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史上最高のオンパレードの一方で、米中摩擦はじめ水を差すいくつか

今年前半の世界半導体販売高データがIC Insightsから、第二四半期の世界モバイルDRAM売上げがDRAMeXchangeから、そして第二四半期のグローバル半導体業界売上げがIHS Markitから、それぞれあらわされて史上最高が相続く現下の絶好調の市況の様相を映し出している。同時に先行き関連で、米中摩擦による半導体を含めた供給網のひび割れ懸念が出始めている一方、最先端微細化の難航による量産投資の遅れがみられ、北米半導体装置の世界billings月次データも頂上越えが顕著になるなど、水を差すいくつかの動きが並行してあらわれてきている。

≪ますます目が離せない刻々の展開≫

今年前半の熱い活況の世界半導体市場を反映するデータ発表のオンパレードである。IC Insightsの今年前半の世界半導体販売高ではサプライヤ・ランキングトップ15があらわされ、メモリ・サプライヤの急伸が目立ち、首位のSamsungが2位のIntelとの差を拡げ、SK Hynixは前年同期比56%増と最も大きな伸びを示している。

◇Seven top 15 semi suppliers of the first half of 2018 register ≥20% gains (8月20日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsが今月始めリリースしたAugust Update to the 2018 McClean Reportから、2018年前半の世界半導体(ICおよびO-S-D[optoelectronic, sensor, and discrete])販売高サプライヤ・ランキングトップ15、下記参照:
https://electroiq.com/wp-content/uploads/2018/08/b008d676-feef-4b21-82a0-d049c3069704.png
本社所在地別の内訳:
 米国 7社、欧州 3社、韓国 2社、台湾 2社、日本 1社
 …Broadcomが、2018年4月始めに本社をシンガポールから米国に正式移転、米国としてカウント

◇Top 15 Chip Suppliers Outgrew Market in First Half of Year (8月21日付け EE Times)
→IC Insights発。今年前半の販売高による半導体サプライヤ・トップ15社のうち11社が二桁の前年同期比増、7社が20%を上回る伸びの旨。該7社のうち5社がメモリ・サプライヤであり、Samsung Electronics, SK Hynix, Micron Technology, 東芝およびWestern Digital(SanDisk)の旨。ノンメモリメーカーで20%を上回ったのは、NvidiaおよびSTMicroelectronicsである旨。

◇Samsung extends semiconductor market lead in 1H18, says IC Insights-IC Insights: Samsung keeps its status as top chip vendor (8月21日付け DIGITIMES)

◇SK hynix boasts sharpest growth among chipmakers in H1: IC Insights-IC Insights: SK Hynix boosts first-half sales by 56% (8月21日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→IC Insightsが特に言及、今年前半の半導体販売高で、SK Hynixが最も急峻、前年同期比56%増の$17.7 billion、驚くべきことに、メモリサプライヤ・ビッグ3、Samsung, SK HynixおよびMicronがおのおの、35%を上回る前年同期比の伸びを記録の旨。

◇Top Chip Companies Outpacing Market Growth-Memory companies top growers, according to IC Insights (8月22日付け EE Times India)

DRAMeXchangeによる第二四半期の世界モバイルDRAM売上げは、最高を記録する勢いが続いている。

◇Global mobile DRAM sales hit record high in 2Q18, says DRAMeXchange-DRAMeXchange: Q2 mobile DRAM sales hit $8.87B, a record (8月20日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。第二四半期の世界モバイルDRAM売上げが約$8.87 billion、前四半期比5.1%増、最高を記録の旨。スマートフォン生産、特にAndroid-ベースモデルの増加のお蔭で、第二四半期のモバイルDRAMビット出荷およびaverage selling prices(ASPs)がともに上昇の旨。

IHS Markitからは第二四半期のグローバル半導体業界売上げがあらわされ、$120.8 billionと最高を記録している。このまま増勢が続けば、年間販売高$500 billionの大台突破も見えてくるが、どうなっていくかという現時点である。

◇Worldwide Semiconductor Revenue Hit Record $120.8 Billion in Q2 2018, IHS Markit Says-Samsung Electronics, Intel and SK Hynix continued to lead the semiconductor market in Q2 2018 (8月22日付け IHS Markit)

