セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

4月の世界半導体販売高、前年比14.6%減、のしかかる米中摩擦

米国・Semiconductor Industry Association(SIA)より月次世界半導体販売高が発表され、この4月について$32.1 billionとほぼ2年前の水準、前年同月比14.6%減、前月比0.4%減となっている。昨年10月の$41.8 billionをピークに年末年始急降下、この2月から$32 billion台での漸減という推移である。米中摩擦の応酬がいろいろな切り口で大きな波紋を日々生み出している状況下では、むべなるかなというところ。恒例のWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS)春季予測は、販売高が2019年12.1%減、そして2020年5.4%増とみているが、のしかかる米中摩擦でこれくらいのインパクトで済むかどうか、推移如何の気もたせが続くここ当分である。

≪様々な波紋の中の世界販売高≫

米国・SIAからの今回の発表内容が、次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
〇4月のグローバル半導体販売高が前年比14.6%減;2019年販売高は12%減の見通し−業界予測は、2019年販売高が12.1%減、2020年が5.4%増の見通し …6月4日付け SIA/Latest News

Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、2019年4月の世界半導体販売高が$32.1 billion、前年同月、2018年4月の$37.6 billionから14.6%減、前月、2019年3月の$32.3 billionを0.4%下回る、と発表した。月次販売高はWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。加えて、このほどリリースされたWSTS業界予測は、2019年の年間グローバル販売高が12.1%減、それから2020年は5.4%増、と見通している。SIAは、半導体製造、設計および研究における米国のleadershipを代表している。

「4月のグローバル半導体市場は引き続き消えいって、販売高が前年比および前月比でマイナスのままである。」と、SIAのpresident and CEO、John Neuffer氏は言う。「販売高は、すべての主要地域市場および半導体製品カテゴリーにわたって前年比で低下している。グローバル販売高は、今年12%減少し、それから来年は穏やかな伸びで幾分持ち直す見込みである。」

2019年4月販売高の地域別では、前月比でJapanおよびChinaが僅かに増加となった以外は次の通り減少している。

Japan
前年同月比 -10.9%/
前月比 2.5%
China
-10.9%/
1.8%
Europe
-8.0%/
-1.2%
Asia Pacific/All Other
-10.7%/
-2.0%
Americas
-29.5%/
-3.0%

                   【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Apr 2018
Mar 2019
Apr 2019
前年同月比
前月比
========
Americas
8.16
5.93
5.75
-29.5
-3.0
Europe
3.65
3.40
3.36
-8.0
-1.2
Japan
3.29
2.86
2.93
-10.9
2.5
China
12.38
10.85
11.04
-10.9
1.8
Asia Pacific/All Other
10.13
9.23
9.05
-10.7
-2.0
$37.61 B
$32.27 B
$32.13 B
-14.6 %
-0.4 %
--------------------------------------
市場地域
11- 1月平均
2- 4月平均
change
Americas
7.30
5.75
-21.3
Europe
3.43
3.36
-2.1
Japan
3.16
2.93
-7.2
China
11.62
11.04
-5.1
Asia Pacific/All Other
9.95
9.05
-9.1
$35.47 B
$32.13 B
-9.4 %
--------------------------------------

加えてSIAは本日、WSTSの2019年春季グローバル半導体販売高予測を支持、2019年の該業界世界販売高を$412.1 billionと見通している。これは業界史上最高を記録した2018年販売高総計、$468.8から12.1%の減少となる。WSTSは、2019年について次の通りすべての地域市場にわたって前年比の減少を見ている。

Americas
-23.6%
Europe
-3.1%
Asia Pacific(中国を含む)
-9.6%
Japan
-9.7%

2020年は、該グローバル市場が幾分戻していく見通し、5.4%の穏やかな伸びを示す。WSTSでは、グローバル半導体メーカーの広範囲にわたるグループを招集、年2回の業界予測を表で表わし、半導体の流れの正確で時宜を得た指標を供給している。

※4月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
https://www.semiconductors.org/wp-content/uploads/2019/06/April-2019-GSR-table-and-graph-for-press-release.pdf

※WSTSの2019年春季半導体市場予測、以下参照。
https://www.semiconductors.org/wp-content/uploads/2019/06/WSTS-Spring-2019-WSTS-press-release-with-table.pdf
★★★↑↑↑↑↑

この発表を受けた業界各紙の取り上げは、低迷環境のなす業か、以下にとどまっている。

◇Global semiconductor sales on track to fall 12% in 2019 (6月5日付け DIGITIMES)

2016年後半から2年あまり史上最高を更新し続ける勢いの熱い活況が続いた半導体業界であるが、これまで通りの販売高の推移の見方を続けると以下の通りとなる。昨年11月から販売高が前月比マイナスとなって以降、12月、今年に入って急激に落ち込む経緯があらわれているが、2月以降は$32 billion台に押しとどまっている。下げ止まりの推移に引き続き注目するところである。

