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半導体市場の相次ぐ波乱要因:米中摩擦、7-nm、Qualcomm

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需要の伸びの鈍化、メモリ半導体の価格低下が囁かれて、先行きの警戒感が日々強まっている半導体市場に、波乱含みの要因が次々顔をもたげてきている様相である。引き続く米中摩擦は、米国中間選挙の結果を経て貿易交渉に米国のより強硬な姿勢が予想される中、半導体関連へのインパクトの出具合に目が離せない。7-nmがキーワードの最先端の取り組みは、今後に向けてインテル対AMD、そして突っ走るTSMCの構図の成り行きである。そして技術ライセンス供与を迫られる中、業績が低下しているQualcommを巡る動きである。

≪次々顔出しの様相≫

米国の中国DRAMメーカーに対する輸出禁止・起訴の波紋が続いている。

◇Chinese chipmaker's ambitions hit hurdle with U.S. indictment (11月4日付け Reuters)

◇台湾UMC株急落、米起訴で中国リスク鮮明 (11月6日付け 日経)
→台湾株式市場で5日、半導体大手、聯華電子(UMC)の株価が急落、制限値幅の下限(ストップ安)にあたる前営業日比9.7%安の10.75台湾ドルと、2015年9月末以来約3年1カ月ぶりの安値水準で引けた旨。米連邦大陪審が産業スパイの罪でUMCと中国企業を起訴、ハイテク分野の覇権を巡る米中の争いが激化し、台湾企業にとっても中国での半導体事業のリスクが鮮明になっている旨。

当のJHICCはきっぱり否定の姿勢である。

◇China DRAM firm Jinhua denies stealing technology-Jinhua defends its DRAM technology (11月5日付け DIGITIMES)
→Fujian Jinhua Integrated Circuit(JHICC)が同社websiteにて、同社DRAM技術がMicron Technologyから盗まれたものと、米国が同社およびUMCを相手取って行った告発を否定の旨。「Jinhuaはintellectual property(IP)保護に強く重点化しており、他社から技術を盗むなど決してないこと」と、ステートメントにて同社。

中国国内での自主的な設計、調達の動きが加速する様相である。

◇China crystal-growing furnace makers eyeing semiconductor sector-Sources: China's furnace makers pivot from PV cells to chips (11月6日付け DIGITIMES)
→業界筋発。photovoltaic太陽電池用シリコン結晶成長炉の中国のメーカーが、伸びる展望に向けて国内の半導体業界に向かっている旨。台湾・Wafer Worksは、同社のZhengzhou, China(河南省鄭州市)の新しい8-インチウェーハ工場にZhejiang(浙江) Jingsheng Mechanical & Electrical製結晶成長炉を装備している、と特に言及の旨。

◇中国、半導体自主開発急ぐ、対米摩擦で調達不安−百度はAI向け、格力はエアコン用 (11月6日付け 日経 電子版)
→中国のインターネット・家電大手が相次いで半導体事業に参入する旨。百度(バイドゥ)は人工知能(AI)向けの開発を進め、珠海格力電器はエアコン向けを内製化する旨。米国とのハイテク摩擦により、中国企業では先端機器に不可欠な半導体確保への不安が高まっている旨。習近平(シー・ジンピン)国家主席が技術の海外依存を減らす「自力更生」の方針を掲げており、中国企業は自前で開発する動きを加速する旨。

米中首脳会談による摩擦緩和に向けた進展が探られているが、半導体業界への好転を期待してSEMIが協議への支持を表明している。

◇SEMI supports U.S. return to trade talks with China, issues trade negotiation principles (11月8日付け ELECTROIQ)
→SEMIが、12月1日にアルゼンチンでのG20 Summitで予定されているDonald Trump米国大統領と習近平(Xi Jinping)中国国家主席会談での貿易協議について支持&奨励を表明、半導体設計から製造まで半導体業界end-to-endを代表してSEMIは、取引への期待を表わし、グローバルmicroelectronics製造supply chainに有益なprinciplesを提示の旨。

