37 B
9.8 %
-1.1 %
2018年12月 
$38.22 B
0.6 %
-7.0 %
$468.94 B
 
2019年 1月 
$35.47 B
-5.7 %
-7.2 %
2019年 2月 
$32.86 B
-10.6 %
-7.3 %
2019年 3月 
$32.28 B
-13.0 %
-1.8 %
2019年 4月 
$32.13 B
-14.6 %
-0.4 %
2019年 5月 
$33.06 B
-14.6 %
1.9 %


上記のSIA発表に関連する内容として、米中休戦とはいえ、大きな摩擦インパクトは消えることなしと、今年の世界半導体販売高が18%減の$388.0 billionと、また$400 billionの大台を割る大きな逆戻りの予測が以下の通りである。5GでのHuaweiの先行もあらわされている。

◇As Trade Talks Resume, China Advances 5G (7月1日付け EE Times)
→グローバル半導体業界にとって、米国Donald Trump大統領と中国Xi Jinping国家主席の間で披露されたばかりの"貿易戦争"休戦は、歓迎のニュースではあるが、アメリカ半導体市場に引き続き悲惨な結果を課していく下手な台本の経済melodramaの終わりではほとんどない旨。以下2点:
 *The global chip market to shrink by $100 billion in 2019
 …先週CEA-Leti(Grenoble)開催イベントにて、International Business Strategies(IBS)社のfounder and CEO、Handel Jones氏が聴衆に警告、"もし米国と中国が現状の貿易摩擦を緩和する方法を見い出さなければ、2019年のグローバル半導体市場は2018年に比べて18%、すなわち約$100 billion縮小すると見ている"旨。グローバル半導体販売高の見方:

  2017年    $411.8B
  2018年    $471.3B
  2019年    $388.0B
  2020年    $409.6B
  2021年    $441.7B

 *Future of 5G
 …1つのことが明らか。IBSのJones氏が特に言及するように、5G技術競争はすでに中国・Huaweiが勝っており、Ericssonが2着、Nokiaが離れた3着の旨。米国と中国の間で引き続く摩擦は、米国が国内で5Gを開始したり、あるいはグローバル5Gレースでリードをとる助けにはならない旨。

DRAM価格も下落続きであるが、メモリ半導体が大きく関わる日韓の摩擦がどう働くか。

◇DRAMの下落続く、5月、対韓規制で反発予想も (7月4日付け 日経)
→DRAMの大口需要家向け価格が下落、指標のDDR4型の4ギガビット品は5月の価格が1個2.75ドル前後と前月より5%安。8カ月連続の下落。ただ、今後は需給が引き締まるとの見方が多く、日本政府が韓国に半導体製造に欠かせない材料について輸出時の審査を厳格化することが背景。

サムスンの業績も利益の落ち込みが続いているが、日本の対韓輸出規制の直撃具合はどうか。目が離せない要因が増える一途である。

◇サムスン失速鮮明、輸出規制も逆風 4〜6月営業益半減 (7月5日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が、5日発表した2019年4〜6月期の連結決算(速報値)。
失速が鮮明、連結営業利益は6兆5千億ウォン、前年同期比56%減、1〜3月期の6割減に続く大幅減益となった旨。売上高が56兆ウォン(約5兆2千億円)。在庫が積み上がっている主力の半導体は当面、市況の悪化が見込まれ、その上、4日に強化された日本の対韓輸出規制は次の「成長の種」を直撃。経営への逆風が強まりつつある旨。スマートフォンやパソコンにデータを記憶するDRAMの平均価格が約5割下落した影響で、半導体部門の営業利益が約3兆3千億ウォンと、1年前の約4分の1の水準に縮小したもよう。

世界が注目したG20大阪サミットでの米中首脳会談について、その余韻そして実態的な中身を以下追ってみる。

休戦&協議再開が決定されたが、今後の道筋はどうか?

◇G20 summit: Trump and Xi agree to restart US-China trade talks-US, China agree to further trade talks (6月29日付け BBC)

◇米中、貿易協議を再開へ、首脳会談で合意−対ファーウェイ、部品販売を容認 (6月29日付け 日経 電子版 23:59)
→米国のトランプ大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は29日に大阪市内で会談し、5月から途絶えている貿易協議の再開で合意した旨。
米国は3千億ドル(約33兆円)分の中国製品への追加関税を先送り、米企業による中国の情報通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への部品販売も認める方針に転じた旨。米中は貿易戦争の激化をひとまず回避したが、協議の合意に向けた道筋が描けているわけではない旨。

◇US and China to resume trade talks after Trump-Xi meeting (6月30日付け Financial Times)

◇Trump Restarts China Trade Talks, but the Two Sides Remain Far Apart (6月30日付け The New York Times)

