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市況から:増勢維持の第一四半期市場、強気の読み、8インチ逼迫

政治では米朝、経済では米中と応酬、駆け引きが続く流動的な情勢のなか、これも約2年にわたって熱い活況が続いている世界半導体市場に最小限の影響を願うところがあるが、市場の熱気が抗して支えている感じ方がある現時点となっている。この1-3月、第一四半期の半導体市場関連データが各種出揃ってきているが、熱い増勢が大方維持されている。本年そして今後についても先行き抑え加減はありながら、強気の読みがみられている。そしてものづくりの上では、8インチウェーハが逼迫する事態が目立ってきている。

≪市場の熱気の支え≫

第一四半期について、グローバルelectronics supply chainは非常に力強く、当面健全な環境が続くとの全体概観である。

◇Global, U.S. electronics supply chains see healthy midyear business conditions (5月18日付け ELECTROIQ)
→グローバルelectronics業界分析に重点化するWalt Custer of Custer Consulting Group発。今年の第一四半期は、electronics supply chain全体にわたった伸び、グローバルに非常に力強かった旨。以下の内容:
 Broad global & U.S. electronic supply chain growth
 Chip foundry growth resumes
 Passive Component Shortages and Price Increases
 Peeking into the Future

モバイルDRAMの該四半期販売高は、スマホのみならず新分野の支えが効くと思われるが、最高を更新している。

◇Mobile DRAM sales reach record high in Q1 on surge in demand: data -Mobile DRAM sales totaled $8.4B in Q1 (5月22日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→DRAMeXchange発。第一四半期のモバイルDRAM半導体の世界販売高が$8.43 billion、前年同期比5.3%増。Samsung ElectronicsとSK Hynixで約80%を占めている旨。

◇Global mobile DRAM revenues hit record in 1Q18, says DRAMeXchange (5月23日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2018年第一四半期のモバイルDRAMメモリグローバル販売高が、前四半期比5.3%増の$8.435 billionと最高を記録、第二四半期もさらに伸びる見込みの旨。

中国の該四半期半導体業界データが、China Semiconductor Industry Association(CSIA)より発表されており、新鮮な受け止め方がある。設計、製造および実装&テストと分けて、前年同期比20%前後の伸びが示されている。輸入への過重の依存がそもそも問題となるなか、今後の推移に注目するところである。

◇China IC industry output value increases 21% in 1Q18 (5月24日付け DIGITIMES)
→China Semiconductor Industry Association(CSIA)がリリースした統計データ。2018年第一四半期の中国IC業界output額がCNY115.29 billion($18.1 billion)、前年同期比20.8%増。分野別内訳:
 IC設計     CNY39.45 billion 前年同期比22%増
 IC製造     CNY35.59 billion 前年同期比26.2%増
 IC実装&テスト CNY40.25 billion 前年同期比19.6%増

当面そして今後の半導体市場はどうなるか。International Data Corporation(IDC)は、昨年の世界半導体販売高24%増から今年は7.7%増、そして先行き数年CAGRが2.9%という見方をとっている。

◇Market growth rate peaks after a strong 2017; IDC forecasts semiconductor revenue growth of 7.7% (5月21日付け ELECTROIQ)
→International Data Corporation(IDC)の最新Semiconductor Applications Forecaster(SAF)発。2017年の力強い24%増の伸びを経て、2018年の世界半導体売上げが3年連続で伸びて7.7%増の$450 billionと予想する旨。SAFはまた、2017年から2022年にかけて半導体売上げが2.9%のcompound annual growth rate(CAGR)で伸びて2022年には$482 billionに達するとしている旨。

半導体設備投資の方は、現下の半導体市場のもろに熱気を受けてIC Insightsがこの3月時点の読みから早くもこのほど上方修正を行い、今年は$100 billionの大台を越える見方に達している。以上、アップデートが随時起こりそうな情勢含みではある。