販売高
前年同月比
前月比
販売高累計
(月初SIA発表)
2016年 7月 
$27.08 B
-2.8 %
2.6 %
2016年 8月 
$28.03 B
0.5 %
3.5 %
2016年 9月 
$29.43 B
3.6 %
4.2 %
2016年10月 
$30.45 B
5.1 %
3.4 %
2016年11月 
$31.03 B
7.4 %
2.0 %
2016年12月 
$31.01 B
12.3 %
0.0 %
$334.2 B
2017年 1月 
$30.63 B
13.9 %
-1.2 %
2017年 2月 
$30.39 B
16.5 %
-0.8 %
2017年 3月 
$30.88 B
18.1 %
1.6 %
2017年 4月 
$31.30 B
20.9 %
1.3 %
2017年 5月 
$31.93 B
22.6 %
1.9 %
2017年 6月 
$32.64 B
23.7 %
2.0 %
2017年 7月 
$33.65 B
24.0 %
3.1 %
2017年 8月 
$34.96 B
23.9 %
4.0 %
2017年 9月 
$35.95 B
22.2 %
2.8 %
2017年10月 
$37.09 B
21.9 %
3.2 %
2017年11月 
$37.69 B
21.5 %
1.6 %
2017年12月 
$37.99 B
22.5 %
0.8 %
$405.1 B
2018年 1月 
$37.59 B
22.7 %
-1.0 %
2018年 2月 
$36.75 B
21.0 %
-2.2 %
2018年 3月 
$37.02 B
20.0 %
0.7 %
2018年 4月 
$37.59 B
20.2 %
1.4 %
2018年 5月 
$38.72 B
21.0 %
3.0 %
2018年 6月 
$39.31 B
20.5 %
1.5 %
2018年 7月 
$39.49 B
17.4 %
0.4 %
2018年 8月 
$40.16 B
14.9 %
1.7 %
2018年 9月 
$40.91 B
13.8 %
2.0 %
2018年10月 
$41.81 B
12.7 %
1.0 %
2018年11月 
$41.37 B
9.8 %
-1.1 %
2018年12月 
$38.22 B
0.6 %
-7.0 %
$468.94 B
2019年 1月 
$35.47 B
-5.7 %
-7.2 %
2019年 2月 
$32.86 B
-10.6 %
-7.3 %
2019年 3月 
$32.28 B
-13.0 %
-1.8 %
2019年 4月 
$32.13 B
-14.6 %
-0.4 %


DRAMの価格低下が大きく販売高に影響しているが、本年いっぱい下げ続けるという見方もあらわれている。

◇DRAM ASP falls sharper than expected, says DRAMeXchange-DRAMeXchange: Trade war will drive down DRAM prices (6月6日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchangeの予測。DRAMsのaverage selling prices(ASPs)が、中国と米国の間で続く貿易係争から今年の後半下げ続ける旨。DRAM ASPsは、第三四半期の間に10-15%、そして2019年最終四半期にさらに10%落ちると見ている旨。

◇DRAM spot prices continue slide (6月6日付け DIGITIMES)
→業界筋発。DRAMスポット価格が6月に低下の流れが継続、8Gb半導体価格が$3を下回っている旨。

米中摩擦が圧し掛かり続ける状況のもと、いろいろな切り口での動きに注目せざるを得ないところである。

米国からの制裁関税攻勢に報復措置を打ち上げる中国という構図であるが、中国側からはなんとか非常事態は避けたいという雰囲気が伝わってきている。

◇China blames US for trade dispute, but doesn’t escalate-China says US to blame for trade talk dispute (6月2日付け The Associated Press)
→中国が日曜2日、米中貿易係争を巡って米国に反撃、Cabinet spokesman's officeからの報告書で、Trump政権との衝突を非難したが、該貿易戦争のエスカレートは控える、としている旨。

◇米との貿易摩擦「戦う準備できている」:中国国防相 −商務次官「交渉再開、信頼・公平を」 (6月2日付け 日経 電子版 12:13)
→中国の魏鳳和国防相は2日、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議で演説、米中貿易摩擦について「対話したいならばドアは開いている。戦いたいなら戦う。準備はできている」と述べ、米国との対立の長期化を辞さない考えを示した旨。一方で「戦争になれば世界にとっても災難だ」と語り、米国に歩み寄りを求めた旨。

米国から槍玉にあがっているHuaweiの現時点の実態が、以下の通りあらわされている。自前のoperating system(OS)対応の用意があるとのこと。

◇American Threat to Huawei's Chip Maker Shows Chinese Tech Isn't Self-Sufficient -Analysis: How will HiSilicon deal with Huawei ban in US? -HiSilicon has spent billions of dollars to become more independent, but that growth will be tested if ban lingers (6月2日付け The Wall Street Journal)
→Huawei Technologies Co.は、中国テレコム最大手の同社を自給自足にする狙いで先端半導体メーカー構築に15年とbillions of dollarsを費やしている旨。米国のブラックリスト載せはその目標を数年後退させる旨。
Huaweiの半導体子会社、HiSilicon Technologies Co.は、中国最大手そして最先端半導体メーカーの1つに成長しており、同社のプロセッサは、Huaweiのデータセンターおよびスマートフォンから来る第5世代(5G)ワイヤレスネットワークス用の基地局まですべてに搭載の旨。

