1月販売高、30ヶ月ぶり前年比減、3ヶ月連続前月比減、先行き要注視
米国・Semiconductor Industry Association(SIA)より月次世界半導体販売高の発表が行われ、2019年のスタートの1月が$35.5 billionで、前月比7.2%減、前年同月比5.7%減となっている。前月比は昨年11月から3ヶ月連続のマイナス、前年同月比の方は2016年7月以来30ヶ月ぶりのマイナスである。この"スーパーサイクル"とまで呼ばれた熱い活況の期間の月次ピークは2018年10月の$41.8 billionであり、それから減少に転じて特に12月、1月と幅が拡大している。今年後半からの盛り返しを期待する見方もあるが、米中貿易戦争で市場の減速基調が強まる中、刻々先行きに注視を要する現時点である。
≪1月の世界半導体販売高≫
米国・SIAからの発表内容、次の通りである。
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◯1月のグローバル半導体販売高が前年比5.7%減−前月比はすべての地域にわたって減少、全体では7.2%減 …3月4日付け SIA/Latest News
半導体製造、設計および研究の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2019年1月の世界半導体販売高が$35.5 billionとなり、前月、2018年12月の$38.2 billionを7.2%下回り、前年同月、2018年1月の$37.6 billionから5.7%減と発表した。月次販売高はWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。
「2019年のグローバル半導体販売高は鈍い出だしとなり、1月の販売高は前年比で2016年7月以来の減少、前月比では主要製品カテゴリーおよび地域市場のすべてにわたって減少した。」と、SIAのpresident and CEO、John Neuffer氏は言う。「ここ3年販売高が最高を更新、2018年に$469 billionに達して、グローバル市場は販売高鈍化の周期に当たっていると明らかに思われる。しかしながら長期的な展望は依然有望であり、一連のconsumer製品およびartificial intelligence(AI), virtual reality(VR), Internet of Things(IoT), および5Gそして次世代通信ネットワークスなど今後の成長driversにおける半導体比率がずっと高まっている。」
2019年1月販売高の地域別では、前年同月比でEurope(+0.2%)は僅かに増加したが、Americas(-15.3%), Asia Pacific/All Other(-3.8%), China(-3.2%),およびJapan(-1.5%)は減少した。前月比では次の通りすべての地域市場にわたって減少となった。Europe(-1.5%), Asia Pacific/All Other(-3.6%), Japan(-4.7%), China(-8.5%), およびAmericas(-13.0%)
Europe | 前年同月比 +0.2%/ | 前月比 -1.5% |
Americas | -15.3%/ | -13.0% |
Asia Pacific/All Othe | -3.8%/ | -3.6% |
China | -3.2%/ | -8.5% |
Japan | -1.5%/ | -4.7% |
【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域 | Jan 2018 | Dec 2018 | Jan 2019 | 前年同月比 | 前月比 |
======== | |||||
Americas | 8.63 | 8.40 | 7.31 | -15.3 | -13.0 |
Europe | 3.41 | 3.47 | 3.41 | 0.2 | -1.5 |
Japan | 3.21 | 3.32 | 3.16 | -1.5 | -4.7 |
China | 12.01 | 12.71 | 11.63 | -3.2 | -8.5 |
Asia Pacific/All Other | 10.35 | 10.33 | 9.96 | -3.8 | -3.6 |
計 | $37.60 B | $38.22 B | $35.47 B | -5.7 % | -7.2 % |
--------------------------------------
市場地域 | 8-10月平均 | 11- 1月平均 | change |
Americas | 9.85 | 7.31 | -25.8 |
Europe | 3.64 | 3.41 | -6.1 |
Japan | 3.41 | 3.16 | -7.3 |
China | 14.51 | 11.63 | -19.9 |
Asia Pacific/All Other | 10.71 | 9.96 | -7.0 |
$42.11 B | $35.47 B | -15.8 % |
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※1月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒ttps://www.semiconductors.org/wp-content/uploads/2019/03/January-2019-GSR-table-and-graph-for-press-release.pdf