◇Semi capex forecast to exceed $100B for the first time in 2018 (5月22日付け ELECTROIQ)
→IC InsightsのThe McClean Report 2018(MR18)にて、3月版では今年の半導体業界capital spendingを8%増と予測していたが、今回6 percentageポイント上方修正、14%増としている旨。この通りになれば、初めてのこと、半導体業界capital outlaysが$100 billionの大台を越える旨。今回の2018年予測$102.6 billionは僅か2年前、2016年$67.3 billionの53%増となる旨。

◇IC Insights raises semiconductor capex growth forecast for 2018 (5月23日付け DIGITIMES)

◇IC Capex Projected to Top $100 Billion (5月24日付け EE Times)

毎月SEMIより発表される北米半導体装置メーカー世界billingsも、この4月について史上最高を更新する結果となっており、新分野の力強い寄与が強調されている。

◇North American semiconductor equipment industry posts April 2018 billings (5月23日付け ELECTROIQ)
→SEMIのApril Equipment Market Data Subscription(EMDS) Billings Report発。2018年4月の北米半導体装置メーカー世界billingsが$2.69 billion(3ヶ月平均ベース)、前月(最終値$2.43 billion)比10.7%増、前年同月($2.13 billion)比26.0%増。「北米装置メーカー2018年4月billingsは、これまでの最高、2000年10月の$2.6 billionを上回って更新。ストレージ, 人工知能(AI)およびビッグデータが半導体の力強い需要を牽引、今年予想に遅れているスマートフォン販売を帳消しにしている。」と、SEMIのpresident and CEO、Ajit Manocha氏。ここ半年の推移(金額:USM$):

Billings
Year-Over-Year
(3ヶ月平均)
November 2017
$2,052.3
27.2%
December 2017
$2,398.4
28.3%
January 2018
$2,370.1
27.5%
February 2018
$2,417.8
22.5%
March 2018 (final)
$2,431.8
16.9%
April 2018 (prelim)
$2,691.4
26.0%

[Source: SEMI (www.semi.org), May 2018]

◇North American semi equipment industry posts record April billings (5月24日付け DIGITIMES)

新分野の台頭に製造対応がバランスしないということか、8インチ、200-mm fab capacityの逼迫が次の通りあらわされている。

◇200mm Fab Crunch-Shortages of used equipment and lower margins mean this problem isn't getting solved anytime soon.-Analysis: 200mm chip shortage to continue (5月21日付け Semiconductor Engineering)
→200-mm半導体需要が静まる気配がなく、今年中そしてたぶん2019年に入っても200-mm fab capacityが逼迫のままとなる旨。Samsung, GlobalFoundries, Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)などが200-mm capacityを高めようとしているが、需要対応は十分でなくfab装置取得が依然困難である旨。

12インチ主体できていて8インチは割高になる模様があり、12インチへの切り替え推奨もみられている。

◇Rising 8-inch foundry quotes putting pressure on IC designers-IC designers see profit margins fall due to 8-inch fab quotes (5月22日付け DIGITIMES)
→業界筋発。IC設計者には8-inch fab見積もりが高くなって、短期利益マージンが減っており、この価格増は実際長い目で見れば該分野を安定化するものと特に言及の旨。IC設計者はコスト効率の良い製品に向けた革新に取り組んでいる一方、製造コストの値上がりを補うよう自らの半導体価格を上げるかどうか検討している向きがある旨。

◇Foundries encouraging fabless chipmakers to switch to 12-inch wafers (5月23日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国および台湾の専業ファウンドリーが、ファブレスメーカーに対して8-インチfab capacityが極端に逼迫していることから12-インチウェーハ製造への移行を勧めていく意向の旨。Hua Hong Semiconductor, SMIC, TSMC, UMCおよびVanguard International Semiconductor(VIS)などファウンドリー各社は、受注獲得に向けて値引きを提示、12-インチ製造サービスの推進に動いている旨。各社の12-インチfab稼働率は8-インチに比べて比較的低くなっている旨。