◇Worldwide semiconductor revenue hit record $120.8B in Q2 2018 (8月22日付け ELECTROIQ)
→IHS Markit発。2018年第二四半期のグローバル半導体業界売上げが、最高記録の$120.8 billionに達し、前四半期比4.4%増、前年同期比19.4%増。
すべての応用市場および地域で伸びている旨。
2018年第二四半期トップ10半導体サプライヤ、下記参照:
https://electroiq.com/wp-content/uploads/2018/08/Semis_Top_10_2018_IHSM_1808.jpg
第二四半期の市場シェア・トップ3:
 Samsung Electronics 15.9%
 Intel        13.9%
 SK Hynix       7.9%

◇Samsung Maintains Chip Sales Lead Over Intel (8月23日付け EE Times)

そうたやすくはいかないというあらわれか、熱い活況に水を差す事態、データが見えてきており、まずは、米中摩擦の制裁関税賦課措置の応酬によるグローバルsupply chainへのインパクトである。半導体にも及んで、「中国からの輸入品」の多くが米国企業のものであり、大打撃を被るのは米国企業に他ならないと反発の声が高まっている。

◇グローバル供給網にヒビ、米中貿易戦争第2幕 (8月23日付け 日経 電子版)
→米国と中国が23日、160億ドル相当の輸入品に追加関税をかけあい、貿易戦争は「第2幕」に入る旨。グローバル企業が築いたサプライチェーン(供給網)にヒビが入り、世界の自由貿易体制は大きく揺らぐ旨。米中は全面戦争へと突き進むのか、休戦につながる取引(ディール)をするのか。その不透明感は世界経済の先行きにも暗い影を落としている旨。
米国による中国の知的財産権侵害に対する制裁関税の第2弾は、半導体や電子部品、樹脂製品を含む旨。特に半導体関連はメモリやプロセッサ、生産の各工程で使う装置や交換パーツまで対象が幅広い旨。実は中国企業を狙い撃ちにしているようで、大きな被害を受けるのは米企業。「中国からの輸入品」の多くが米国企業のものだからの旨。

次に、最先端微細化の開発が技術的に難航気味で、量産投資の遅れがあらわれてきている。

◇活況半導体、微細化の試練、インテルやTSMC、先端品遅れ、装置メーカーに影響も (8月21日付け 日経)
→活況が続く半導体業界に変調の兆しが出てきた旨。牽引役だった半導体メーカー大手が今期の設備投資の減額を表明。最先端品の開発が技術的に一層難しくなり量産投資の遅れが響く旨。スマートフォンの販売低迷でメモリ価格も伸び悩み、米中貿易摩擦も影を落とす旨。かつてない活況を指す「スーパーサイクル」の持続力にも不透明感が漂い始めた旨。

メモリの一角、NANDフラッシュの価格について、次の通り下落が進んでいる。

◇NAND、4割安、品薄感解消、スポット (8月23日付け 日経)
→データの長期保存に使うNAND型フラッシュメモリのスポット(随時契約)価格が一段安となり、指標品の年初からの下落率が4割に達した旨。スマートフォン用の需要が鈍る一方、メーカーが大容量に適した製品の量産を進め、品薄感が解消した旨。TLC(トリプル・レベル・セル)128ギガビット品は8月中旬時点で1個2.3ドル前後と前月比8%安、同64ギガビット品も1個2.22ドル前後と前月比8%安い旨。

北米半導体装置メーカーの月次世界billingsが発表されたが、増勢から一転2ヶ月連続減少している。

◇North American semiconductor equipment industry posts July 2018 billings (8月24日付け ELECTROIQ)
→SEMIのJuly Equipment Market Data Subscription(EMDS) Billings Report。北米半導体装置メーカーの2018年7月世界billingsが$2.36 billion、前月、2018年6月の最終レベル、$2.48 billionから4.9%減、前年同月、2017年7月の$2.27 billionに対して4.1%増。



Billings
Year-Over-Year
(3ヶ月平均)
February 2018
$2,417.8
22.5%
March 2018
$2,431.8
16.9%
April 2018
$2,689.9
25.9%
May 2018
$2,702.3
8.1%
June 2018 (final)
$2,484.3
8.0%
July 2018 (prelim)
$2,363.1
4.1%