Huaweiに対する禁止措置緩和について、実際はどうか、いくつかの見方である。

◇Trump reversed course on Huawei. What happens now?-Temporary licenses could follow lifting of Huawei ban (6月30日付け CNN)
→Donald Trump大統領による米国装置の中国テレコムメーカー、Huaweiへの販売についての6週間になる禁止措置の解除は、商務省が米国メーカーに対してHuaweiとのビジネスを再開する一時licensesを認める方法を探ることになる、とWhite House economic adviser、Larry Kudlow氏。同氏は、Trump氏の動きは恩赦ではなく、セキュリティ・リスクを生じない場合のみHuaweiは米国ビジネスからの購入を再開できる、としている旨。

◇米中休戦、収束見えず、期限曖昧で中国ペース (6月30日付け 日経 電子版 02:00)
→米中両首脳は29日の会談で貿易協議の再開を決めた旨。トランプ米大統領は関税第4弾の発動を先送りし、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の制裁解除に言及。今後の協議も期限が曖昧で一転して中国ペースの様相を呈しつつある旨。一時休戦となる貿易戦争が収束する道筋は見えないが、大統領選を控え成果を焦るトランプ氏が譲歩すれば中国の構造改革が中途半端に終わるリスクもある旨。

◇China can't contend with trade war for long (7月1日付け South China Morning Post (Hong Kong))

◇ファーウェイ制裁緩和、米で対中強硬論根強く (7月1日付け 日経 電子版 23:00)
→トランプ米大統領の対中国外交に米議会で波紋が広がっている旨。米中首脳会談では貿易協議の再開で合意したが、中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への制裁緩和に与野党の有力者が反発するなど対中強硬論は根強い旨。合意への道筋を描けないまま見切り発車した印象もぬぐえず、今後の2国間交渉は予断を許さない旨。

Huaweiへの路線変更は、米国半導体業界による訴えかけが効いているとの見方である。

◇How U.S. Chipmakers Pressed Trump to Ease China's Huawei Ban (7月2日付け Bloomberg)
→米国メーカーがHuaweiへの販売を引き続き行えるというDonald Trump大統領の決定は、該禁止措置がアメリカの経済的および国家セキュリティを傷つけるとする米国半導体業界による広大なlobbyingキャンペーンに従っている旨。

米国Semiconductor Industry Association(SIA)の今回の米中首脳会談を受けてのステートメントである。

◇SIA Statement Following Trump-Xi Meeting in Osaka (6月29日付け SIA/Latest News)
→Semiconductor Industry Association(SIA)が、Trump大統領とXi国家主席の間の大阪での会談を受けてSIA president & CEO、John Neuffer氏からのステートメント・リリース。「Trump大統領とXi国家主席による本日大阪での進展は、半導体業界、ハイテク分野全体および世界2大経済圏にとって良いニュースである。協議の再開および追加関税の中止に元気づけられており、大統領のHuaweiについての表明のさらなる詳細を得る期待がある。」

Huawei禁止措置の緩和について、その実態的な中身そして関連する動き、以下の通りである。

◇ファーウェイ制裁緩和、汎用品輸出のみ容認、米高官 (7月1日付け 日経 電子版 06:32)
→米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長は30日、トランプ米大統領が29日の米中首脳会談後に表明した華為技術(ファーウェイ)に対する制裁緩和について、禁輸対象リストに同社を残し続けると明らかにした旨。そのうえで汎用品の輸出を認める旨。米議会などから制裁緩和に批判が集まるなか安全保障に影響しない一部取引のみに限定すると強調した旨。

◇China's Huawei awaits U.S. Commerce nod on resuming usage of Google Android (7月2日付け Reuters)
→中国・Huaweiが月曜1日、次期スマートフォンでのGoogleのAndroidモバイルoperating system(OS)使用再開を行えるかどうか、米国商務省からのguidanceを待っている旨。

◇Huawei order visibility for 5G chips, IC backend services to extend to year-end 2019, say makers (7月2日付け DIGITIMES)
→業界筋発。台湾の半導体およびIC backendサービスサプライヤには、米国政府がHuaweiに対するスタンスを緩めた後安堵感があり、特に5G基地局半導体およびロジックIC backendサービスについてHuaweiからの受注visibilityが今年末に拡がる期待の旨。

◇ファーウェイ制裁緩和は「年10億ドルまで」、米高官 (7月3日付け 日経 電子版 05:20)
→ナバロ米大統領補佐官(通商担当)は2日、トランプ大統領が表明した中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)に対する制裁緩和に関して「安全保障に影響しないローテク製品」に限って輸出を認めると明らかにした旨。半導体の販売が可能になるのは、年10億ドル(約1080億円)未満と小規模になるとの見通しを示した旨。

首脳会談を受けての市場インパクトのいくつか。ハイテク関連株価の上昇である。

◇Tech stocks soar after Trump reverses course on Huawei-Trump eases restrictions on Huawei, stocks rebound (7月1日付け CNN)