≪市場実態PickUp≫

【米中通商摩擦】

双方応酬が続いている米中通商摩擦について、ワシントンでの協議終了から1日遅れで共同声明が発表と、最後の調整の手間取りをうかがわせている。
中国は製品・サービスの輸入を大幅に増やす一方、米国側は制裁関税は当面保留するという現時点の落としどころとなっている。具体化に向けた再協議が予定されている。

◇China trade war 'on hold' as Trump pauses tariffs -US-China trade talks keep tariffs on hold (5月20日付け Politico)
→米中両国が新しい通商取引交渉に取り組むなか、Trump政権は中国製製品への新たな関税賦課を遅らせる、と日曜20日にSteven Mnuchin米財務長官。米中ともに一緒に取り組んでいるが、ともにどの程度合意に近づいているか示さず、今後にさらなる通商摩擦はないという保証はない、と中国側。

◇China says it can't guarantee no more trade tension with US (5月21日付け The Associated Press)

◇中国、米製品の購入拡大、両国合意、1日遅れで声明 (5月20日付け 日経 電子版)
→米中両国は19日、ワシントンで17〜18日に開いた貿易協議の共同声明を発表して「米国の対中貿易赤字を減らすため、中国が米国のモノとサービスの輸入を大幅に増やすことで合意した」と表明した旨。貿易不均衡の是正で一歩前進したが、米国が検討する対中制裁の撤回には触れておらず、両国は「高いレベルで引き続き貿易問題の解決策を探る」としている旨。

◇U.S. Pulls Back From Brink of Trade War With China (5月21日付け EE Times)
→Donald Trump米国大統領が、半導体メーカーはじめ両方に高くつく負担と恐れた貿易戦争の瀬戸際から撤退、中国輸入品$150 billion相当に関税を課する計画を一時中止する旨。

◇米財務長官「制裁関税は当面保留」、中国、輸入拡大 (5月21日付け 日経 電子版 00.01)
→米中両国は19日、ワシントンで17〜18日に開いた貿易協議の共同声明を発表、「米国の対中貿易赤字を減らすため、中国が米国のモノとサービスの輸入を大幅に増やすことで合意した」と表明した旨。ムニューシン(Steven Mnuchin)米財務長官は20日に「貿易戦争を当面保留する」と述べ、中国への制裁関税をひとまず棚上げして協議を継続する考えを示した旨。共同声明は協議終了から異例の1日遅れとなった。両国は貿易不均衡の解消へ努力する方針で一致し、共同声明に「米国が農産品やエネルギーの輸出を大幅に増やすことで合意した」と盛り込んだ旨。具体策を詰めるため、米国が中国に代表団を送って再協議する旨。

◇米中が「一時休戦」、米財務長官「貿易戦争を保留」−ちらつく米朝首脳会談への思惑 (5月21日付け 日経 電子版 17:57)
→貿易戦争の瀬戸際に立っていた米中が「一時休戦」で合意した旨。中国が米製品の輸入を増やすと表明し、米側はいったん矛を収めたかたち。だが、中国通信機器大手(ZTE)への制裁をはじめ双方の溝は少しも埋まっていない旨。形ばかりの合意を急いだ背後には、6月12日の米朝首脳会談に向けたそれぞれの思惑がちらつく旨。

半導体に大きく関わる中国通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁が緩和されるのか、どの程度か、以下の通りまだ落ち着かない現時点である。

◇中国、自動車関税を一律15%に引き下げ、米に歩み寄り (5月22日付け 日経 電子版)
→中国政府は22日、7月1日から輸入乗用車に対する関税を25%から15%に引き下げると発表、貿易赤字削減へ関税引き下げを求めてきたトランプ米政権に中国側が歩み寄った旨。一方、米中両国のメディアは中国側が求めてきたトランプ政権による中国通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁の緩和に向けて進展があったと報じた旨。

◇ZTE制裁緩和、巨額罰金が条件に、トランプ氏 (5月23日付け 日経 電子版)
→トランプ米大統領は22日、中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁緩和に関して「(まだ)合意していない。様々な取引を話し合っている」と明らかにした旨。制裁を見直す場合、13億ドル(約1400億円)の罰金や経営陣刷新が条件になる旨。中国と進める包括的な貿易交渉の進捗には「満足していない」と表明した旨。