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これを受けた業界各紙の反応、取り上げである。史上最高の半導体販売高、$468.8 billionを記録した2018年であるだけに、急な業界低迷の到来の受け取りである。
◇Chip Market Downturn Begins in Earnest-Semiconductor market downturn is here (3月5日付け EE Times)
→3年の熱い活況の期間の後、半導体業界の低迷が到来の旨。World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) programは、1月のmicrochips販売高が$35.5 billionで、前年同月比5.7%減、半導体販売高$468.8 billionで業界最高の年を締め括った2018年の12月から7.2%減、と発表の旨。
◇Global chip sales decrease in January, says SIA (3月6日付け DIGITIMES)
急激な市場の足踏み状態への移行変化が、30ヶ月ぶりの前年水準割り込みにつながる見方が以下の通りである。
◇世界半導体30カ月ぶり減、データ「特需」失速 (3月8日付け 日経 電子版)
→デジタル経済の成長を牽引してきた半導体市場が急減速している旨。1月の世界市場は30カ月ぶりに前年水準を割り込んだ旨。米ネット大手のデータセンター投資や中国の自動化投資ラッシュなど、近年の需要急拡大を支えた立役者がそろって足踏みしているのが理由。市場規模が年50兆円に達する半導体産業は、技術革新や経済波及の要を担うだけに、下向き始めた市場の先行きに注目が集まる旨。
2016年後半から盛り返して急激な増勢そして高みを保って"スーパーサイクル"を体現した世界半導体販売高の推移が、次の通りとなる。この1月で前年同月比が2016年7月以来のこと、30ヶ月ぶりにマイナスとなった経過である。2019年1月の販売高は、2017年9月と同じ$35 billion台に戻ったという感じ方もある。
販売高 | 前年同月比 | 前月比 | 販売高累計 | |
(月初SIA発表) | ||||
2016年 7月 | $27.08 B | -2.8 % | 2.6 % | |
2016年 8月 | $28.03 B | 0.5 % | 3.5 % | |
2016年 9月 | $29.43 B | 3.6 % | 4.2 % | |
2016年10月 | $30.45 B | 5.1 % | 3.4 % | |
2016年11月 | $31.03 B | 7.4 % | 2.0 % | |
2016年12月 | $31.01 B | 12.3 % | 0.0 % | $334.2 B |
2017年 1月 | $30.63 B | 13.9 % | -1.2 % | |
2017年 2月 | $30.39 B | 16.5 % | -0.8 % | |
2017年 3月 | $30.88 B | 18.1 % | 1.6 % | |
2017年 4月 | $31.30 B | 20.9 % | 1.3 % | |
2017年 5月 | $31.93 B | 22.6 % | 1.9 % | |
2017年 6月 | $32.64 B | 23.7 % | 2.0 % | |
2017年 7月 | $33.65 B | 24.0 % | 3.1 % | |
2017年 8月 | $34.96 B | 23.9 % | 4.0 % | |
2017年 9月 | $35.95 B | 22.2 % | 2.8 % | |
2017年10月 | $37.09 B | 21.9 % | 3.2 % | |
2017年11月 | $37.69 B | 21.5 % | 1.6 % | |
2017年12月 | $37.99 B | 22.5 % | 0.8 % | $405.1 B |
2018年 1月 | $37.59 B | 22.7 % | -1.0 % | |
2018年 2月 | $36.75 B | 21.0 % | -2.2 % | |
2018年 3月 | $37.02 B | 20.0 % | 0.7 % | |
2018年 4月 | $37.59 B | 20.2 % | 1.4 % | |
2018年 5月 | $38.72 B | 21.0 % | 3.0 % | |
2018年 6月 | $39.31 B | 20.5 % | 1.5 % | |
2018年 7月 | $39.49 B | 17.4 % | 0.4 % | |
2018年 8月 | $40.16 B | 14.9 % | 1.7 % | |
2018年 9月 | $40.91 B | 13.8 % | 2.0 % | |
2018年10月 | $41.81 B | 12.7 % | 1.0 % | |
2018年11月 | $41.37 B | 9.8 % | -1.1 % | |
2018年12月 | $38.22 B | 0.6 % | -7.0 % | $468.94 B |
2019年 1月 | $35.47 B | -5.7 % | -7.2 % |