◇Chipmakers Get Glimmer of Hope on Trade War (7月2日付け EE Times)
→Trump米国大統領とXi Jinping中国国家主席が大阪でのG20 Summitで会談、新たな貿易交渉および新たな関税賦課中止で合意した後の取引初日、月曜1日、半導体株価が上昇の旨。IntelおよびQualcommが上昇、しかしながら、Broadcom, Skyworks Solutions, Qorvo, およびMicron TechnologyなどHuaweiへのサプライヤは特にその戻しを必要とした旨。全体として、Philadelphia SOX半導体指数は月曜約2.7%上昇の旨。

◇Renewed Trade Talks Offer Reprieve for Chipmaker-U.S. chip stocks (and spirits) were boosted over the weekend by renewed trade talks between the U.S. and China and the apparent relaxation of sanctions. (7月3日付け EE Times India)

摩擦懸念からHP、デルなど米パソコン大手が、中国でのノートパソコン生産の最大3割を東南アジアなどに移管する検討の動きがみられている。

◇HP, Dell Reportedly Shifting Manufacturing From China (7月3日付け EE Times)

◇Report: HP, Google and others plan to shift production out of China (7月3日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

◇HPやデル、中国からパソコン生産移管、貿易戦争懸念 (7月3日付け 日経 電子版 18:00)
→HPやデルなど米パソコン大手が中国でのノートパソコン生産の最大3割を東南アジアなどに移管する検討に入った旨。アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトもタブレットやゲーム機などの生産拠点分散を取引先と協議している旨。トランプ米政権は対中制裁関税「第4弾」の発動見送りを決めたが、貿易戦争長期化を懸念する世界の大手メーカーに中国での集中生産を見直す動きが広がっている旨。

◇HPやデル、パソコン生産を中国に移管、東南アに最大3割、貿易戦争長期化を警戒 (7月4日付け 日経)
→HPやデルなど米パソコン大手が中国でのノートパソコン生産の最大3割を東南アジアなどに移管する検討に入った旨。アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトもゲーム機などの生産拠点分散を取引先と協議している旨。
トランプ米政権は対中制裁関税「第4弾」の発動見送りを決めたが、貿易戦争長期化を警戒する世界の大手メーカーに中国での集中生産を見直す動きが広がっている旨。

摩擦インパクトの1つとして、中国自前の技術開発への流れが引き続き論評されている。

◇Tech war with the US is spurring Chinese firms to develop their own chips, says venture capitalist-VC: Trade war with China hurts the US more (7月2日付け CNBC)
→venture capital(VC) firm、MSA Capital(北京)のmanaging partner、Ben Harburg氏。中国と米国の間の引き続く貿易係争で中国の中での技術開発が高まっていく旨。「非常に大きな量の設備投資および人材が、米国半導体、operating systems(OSs)への依存なくself-relianceの構築およびある種の平行ecosystem設立に向けて投入されようとしている。」と同氏の主張。

米中の制裁関税応酬が早1年、その打撃の大きさというものがあらわされている。

◇米中とも制裁品輸出2兆円減、貿易戦争、双方に打撃−世界の貿易網一変 (7月6日付け 日経 電子版 02:00)
→米国と中国が相互に輸入品へ重い関税をかけ合う貿易戦争に突入してから6日で1年になる旨。第1〜第3弾にわたった追加関税発動から今年4月までの制裁対象品の相手国への輸出額を集計したところ、米中とも適用前から2兆円前後減ったことがわかった旨。米中の関税の応酬は双方に打撃となるだけでなく、サプライチェーン(供給網)の亀裂などを通じて世界経済を揺さぶっている旨。


≪市場実態PickUp≫

【半導体材料の対韓輸出管理強化】

米中摩擦に輪をかける形で、日本政府の韓国に対する半導体材料の輸出規制、そしてホワイト国除外にもっていく動きが大きく表面化したこの1週間であるが、我が国そして韓国からの見方、表し方が以下続いていく。

◇政府、徴用工問題に対抗、半導体材料の対韓輸出規制、ホワイト国からも除外へ (6月30日付け SankeiBiz 13:30)
→政府は、韓国への輸出管理の運用を見直し、テレビやスマートフォンの有機ELディスプレー部分に使われるフッ化ポリイミドや、半導体の製造過程で不可欠なレジストとエッチングガス(高純度フッ化水素)の計3品目の輸出規制を7月4日から強化する旨。いわゆる徴用工訴訟をめぐり、韓国側が関係改善に向けた具体的な対応を示さないことへの事実上の対抗措置。発動されれば、韓国経済に悪影響が生じる可能性がある旨。7月1日に発表する旨。政府は同時に、先端材料などの輸出について、輸出許可の申請が免除されている外為法の優遇制度「ホワイト国」から韓国を除外する旨。