                 [Source: SEMI (www.semi.org), August 2018]

◇North American semi equipment industry billings reach 8-month low (8月24日付け DIGITIMES)

このような市況データとともに刻々目が離せない中国市場の動きであり、現下では3D NANDフラッシュメモリ市場への参入を進めている中国のYangtze Memory Technologiesが1つである。

◇3D NAND Flash Wars Begin-Market overcrowding, more efficient manufacturing, and growing list of scaling issues create a challenging competitive landscape-The 3D NAND flash battle has a new combatant (8月20日付け Semiconductor Engineering)
→3D NANDフラッシュメモリ市場に中国のYangtze Memory Technologiesが新たに参入、従来のサプライヤは引き続き1つのメモリ半導体に96層および128層のstackingに向けて進めている旨。「最高の数のstacksの競い合い」と、TechInsightsのアナリスト、Jeongdong Choe氏。

半導体関連のハブ拠点構築に向けて、今回は広東省珠海市での動きが以下の通り見られている。

◇Foxconn Pursues Chip Ambitions With Plans for China Plant-Foxconn, known for assembling iPhones, and the Chinese city of Zhuhai will jointly develop the factory in the Pearl River Delta-Report: Foxconn teams with Chinese city to build a chip fab (8月17日付け The Wall Street Journal)
→本件事情通、金曜17日発。Foxconn Technology Groupが半導体への新たな取り組み推進、中国・珠江デルタ(Pearl River Delta)の現地政府と半導体製造工場の建設に向けて連携していく旨。珠海市(Zhuhai:広東省)が金曜website上で、Foxconnが半導体および半導体装置設計の分野で同市と協働すると発表、しかしさらに詳細は示していない旨。

◇Foxconn Teams Up With Zhuhai Government To Pursue Chip Ambitions (8月20日付け China Money Network)

◇Chinese Electronics Firm Gree Sets Up $1B Unit To Expand To Semiconductor Sector-Appliance manufacturer in China invests $150M in chip unit (8月22日付け China Money Network (Hong Kong))
→National Enterprise Credit Information Publicity Systemでのデータ。中国のapplianceメーカー、Gree Electric(Zhuhai, Gunagdong Province:広東省珠海市)が、半導体領域に拡げて新しい部門を設立、該新会社、Zhuhai Zero Border Integrated Circuit Co. Ltd.がRMB1 billion($150 million)の登録資本で設立された旨。


≪市場実態PickUp≫

【米中摩擦関連の動き】

半導体業界における米中の今後について、Arm Holdingsならではのコメントである。

◇Arm co-founder says China will overtake US in microchip dominance-Arm co-founder predicts China will end US chip dominance (8月19日付け The Telegraph (London))
→Arm Holdingsのco-founder、Hermann Hauser氏。中国が、世界半導体業界の米国席巻を終わらせようとしている、と見ている旨。Armは2016年に日本のSoftBank Groupに売却となり、英国唯一のグローバル関連半導体メーカーがもはや欧州でないことを残念としている旨。

関税賦課の進め方について、Trump政権内での意見が分かれているのでは、との見方である。上記のように「中国からの輸入品」の多くが米国企業のものとして、半導体業界からは大きな被害を受けるのは米国企業との訴えが強まっている。

◇U.S. Moves Toward New Tariffs on China Despite Fresh Round of Trade Talks-Two approaches reflect split in Trump administration on how to deal with Beijing; American companies complain about levies at hearings-US plans more tariffs on China while prepping for talks (8月20日付け The Wall Street Journal)
→Trump政権が追加中国製品$200 billionについての関税に動いており、Donald Trump大統領は記者団に今週中国との貿易交渉での進展に悲観的としている旨。貿易交渉に備える間でのさらなる関税の進みは、White Houseでの意見の分かれを反映、と関係筋はみている旨。

◇CEOs trying to temper Trump tariffs as U.S.-China talks open-Almost 360 individuals are scheduled to testify over six days of hearings that started Monday on the latest round of proposed actions against Chinese imports. (8月20日付け The Seattle Times/Bloomberg)

◇Exclusive: Trump doesn't expect much from China trade talks this week (8月21日付け Reuters)