このような半導体販売高の急激な変動に関連する動きを見ていくと、まず、メモリ半導体が大きく引っ張る韓国における1月の輸出について19ヶ月ぶりの低水準となっている。
◇Chips' percentage of total exports hits 19-month low in Jan.-S. Korea's Jan. chip exports were $7.42B, a 19-month low (3月4日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→韓国・trade ministryおよびKorea Customs Serviceの月曜4日発データ。1月の韓国の海外向け出荷の中の半導体輸出の比率が、需要および価格低下の渦中、19ヶ月ぶりの低水準の旨。1月の半導体輸出が前年比23.2%と急落、同国輸出全体の16%の旨。該比率は、2017年7月に記録した15.7%以来最低の旨。半導体輸出は、昨年12月に18.3%に落ちて以降、20%を下回っている旨。アジアの4大経済圏の1月の総輸出が、前年比5.9%減の$46.33 billion。
台湾のファウンドリー・トップ3、TSMC、UMCおよびVanguardの2019年第一四半期売上げ合計が、前四半期比23.4%減、前年同期比17%減と大きく落ち込む見込みである。
◇Taiwan top-3 foundries to see combined revenues fall in 1Q19, says Digitimes Research-Top Taiwan foundries to see Q1 revenue fall 17% to $8.27B (3月5日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Research発。台湾のファウンドリー・トップ3、TSMC、UMCおよびVanguard International Semiconductor(VIS)の2019年第一四半期売上げ合計が$8.27 billion、前四半期比23.4%減、前年同期比17%減の見込み。スマートフォン用半導体発注の季節的低下、新型iPhonesの売れ行き低迷およびファブレス半導体メーカーの備蓄構築を遠ざける不都合な市場状態が、これらファウンドリーの該四半期売上げを引き下げている旨。
今年後半に生産拡大が見込めるものとして、層数がさらに格上げの96-層3D NANDフラッシュメモリが挙げられている。実際の市場での位置づけを見守ることになる。
◇Chipmakers to scale up 96-layer 3D NAND flash output in 2Q19-96-layer 3D NAND flash output to ramp up in Q2 (3月5日付け DIGITIMES)
→市場観測筋発。96-層3D NANDフラッシュメモリデバイスのベンダーが、第二四半期の間に該メモリ半導体の生産を高める見込み、市場条件およびpricingにおいてかなり後まで残る影響をもちそうな動きの旨。NANDフラッシュの価格は昨年来低下してきており、大方は64-層および72-層3D NANDフラッシュのoutput増大による、と特に言及の旨。
さて、注目のDRAM価格であるが、PC DRAMsが2019年第一四半期の間に約30%の落ち込みと2011年以来となる見通し、‘Freefall’という表現も見られており、ここでも市場需要との関係推移に刻々目が離せないところである。
◇DRAM Prices in ‘Freefall’ (3月7日付け EE Times)
→TrendForce(台北)の1部門、DRAMeXchange発。2018年第四四半期のDRAM売上げ全体が、前四半期比18.3%減、価格およびbit salesともに低下の旨。
◇Servers key to reversing downward trend in DRAM prices-Sources: Server demand could arrest free fall in DRAM prices (3月7日付け DIGITIMES)
→台湾のメモリモジュールメーカー筋発。DRAMsが第二四半期にかけて供給過剰になっていく一方、年央でのサーバ需要急増でDRAM pricingの低落継続から守られる可能性の旨。DRAMeXchangeによると、第一四半期の間のPC DRAMs価格は約30%落ち込む見通し、前回予測の25%を上回り、2011年以降最大の季節的落ち込みの旨。
◇DRAM market is in freefall, says DRAMeXchange (3月7日付け New Electronics)
メモリ市場の急激な後退から、早くも今年の半導体メーカー・ランキングについて次の見方である。
◇Intel Expected to Regain Top Chipseller Ranking-Memory price slump will help Intel regain the chip crown (3月8日付け EE Times)
→1)IC Insightsの見通し。メモリ市場における急激な値下がりから、Samsungの販売高が昨年に比べて20%落ち込む見込み、2019年の半導体メーカーのトップとしてIntelが再び返り咲く旨。