◇Stripped of Android, Huawei is Pursuing 'Plan B' (6月3日付け EE Times)
→Trump政権の要求を遵守、Googleの親会社、Alphabetが、Huaweiとのビジネスを中止。「我々は自前のoperating system(OS)を用意しており、Androidがもはや使えないなら、Huaweiの万一の対応、“plan B” OSを始めていく。」と、Huaweiのモバイル事業head、Richard Yu氏。

◇Huawei's Contingency Plan-Google ceasing to license Android will have little impact on Huawei's domestic business, but it will affect its phone users and future sales overseas (6月6日付け EE Times India)

米国に対抗して、中国政府は5G免許を中国国内の通信大手に交付している。

◇中国政府、国有大手3社に5G免許交付へ、米に対抗 (6月3日付け 日経 電子版 19:14)
→中国政府は近く国有通信大手3社に次世代通信規格「5G」の免許を交付する旨。トランプ米政権が5Gの技術を多く持つ中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の排除を進めていることに対抗、中国政府は5G免許の交付で総額で20兆円規模とされる5G投資を加速させ、ファーウェイなど中国企業を支援する構え。

◇中国政府、4社に5G免許、米中摩擦の長期化に備え (6月6日付け 日経 電子版 22:22)
→中国政府は6日、国有通信会社4社に次世代通信規格「5G」の免許を交付した旨。政府系研究機関は5Gで総額260兆円の経済効果を見込む旨。トランプ米政権が5G分野からの排除を狙う中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)を支えるとともに、5Gで国内経済をテコ入れして米中貿易摩擦の長期化に備える狙い。

中国から強力な交渉切り札として見えてきたレアアース(希土類)の禁輸であるが、双方の応酬が以下の通り続いている。

◇U.S. moves to ensure rare-earth supply amid trade war with China-Ross: US will protect rare-earth access (6月4日付け BNN Bloomberg (Canada))
→Wilbur Ross米国商務長官が、中国が輸出を遮断すれば、米国はレアアース鉱物へのaccessを失わないことを確実にする前代未聞の行動をとる旨。
同氏は、採掘をより早く承認、そして政府が米国におけるレアアース源をより良く理解すること、を勧める報告書をリリースの旨。

◇US moves to reduce reliance on Chinese rare earths exports after Beijing threatens to cut supplies (South China Morning Post)

◇中国、レアアース輸出規制、「禁じ手」検討 米けん制−WTO違反で敗訴の過去 中国孤立リスクも (6月5日付け 日経 電子版 01:27)
→中国政府は電気自動車(EV)の部材などとして不可欠なレアアース(希土類)で新しい輸出管理システムを設ける方向で検討に入った旨。米中貿易摩擦が激化するなか、レアアースの輸入の8割を中国に頼る米側に揺さぶりをかける狙いだが、輸出規制は世界貿易機関(WTO)で「敗訴」して2014年を最終年に封じた禁じ手。5年ぶりの復活になれば、中国を孤立させる恐れもある旨。

◇China rare earth prices soar on their potential role in trade war (6月6日付け Reuters)

世界銀行そして「地区連銀経済報告」のデータに見る世界そして米国経済への摩擦インパクトである。

◇Trump's trade wars sent global investment tumbling - World Bank-World Bank: US tariffs will drop global GDP growth to 2.6% this year -Brexit and trade disputes push bank's policy uncertainty index to record high, says report (6月4日付け The Guardian (London))
→政治的不安定性のスパイラルで、貿易が低迷、投資が崩壊して、今年のGDP成長が2.6%に押し下げられる旨。

◇Fed says contacts worry about trade war; economy growing modestly-Trade conflict worries businesses, Fed says (6月5日付け Reuters)
→Federal Reserve Beige Book(ベージュブック:「地区連銀経済報告」)発。米国ビジネス界は、米国と中国の間の貿易摩擦の激化が経済の足手まといになると懸念している旨。

TSMCは、短期的にはともかく2019年についても業績目標は満たせると強気な見通しであるが、米中摩擦はいろいろ試練と市場の見方となっている。

◇Taiwanese chip maker TSMC set to gain as others cut supplies to Huawei (6月4日付け South China Morning Post)
→アナリストの見方。Huaweiの子会社からの需要が高まって、TSMCの第二四半期売上げ7%増の予測に適合の旨。

◇TSMC expects short-term impact from U.S. ban on China's Huawei-Analysts see US ban on Huawei as a boon for TSMC (6月5日付け Reuters)
→米国によるHuawei Technologiesをブラックリストに載せる動きで、同社へのTSMCのmicrochips出荷は止まらない旨。TSMCのChairman、Mark Liu氏は該禁止措置について、確かに短期的にはなんらかインパクトがあろうとしたが、2019年について概して楽天的な見通しを与えている旨。