◇韓国への輸出規制を強化、政府発表、韓国は対抗措置も (7月1日付け 日経 電子版 11:30)
→政府は1日、韓国への半導体材料の輸出規制を厳しくすると発表、有機ELに使うフッ化ポリイミドなど3品目について、個別に審査・許可する方式に切り替える旨。今夏中に安全保障上の友好国である「ホワイト国」の指定も削除する旨。
今回の決定は元徴用工訴訟をめぐる韓国への事実上の対抗措置といえる旨。アジアの半導体産業のサプライチェーンを傷つける可能性があるほか、日本が貿易ルールを恣意的に運用していると批判される恐れもある旨。経済産業省は4日、フッ化ポリイミド、半導体製造で使うレジスト(感光材)、エッチングガス(フッ化水素)を対象に輸出ごとに許可・審査を求めるよう改める旨。これまでは企業が包括的な許可を取れば、複数の案件をまとめて円滑に輸出できた旨。

◇South Korean trade official says Japan's export curbs violate WTO rules (7月1日付け Reuters)
→ハイテク材料の韓国への輸出に対する抑制を厳しくする日本の決定は、World Trade Organization(WTO)規則に違反し、ソウルとしては確固として対応していく旨。

日が変わって、論評が熱気を高めている。

◇【社説】韓国企業を狙い撃つ日・米・中、何もしない韓国政府 (7月2日付け 韓国・朝鮮日報)
→日本政府が半導体やスマートフォン、テレビなどの製造に必要な3種類の先端素材について、これらの韓国向け輸出の規制に乗り出した旨。輸出手続き簡素化の対象国である27カ国の「ホワイト国」からも韓国を除外し、輸出のたびに日本政府による承認の手続きを義務づける旨。日本政府は「(韓国との)信頼関係が顕著に損なわれた」との理由を挙げることで、韓国大法院(最高裁に相当)による強制徴用判決で日本企業に賠償を命じ、資産を差し押さえたことへの報復であることを明確にした旨。当初は政府次元での交渉や調整で解決すべき外交問題だったはずだが、これが企業や産業界に直接の打撃をもたらす最悪の状況に直面しつつある旨。

◇【社説】いよいよ始まった日本の経済報復、韓国政府は外交力を総動員して解決に動け (7月2日付け 韓国・中央日報)
→日本政府が半導体およびディスプレー生産に必須の材料3品目の対韓輸出を規制すると発表、経済産業省は今回の措置に対して「日韓間の信頼関係が著しく損なわれた」と説明した旨。韓国大法院の強制徴用賠償判決に伴う報復措置であることを明確にした旨。規制対象であるフッ化ポリイミド、フォトレジスト、高純度フッ化水素は、半導体・テレビ・スマートフォン製造において核心的な品目。韓国はこれら品目の輸出優遇国リストから除外され、契約ごとに最長90日を要する審査を受けることになった。

◇半導体の国際供給に影響も、対韓輸出規制、4日発動 (7月2日付け 日経 電子版 01:31)
→政府は1日、韓国への輸出規制を厳しくするため、半導体材料の審査を厳密にし、安全保障上の友好国の指定も取り消すと発表、韓国政府は対抗措置の検討を表明し、半導体大手SKハイニックスは工場の操業継続への懸念に言及した旨。半導体メモリ市場で5〜7割のシェアを持つ韓国からの出荷が滞れば、世界に影響が広がる可能性がある旨。

韓国も自前開発への投資の動きであるが、時間はどれくらいかかるのか。合わない計算と内輪での疑問視が以下続くところがある。

◇韓国、半導体開発に9百億円投資、日本の輸出規制受け (7月3日付け 共同通信 12:06)
→日本政府による韓国への半導体材料の輸出規制強化を受け、韓国政府が半導体の材料や部品、設備の開発に毎年1兆ウォン(約920億円)規模を集中投資する方針であることが3日、分かった旨。韓国の与党幹部が明らかにした旨。国産化を急ぐ狙いとみられる旨。与党幹部によると、韓国政府は今月中に半導体材料などの競争力強化に向けた詳細な対策を正式に発表する予定。

◇半導体株、対韓規制で明暗、サムスン売られる、米メモリは上昇 (7月3日付け 日経)
→日本政府が半導体製造に欠かせない関連材料の対韓輸出を厳しくする影響を巡り、株式市場が神経質になっている旨。半導体向けに化学素材などを供給するメーカーの株価には下押し圧力がかかっている旨。世界最大の半導体メーカー、韓国サムスン電子株も売られた旨。一方、韓国勢と競合する米メモリ大手の株価は上昇し、明暗が分かれている旨。

◇輸出優遇除外:4カ月で在庫切れなのに韓国政府は中長期計画で対抗 (7月4日付け 韓国・朝鮮日報)
→韓国与党・共に民主党、韓国政府、大統領府は3日、国会で三者協議会を開催し、日本政府による経済報復への対策として「半導体核心素材、部品、製造設備の開発に来年から毎年1兆ウォン(約920億円)を投資する」と発表、わずか4カ月後には核心素材と完成品の在庫が底を突く緊急事態にもかかわらず、少なくとも数年はかかる「中長期計画」しか対策として提示できない旨。