2)IC Insightsは、Samsung Electronicsのmicrochipの売上げがメモリ価格の低下から20%減ると見ており、Intelが半導体販売高の世界のリーダーに戻る転換の旨。次の販売高の見方:
2018年 | 2019年 | ||
Samsung Electronics | $75.9 billion | 約$60.7 billion | |
Intel | $70.8 billion | 約$71.5 billion |
◇Intel could regain crown-Intel is on track to regain its No.1 slot as the world’s largest chip maker, says IC Insights. (3月8日付け Electronics Weekly (UK))
≪市場実態PickUp≫
【米中摩擦関係】
27日前後の米中首脳会談に向けて、追加関税の引き下げの可能性を示して一致点を見い出す駆け引きが激しくなっている。以下にTrump大統領の懸念の後押しが見てとれるところがある。
◇米中貿易協議、追加関税の引き下げも議論、米報道 (3月4日付け 日経 電子版)
→米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は3日、米中両政府が貿易協議で追加関税の引き下げを現在議論していると報じた旨。トランプ大統領は米国産の農産品などへの関税削減を求める一方、交渉が妥結した場合に米国が課す関税を下げる可能性を示唆してきた旨。27日前後に開く首脳会談に向けて駆け引きが激しくなっている旨。
◇Trump Pushes China Trade Deal to Boost Markets as 2020 Heats Up-Trump makes push for China deal (3月6日付け Bloomberg)
→Donald Trump大統領が米国交渉関係者に対し中国との貿易取引をまもなく完了するよう推進、国際舞台での大きな勝利および再選campaignに向けて株式市場の盛り上がりを必要とする懸念の旨。
このような中で中国では第13期全国人民代表大会(全人代)が開幕。今年のGDP成長率目標を「6〜6.5%」と、下げられている。
◇中国、2019年の成長目標6〜6.5%に下げ、全人代が開幕 (3月5日付け 日経 電子版)
→中国の第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第2回会議が5日午前、北京の人民大会堂で開幕した、李克強(リー・クォーチャン)首相は所信表明にあたる政府活動報告で、2019年の経済成長率の目標を「6〜6.5%」にすると表明、2018年の「6.5%前後」から2年ぶりに下げた旨。米国との貿易戦争を踏まえ、財政支出の拡大を柱にした大規模な景気対策を打ち出した旨。
一方の米国、2018年の貿易統計が発表され、赤字が12年ぶりに過去最大を更新、中国に対する赤字が約12%増となっている。
◇U.S. Trade Gap Surged to $621 Billion in 2018, 10-Year High-Trade deficit grows to decade high (3月6日付け Bloomberg)
→米国商務省発。2018年の米国海外貿易imbalanceが$68.8 billionに達し、ここ10年で最高、中国との製品貿易赤字が昨年約12%増。
◇米貿易赤字が過去最大、2018年8787億ドル (3月6日付け 日経 電子版)
→米商務省が6日発表した2018年の貿易統計(通関ベース)は、モノの赤字が前年比10.4%増の8787億200万ドル(約98兆4千億円)となり、2006年以来12年ぶりに過去最大を更新した旨。トランプ大統領は赤字削減へ中国など各国・地域の製品に追加関税を課したが、堅調な米景気が輸入を押し上げた旨。看板公約が不発となったトランプ氏は貿易相手国に赤字縮小を迫り続けそうな旨。
個々にも米中摩擦の影響が押し寄せており、セラミックコンデンサの価格の落ち込みである。
◇MLCC prices falling-Report: MLCC prices are in a steep decline this year (3月4日付け DIGITIMES)
→業界筋を引用、TechNews of Taiwan発。multilayer ceramic capacitors(MLCCs)の価格が、米中貿易戦争から今年約25%低下する旨。MLCCベンダーの1つ、Yageo(台北)の今年これまでの生産稼働率が30%と低迷の旨。
中国における自動車や工作機械など需要の想定外の落ち込みから、ルネサスエレクトロニクスが以下に示す異例の生産停止に踏み切っている。市場の変化にいっそう敏感にならざるを得ない状況をあらわしている。
◇ルネサス、国内6工場を2カ月停止、中国需要減で在庫調整 (3月6日付け 日経 電子版)
→ルネサスエレクトロニクスが国内外13工場で生産停止に踏み切る旨。車載向け半導体など国内の主要6工場は最大2カ月という異例の長期間になる旨。海外4工場でも数週間、操業を止める方針。2019年度の生産は2018年度比で1割超減る見通し。中国で自動車や工作機械向けの需要が想定外に減っており、減産により在庫水準を適正化する旨。ルネサスは国内9カ所、中国やマレーシアなど海外に5カ所の計14工場を持ち、このうち13工場で一時的な稼働停止期間を設ける旨。
【ファーウェイ関連】