◇米中対立、半導体受託大手のTSMCに試練−ファーウェイ向け受注減、揺らぐ成長戦略 (6月5日付け 日経 電子版)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が試練に直面している旨。成長の牽引役になるはずだった中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が米国政府から制裁を受けているため。劉徳音董事長は5日、同社向けの「受注は(前年より)減少する」と述べた旨。カリスマ創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏の引退から1年。新経営陣は難しいかじ取りを迫られている旨。

◇TSMC expects trade war to have short-term impact (6月6日付け DIGITIMES)
→米国と中国の間の貿易摩擦はTSMCの業績に短期的なインパクトがあるが、同社は中長期見通しについて依然積極的な旨。

米国半導体メーカーでHuaweiインパクトによる業績下方修正が見られている。

◇Trump's blacklisting of Huawei is hurting American chip firms-American chip firms harmed by Huawei ban (6月5日付け CNBC)
→QorvoおよびSkyworksなどHuawei向けサプライヤのいくつかが、今四半期の売上げguidanceを下方修正の旨。

トランプ大統領の中国に向けた次なる矛先である。

◇Trump to decide on $300 billion China tariffs after G20 meeting-Trump says he might add another $300B in China tariffs (6月6日付け Reuters)
→米国・Donald Trump大統領が木曜6日、今月後半のG20サミット首脳会議の後、中国製品少なくとも$300 billionについての関税で北京攻撃を迫っていくか、決める旨。

我が国でもHuaweiを規制リストに載せる動きである。

◇ファーウェイを規制リストに、民間団体が掲載 (6月6日付け 日経 電子版 02:14)
→日本の輸出企業に安全保障や危機管理上の懸念がある団体・個人の公開情報を提供する民間団体が、中国の華為技術(ファーウェイ)を規制情報リストに掲載したことが5日、分かった旨。リストは制裁対象の団体・企業との取引を未然に防ぐため、民間企業が参考情報として広く利用している旨。日本企業がファーウェイとの取引に一段と慎重になる可能性もある旨。一般財団法人の安全保障貿易情報センター(CISTEC)の会員向けサービス「チェイサー」に、5月16日付でファーウェイが載った旨。

メモリ半導体の急激な低迷で、韓国での経済への打撃の度合いである。

◇韓国、半導体不振続く、経常収支、4月、7年ぶり赤字 (6月6日付け 日経)
→米中貿易戦争が韓国経済に影を落としはじめた旨。4月は海外とのモノやサービスなどの取引を表す経常収支が7年ぶりの赤字に転落した旨。米政府による中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への実質的な輸出禁止措置発動で主力の輸出品目である半導体は市況回復が遅れる見通し。輸出不振が長期化する懸念が強まってきた旨。

中国半導体業界でも米中摩擦による調達不安が広がっている。

◇中国半導体、調達不安広がる、米中摩擦、4割強が「悪影響」、「国産化」にはなお困難も (6月7日付け 日経産業)
→中国の半導体産業で米中貿易摩擦が部材の調達に悪影響をもたらすとの懸念がくすぶっている旨。日本経済新聞が約30社に聞き取り調査をしたところ、4割強の企業が価格の上昇や納期の長期化など具体的な影響が出ていると回答した旨。調達不安は中国が掲げる半導体や製造装置の内製化の動きを一段と加速させそうな旨。

好調な米国経済であるが、ここにきて米国雇用の先行き懸念の兆候である。

◇米雇用7万5千人増、5月、市場予想下回る (6月7日付け 日経 電子版)
→米労働省が7日発表した5月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比7万5千人増にとどまった。増加幅は前月(22万4千人)から急減し、3カ月ぶりの低水準。中国などとの貿易戦争が激しくなり、米雇用の先行きを不安視する声も出ている旨。

第23回サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(2019年6月6-8日)では、ロシアそして中国の米国に対する批判が激しく行われている。

◇プーチン大統領、貿易戦争で激しい対米批判−習主席は「一帯一路」参加呼びかけ (6月7日付け 日経 電子版 22:51)
→ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は7日、ロシア北西部サンクトペテルブルクでそれぞれ演説。プーチン氏は「貿易戦争や制裁」によって自国の経済的優位を保とうとしていると米国を激しく批判した旨。
習氏も米国の保護主義を暗に批判し、中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」への参加をロシアや他の国々に呼びかけた旨。

一方、米国が中国に対する関税の本格引き上げのタイミングを次の通り遅らせている。

◇米、対中関税の本格引き上げを15日まで正式留保 (6月8日付け ロイター 00:48)
→米通商代表部(USTR)は7日、中国への制裁関税「第3弾」の本格的な税率引き上げ期日を今月15日とし、当初予定の1日から2週間留保すると正式に明らかにした旨。USTRはすでに同様の方針を先月31日に示しており、この日の官報であらためて確認した格好。

中国においても関税逃れの東南アジアシフトが見られている。

◇中国勢、制裁避け東南アへ投資、米関税逃れる拠点に (6月8日付け 日経 電子版 02:00)
→米中貿易戦争の激化で、中国企業の東南アジア投資が急増している旨。ベトナムでは2019年1〜5月の中国からの新規投資認可額が前年同期と比べて6倍弱に拡大。タイでも1〜3月に2倍に増えている旨。米国の対中制裁を回避する動きはグローバル企業で広がるが、中国企業が率先して自国から東南アジアに生産拠点をシフトしていることが浮き彫りになった旨。企業の「脱出」が続けば、中国の雇用や消費の新たな重荷になりかねない旨。