◇日韓企業とも身構え、輸出規制4日に発動 (7月4日付け 日経 電子版 01:30)
→政府が韓国への半導体材料の輸出規制を厳しくする措置が4日から発動され、日韓の企業が対応を急いでいる旨。韓国企業は材料の在庫を集め、日本の素材メーカーは新たな審査の対策に追われる旨。今回の対象品目は日本が高いシェアを握るが、韓国政府は国産化を支援する方針を打ち出した旨。中期的に日本企業の競争力に影響が出る可能性がある旨。

上の株価にもあるが、日韓の対立で、TSMC、マイクロンに利するところとの見方である。

◇韓経:「韓日経済戦争で台湾TSMC、米マイクロンに反射利益」 (7月5日付け 韓国経済新聞/中央日報日本語版 09:02)
→韓国国内の半導体専門家は、日本政府の半導体・ディスプレイ素材輸出規制強化措置以降の韓国政府の対応方式について「安易な現実認識」「反日感情を刺激する無責任な態度」と酷評した旨。韓国経済を支える半導体・ディスプレイ工場の稼働が中断するかもしれないという危機状況を認識していないという指摘。
米マイクロン、台湾TSMCなどライバル企業が反射利益を得るという意見も出てきた旨。ソウル大半導体共同研究所のイ・ジョンホ所長(電気・情報工学部教授)は「日本政府の輸出規制を受けるフォトレジスト(感光剤)は最先端半導体ファウンドリー(受託生産)の露光工程に使われるEUV(極端紫外線露光装備)に必須」とし「分秒を争う技術革新競争で韓国企業が他社に遅れをとらないか懸念される」と述べた旨。

◇半導体素材の国産化率50%…その裏には韓日ノーベル化学賞0:8 (7月5日付け 韓国・中央日報 08:20)
→日本が4日から半導体・ディスプレイ・携帯電話の核心素材に対する輸出規制を本格化した旨。昨年を基準に日本からの3品目の輸入額は約4500億ウォン(約415億円)だが、これによって影響が生じる半導体・ディスプレイ両部門の輸出額は昨年176兆ウォンを超える旨。このため韓国政府は今月中にも1兆ウォン以上を投入する素材・部品・装備競争力強化対策を出す計画。以下の内容項目:
 (1)低い国産化率=素材50%、装備18%
 (2)化学・金属工学の基礎の差…「ノーベル化学賞日本8:韓国0」
 (3)素材開発…日本は大企業、韓国は中小・中堅企業
 (4)政府の国産化計画は後退

◇半導体材料の対韓規制、対象拡大を警戒、日韓企業 (7月5日付け 日経 電子版 01:30)
→日本政府は4日、半導体材料の韓国向け輸出規制を正式に発動、8月末以降は安全保障上、信頼を築く国という指定を外し、経済産業省が指定する案件については新たに許可を取る必要が生じる可能性もある旨。半導体以外の業界にも影響が広がりかねないとして、日本や韓国の産業界では警戒感が強まっている旨。

◇半導体材料の対韓輸出管理強化、日本勢も「不安」拭えず (7月5日付け 日刊工業)
→フッ化水素など3品目の韓国向け輸出の管理が4日、強化された旨。包括許可制度の対象から外れ、契約案件ごとに輸出許可の申請、審査が必要となる旨。1日に突然の発表を受け、情報収集に追われた素材各社も今は粛々と対応している旨。ただ日本勢で寡占状態の品目を対象とするのは難しい日韓関係を表しており、今後の不安は拭えない旨。

7月4日に対韓輸出規制が強化され、金曜5日にかけて韓国向け半導体材料の通関が事実上停止の現時点となっている。

◇韓国向け半導体材料の通関が事実上停止、2日連続で日本当局の許可出ず (7月5日付け 韓国・聯合ニュース)
→日本政府が半導体やディスプレイの材料3品目の対韓輸出規制を4日から強化したことについて、韓国の産業通商資源部関係者は5日、「きのうから日本が輸出許可を出していないことが確認された」として、「このため、日本から輸入していた該当品目が国内に入ってこなくなっている」と明らかにした旨。


【Applied MaterialsのKokusai Electric買収】

日立国際電気から分社化した半導体製造装置メーカー、Kokusai Electric社をApplied Materials社が買収、論評含みで以下業界各紙の取り上げとなっている。

◇Applied Bids $2.2B for Kokusai-Deal adds ~10% in revenues in dicey memory market (7月1日付け EE Times)
→Applied Materials社が、Kokusai Electric社買収に$2.2 billionの入札、capital装置分野での現状の保守的な買収toneに沿った取引の旨。
DRAMおよびNANDベンダーが主に用いているKokusaiのvertical diffusion furnaces(鉛直拡散炉)が、Appliedの売上げを約10%高める旨。