Huaweiが、米国連邦機関の同社テレコム機器使用を禁止する米国政府の決定に対して、米国政府を相手取った訴訟の準備を進めている。
◇Huawei said to be preparing to sue U.S. government: source (3月4日付け Reuters)
→本件事情通筋発。中国のテレコム機器メーカー、Huaweiが、防衛法案に関連する根拠で木曜7日に米国政府を相手取った訴訟を発表予定の旨。
◇Huawei Said to Be Preparing to Sue the U.S. Government-Sources: Huawei to take US government to court over ban (3月4日付け The New York Times)
→Huaweiが、米国連邦機関のHuaweiテレコム機器使用を禁止する米国政府の決定に対して、米国を相手取って法的手続きを始める予定の旨。該訴訟は、Huaweiの米国operationsがあるEastern District of Texasで今週後半出される可能性の旨。
◇ファーウェイ、米政府を提訴へ、米紙報道 (3月5日付け 日経 電子版)
→米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は4日、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)が米拠点を置くテキサス州の裁判所で米政府を提訴する準備を進めていると報じた旨。関係者によると、裁判もなく米政府機関での同社製品の使用を禁止したことは不当だと訴える方針。今週後半にも公表する可能性がある旨。
同紙の報道によるとファーウェイ側は、同社や中興通訊(ZTE)など中国のハイテク産業5社などへの締め付けを大幅に強化した「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」の一部に異議を申し立てる方針。裁判もなく特定の企業や個人に制裁を科す法律は米憲法に違反すると主張する可能性が高い旨。
予告通り、木曜7日に以下の通り提訴手続きが行われている。
◇Huawei fights back against U.S. blackout with Texas lawsuit-Huawei sues US government over federal ban (3月7日付け Reuters)
→中国・Huawei Technologiesが、米国政府が同社の米国におけるビジネスを違法に制限しているとしてTexas連邦裁に提訴、該訴訟は、連邦機関およびそのcontractorsがHuaweiの装置%サービスを購入するのを禁ずるSection 889 of the National Defense Authorization Actに異議を唱えている旨。
◇Huawei Sues U.S. After Congress Bans Government Purchase Of Its Equipment-Purchasing ban prompts Huawei lawsuit (3月7日付け National Public Radio)
◇ファーウェイが米政府提訴、製品排除「米憲法違反」 (3月7日付け 日経 電子版)
→中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)は7日、同社など一部の中国企業の製品を米政府機関が調達することを禁じる「2019年度米国防権限法」が米憲法違反だとして、テキサス州の裁判所で米政府を提訴したと発表した旨。
一方、Huaweiは、BrusselsにCyber Security Transparency Centerを新設、European Unionとの緊密化を図っている。
◇Huawei calls for common cybersecurity standards amidst concerns-Huawei wants common cybersecurity standards (3月5日付け Reuters)
→HuaweiのCEO、Ken Hu氏が、欧州でのGeneral Data Protection Regulationと同様のuniversal cybersecurity標準構築に向けて、European CommissionのディジタルCEO、Andrus Ansip氏と会い、各国政府、テレコム業界およびregulatorsに対しcybersecurity標準の共通一式を働きかけた旨。
◇Huawei Pitches Alternative Reality (3月6日付け EE Times)
→EUの中枢部、BrusselsにおけるHuaweiの真新しいCyber Security Transparency Centerの火曜5日の公式openingについて。
今週は、Shenzhen(深セン)での米国政府提訴、そして上記のBrusselsでのcybersecurity関係と、2大メディアイベントとなっている。
◇Huawei Sues the United States Government-Huawei's growing confidence in winning the argument in the court of public opinion was palatable in two big media events this week - one in Brussels and another in Shenzhen. (3月8日付け EE Times India)