次に、AMDのTSMC 7-nmプロセスを活用したプロセッサ展開が以下の通り活発に行われている。10-nmで後れている様相のインテルへの対抗が特に意識されている。

◇AMD Beats Intel, Nvidia to 7 nm-Epyc, Vega meet but don't blow away Xeon, Volta-AMD unveils it first 7nm CPU (11月7日付け EE Times)
→Advanced Micro Devices(AMD)が、Intelの14-nm半導体およびNvidiaの16-nm半導体との比較結果とともに、同社初の7-nm CPUおよびGPUを披露、該GPUsはmachine learning, rendering応用および高性能computing向けに設計されている一方、該CPUはIntelからの相当offeringsとの競争力を目指している旨。

◇AMD outlines its future: 7nm GPUs with PCIe 4, Zen 2, Zen 3, Zen 4-AMD is making the most of TSMC's 7nm process advantage over Intel (11月7日付け Ars Technica)

◇AMD Announces 7nm Processors-64-core CPUs and revamped Vega GPUs aimed firmly at datacenter applications (11月7日付け EE Times India)

AMDのみならずアップルはじめグローバルな顔ぶれの大手が、TSMCの7-nmを積極的に活用している。最先端微細化の業界鳥瞰図に改めて波乱の趣きが強まっている。

◇Global heavyweight clients touting adoption of TSMC 7nm node-AMD, other TSMC clients rush to adopt foundry's 7nm process (11月8日付け DIGITIMES)
→Advanced Micro Devices(AMD), Apple, Huawei Technologies, XilinxなどTSMCの顧客が、TSMCの7-nmプロセス技術を活発に採用している旨。TSMCは、今年の年末までに50件以上のtape-outsを終える見込み、来年末までには100件のtape-outsを数える旨。

ファブレスの最大手としてグローバルな軋轢に晒される経過が多いQualcommであるが、同社の中核たるmodem半導体特許について米国連邦裁が競合へのライセンス供与を求める予備裁定が出されている。

◇U.S. court rules Qualcomm must licence technology to rivals-Ruling: Qualcomm has to license some patents on modem chips (11月6日付け Reuters)
→米国地裁判事、Lucy Koh氏が、Qualcommは同社modem半導体特許のいくつかを競争相手にライセンス供与しなければならないと裁定、該preliminary裁定は、決着の話し合いが行われるまで裁定を遅らせるというQualcommとFederal Trade Commission(FTC)による動議をKoh氏が打ち消した後に出てきている旨。

◇Judge Rules Q'Comm Must License Modem Patents (11月7日付け EE Times)
→米国連邦裁が、Qualcommに対しIntelおよびSamsungなど競合に同社modem IC特許のいくつかのライセンス供与を求める予備裁定を出した旨。

知財ビジネス慣行、アップルとの係争など影響していると思われるが、四半期の赤字と厳しい業績状況が報告され5Gの伸びに今後の期待がかけられている。

◇Qualcomm tops Q4 earnings targets, eyes 5G growth-Qualcomm said it did not record any revenues in fiscal 2018 for royalties it says it's due on sales of Apple's products.-Qualcomm posts loss of $493M for fiscal Q4 (11月7日付け ZDNet)
→Qualcommの9月30日締め第四四半期が$493 millionのnet loss、前年同期は$168 millionの黒字。今四半期の売上げは$4.5 billion〜$5.3 billionと見ている旨。

◇Qualcomm reports quarterly loss (11月7日付け Reuters)

次々に顔を出す波乱の様相が業界模様を大きく塗り替える可能性に注目せざるを得ないところである。


≪市場実態PickUp≫

【インテルの新プロセッサ】

インテルが、新しいプロセッサ、Xeon E-2100およびCascade Lakeを発表、3D Xpoint技術のOptane-ベースのメモリモジュールおよびsolid-state drives(SSDs)構成での活用が説明されている。