グーグルに続いてフェイスブック、Huaweiに対するスマホ開発包囲網が一層狭まっている。

◇ファーウェイ製スマホにアプリ供給停止、フェイスブック−新機種から (6月8日付け 日経 電子版 05:17)
→米フェイスブックは中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)が今後新たにつくるスマートフォンについて、同社アプリの事前搭載を認めない方針。米政府の指示に基づいた措置。ファーウェイに対してはグーグルも基本ソフト(OS)の供給を止めるとされており、スマホ開発での対中包囲網が築かれつつある旨。

トランプ大統領がメキシコに対して、不法移民対策が進展として関税引き上げを結局見送っている。

◇米 対メキシコ関税引き上げ、見送りも、交渉順調か (6月8日付け NHK NEWS WEB 05:41)
→アメリカのトランプ大統領は、メキシコからの輸入品に関税を上乗せする方針を示しメキシコとの間で協議が続けられる中、「合意できる可能性は高い」と指摘し、協議に楽観的な見方を示した旨。今月10日に予定されている関税の上乗せが見送られる可能性も指摘されている旨。トランプ大統領は不法移民対策が不十分だとして、今月10日からメキシコからのすべての輸入品に5%の関税を上乗せして段階的に25%にする方針を示し、メキシコ政府は撤回を求めアメリカと協議を行っている旨。

世界の政治&経済の視点で、上記はじめいろいろな切り口の動き、展開に目が離せないところである。


≪市場実態PickUp≫

【InfineonのCypress買収】

このところ続くconnectivity半導体サプライヤの一連の買収に新たに加わって、Infineon Technologies AGが、Cypress Semiconductorを約$10.1 billionで買収、NXPを抜いて車載用半導体サプライヤのNo.1にのし上がるということで、以下の通り業界各紙の賑やかな反応を呼んでいる。

◇Infineon acquires Cypress Semiconductor in deal valued at $10 billion-Infineon to buy Cypress Semiconductor in $10B transaction (6月2日付け VentureBeat)

◇Infineon to Acquire Cypress for $10B (6月3日付け EE Times)
→Infineon Technologies AGが、Cypress SemiconductorをEURO 9 billion(約$10.1 billion)で買収、offeringsを強化およびここ数年にわたる競合の積極的な動きに対抗して大胆に半導体M&A市場に突入していく旨。該買収をもって、Infineonは、車載OEMsへの半導体供給でトップの位置に躍進する期待の旨。該Cypress Semiconductor取引は、Infineonでは史上最大、ここ5年にわたってグローバルIC市場に吹きまくっている買収の波に同社が加わる主要な動きとなる旨。

◇Chipmakers Open Checkbooks to Bolster Connectivity (6月3日付け EE Times)
→Infineon Technologiesが、Cypress Semiconductorを$10 billionで買収する取引に調印、以下のここ数ヶ月のconnectivity半導体サプライヤの一連の買収の最新となる旨。
 ・NXPが先週、MarvellのWiFiおよびBluetooth connectivity assetsを$1.76 billionで買収
 ・Nvidiaが3月に、networking ICベンダー、Mellanox Technologiesを$6.9 billionで買収
 ・ON Semiconductorが、WiFi半導体ベンダー、Quantenna Communicationsを約$1 billion in cashで買収

◇Chipmakers Keep Acquiring Connectivity Chip Suppliers-Infineon's acquisition of Cypress is the latest in a list of big semiconductor vendors acquiring connectivity chip suppliers (6月5日付け EE Times India)

◇Infineon snaps up San Jose’s Cypress Semiconductor in $10B deal (6月3日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→ドイツの半導体メーカー、Infineonが、Cypress Semiconductor社(San Jose)を買収、今年の終わりまでに完了予定の$10 billion cash取引の旨。Cypressの株価はこのニュースで本日始めの取引で26%以上上昇の旨。Infineonは、史上最高の$23.85/株 in cashおよび該買収を巡る噂が最初に取り沙汰された5月28日のCypress Semiconductor株価に対し約55%のpremiumを提示、とCypressは言っている旨。Cypressは、世界中で5,850人を雇用、約3分の1が米国従業員で、San Joseの本社、Seattle郊外のsatelliteオフィスおよびAustin, Texasの製造hubがある旨。Infineonは、世界中で約40,000人を雇用の旨。

◇Infineon Will Buy Cypress Semi in Latest Chip Mega-Deal-Infineon to acquire Cypress Semi (6月3日付け Bloomberg)
→Infineon Technologiesが、Cypress Semiconductorを$23.85/株 in cashで買収する取引に調印、T.J. Rodgers氏が1982年に創設したCypressの価値を約$10 billionとしている旨。

◇Infineon revs up auto business with $10 billion Cypress deal (6月3日付け Reuters)