オーストラリア政府も中国通信機器の2大メーカー、華為とZTEの参入を禁止する動き。中国包囲網が広がっている。

◇豪政府、華為・ZTEの5G参入禁止、中国包囲網広がる (8月24日付け 日経 電子版)
→中国通信機器の2大メーカーの華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)が、オーストラリア政府から次世代高速通信「5G」の参入を正式に禁止されたことが23日、明らかになった旨。同国政府は、5Gの技術を介し、中国メーカー側に重要情報が漏洩することを危惧した旨。米国も中国2社に対し、厳しい参入制限を行っており、中国包囲網が世界で広がってきた旨。

そうした中、ワシントンDCでの米中事務レベル協議が終了、今後の展開に注目である。

◇米中事務レベル協議が終了、米、知財侵害対策を要請 (8月24日付け 日経 電子版)
→米中両政府は23日、貿易問題を巡る事務レベル協議を終えた旨。ホワイトハウスによると、中国に対して知的財産侵害の問題への対処を求めた模様、両国は同日、160億ドル(約1兆8千億円)分の輸入品に追加関税をかけ合うなど対立が激しくなっている旨。トランプ米大統領が協議を踏まえて今後の対応を決めるが、中国への強硬姿勢を和らげるかは不透明の旨。

【Hot Chips conference】

最先端&次世代の半導体設計&アーキテクチャーの取り組みが披露されるHot Chips conference(2018年8月19-21日:Cupertino, CA)よりいくつか。

AI関連の比率の高さがここでもという以下の内容である。

◇AI Startup Hires Two Tesla EEs-Hot Chips highlights race to new architectures (8月20日付け EE Times)
→Esperanto Technologies社(Mountain View, California)が、TeslaのAutopilotグループ出身の2人のsenior engineering managersを採用、David GlascoおよびDan Bailey両氏は、deep-learningおよび汎用jobsに向けたhigh-end RISC-Vコアおよびプロセッサに取り組む該startupのためにengineeringを率いる旨。このニュースは、microprocessor(MPU)設計者のトップの集まりの1つ、Hot Chips(2018年8月19-21日:Cupertino, CA)の開幕にて出てきている旨。今年の該イベントでの講演の半分ほどがmachine learningに焦点を当てており、途上の型のcomputingに向けたシリコンacceleratorsの設計競争を反映している旨。

◇SiFive announces first open-source RISC-V-based SoC platform with NVIDIA Deep Learning Accelerator technology (8月20日付け ELECTROIQ)
→商用RISC-VプロセッサIPプロバイダー、SiFiveが、NVIDIAのDeep Learning Accelerator(NVDLA)技術ベースのedge推論応用に向けた初のopen-source RISC-V-ベースSoCプラットフォームを発表、該デモは、今週のHot Chips conference(2018年8月19-21日:Cupertino, CA)で披露され、世界初のLinux-capable RISC-Vプロセッサ、Freedom U540搭載のSiFiveのHiFive UnleashedボードにChipLinkを通して接続されたFPGA上で動作するNVDLAから構成されている旨。

◇Xilinx Leads a Tour of Everest-Flexibility, not frequency, is the new mantra (8月23日付け EE Times)
→XilinxがHot Chips(2018年8月19-21日:Cupertino, CA)にて、post-Moore's Law時代を席巻すると見込むacceleratorsに向けた新しい種類のFPGA計画のさらに詳細を披露の旨。現在の16-nm FPGAsに比べていわゆるAdaptive Compute Acceleration Platform(ACAP)は、deep learningおよび5G radio処理についてそれぞれ20倍および4倍の性能アップを与える旨。その最初の半導体、Everestは、今年7-nmプロセスでtape outの旨。

今年始めのプロセッサの脆弱性、ここにきてTSMCの製造ラインでの汚染とセキュリティ問題が続いており、その対応の取り組みである。

◇Security Era Sprouts in Silicon-Experts call for a new computer architecture-Experts outline a need for securer chips, computers (8月21日付け EE Times)
→1)Hot Chips conferenceエキスパート諸氏がHot Chips conference(2018年8月19-21日:Cupertino, CA)にて、新世代のsecure-by-design computersを求めており、その方向での小さなステップとして、MicrosoftとGoogleがそれぞれ別ながら似た感じのハードウェアセキュリティ。アーキテクチャーを表わしている旨。
 2)今年多くのプロセッサでSpectreおよびMeltdown脆弱性が発覚、annual Hot Chips conference(Silicon Valley)でのプレゼンが半導体およびcomputingアーキテクチャーのセキュリティに重点化の旨。MicrosoftおよびGoogleが各々ハードウェアセキュリティアーキテクチャーを提案、このようなサイバーセキュリティ欠陥を修復する必要性を除いている旨。