◇Intel Combines Optane Options with New Processor Class-Intel pairs new processors with Optane configurations (11月5日付け EE Times)
→Micron Technologyとの3D Xpointコラボを徐々に縮小していくと発表して僅か数ヶ月、Intel社が、該persistentメモリから得られる最大の利点がどこにあるか概要説明の旨。Intelが、現在availableの6-core CPU、Xeon E-2100およびartificial intelligence(AI), 高性能computingおよびinfrastructure-as-a-service応用に向けて2019年前半にリリースされるCascade Lake先端性能プロセッサを投入、該新プロセッサは、IntelのOptane DC dual-inline memory modules(DIMMs)およびOptane-ベースsolid-state drives(SSDs)で提示される旨。

◇Intel announces new Xeon chips, the Cascade Lake AP and Xeon E-2100-The Xeon E-2100, now generally available, a single socket six-core CPU designed for SMBs. (11月5日付け ZDNet)

◇New Optane Options Outlined-Talks 3D Xpoint memory after announcing it is scaling back on technology (11月5日付け EE Times India)

【ARMのデータセンターへのアプローチ】

インテルが席巻するデータセンター分野への難関突入を図るARMが、smart offloadプロセッサをサーバへの道筋とするアプローチで長年の念願打開を図ろうとしている。

◇Arm's Data Center Two Step-Smart offload chips point the way to servers (11月5日付け EE Times)
→Armが同社annual developers' conferenceでのスポットライトにsmart offloadプロセッサを置いて、データセンターの大望に向けた手段としている旨。

◇ARM Sees Path To Datacenters-Prepares its assault on servers by starting with its smart offload processors (11月6日付け EE Times India)

【メモリ半導体関連】

現下の半導体市場を引っ張るメモリ半導体について、プラスマイナス両面で活発な動きが見られている。

SK Hynixのまた1ランク上を行く4D NANDフラッシュの打ち上げである。

◇SK Hynix launches CTF-based 4D NAND flash (11月5日付け DIGITIMES)

◇SK Hynix Launches World's First CTF-based 4D NAND Flash-SK Hynix lays claim to a 4D NAND flash memory (11月5日付け BusinessKorea magazine online)
→SK Hynixが、世界初、Peri. Under Cell(PUC)技術と対にしたCharge Trap Flash(CTF)設計を用いる96-層512 gigabit(Gb) 4D NANDフラッシュを打ち上げ、該メモリの量産はこの年末前に始まり、顧客需要に合わせて後で生産を拡大する旨。

来年のDRAM ASPsが20%下がると、DRAMeXchangeの見方である。

◇DRAM ASPs to fall as much as 20% in 2019, says DRAMeXchange (11月6日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2019年のDRAM価格は下げの圧力を受けて、メモリASPsが20%低下する予想の旨。PC DRAM契約価格が2018年10月に急激に下がり始め、2018年第四四半期は10%超下がる見込み、9四半期連続の前四半期比値上がりに終止符となる旨。

NANDフラッシュ価格については、足元で下げが拡大している。

◇NAND flash prices see double-digit fall in 4Q18, says DRAMeXchange-DRAMeXchange: NAND flash prices dropped 13% to 17% in Oct. (11月7日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。3D NANDフラッシュメモリデバイスの価格が、9月から10月にかけて13%〜17%と低下、1年で最大の落ち込み、NANDフラッシュ生産capacityの拡大が続いており、第四四半期の間のNANDフラッシュ価格をさらに押し下げる様相の旨。業界筋によると、240 gigabytesを蓄えられるbranded solid-state drives(SSDs)が第四四半期の始め以降$31/unitに下がっている一方、480GB SSDsは$58に低下の旨。

◇NAND型、一段安、スポット2割安、需要停滞で (11月7日付け 日経)
→データの長期保存に使うNAND型フラッシュメモリのスポット(随時契約)価格が一段と下落している旨。指標品種のTLC(トリプル・レベル・セル)の128ギガビット品は、11月上旬時点で1個1.63ドル前後。1カ月前と比べ2割以上安い旨。