その他Huawei関連の動きとして、調達網の混乱防止に向けて同社は日本のメーカーに対してスマホ部品の供給踏み上げを要請している。
◇ファーウェイ、スマホ部品の供給増要請、日本企業に (3月6日付け 日経 電子版)
→中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)がスマートフォン部品を製造する日本の主要メーカー(村田製作所、ローム、京セラ、など)に対し、供給の積み増しを求めていることが分かった旨。一部企業への発注は通常の2倍程度と異例の規模になる旨。米政府が中国企業への圧力を強めるなか、在庫を増やし調達網の断絶を防ぐ狙いもあるとみられる旨。
◇Huawei asks Japanese suppliers to ship more smartphone components: Nikkei (3月6日付け Reuters)
米国が関係各国にHuawei製品排除を働きかけているが、ドイツ政府は「5G」構築に向けてこの排除を明示しない方針を決めている。
◇ファーウェイ排除、5Gで明示せず、独政府 (3月8日付け 日経 電子版)
→ドイツ政府は7日、次世代通信規格「5G」の通信網構築に向けた基準で、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)製品の排除を明示しない方針を決めた旨。米国政府は同盟国に同社製品の排除を呼びかけているが、名指しで採用を禁じる根拠に欠けると判断したとみられる旨。ただ、5G通信網に用いる機器には従来より高い安全性を求めるともしており、ドイツの通信事業者がファーウェイ製品を実際に採用するかは不透明の旨。
【Globalfoundries関連】
Globalfoundriesが、台湾・Vanguardへのシンガポールのfab売却に続いて、もう1つ元々Charteredのやはりシンガポールのfabを売ろうとしている、との噂。こんどはSamsung、中国メーカーが取り沙汰されている。
◇Fresh rumors emerge about Globalfoundries exit (3月5日付け DIGITIMES)
→Globalfoundriesがまた別のシンガポールのfab売却を図っているという新たな噂が半導体製造業界を駆け巡っており、12-インチの模様、同社がTampinesのFab 3E売却について2019年始めに締結した取引に続く旨。
Fab 3E売却は、同業ファウンドリーのVanguard International Semiconductor(VIS)に$236 millionで売却、2019年12月31日に完了予定。
該噂によると、GlobalfoundriesはWoodlands, SingaporeにあるFab 7の買い手を探しており、該拠点は元々Chartered Semiconductorがもっていた12-インチfab。該憶測によると、third-party投資ファンドを通してSamsungおよび中国の半導体メーカーが可能性ある買い手の旨。
もう1つ、GlobalFoundriesがレーザphotonic半導体の製造でMACOMと連携している。
◇MACOM and GloFo tie up for photonics processing-GF to make MACOM's laser photonic chip (3月6日付け Electronics Weekly (UK))
→GlobalFoundriesが、MACOMのLaser Photonic Integrated Circuit(L-PIC)プラットフォームの量産を開始、GLoFoの現世代シリコンphotonics offering, 90WGの90-nm silicon-on-insulator(SOI)プロセスの300-mmシリコンウェーハで作られる旨。該シリコンphotonics半導体は、5G cellular通信ネットワークおよびhyperscaleデータセンター応用向けの旨。
【ファブレス半導体ベンダー】
ファブレス半導体ベンダーというと、QualcommがずっとNo.1代表格で、半導体ランキングの長い間の首位、インテルと似た受け取りがあったが、2018年はQualcommと入れ替わってBroadcomがトップに上がっている。インテルの方は、2017年にSamsungに首位の座を譲っている。
◇Broadcom Ranked as No. 1 Fabless Chip Vendor (3月5日付け EE Times)
→TrendForce(台北)発。2018年のファブレス半導体ベンダー・販売高ランキングで、10年以上首位を保ったライバル、Qualcommを退けて、Broadcomがトップに上がった旨。Broadcomの2018年の販売高は2.6%増、半導体業界全体の13.7%の伸びを大きく下回ったが、Qualcommはスマートフォン需要の低下およびAppleのiPhoneでの主要modemサプライヤの位置づけを失って3.9%減、首位逆転に至った旨。
【autonomous air vehicle】
ボーイング社がパイロットが搭乗しない自律型電動旅客航空輸送機の初の試験飛行を終えたとのこと。自動運転車にこのところ注目しているが、これは「空飛ぶ車」ではなく、路上走行から飛行へと移行できないとされている。