現下の半導体市場を引っ張るDRAMの後継代替を目指すNRAM(Nanotube RAM)の取り組みがあらわされている。

◇Nantero Details DRAM Alternative-NRAM roadmap leads to 256G devices-Nantero touts NRAM tech as a successor to DRAMs (8月22日付け EE Times)
→Nantero(Woburn, MA)がHot Chips(2018年8月19-21日:Cupertino, CA)にて、carbon nanotubes(CNTs)ベースの同社設計がDRAMの置き換えになっていくと主張、第1ステップとして、パートナーの富士通が該技術を用いるDDR4 DRAM代替について来年出荷を目指している旨。DRAM技術は64-Gbitデバイスを巡る壁に当たると見込まれており、Micronなどのサプライヤがphase-changeメモリなどの代替を探求している旨。

【ポスト「京」】

年2回発表されるスーパーコンピュータ性能を競う「トップ500」ランキングは、ここ数年は中国と米国の凌ぎ合いの様相を呈しているが、かつて引っ張った我が国はどうなのか。2021年の稼働を目指す富士通のポスト「京」について、目標性能、CPUイメージなど、打ち上げられている。

◇ベールを脱いだ「ポスト京」CPU、アーキと性能を見る (8月23日付け EE Times Japan)
→富士通が22日、2021年頃の共用開始を目指すスーパーコンピュータ、「ポスト『京』」に搭載するCPU、「A64FX」の詳細を公開、倍精度ピーク性能は2.7TFLOPS以上、「従来のスーパーコンピュータが得意とするコンピュータシミュレーションだけでなく、ビッグデータやAI(人工知能)など、幅広い分野に適応するCPU」である旨。同社は、LSIに関するシンポジウム「Hot Chips 30」(2018年8月19-21日:Cupertino, CA)で、A64FXの技術概要を講演した旨。7nm FinFETで開発され、48個の計算コアと4個のアシスタントコアを含むプロセッサであり、合計32GバイトのHBM2メモリ、Tofuインターコネクトのコントローラ、PCI Express 3.0(PCIe Gen3)のコントローラーを集積の旨。トランジスタ数は87億8600万個に到達しており、「京」のCPUであるSPARC64 VIIIfxのトランジスタ数(約7億6000万個)から11倍超もの回路規模となる旨。

◇富士通CPU、スパコン計算速度100倍、米中に後れ (8月23日付け 日経)
→富士通は22日、次世代の国産スパコン、ポスト「京」に搭載するCPUの仕様を発表、同社はスパコンを次の成長の「切り札」に据えるものの、世界での存在感は低下している現状。米中がハイテク技術で火花を散らすなか、国産スパコンの低迷は電機産業の衰退の象徴ともいえそうな旨。ポスト「京」は理化学研究所が2021年の稼働に向けて準備を進めており、国が約1100億円、富士通側が約200億円出し、現在のスパコン「京」に比べて約100倍計算速度を高める計画。世界ランキングで現在首位に立つ米IBM製の10倍程度の速度になる旨。富士通が基幹部品であるCPUの実用化にめどをつけたことで、計画通り2021年の稼働が見えてきたことになる旨。

【UMCの中国子会社】

ファウンドリーの台湾・UMCの中国子会社、Hejian Technology (Suzhou)の上海証券取引所でのIPOをUMCの株主が承認している。資金調達もあるものの人材引き抜きに対抗する資金確保の狙いもあるという、中国市場ならではの実態が垣間見えている。

◇UMC stays focused on profitability-UMC shareholders approve a public offering for China unit (8月21日付け DIGITIMES)
→Hejian Technology (Suzhou)が、Shanghai Stock Exchangeでの$365 million initial public offering(IPO)を進められ、UMCの株主が承認した動きの旨。UMCのchief financial officer(CFO)、Chi Tung Liu氏は株主に対し、該IPO資金は現状のウェーハfabラインの格上げ、新規生産装置の購入およびR&D人材の発掘に用いるとしている旨。