【Samsung関連】

メモリ高価格でこの第一四半期に半導体販売高でIntelとの差を拡げて首位を突っ走っているSamsungの活発な打ち上げがみられている。まずは、次期モバイル、5Gの標準化に向けた動きである。

◇Samsung hosts 1,500 experts to finalize first mobile 5G standard-Mobile 5G experts meet to set standards (5月21日付け VentureBeat)
→待望のモバイル5Gグローバル標準が今週完了、Samsungが本日、複数の5G working groupsの最終会合を釜山(Busan, South Korea)で開催中の旨。
5月21日から5月25日にわたる該会合は、どの技術が5Gで商用化されるか決めるためにエキスパート1,500人を集めており、来月の米国での3rd Generation Partnership Project(3GPP)による正式承認に先行する旨。

半導体とともにartificial intelligence(AI)についてのR&Dの取り組みである。

◇Samsung Says 7-Nanometer Chip Production Starting Second Half Of This Year-Samsung to start production on 7LPP chips, add AI hubs (5月22日付け Nasdaq/RTT News)
→Samsung Electronicsが今年、EUV lithographyソリューションを用いる最初の半導体プロセス技術、同社7LPP(7 nanometer Low Power Plus)半導体について生産を始める計画の旨。同社はまた、まもなく5つのartificial intelligence(AI)リサーチhubsをもち、AIエキスパートの陣容を拡げる計画の旨。

◇Samsung aims to run 5 global AI R&D hubs, have 1,000 researchers (5月22日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→5つのグローバルAI R&D hubsは、ソウルにメインを置いて、米国、英国、カナダ、ロシアの旨。

半導体ファウンドリーについてもR&Dセンターが開設されている。

◇Samsung opens foundry R&D division under device solution arm: sources-Report: Samsung launches foundry R&D center (5月21日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→業界筋発。Samsungが、同社半導体設計事業を拡げられるよう新たにファウンドリーresearch and development(R&D)センターを加える旨。該新センターは、Samsungのデバイスソリューション部門傘下の以下の現状の8つのリサーチbodiesに加わる旨。
 メモリ, システムLSI, 半導体, パッケージ, LED, 生産技術,ソフトウェアおよびディスプレイ各センター

そのファウンドリー技術フォーラム(5月22日:SANTA CLARA, Calif.)が開催され、EUVリソによる7-nm、そして2020年に3-nm商用化、と該分野で圧倒的な首位、TSMCを切り崩していく戦略的ロードマップがあらわされている。

◇Samsung Plans 3nm Gate-All-Around FETs in 2021 (5月23日付け EE Times)
→Samsung Electronicsのannualファウンドリー技術フォーラム(5月22日:SANTA CLARA, Calif.)にて。同社は、3-nm nodeにてFinFETSのアーキテクチャー後継、gate-all-around(GAA)トランジスタを2021年に量産化にもっていく計画を披露、また、今年後半にextreme ultraviolet(EUV) lithographyを用いる7-nm生産を始める計画を再確認の旨。GAA技術は、2000年代始め以降Samsungなど各社が開発を行っており、GAAトランジスタは、電源電圧などFinFETsの物理的scalingおよび性能の制約を打開するためにchannelの4つの側面すべてにゲートを設けるfield-effect transistors(FET)である旨。Samsung固有のGAA技術, multi-bridge-channel FET(MBCFET)は2002年以降開発してきている、とSamsung Foundryのvice president of market、Ryan Sanghyun Lee氏。

◇Samsung Says New 7-Nanometer Chip Production Starting This Year (5月23日付け Bloomberg)

◇Samsung unveils plan for 3nm process-Samsung reveals upcoming process technology plans (5月24日付け DIGITIMES)