◇Applied Materials to buy Japanese rival in $2.2B deal (7月1日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Applied Materials(Santa Clara)が、日本のライバル、Kokusai Electricを$2.2 billionで買収、private equity firm、KKRからのcashの旨。このニュースでApplied Materialsの株価は本日早い取引で4%を上回る上げ幅の旨。このニュースを最初に報じたNikkei Asian Reviewによると、該取引でApplied Materialsの半導体装置市場シェアが18%から20%を上回っていく、とGartnerアナリストが評価している旨。

◇Applied Buys Kokusai For $2.2B-Applied expands its batch processing equipment line with the deal. (7月1日付け Semiconductor Engineering)

◇Applied Materials to Acquire Kokusai Electric (7月1日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)

◇Applied Materials to buy Japan's Kokusai to bolster memory chip business (7月1日付け Reuters)

◇米アプライド、旧日立系の半導体装置を買収、2500億円 (7月1日付け 日経 電子版)
→半導体製造装置で世界首位の米アプライドマテリアルズ(AMAT)は、旧日立製作所系の装置メーカー、KOKUSAI ELECTRIC(東京・千代田)を買収する旨。買収額は約2500億円になるもよう。次世代通信規格「5G」時代をにらみ、自動車や産業機械など幅広い分野で必要になるより高度な半導体の開発を目指す旨。国際競争力の高い日本の装置メーカーを巻き込んで世界的な再編機運が高まりそうな旨。

◇米アプライドCEO「技術革新早める」、日立系買収で (7月2日付け 日経 電子版)
→半導体製造装置世界最大手の米アプライドマテリアルズ(AMAT)は1日、旧日立製作所系の装置メーカー、KOKUSAI ELECTRIC(東京・千代田)を買収すると正式発表、ゲイリー・ディッカーソン(Gary Dickerson)最高経営責任者(CEO)らは電話会見を開き、KOKUSAIの買収の意義について「技術革新の速度を早め、株主価値を大きく高められる」と強調した旨。

◇米アプライド、旧日立系を買収、積極策、東エレクに先手、合併破談後、再編に温度差、半導体産業、規模が鍵 (7月3日付け 日経産業)
→半導体製造装置世界最大手の米アプライドマテリアルズ(AMAT)が同業で旧日立製作所系のKOKUSAI ELECTRIC(東京・千代田)の買収を発表、AMATは日米欧の4強が競う世界市場で首位を固める旨。業界4位の東京エレクトロンは4年前にAMATとの合併が破談になったが、たもとを分かった両社の針路は徐々に分かれてきた旨。

【TsinghuaのDRAM参入】

中国の国有企業、Tsinghua Unigroup(清華紫光集団)が、新しいDRAM企業を設立している。中国のDRAM構築に向けて米国との軋轢の経緯がある中、以下に示すCharles Kau氏をCEOとする取り組みである。

◇Tsinghua to Enter the DRAM Business (7月1日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→TrendForceの1部門、DRAMeXchange発。Tsinghua Unigroupの6月30日の公式ステートメントは、新たに構成されたDRAMグループを披露、Ministry of Industry and Information Technologyの前director、Diao Shijing氏が該グループのChairmanそしてCharles Kao氏がCEOの旨。米国によりJHICCがEntity Listに載せられた後、DRAM製品の開発独立への途上にある中国にとってこれは新しいmilestoneとなる旨。
 (注) Charles Kau氏…Inotera Memoriesのchairmanで前Nanya Technologyのpresident。また、Yangtze Memory Technologies(YMTC)のchairman代理でTsinghua Unigroupのexecutive VP。

◇Amid U.S. tech squeeze, China's Tsinghua Unigroup forms new DRAM chip unit-Tsinghua Unigroup sets up DRAM business (7月1日付け Reuters)
→Tsinghua Unigroupが、中国-米国貿易戦争の背景に対抗、DRAM事業部門を設立、該国有の半導体メーカーをアメリカおよび韓国の各社に対する競争力を高めていく期待の動き。Samsung Electronics, SK HynixおよびMicron Technology合わせて、世界DRAM市場の95%を上回る占有の旨。

◇China's Tsinghua Launches DRAM Unit (7月2日付け EE Times)

【BroadcomのM&A路線】

Broadcomが、Qualcomm買収失敗の経緯からか半導体メーカーからソフトウェアメーカーにM&A対象の切り換えを図っている動きである。セキュリティソフトウェアのSymantec社に照準が当てられるとともに第2候補も挙げられている。

◇Broadcom says it's shifting its M&A focus away from chip companies-Broadcom's M&A shifts to infrastructure software (7月2日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)

→ライバルの半導体メーカー、Qualcomm社の$117 billion敵対的買収の試みをTrump政権により阻止されたBroadcom社(San Jose)が、こんどは割高のQualcommのような独立半導体メーカー買収にはもはや興味なく、インフラソフトウェア領域における買収を求めていく計画の旨。