◇UMC investors say yes to China subsidiary's IPO (8月21日付け The Taipei Times (Taiwan))

◇台湾UMC、中国で子会社上場へ、人材流出防ぐ (8月21日付け 日経)
→半導体受託生産世界3位、台湾の聯華電子(UMC)は20日に臨時株主総会を開き、子会社の中国での新規上場案が株主に承認された旨。上場に伴う公募増資で25億元(約400億円)を調達するが、真の狙いは従業員に株式を付与するストックオプションによる人材確保にもある旨。政府の後押しを受ける中国勢による技術者の引き抜きに対抗する旨。

【中国半導体業界の問題意識】

半導体業界の自立化を国家目標に掲げる中国に関してがまたまた続くが、現下の問題意識の1つとして人材不足が以下の通りあらわされている。

◇Talent shortage hampers China's IC sector (8月20日付け ECNS.cn)
→最近推進に向けた努力が国を挙げて行われている分野、中国IC業界には非常に大きな人材のgapがあるが、識者はさらに競争力のある報酬、関連する教育の強化および他分野にまたがる人材育成でこのgapを克服できるとしている旨。土曜18日にリリースされた業界white paperによると、中国IC業界に向けた人材poolは2017年末時点で約40万人であるが、該gapを埋めて国内IC業界における開発需要に適合するにはさらに32万人を要する旨。しかしながら、関連分野を卒業してIC業界で働こうとする学生は約30万人に留まる旨。識者は特に言及して、この分野の熟練workersが重大な問題を打開でき、伴わなければ業界全部の展開速度が遅れることにもなるとしている旨。

もう1つ、海外との共存共栄を求めるTsinghua Unigroupのトップの問わず語りに吐露する風情のコメントが見られている。

◇Tsinghua Unigroup president calls for coexistence with foreign chip giants amid country's efforts to catch up in semiconductors (8月23日付け South China Morning Post)
→Tsinghua Unigroupのchief executive、Zhao Weiguo氏が木曜23日、重慶市(Chongqing)でのBig Data and Smart Technology Summitにて。
「multinational半導体メーカーが、中国メーカーに向けて一口残せることを期待する。」と、該分野のプレーヤー感覚がいろいろ入り混じる中珍しい一目の披露の旨。中国の国家支援トップ半導体メーカーのheadが、半導体技術で西側に追いつく努力の渦中、現地と海外サプライヤの間の共存を求めた旨。


≪グローバル雑学王−529≫

ロシアの選挙介入はじめトランプ大統領個人を巡る問題がここにきて取り沙汰されている一方、トランプ米政権は8月23日、中国の知的財産侵害に対する制裁関税の第2弾を発動、それぞれの摩擦が一層の高まりを見せているが、

『「米中関係」が決める5年後の日本経済新聞・ニュースが報じない貿易摩擦の背景とリスクシナリオ』
 (渡邉 哲也 著:PHPビジネス新書 393) …2018年5月11日 第1版第1刷発行

より、トランプ大統領の世界を引っ張る戦略をいろいろな切り口から読み解いていく前半である。この11月にはアメリカでは中間選挙を控え、トランプ政権の政策の是非が国民に審判されるということで、主張、やり方を貫く展開が求められる情勢がある。制裁関税について半導体業界では、「中国からの輸入品」の多くが米国企業のものであり、大きな被害を受けるのは米国企業という訴えが見られている現時点である。


第4章 トランプの世界戦略を読み解く ―――前半

[POINT OF VIEW]
・本章では、アメリカからの視点で対中戦略を読み解く
 →今後の米中対立の展開とそれによる世界各国への影響、新秩序の行方
・2018年3月1日、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限の表明をしたトランプ大統領のツイート
 →「貿易戦争でも構わない、勝つのは簡単だ(Trade wars are good, and easy to win)」
・世界各国を巻き込む貿易戦争は、いままさに幕が開けた