◇韓経:サムスン、2020年にファンドリー「3-nm」商用化…世界1位台湾TSMCの独占崩す (5月24日付け 韓国経済新聞/中央日報日本語版)
→サムスン電子が3-nmプロセス技術を適用したシステム半導体の委託生産を2020年から始める旨。ファンドリー業界1位の台湾TSMCより1年ほど速い動き。サムスン電子がメモリ半導体成功の公式をファンドリー分野に同じように適用しているという見方が出ている旨。短期間に研究開発に企業の能力を集中し、市場の技術hegemonyを握る戦略の旨。

【次世代A12製造開始】

Samsungの標的、TSMCは、今秋予定のAppleの新しいiPhoneに向けたA12プロセッサ半導体の製造を開始している、と以下の通り伝えられている。7-nmプロセス技術の今後の展開、そしてSamsungが追いかけるつばぜり合いに注目するところである。

◇Next Generation iPhone Chips Go Into Production-More-efficient 7-nanometer processors coming later this year-Samsung is also working on the next-generation chip technology (5月23日付け Bloomberg)

◇TSMC Is Said to Start Making Chips for Apple's New IPhones-TSMC working on next-generation processors for iPhones, sources say (5月23日付け BloombergQuint (India))
→Appleのパートナー、Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.(TSMC)が、新しいiPhoneモデル用の次世代A12半導体の製造を開始の旨。該プロセッサは、iPhone 8あるいはiPhone Xよりも高速、効率良く動くよう7-nm設計を用いている旨。

【Intel関連】

半導体販売高で現時点Samsungに首位を譲っているIntelであるが、そこは何10年にわたって業界の技術&市場を牽引する盟主であり、余計に目が離せないところである。まずは、イスラエルでの動き2点である。

◇Can Mobileye Validate ‘True Redundancy’?-Intel/Mobileye’s robocars start running in Jerusalem (5月22日付け EE Times)
→Intel/Mobileyeが先週の木曜、17日、エルサレムでメディアイベントを開催、12台のカメラを搭載、他のセンサはないMobileyeの自動運転車(AV)内での旅の味を記者団に提示の旨。同社は、Intelが以前に今年末までに作ると約束している約100台のうち現在"在庫に"ある35台のAVsをテストしている旨。

◇Intel to Spend $5 Billion on 10nm Fab in Israel (5月24日付け EE Times)
→Intel Corporationが、イスラエル・Kiryat Gatにある同社fabの22-nmから10-nm技術への格上げに向こう2年にわたって$5 billionを投資する計画の旨。Intelからの正式発表はないが、イスラエル・ministry of financeがステートメントで、イスラエルの政府機関から数週間で承認が見込まれ、該新工場は追加で250人を雇用する、としている旨。Intelはいくつかの拠点拡張案を考えた模様であるが、イスラエル・finance ministryとの2年の話し合いを経て今回の拡張を決定の旨。

Samsungがリードする3D NANDフラッシュメモリについて、連携しているMicronと4bits/cell(Quad Level Cell:QLC)という1つ上を行く基軸を打ち上げている。

◇Micron and Intel extend leadership in 3D NAND flash memory-Micron, Intel announce 4bits/cell 3D NAND production (5月22日付け New Electronics)
→Micron TechnologyとIntelが、4bits/cell 3D NAND技術の生産を開始、1 terabit/dieの世界最高密度フラッシュメモリが得られる旨。一方、両社は96-tier 3D NAND構造の開発を進めており、layersで50%高められる旨。

◇Micron and Intel intro QLC NAND flash (5月22日付け DIGITIMES)
→Micron TechnologyとIntelが、業界初、4bits/cell(Quad Level Cell:QLC) 3D NAND技術の共同生産および出荷を発表の旨。

人工知能(AI)向けプロセッサについては、Nvidiaの先陣を許しているという経過があり、ここにきてますます半導体業界激変の目玉の位置づけとなってきているだけに、今後の計画、そして実際の展開について以下の通り厳しい目が注がれる現時点である。