◇Symantec shares jump on Broadcom buyout rumors (7月3日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→セキュリティソフトウェア会社、Symantec社(Mountain View)の株価が水曜3日13.5%を上回る上げで締め、複数のメディアoutletsが、同社の買収協議をBroadcom社が進めており、たぶんに$15 billionを上回る価格と報じた後の旨。

◇Broadcom Is in Advanced Talks to Acquire Symantec-Broadcom reportedly poised to acquire Symantec (7月3日付け Bloomberg)

◇Broadcom in advanced talks to buy Symantec: sources (7月3日付け Reuters)

◇Report: Broadcom is also eyeing Tibco Software for a possible acquisition (7月5日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→3人のunnamed筋引用、CNBC発。飽くことを知らないM&A案件における仕掛人で知られる半導体大手、Broadcom社(San Jose)のCEO、Hock Tan氏が、今年multibillion-dollar enterpriseソフトウェア買収を交渉したいとしており、現在Tibco Software(Palo Alto)をチームが評価している旨。
Broadcomの最初の選択は、セキュリティソフトウェアメーカー、Symantec社(Mountain View)の買収になろうが、実現しない場合にTibcoも評価している旨。

【インテルの特許競売】

収益化の明確な道筋が見えないとしてスマートフォン向け5Gモデム半導体製造から撤退したインテルであるが、該領域関連の特許を次の通り競売にかけている。

◇Report: Intel is auctioning off 8,500 patents from its failed 5G mobile modem business-Report: Intel to put 8,500 patents up for auction (7月1日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→IP業界publication、IAM発。Intel社(Santa Clara)が、特許約8,500件を競売にかけており、8月始めまでに拘束力のない入札を得る期待の旨。該ポートフォリオは次の内訳:
 約6,000件…3G, 4Gおよび5Gモバイルmodem標準
 約1,700件…ワイヤレスimplementation技術
 約 500件…半導体およびelectronics業界にわたって“broad applicability”がある内容


≪グローバル雑学王−574≫

元陸上自衛隊陸将の筆者ならではの目で、米中経済戦争について米国がいかに戦っているのか、

『軍事的視点で読み解く 米中経済戦争』
 (福山 隆 著:ワニブックス「PLUS」新書) …2019年3月25日 初版発行

より4回にわたって分析&見方が展開されていく3回目である。今回は外交戦に注目、北朝鮮、台湾およびインドを巡る米中の綱引きが筆者の視点でポイントを突いて展開されていく。本書発行後の変化として、米朝ハノイ会談物別れ、中朝の相互交流ときて、そしてこの6月30日にはトランプ大統領が訪問先の韓国と北朝鮮の軍事境界線がある板門店で、北朝鮮の金正恩委員長を急遽呼び寄せる形で3回目となる会談を行い、膠着状態にある非核化交渉の再開で合意したばかりである。これからどう動いていくか、米中経済戦争を巡る国際情勢の中核として以下の外交戦のアップデートを要するところである。


第四章 米国は対中経済戦争をいかに戦っているのか …4分の3
〓対中経済戦争の実行状況 ――前回に続く

□外交戦
・米国外交の第一優先課題は、同盟国との外交関係の維持強化
 →トランプ政権は、「アメリカ・ファースト」のスローガン
 →同盟国との関係はこれまでの政権に比べて、劣化する懸念
・米国は、中国との世界覇権争いを念頭に、世界規模で活発に外交戦を実施
 →以下、外交戦の焦点となっている北朝鮮、台湾およびインドを巡る米中の綱引きについて