■強まるアメリカ型「切り離し」

Q59:輸入制限発動! アメリカ国内の反応は?
・今般の輸入制限への対抗措置として、中国はアメリカ産大豆を標的に
 →アメリカの大豆の輸出先の実に6割が中国
 →中国の報復措置が始まれば、アメリカ産の大豆は4割値下がりするという観測も
・IT業界もサーバやネットワーク機器の多くを中国で組み立てて輸入
 →制裁の対象となればアメリカ国内の販売価格の上昇に
・2018年3月22日、米大手企業の経営者団体、ビジネス・ラウンドテーブル(BRT)の声明
 →「中国に対する長期的な戦略なしに一方的に関税やその他の規制を課すことは、アメリカ国内の物価上昇を招くだけでなく、米国の企業や製品の競争力を低下させ、米国の労働者や消費者に害を与える。・・・」
 →「輸入制限等を一律廃止せよ」といっているわけではなく、「やり方を考えてくれ」と主張している
 →基本的に制裁には反対していない
 →中長期的に見ると、対中輸入制限はアメリカにとってプラス側面が多い
・一方、現実的な対処とは思えない中国の報復措置
 →中国は現在、アメリカから輸入しているだけの量の大豆を他国から調達できない

Q60:ロシアの報復措置にアメリカはどう対応するか?
・2018年3月23日、ロシアがアメリカの鉄鋼とアルミニウムの輸入制限に対して、報復措置の準備を検討する可能性を明らかに
 →アメリカからすればカリフォルニア州の半分程度の経済規模のロシアなど、どうでもいいとの考えも
 →経済に限定していえば、中国こそがアメリカの唯一のライバル

Q61:アメリカが他国と付き合う基準は何?
・欧米人にとっての外交の基本は、自国のスタンスを明確にすること
 →移民国家、アメリカ
  →自分がどういう人間であるかを明らかにすることが他者とのコミュニケーションの第一歩
・アメリカで生まれたという確たる証しが、アメリカ人がアメリカ人である条件の一つ
 →次のプロセスとして、「付き合う相手は敵か味方か」
  …自国にとってメリットがあるのかないのか

Q62:米中貿易戦争が軍事衝突に発展する可能性はあるか?
・中国は共産党の一党独裁、基本的に自由主義経済を否定
 →習近平政権になっていっそう明確に
・トランプ大統領にとって中国は敵でしかない
 →ただし、敵だから単純に潰せばいいとはならない
・核の抑止力の効果発揮
 →失うものが何もない国家や、冷静な判断力をもっていない指導者には効かない
 →アメリカとしては、北朝鮮とかつてのキューバとは明らかに異なるスタンスで応じようと認識しているはず
・トランプ大統領は中国を「economic enemy(経済の敵)」とキャラ付け

Q63:今回の制裁は第二次世界大戦前のABCD包囲網と同じか?
・トランプ政権の閣僚メンバーのほとんどは、かつて1990年代に日米貿易摩擦交渉を行ってきた猛者たち
 →今回の鉄鋼・アルミニウムの輸入制限の表明以来、やっていること
  →第二次世界大戦前のABCD包囲網とそれほど違いはない
   …(注) ABCD包囲網=1930年代後半に、日本に対して行われた貿易制限の総体。America, Britain, China, Dutch、各国の頭文字
・トランプ大統領は自国内での生産を可能とするために、外科的手術で中国の影響力を排除していく「切り離し」作業を現在やっている

Q64:対中貿易赤字がアメリカ国民の生活に与える影響は?
・グローバリズムにおけるデフレーションは、一物一価の原則
 →海外から安い産品が入ってくることによって自国民の賃金を引き下げる
・グローバル経済の前提は、同一賃金同一労働
 →これを遮っているのが、国境
 →国内での資金循環の維持のためには厚い中間層と製造業が必要というのが、トランプ大統領が出した答え
・つねに繰り返されている経済の歴史
 →現在は、アメリカが自由貿易主義から保護主義に転換しようとしているサイクルに

【COLUMN】トランプが「アマゾン批判」を止めないワケ
・トランプ大統領がここにきて強めている、税金を払わないフリーライダー(タダ乗り屋)企業への批判
 →自国に倉庫のみ置いて、海外の現地法人で本格的に展開するような企業に対して、適正に法人税を払うことを求めている
 →スケープゴートに選ばれたアマゾン
  →アマゾンのジェフ・ベゾスCEOが、トランプ大統領が敵視する米紙『ワシントン・ポスト』のオーナーであることも

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