◇Intel unveils Nervana Neural Net L-1000 for accelerated AI training-Intel to debut first commercial neural network processor chip (5月23日付け VentureBeat)
→Intelが、差し迫ったNervana Neural Net L-1000のリリースを発表、該商用neural network processor(NNP)半導体は、Intelの以前のNNP半導体より3-4倍高速、とIntelのVP and general manager of the AI product group、Naveen Rao氏。

◇AI半導体で新旧一騎打ち、インテルVSエヌビディア (5月24日付け 日経 電子版)
→半導体の覇権争いの主戦場が人工知能(AI)に移り始めた旨。米インテルは23日、AI向けの処理に特化した新たなプロセッサを2019年に投入すると表明。矢継ぎ早の買収で取り込んだ技術の製品化で先行する米エヌビディアを追う旨。「ムーアの法則」が限界を迎えつつあるなか、あらゆる産業で浸透するAIは半導体産業の秩序を激変させようとしている旨。

◇Will Intel's Deep Neural Processor Be Too Late? (5月25日付け EE Times)
→Intelの初のAI developerイベント(SAN FRANCISCO)にて。同社が来年後半、商用を意図した初のneural network processor(NNP)をリリースする計画を披露、しかし、NvidiaのVolta GPUアーキテクチャーにAIで失われた地盤を回復するには遅過ぎると訝るアナリストもみられる旨。

【東芝メモリ関連】

売却について中国商務省の承認が得られた東芝の半導体メモリ事業を巡って、推察そして思いのいろいろ詰まった見方が続いている。

◇中国、技術蓄積に自信か、東芝半導体、売却を承認 (5月21日付け 日経産業)
→東芝の半導体メモリ事業の売却手続きで、中国商務省の独占禁止法当局が買い手側の米ベインキャピタルによる買収を承認、審査期間中に懸念されたのが、「独禁法を盾に技術供与を求められる」と噂された中国政府の介入だった旨。独禁法審査が通過したのは、米国や韓国の技術者をかき集める中国が着々と技術を蓄積し始めた証左なのかもしれない旨。

◇東芝、幻のメモリ温存案、決断力でサムスンに敗北 (5月22日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ事業の売却が確定した。稼ぎ頭を失う東芝は、収益の柱が定まらない中での出直しを迫られる。メモリを発明し、世界市場を切り開いてきた東芝の半導体事業はなぜ売られなければならなかったのか。
・・・

東芝メモリからは、同社BiCSフラッシュに向けた岩手県での新工場建設予定があらわされている。

◇Toshiba Memory to build new fab to expand 3D flash production capacity (5月24日付け DIGITIMES)
→東芝メモリ(TMC)が、同社固有の3Dフラッシュメモリ、BiCS(Bit Cost Scalable) FLASHに向けた新しいfabを岩手県北上市で2018年7月に建設開始を決定、2017年9月にoperations拡大の次の立地に同市を選んだ旨。3Dフラッシュメモリ需要は、データセンターおよびサーバ向けenterprise SSDsに向けた力強い需要で増大している旨。


≪グローバル雑学王−516≫

アマゾンというと、書籍のネット販売がまず浮かぶが、今や「世界一の書店」を確立、今後「everything store」→「everything company」へと戦略的に展開していくアプローチに、

『アマゾンが描く2022年の世界すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』
 (田中 道昭 著:PHPビジネス新書 387) …2018年1月17日 第1版第4刷発行

より触れていく。昨年、高級スーパーマーケット「Whole Foods」を買収、将来に向けて無人コンビニを小売り・流通のエコシステムにしていく期待が見えてくる。現実の世界をできるものからネット化、究極の至便化を図る飽くなき展開が繰り広げられていく。徹底した顧客第一主義が、すべてにおいてストレスのない「ユーザー・エクスペリエンス」を生み出しており、既存企業がアマゾンに顧客と利益を根こそぎ奪われる迫力というものを感じるところである。