1)北朝鮮の核ミサイル開発問題を具にした米中の綱引き
・米国は、近年急速に台頭する中国が太平洋正面に進出するのを封じ込めようとしている
 →拠点としては、日本、台湾、フィリピン、ベトナム、オーストラリアなどに加え韓国(朝鮮半島)もその重要な一翼
・米国は、その極東戦略にとって、日本をキーストーン(要石)と位置付け
 →米軍は東アジアから中東に至るまで戦力を投射可能に
 →米国は、朝鮮半島全体(韓国のみならず北朝鮮も)を日本防衛のバッファーゾーンとして、中国やロシアが完全に支配することは絶対に阻止しなければならない、と考えているに違いない
・中国が、第1・第2列島線を突破するためには、日本よりも先に、朝鮮半島全体をその影響下に収めなければならない
 →習近平政権が、手練手管で韓国の朴槿恵前大統領や文在寅大統領を籠絡しようとしている
・朝鮮半島(北朝鮮・韓国)を巡る米中の綱引き
 →米中経済戦争以前から行われていたが、今や、米中経済戦争にしっかりと組み込まれた
・北朝鮮の核ミサイル問題を含む朝鮮半島問題の本質は、実は「米中による覇権争い」
 →筆者は、米中経済戦争が始まったことにより、北朝鮮の核ミサイル開発問題が「変質した」と考えている
・トランプは、米中経済戦争以降は、北朝鮮を「中国に対するカード」に使おうとしているのではないか
・米国は、核ミサイルの破棄よりも、北朝鮮との融和・信頼関係の確立を優先・重視し始めたのではないか
 →北朝鮮を"属国"と見なす中国を揺さぶるため
 →米国は、北朝鮮に接近することで、中国に対する「揺さぶり策」、さらには「中朝離間策」の道具にしようと考え始めたのではないか
 →トランプとしては、北朝鮮を少しでも米国の方に引き寄せ、米中経済戦争のカードに使えれば、満足するのかも
・日本は、受け入れ難いところではあるが、「北朝鮮の核ミサイル保有」を前提とした、抜本的な安全保障政策(非核三原則の見直しなど)を模索・構築すべき時に来ているのでは
・一方の中国は、北朝鮮のみならず韓国をも自陣営に取り込み、朝鮮半島全体を支配下に置くことを目指している
 →中国は、沖縄を日本から離脱させる策をも実行しており、北東アジア全体を支配下に入れる野望を持っているのは確実
 →中国は自国の利益のために、今後もしっかりと北朝鮮の核ミサイル開発問題にコミットし、金正恩を自陣営に繋ぎ止める意向
・トランプの「北朝鮮を使った中国揺さぶり策」が功を奏し始めた感

2)米国による台湾へのテコ入れ
・ロシアが我が国の北方領土に拘るのは、米国に対する報復核戦力を維持するため
 →「戦略核の3本柱」の1つ、オホーツク海に遊弋する弾道弾搭載原子力潜水艦を米国の攻撃から守るため
・中国にとって、オホーツク海に相当するのが南シナ海
 →南シナ海には水深3000〜4000mで弾道弾搭載原子力潜水艦を配備するのに適した海域が幾つか
 →中国としては、核戦力バランスにおいて米国と肩を並べることが可能
・中国にとって、南シナ海は「一帯一路」構想にとっても重要
 →中国の狙いを阻止する上で最大の貢献をしているのが、南シナ海の北側から睨みを利かしている台湾の存在
・米国は南シナ海を中国の支配に委ねることは絶対にあり得ない
 →米国にとって、海洋支配、特に米中覇権争いの焦点となっている南シナ海をコントロールする上で、台湾は絶対不可欠な価値を有する地勢
・中国にとっても、太平洋、インド洋に進出するためには、台湾の統一は不可欠な戦略的課題
  →台湾統一は、中国共産党政権にとって最優先の政治課題――核心的利益――でも
・米国にとっては、経済戦争において、中国との交渉を有利に運ぶための切り札となるばかりか、武器の主要輸出先としても台湾の存在価値は高まっている
・このところ加速している、米国による台湾へのテコ入れ
 →米海軍は、台湾海峡通過を繰り返す姿勢を見せている
・2018年7月、米国製の軍用ヘリコプター「アパッチ」29機を実戦配備
 →「戦車キラー」とも呼ばれ、中国軍が台湾に侵攻した場合の防衛を担う
・トランプ政権は2018年3月に、米国と台湾との間であらゆるレベルの高官の相互往来を解禁する台湾旅行法を成立させた
 →2018年5月、「台米国防産業フォーラム」が初めて開催、米台の協力推進について議論
・2019年1月15日、米国防情報局(米国防総省の情報機関)が中国の軍事力に関する報告書
 →台湾侵攻への警戒感をあらわに
・米中の経済戦争が激しさを増す中で、トランプが台湾を交渉カードに使うのは当然の成り行き
・一方、中国にとって、台湾は譲歩できない「核心的利益」であり、最も敏感な問題
 →中国は、中南米において「台湾国交樹立国」の切り崩しを推進
 →現在台湾と国交があるのは、17ヵ国のみ、そのほとんどが中南米の国々や太平洋の小さな途上国
・2018年10月、ホンジュラスからキャラバン約6500人が移民を目的に、米国に向けて移動
 →背後には中国の謀略が働いているのでは、と勘繰る向きも
 →今後、中南米においても米中の角逐が激しくなる可能性
 →トランプは中国が中南米に勢力を拡張することは絶対に許さないはず
・中国は台湾の取り込みに一瞬たりとも手を緩めることはない
 →2018年11月の台湾統一地方選挙では、蔡英文総統が党主席を辞任する事態に
 →この選挙にも中国の謀略が一定の影響を及ぼしたのは確か

3)インドをめぐる米中の駆け引き
・米中の覇権争いにとってインドは極めて重要な地政学的な位置
 →米国にとって、中国包囲環の重要な支柱として活用できる
 →インドは、中国の「一帯一路」戦略を遮断する位置
・インドの人口は2022年には中国を抜いて世界最大となり、経済的に見れば今世紀後半には世界一になるとも予測
 →米中が覇権争いをする上で、インドを取り込むことは極めて重要

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