◇Infineon to acquire Cypress (6月3日付け DIGITIMES)
→Infineon TechnologiesとCypress Semiconductor両社発表。Infineonが、Cypressを$23.85/株 in cashで買収、EUR9.0 billion($10.06 billion)の企業価値に相当する旨。

◇インフィニオン、同業買収、1兆円超、車載半導体で首位に (6月4日付け 日経)
→半導体大手の独インフィニオンテクノロジーズは3日、同業の米サイプレスセミコンダクタを90億ユーロ(約1兆880億円)で買収すると発表の旨。インフィニオンは車載半導体の世界2位で、今回の買収で首位になる旨。車載や通信に使う半導体に強いサイプレスを傘下に収め、「つながるクルマ」などの成長分野を強化する旨。

◇Infineon CEO Takes U.S. Road Trip to Lobby for His Biggest Deal (6月5日付け Bloomberg)
→Infineon Technologies AGによるCypress Semiconductor社$10 billion買収について、月曜3日記者会見もそこそこに同社史上最大の取引働きかけでSan Franciscoに向かうフライトに乗り込んだInfineonのChief Executive Officer(CEO)、Reinhard Ploss氏。

◇Cypress acquisition makes Infineon top automotive chip supplier, says IHS (6月6日付け DIGITIMES)
→IHS Markit発。InfineonによるCypress Semiconductorの$10 billion買収計画により、現状の市場リーダー、NXPを上回る世界最大の車載用半導体サプライヤが作られ、Infineonはinfotainmentおよびadvanced driver assist systems(ADAS)に向けた重要市場においてより強い位置づけが得られる旨。

【インテルのEUVリソ対応】

最先端微細化、特に10-nmノード製品の後れが取沙汰されているインテルであるが、同社のextreme ultraviolet(EUV) lithography技術の責任者が現時点をあらわしている。課題いまなおと認めながら、TSMCにもいまなおとの認識のサブタイトルが見られている。

◇Intel Says EUV Ready, Challenging-TSMC still requires some double patterning at N7+ (6月3日付け EE Times)
→Intelのfellow and director of EUV、Britt Turkot氏。extreme ultraviolet(EUV) lithographyは、"投入に備えており、技術開発向けに動いている"旨。しかしながら、最先端半導体を大量に作るのに複雑でコストのかかるシステムを利用するいくつかの課題に依然直面している旨。
同氏は、Intelの今立ち上げの10-nm製品あるいは計画の7-nm nodeでEUVが如何にあるいは用いられるかどうか、明らかにしていない旨。

◇Intel Says EUV Ready but Still Faces Challenges-Extreme ultraviolet lithography still faces reliability issues, but it's ready for volume use, Intel's EUV chief said (6月4日付け EE Times India)

【アップルのWWDC】

米中摩擦で雲がかる中の見え方を感じるが、注目のアップル社イベント、Worldwide Developers Conference(WWDC)が開催され、新機種、たくさんの更新、そしてプライバシー保護と今回の概要である。

◇Apple unveils new $6,000 Mac Pro, host of updates at WWDC 2019 (6月3日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
→Apple社が月曜3日、同社annualソフトウェア開発者conference、Worldwide Developers Conference(WWDC)(San Jose McEnery Convention Center)にて、新しいprofessional-level desktop computerおよび同社機器プラットフォームにわたるたくさんの更新および新しいfeaturesを披露の旨。

◇アップル発表会、「プライバシー保護」前面に (6月4日付け 日経 電子版)
→米アップルは3日、開発者向けの年次イベントを開き、プライバシー保護の強化策を発表、外部のアプリ開発会社による個人情報の取得を難しくしたほか、クラウド内のデータ管理も厳格にした旨。データの乱用で批判をあびるフェイスブックなどとの違いを打ち出す狙い。同社と取引のあるアプリ開発会社も戦略転換を迫られそうな旨。

【SamsungとAMDの連携】

Samsungが、スマートフォンにおいてAMDのグラフィックス半導体技術を用いるmulti-year戦略的連携を発表している。高性能、超低電力モバイルグラフィックスintellectual property(IP)のlicensingが中核である。

◇Samsung to Use AMD's Graphics Chip Technology in Smartphones-AMD will license the technology to the Korean firm for mobile -The deal takes AMD into a new market and could boost Samsung (6月3日付け Bloomberg)

◇Samsung, AMD strike multiyear pact on graphics technology (6月3日付け FierceWireless)

◇AMD and Samsung announce strategic partnership-AMD licenses mobile graphics IP to Samsung (6月4日付け New Electronics)
→Advanced Micro Devices(AMD)とSamsung Electronicsがmulti-year戦略的連携を発表、AMD Radeonグラフィックス技術を用いる高性能、超低電力モバイルグラフィックスintellectual property(IP)のlicensingについて。
両社は、関係するロイヤリティおよび技術license料に触れなかった旨。

【Qualcommの独禁法違反判決】

攻撃的な特許licensingで独占禁止法違反の商慣習であると米国連邦地裁の裁定を受けたQualcommであるが、高過ぎる利用料への糾弾を追い風と見るスマホ業界の一方、裁定に批判的な向きも出てきている以下の内容である。