第2章 なぜ、アマゾンは「現実世界」に参入するのか

◆世界が「アマゾンされる」ことに震撼する
・リアル世界への進出を本格化させているアマゾン
 →2016年後半、無人コンビニ「アマゾン・ゴー」の展開を発表
 →2017年、高級スーパーマーケット「Whole Foods」を$13.7 billionで買収
・創業にあたって、「ネット通販という市場において最初に定着する商品は書籍である」と確信
 →必要な仕組みをリアルにイメージしたことがアマゾンの成功のきっかけに
・「世界一の書店」→「everything store」→「everything company」
 →米国で「アマゾンされる」(to be amazoned)という言葉
 →既存企業がアマゾンに顧客と利益を根こそぎ奪われる恐怖
・アマゾンは、seller向けにFBA(Fullfillment by Amazon)というサービスを提供、物流企業の顔も
 →在庫の保管から受注処理、発注業務までを代行
・アマゾンはテクノロジー企業でも
 →クラウドコンピューティングの世界では「最強のシステム会社」としてのポジションを確立

◆「アマゾン・ゴー」と「スマート世界」
・アマゾン・ゴーを展開する理由
 →無人コンビニの仕組み自体を、小売り・流通のエコシステムにしていく期待
 →スマート世界への展開準備という狙いも
・Whole Foodsを買収した理由
 →購買頻度の高い生鮮食料品に進出したい思惑
 →これまでもプライム会員向け生鮮食品配送サービス、アマゾン・フレッシュを展開
 →Whole Foodsの店舗網が、即座にアマゾン・フレッシュの拠点に

◆ホールフーズ買収の本当の意味
・アマゾンがWhole Foodsを傘下に
 →消費者への利便性がさらに高まり多くの競合がアマゾンへの脅威をさらに強める結果に
・買い物客があらかじめオンラインで注文
 →Whole Foodsの店舗で即座に商品を受け取るという選択肢を手に
・究極的には食料品の当日配達を標準に
・顧客の位置情報も取得できるような新たなアプリも導入してくるのでは
・小規模店舗「365 by Whole Foods Market」を無人店舗化するというアイデアは、早晩実現へ

◆プラットフォームとしてのアマゾン・エコー
・AIによる音声認識のシステム、アレクサをサードパーティに対して公開
 →さまざまな家電製品、自動車に、屋外に、セキュリティに、すでにあらゆる場所に
・アマゾン・エコーは、アレクサを搭載した人工知能スピーカー
 →2万5000以上の命令(スキル)に応答可能
・エコシステム…プラットフォームをその中核や土台とするビジネス上の生態系や産業構造をあらわす
 →「アマゾン・アレクサ経済圏」ともいえる産業構造を形成へ
 →エコシステムやプラットフォームの参加者が増えれば増えるほど、参加者が受け取る便益も大きく

◆「ただ話しかけるだけ」の衝撃
・アマゾン・エコーは2015年、米国で発売開始
 →価格は約180ドル、すでに1000万台を出荷
・アマゾン・アレクサはアマゾン・エコーに搭載された音声認識技術 
 →アマゾン・エコーを中心としてさまざまな企業の商品やサービスが連携
 →「生活サービスのプラットフォーム」
・「ただ話しかけるだけですべて済んでしまう」というユーザ・エクスペリエンスが評価に
 →アマゾン・エコーやそのほかのアレクサ搭載IoT製品は、ビッグデータを吸い上げるチャネルでも

◆行列なし、会計なしの「無人コンビニ」は小売業界を変えるか
・2016年に発表の無人コンビニ店舗、アマゾン・ゴー
 →キャッチコピー:「NO LINES NO CHECKOUT」(行列なし、会計なし)
 →アマゾンID認証で入店、レジ不要、自動的に決済、スマホにレシート送信
・商品の陳列やユーザサポートには人手が必要かも
 →それ以外のオペレーションは、すべてテクノロジーによって解決
 →ディジタルワールドでアマゾンが追求してきたユーザ・エクスペリエンスを、現実世界においても遺憾なく発揮
・「ベゾス帝国」で計画を進めている宇宙事業やドローン事業は、「無人システム」であるということが本質