マイクロンが、monolithic単品で業界最高容量、12GビットのDRAM量産開始を発表している。

◇Micron announces mass production of industry's highest-capacity monolithic memory for mobile applications (11月7日付け ELECTROIQ)
→Micron Technology社が、該業界最高容量および最初のmonolithic 12Gビット低電力double data rate 4x(LPDDR4x) DRAMの量産を開始、モバイル機器&応用向けの旨。この最新世代のMicronのLPDDR4メモリにより、電力消費において大きな改善が得られる一方、業界最高速のLPDDR4 clock速度が維持されて次世代モバイルhandsetsおよびタブレットに向けた先端性能が得られる旨。加えて、Micronの12GビットLPDDR4xはメモリcapacityを倍増、これまでの世代製品に比べてfootprintを増さないで業界最高容量のmonolithic LPDDR4となる旨。

【折り畳みディスプレイ】

アップルが液晶に重きを置いて、有機ELの不振が伝えられている。

◇iPhone、液晶に重心、有機EL不振、サムスンに打撃 (11月7日付け 日経)
→米アップルの方針転換でパネル大手の韓国サムスン電子が戦略の練り直しを迫られている旨。新型iPhoneは有機ELパネルの搭載機種が2機種に増えたが、サムスンが7〜12月に供給するパネルは前年同期比1割増にとどまる見通し。アップルが割安な液晶パネルを軸に据えたため。

そんな中、Samsungからは折り畳めるfoldableスマートフォン向けの有機ELが披露されている。

◇サムスン、折り畳みスマホ向け有機EL公開、「数カ月内に量産」 (11月8日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子は7日、画面を折り畳むことができるスマートフォン向けの有機ELディスプレーを初めて公開、折り畳み式のスマホは「フォルダブル」と呼ばれ、次世代スマホの本命と目されている旨。米国法人のジャスティン・デニソン上級副社長は「数カ月内に量産を始められる」と話し、2019年前半のスマホの発売をにおわせた旨。

そのSamsungに先んじること数週間前、中国のstartupがfoldableディスプレイおよびスマートフォンを発表していたことに気づかされている。製品の出来栄えに注目である。

◇Startup Beats Samsung in Foldables-Royole will sell handsets using its flex display in December (11月9日付け EE Times)
→Samsungが水曜7日、来年のfoldableスマートフォン出荷計画を発表したが、ほとんど知られないライバルが実際に数週間前にそのような製品を最初に発表しており、12月の出荷で打ち負かしを狙っている旨。startup、Royoleは同社Shenzhen(深セン)のheadquartersにて6月にflexibleディスプレイに向けたGen6 fabの立ち上げを開始、$1.7 billionのprivate financingおよび2,000+人のスタッフで、先端ディスプレイとそれを用いるconsumer機器を販売するSamsungのようなconglomerateを目指している旨。RoyoleのFlexPaiタブレットは、7.8-inch AMOLEDディスプレイ・ベース、スマートフォンの大きさに折り畳める旨。

foldable AMOLEDパネルの出荷展開の読みが次の通りあらわされている。

◇Foldable AMOLED panel shipments to top 50M units by 2025 (11月9日付け ELECTROIQ)
→IHS Markit発。スマートフォンの革新的なユーザexperience需要の伸びに焚きつけられて、foldable active-matrix organic light-emitting diode(AMOLED)パネルの出荷が、2018年での打ち上げ以来2025年までに50 million台に達する見込みの旨。foldable AMOLEDパネルは、2025年までにAMOLEDパネル出荷全体(825 million)の6%、あるいはflexible AMOLEDパネル出荷全体(476 million)の11%を占めると見る旨。

【シリコンウェーハ出荷面積】

SEMIから四半期ごとあらわされるシリコンウェーハ出荷面積が、半導体市場の熱い活況を反映、7-9月第三四半期もまたまた史上最高を更新、3四半期連続最高となっている。以下の推移が如実にあらわすところである。