◇How Qualcomm shook down the cell phone industry for almost 20 years-What does the Qualcomm ruling mean for business?-We did a deep-dive into the 233-page ruling declaring Qualcomm a monopolist. (5月30日付け Ars Technica)
→Qualcommの特許licensingの攻撃的な使用に対する連邦裁の裁定は、不公平に力を振るうグローバルプレイヤーに対する勝利と見られる一方、The Wall Street Journal editorial boardは、該裁定を批判、"実効的に何100ものビジネス契約を引き裂き、業界標準を書き改めている"としている旨。

◇鉄壁の知財モデルにヒビ、米クアルコムに独禁法違反判決、スマホ産業に追い風も(真相深層) (6月7日付け 日経)
→スマートフォン向け半導体大手、米クアルコムの商慣習は独占禁止法違反にあたるとした米カリフォルニア州サンノゼの連邦地裁の判決が波紋を広げている旨。次世代通信規格「5G」の普及を前に、利用料「高すぎ」としてクアルコムに再交渉を挑むスマホ産業に追い風との見方がある旨。ハイテク覇権を巡る米中の争いが影響する可能性もある旨。


≪グローバル雑学王−570≫

米中激突の底流にあるものを追っていく後半は、中国に焦点を当て、ロシアそしてインドとの緊張に備える上に太平洋やインド洋にシーレーンを確保しなければならない地政学的分析はじめ、

『軍事的視点で読み解く 米中経済戦争』
 (福山 隆 著:ワニブックス「PLUS」新書) …2019年3月25日 初版発行

から読み解きを進めていく。そして、トランプ大統領のの深層心理にまで言及、潜む黄禍論が指摘されている。折も折、中国国防相から以下の発言が見られている。

◇米との貿易摩擦「戦う準備できている」:中国国防相−商務次官「交渉再開、信頼・公平を」(6月2日付け 日経 電子版 12:13)
→中国の魏鳳和国防相は2日、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議で演説、米中貿易摩擦について「対話したいならばドアは開いている。戦いたいなら戦う。準備はできている」と述べ、米国との対立の長期化を辞さない考えを示した旨。一方で「戦争になれば世界にとっても災難だ」と語り、米国に歩み寄りを求めた旨。


第二章 米中激突の底流にあるもの
――マハンのシーパワー理論と黄禍論 …後半

〓中国もマハンの門徒

□中国もマハンの門徒
・今日、中国が依拠する3人の「M」
 →毛沢東、マルクス、そしてマハン
・実は、中国もマハンの門徒であり、現在の軍事戦略・政策はマハンのシーパワー理論を忠実に実践しつつある、と見ている
・ちなみに、中国は、ユダヤ人のカール・マルクスの門徒でも
 →孔孟思想や孫子ではなく、「紅毛人」のマルクスやマハンの理論を信奉、今日発展・台頭しているわけで、なんとも皮肉

□中国は実質的に"島国"で、米国と同じ海洋国家
・中国は、"島国"
 →東方の一方向で面している海(黄海、東シナ海、南シナ海、太平洋)以外は、通過不可能な地形や荒れ地に囲まれており、他の地域から事実上隔離
・このため、中国は海洋正面に糧を求めざるを得ない
 →東シナ海や南シナ海などを経て、太平洋やインド洋にシーレーンを確保しなければならない
・それゆえ、中国にとっても、マハンの「海上権力史論」こそが、仮想敵国の米国を打倒して、世界の超大国に発展する上で「指南書」に

□中国軍上・空軍戦力の近代化――支配海域の拡大
・マハンの門徒である中国
 →アジアから米軍を排除するために「接近阻止・領域拒否」戦略を採用。
  近年、海軍・空軍戦力の建設に注力
・海軍戦力については、より遠方の海域において作戦する能力の構築を目指している
 →中国は2018年4月、最新鋭中距離弾道ミサイル「東風(DF)26」を実戦配備
  …グアムの米軍基地に対する核攻撃が可能、「グアム・キラー」と呼ばれる