ヘリコプターとプロペラ機を合わせたようなものとのこと。新たなキーワードが加わる可能性がある。
◇Boeing Readies Autonomous Air Passenger Vehicle for Urban Use (3月6日付け EE Times)
→Boeingは2019年1月、同社autonomous air vehicle試作機のManassas, Virginiaでのテスト飛行を成功裏に完了の旨。
◇Autonomous Air Passenger Vehicles to Shorten Your Commute (3月7日付け EE Times India)
→Boeing NeXtプログラムの一環、autonomous air vehicleプロジェクトは、次世代の都会、地域およびグローバルmobilityを推進できるaero技術の開発に向かう狙いの旨。
≪グローバル雑学王−557≫
自分の信念と価値観に従い、勇気をもって行動し、ベストを尽くした日本人、12人に焦点を当てた書、
『日本人だけが知らない本当は世界でいちばん人気の国・日本』
(ケント・ギルバート 著:SB新書 443) …2018年8月15日 初版第1刷発行
は、今回で読み納めとなる。終わりを飾るのは、美術家・エッセイストの篠田 桃紅について。なんと(昨年)105才で今なお現役で活動中とのこと。和紙に、墨・金箔・銀箔・金泥・銀泥・朱泥といった日本画の画材を用い、限られた色彩で多様な表情を生み出す数々の作品である。「ニューヨークで活躍した女流画家」として日本で注目され始めたということで、このような才能を自ら見い出せる日本人であってほしいとの筆者の願いである。
本書をしたためたケント・ギルバートさんの率直な思いが≪おわりに≫触れてある。
第四章 様式美
―――世界を驚嘆させた「創造性」 …その3
□外国人コレクターを魅了した書と抽象表現の融合
―――篠田桃紅
〓「アラハンブーム」で一躍注目された女流画家
・近年の出版界を中心とした「アラハン(around hundred:約百歳)」ブームの画家、篠田桃紅
→1913年生まれ、つまり今年(2018年)105歳、今なお現役で活動中
→スッと伸びた背筋に、穏やかな視線、全身から漂う凛とした雰囲気、そしてアーティストとして今も現役
・105歳で今なお現役というのは、その結果にすぎない。いや、もっといえば過程にすぎないのでは
〓『桃紅105歳 好きなものと生きる』
・篠田は現在東京在住、山中湖の近くに山荘、年に2ヶ月ほどは、そちらで過ごす
・富士山を臨む大自然に囲まれて、何も用を足さない「無用の時間」を過ご す
→創作の感性は、さらに研ぎ澄まされている
〓外国人に人気が高い理由
・篠田の絵は、実は外国人の間で一定の人気
→少なくとも私の仲間の間では、篠田は大変な有名人
・墨汁や金箔、泥など、日本画の画材で描かれたモダンな抽象画
→篠田の絵は、私も東京で家を建てたときに購入
→家のインテリアの中核に
・東京の草月会館で開催された篠田の展示会に出席したことがある
→故・高円宮殿下と久子妃殿下がご夫妻でご出席、懐かしい思い出
〓「根なし草」と称された特異な創造性
・1913年、関東州(満州)に生まれた篠田
→父の手ほどきで5歳から書を習い始める
→1936年、23歳にして銀座・鳩居堂で初の個展
・批評家の間で下された評は「根なし草」というもの
→作品は伝統的というよりは革新的
・戦後、篠田は既存の枠組みにとらわれない、独自の書のスタイル、独自の日本画のスタイルを確立
〓アメリカで認められ、日本へ逆輸入
・1956年、篠田はニューヨークで創作活動をスタート、40代半ばのこと
→篠田のニューヨーク生活は約2年で終わり
→アメリカの乾いた気候が墨汁に合わなかった
・1958年に日本に帰国、「ニューヨークで活躍した女流画家」ということで日本の衆目を集める
〓自国内の才能を見いだす審美眼に乏しい日本人
・書道と近代抽象表現を融合させた篠田の作品
→1983年、『タイム』誌で「ピカソに相当する功績」との評
・数々の海外の美術館が、篠田の作品を蒐集、所蔵
・つくづく日本人は、自国内の才能を見いだす審美眼が乏し過ぎると思えてならない
→私からすれば、なぜ、篠田の作品そのものを、日本人がいち早く評価できなかったのか、不思議でならない
→日本人は、こうした才能あふれる人物の存在を通じて、民族としての自信を取り戻すべき
・常に移り変わる文化
→価値あるムーブメントを、海外からの評価を待たずして、自ら見い出せる日本人であってほしいと願ってやまない
≪おわりに≫
・自分の確固たる信念や価値観に基づいて、物事の是非や理非を自分で判断し、それを堂々と主張すること
→民主主義社会における個人の権利であると同時に、義務であるとも
・残念ながら、日本人の大多数は「無自覚な権威依存症」だと私は感じている
→この悪しき思考パターンを個々人が変革できれば、日本は今以上に素晴らしい国になると考える
・日本人は、「自分の頭で考えた意見を主張する」よりも、「空気を読んで周囲の意見に自分を合わせる」ことを重視する傾向
→「個人の自由」であり、私がとやかくいう問題ではないかもしれない
・本書で取り上げた日本の偉人たちは全員、それとは正反対の行動を取った人たち
→自分の信念と価値観に従い、勇気をもって行動し、ベストを尽くした
・考えや行動を少しずつ改善していけば、日本は再び世界に誇る大国として復活を遂げるはず