◇Third quarter silicon wafer shipments increase, set new quarterly record (11月7日付け ELECTROIQ)
→SEMI Silicon Manufacturers Group(SMG)のシリコンウェーハ業界四半期分析。2018年第三四半期の世界シリコンウェーハ面積出荷が、前四半期の最高記録を上回ってさらに史上最高を更新の旨。第三四半期は3,255 million平方インチに達して、前四半期の3,164 million平方インチから3.0%増、前年同期比8.6%増。
シリコン面積出荷の流れ−半導体用途のみ(単位:million平方インチ):

1Q2017
2Q2017
3Q2017
4Q2017
1Q2018
2Q2018
3Q2018
Total
2,858
2,978
2,997
2,977
3,084
3,164
3,255

 [Source: SEMI, (www.semi.org), November 2018]

◇Q3 wafer shipments up 3%-Q3 silicon wafer area shipments increased 3% on Q2 to set another all-time high, according to the SEMI Silicon Manufacturers Group(SMG).-SEMI: Q3 wafer shipments rose 8.6% year over year (11月7日付け Electronics Weekly (UK))

◇半導体ウエハー出荷面積、3四半期連続最高、7〜9月3%増、「IoT」需要伸びる (11月9日付け 日経)


≪グローバル雑学王−540≫

悪の枢軸と米国・ジョージ・W・ ブッシュ大統領により2002年の一般教書演説で名指しされた国の1つのイラク。その年の夏、湾岸戦争に至る前にイラクを訪れた著者が目にしたバグダッドはじめ街の実態に、

『世界の路地裏を歩いて見つけた「憧れのニッポン」』
 (早坂 隆 著:PHP新書 1149) …2018年7月27日 第1版第1刷

より触れていく。入国を1ヶ月以上も待たされ、いざ入ると政府の監視が付きまとう中、当時は二十代と若い著者のまさに命がけの行動記録である。戦闘地域への立ち入りが今またニュースの焦点に挙がっている今日でもある。


第八章 イラク―――一国平和主義は卑怯で、みっともない

□すべての結果は紙一重でしかない
・(著者が)イラクを訪れたのは2002(平成14)年の夏
 →フセイン政権の打倒を目指すアメリカが、「いつ進攻してもおかしくない」という時期
・ヨルダンの首都、アンマンから陸路でイラクへ入ろうとの考え
 →イラクへの入国ビザがなかなか下りず、アンマンで足止めを食らうことに
・アンマンでの拠点は、ドミトリータイプの小さな安宿、「クリフホテル」
 →近隣のモスクからは「礼拝の呼び掛け」、「アザーン」が響いてくる
・入国ビザが発給されたのは、1ヶ月以上が過ぎた頃
 →「観光ビザ」での入国、知り合った男女4名の日本人を誘い、計5名での「観光ツアー」という形に
 →それから2年後、3名の日本人がイラクで拘束、「自己責任論」で日本国中を騒がせた
 →その半年後にイラクで殺害された日本人の青年も、同じクリフホテル
 →すべての結果は紙一重、慄然とせざるを得ない
・国境での入国審査は、約2時間にも及ぶ
 →「エイズ検査」で血を抜かれ、後にも先にもこの時だけの経験
 →外務省と情報省から派遣された役人たちがぴったりとついて、彼らの厳重なる監視下へ

□「日本人なのにグレンダイザーを観ていないなんて!」
・まず滞在したのは首都のバグダッド
 →市場「スーク」には、生活物資が溢れ、人々の陽気な笑顔に充ちていた
 →犯罪者への厳罰が徹底、治安も抜群に良い
・ちょうど日韓共催のサッカーワールドカップが終わって間もない時期
 →次々に挙がる日本人選手の名前
・従来、日本とイラクの二国間関係は極めて良好
 →湾岸戦争前、当地の在留邦人の数は5000人超
 →日系企業の進出と共にこの地にやってきたのが、日本のアニメコンテンツ
  →特に人気、ロボットアニメ「UFOロボ・グレンダイザー」
  →「キャプテン翼」は、イラク版では「キャプテン・マージド」
 →日本人の繊細なものづくりの魂は、戦乱の絶えないこの砂漠の地に貴重な笑顔の花を咲かせている