□「一帯一路」構想と「中国製造2025」構想もマハンの教えから
・「一帯一路」…約14億の人口を養うための「命綱」
       ――輸出入のための物流ルート
 →量とコストの面では次の実態
  →「一路」(インド洋を経て中東、欧州、アフリカへの海上輸送)が主体(9割以上)
  →「一帯」(シルクロード沿いの陸上輸送)は「保険」としての役割
・将来、地球温暖化で、北極海の通行が可能になれば、「一帯二路」構想に替わるだろう
 →中国とロシアの間の軋轢が高まり、日本海、北海道、オホーツク海の戦略的価値はさらに高まるはず
・「一帯一路」構想の決定的な2つの弱点
 →第1:マラッカ海峡というチョーク・ポイント(シーパワーを制するに当たり、戦略的に重要となる海上水路)を通過すること
 →第2:中国が、「一路」(シーレーン)を守るためには、究極的には米海 空軍を上回る戦力を建設する必要
・米中の海軍建設競争に関し、マハンは以下のような興味深い予言
 →「歴史を見るに、例え一箇所でも大陸と国境を有する国(A)は、仮に人口も資源も少ない島国(B)が競争相手国であれば、海軍の建設競争ではAはBに勝てないという決定的事実を歴史は示している」
 →Aを「中国」Bを「日本または米国」と読み替え
・米国の国境はカナダとメキシコだけ
 →ともに米国の国力に比べれば問題にならず、外交関係は落ち着いている
・一方、中国は接する国は14ヵ国に
 →ロシアは米国と核戦力を競うほどの強大国、また、インドも中国に拮抗できる戦力
 →将来、ロシアやインドと中国との間に緊張状態が生起した場合、中国は150万人以上の陸軍兵力が必要になろう
・すなわち、中国は、陸軍に相当な人員と予算を投入せざるを得ない立場に
 →海軍に投入できる人員と予算が制限されるのは当然
・マハンのシーパワー理論と「中国製造2025」構想との関係
 →マハン:「生産」、「海運」、「植民地」という循環する3要素が、海洋国家繁栄のための政策のカギ
 →中国は改革開放以降、「世界の工場」の地位を獲得
 →しかし、中国は今日、経済発展に伴う国内の人件費の高騰や、「一人っ子政策」による労働人口の減少に直面
 →「技術密集型/知能的集合型」の産業にシフトする必要
 →これを実現するための方策が「中国製造2025」構想
 →該構想もマハンのシーパワー理論の一環

〓マハンの門徒は激突する宿命

□「トゥキディデスの罠」
・「トゥキディデスの罠」…「台頭する新興国と覇権国が望みもしない紛争を繰り返す可能性が高い」ことを警告する言葉
・オバマ大統領は、2012年1月、アジア太平洋地域での軍事的なプレゼンスを強化する内容の新国防戦略を発表
 →「中国の台頭」に対抗するため
 →米中も、アジア太平洋で雌雄を決しなければならない宿命にあるものと思う

□マハンの門徒国家が激突した事例――日米、米独、米ソの激突
・米中が激突するもう1つの理由
 →「マハンの門徒国家は激突する」という仮説
 →日米は太平洋戦争で激突
  第1次世界大戦において米独激突
    …無制限潜水艦作戦再開、ツィンメルマン電報事件発覚
  米ソ両国は冷戦期間を通じ覇権争いを継続

□マハンの門徒はなぜ激突するのか
・国家の生存・発展を海洋に託す国家――海洋国家――
 →海洋国家同士は、海外市場・資源供給国をめぐって争奪戦を行う宿命に
 →日米が激突した大東亜戦争の原因の1つは中国市場
  →日本が生命線としての植民地を求めるかぎり、中国にしがみつく以外、道はなかった
  →日本の対外投資の中で中国の占める比率、1935年の時点で、実に93.3%
・日米対立が最初に表面化するのは、第1次大戦時の日本の山東侵略
 →これを契機として日米関係は次第に敵対憎悪へ重心
・満州事変は、あらゆる意味合いにおいて、大東亜戦争への序曲
 →満州をめぐる日本と米欧帝国主義諸国との対立の所産
・筆者は、マハンの門徒国家である米国と中国が、いずれ、東アジア太平洋地域で激突するのは避けられないと見ている

〓米中激突の奥底に潜む黄禍論

□マハンとルーズベルトはレイシスト
・マハンとルーズベルトの時代、黄禍論が欧米諸国を風靡
 →「白人に比べ黄色人種は劣等人種」という思い込み
・黄禍論は、白人の優位性が黄色人種に脅かされるのではないかという恐怖感に根ざすもの
 →特に多民族国家の米国においては、移民を制限・排除・差別するさまざまな政策・制度
 →今日、トランプの移民制限政策に通底
・ルーズベルトが実行した対日戦略
 →第1:日露戦争の講和を斡旋し、日露の一方に大勝させず「痛み分け」させるとともに、これを梃子に自ら中国利権に食い込みを図る
 →第2:「オレンジ戦争計画」の策定…対日戦争を想定し策定
 →第3:白色に塗装した新造戦艦16隻を基幹に編成された艦隊による世界一周航海の実施
・今日でも米国では、黄禍論が米国人、特に白人の潜在意識の中に巣食っているのでは
 →黄禍論の矛先は日本に代わって、今や中国に向けられている

□トランプの心の奥底に黄禍論
・トランプ政権誕生は、アフリカ系のオバマ(非WASP[White Anglo- Saxon Protestant:アメリカ社会の中枢を為す社会層])が大統領に選ばれたことへの「揺り戻し」ないしは「最後のあがき」では
 →トランプをはじめ、米国の繁栄を築いた白人たちの潜在意識の中には、今も「白人は黄色人種や黒人よりも優れている」という思いがあるのは確か
・米国の白人が持つ一種の「選民意識」と対をなす「黄禍論」
 →今日、中国に経済戦争を仕掛けたトランプの深層心理の中にも存在しているのでは

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.