□戦争さえなければ観光立国になれる国
・ガイド兼通訳の男性、ワリードの案内で、イラクの各地を回った
 →8月という真夏、最高気温はなんと52℃にまで
・ワリードのお薦め、この地の民族衣装を購入
 →「カフィーヤ」と呼ばれる格子模様の布を頭に
 →「イカール」という黒い二重の輪で止める
 →「ガラビーヤ」と呼ばれる足元まであるワンピース
  …コットン素材、汗の吸収が速く、肌触りも快適
・イラク国内には、歴史的な観光スポットが豊富に点在
 →戦争さえなければ、観光立国になれる国
 →「バビロンの空中庭園」…高さ25mほどの庭園
 →「ハンムラビ法典」も、バグダッドの国立博物館に
  →バグダッドのものはレプリカ、原物はパリのルーブル美術館にあるとのこと

□豪快な鯉の塩焼きともぐりの酒屋
・イラクの街の中では、政治の話は御法度
 →だが、移動中の車内では次第に彼らの本音
  →ワリードはフセインのことを「彼」と呼び、「彼は戦争の象徴」
・イラク料理は別名「メソポタミア料理」とも
 →スパイスは豊富だが、総じて辛くはない
・チグリス川沿いのお洒落な水上レストランで、バグダッドの名物料理「マスグーフ」に挑戦
 →大ぶりの鯉の一種を背開きにし、炭火で豪快に塩焼きにした料理
 →本来なら冷たいビールでも呑みたいところだが、アルコール類は置いていない
 →大の大人が瓶のコーラにストロー
  →「ペプシ」しかなく、アラブ諸国では「コカコーラはイスラエル寄り」として疎んじられている
・実は街には「もぐりの酒屋」が存在
 →ワリードに頼み込んで、缶ビールをホテルの自室で
 →「呑むのは必ずホテルの部屋で。ロビーでも絶対に禁止」と、ワリードからの忠告

□戦時下の町への脱走
・イラク中南部に位置する街、ナジャフでの滞在の際
 →(著者は)他の日本人4名の了解を得た上で案じた一計
 →「ムスリムルック」でホテルを脱け出し、監視の目から逃れることに成功
  …まだ二十代で若かった
・イスラム教シーア派の聖地、ナジャフ
 →街の中心部から、猛暑の中、1時間ほど歩くと、次第に土と泥でつくったような粗末な家々
 →貧しい地域はやはり存在。外国人の目に触れないようにしていただけ
・(著者の)脱走は、部屋の様子を伺いにきたワリードによって発覚、ホテルは大変な騒ぎに
 →彼に頭を下げるとワリードが言う:「イラクは今も戦争中。外国人はスパイと見なされる。哀しいけれど、ここはそういう国」

□憲法九条で制限される現地の復興事業
・米軍を中心とする多国籍軍が湾岸戦争時に使用した劣化ウラン弾は、イラクの大地に深刻な爪痕
 →息子が白血病になったというイラク人男性の訴え
  …「日本人はもっと声を上げて主張を。『こんな兵器を使うのはもう止めろ』と。日本はアジアで唯一の信頼に足る大国、もっと存在感を示してほしい」
・(著者の)イラク訪問から、はや15年以上もの歳月
 →戦争は取り返しのつかない傷跡を残した
 →宗派対立は激化。テロが常態化する時代
 →サダム・フセイン政権の破滅が、過激派組織「イスラム国」(IS)の誕生へ
 →あの夏に出会ったイラク人たちはどうしているだろう

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