◆ベゾスが生み出す「新しい小売業」
・ベゾスの思惑は、アマゾン・ゴーの多店舗展開だけではない
 →むしろ、アマゾン・ゴーによって小売業界の新たなエコシステムの構築を目論んでいるのでは
・これからのリアル店舗の課題
 →立ち遅れていたユーザ・エクスペリエンスへの対応
 →AI化すれば、これまではウェブ上で追跡できなかった顧客の動向が可視化、高速・短期にPDCAを回すことが可能に
・小売業のスマート化を牽引するのは、アマゾンでは

◆アマゾンのサイトに見られる「ユーザー・エクスペリエンス」
・アマゾンの実にすばらしいユーザ・エクスペリエンスの充実ぶり
 →サイト自体が見つけやすい
 →サイトのデザインが見やすい
 →どこに何があるのかわかりやすい
 →検索しやすい
 →「購入しやすい」
・商品購買に至る過程すべてにおいて、ストレスがない
・昨今は「納得できる」という価値も重要
 →アマゾンがあらゆる局面で顧客データを要求、ユーザはその見返りとしてサービスを享受

◆なぜ、ネットからリアルに参入するとうまくいく可能性が高いのか
・4Pに4Cを加える
 →プロダクト   + カスタマーバリュー
 →プライス    + カスタマーコスト
 →プレイス    + コンビニエンス
 →プロモーション + コミュニケーション
・リアル店舗とアマゾンのEC店舗との決定的な違いの1つ
 →他の購入者によるレビューという「口コミ」により、商品の実際の機能性や使い勝手が判断できる
・リアル小売店がECでなかなかうまくいかないのはユーザ・エクスペリエンスが不十分だから

◆非プライム会員は損している!?
・アマゾンのビジネスモデルのレイヤー構造
 →近年、充実が目覚ましいのは、アパレル・ファッション、生鮮食料品、そしてプライム会員サービス
 →プライム会員の恩恵として最もわかりやすいのは、配送料
・アマゾンによる顧客の囲い込みがますます進んでいく

◆「天の時」を迎えた動画配信
・プライム会員増から、サービス拡充へ
 →加速しているのが、アマゾン・プライム・ビデオ
  …プライム会員であれば無料
・動画配信においてアマゾンが提供できるユーザ・エクスペリエンスの水準が「天の時」を迎えている
・これから新たに起きる動きとしては、「商品の動画化」
 →サイト内での商品説明を動画で行なう

◆ファッションへの進出――アマゾンがユニクロの脅威・SPA企業になる
・プライベートブランド、「Amazonベーシック」、2009年から展開
 →充電式ニッケル電池などがベストセラー商品
 →ファッションも7ブランド、展開
・アパレル・ファッション
 →アマゾンの武器、「ビッグデータxAI」を活かしやすい分野
・「アマゾンがユニクロの脅威になる」という未来
 →アマゾンにはベーシック・カジュアルは最適な分野
 →アパレル業界の脅威・SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)企業に
・アマゾン・ジャパンは2017年10月4日、2018年春にAmazon Fashion用の撮影スタジオを品川にオープンすると発表

◆日本でのアマゾン・エコーの成否を占う
・スマートスピーカー
 →アマゾン、グーグル、LINEの3社が2017年内での発売を発表
・重要なテーマ3点
 →1点目:どれだけビッグデータが集積されて当該AIが機械学習で成長しているか
  →日本では現時点、グーグルの方が優れているのでは
 →2点目:どれだけスマートホームのプラットフォームとしての魅力や動線を確保できているか
  →アマゾン・エコーが最も優れている
 →3点目:どのような用途で使うのか
  →総合的なスマートホームとしてのプラットフォーム、アマゾン・エコーが優れているかも
  →これからの市場であり、当然に日本企業、LINEにもスマートホームの覇者になる可能性
  →グーグル・ホームはAIアシスタントが支える
・アップルのAIアシスタント、Siri
 →グーグルアシスタントなどと比較すると、おちゃめで遊び心をもったAI
 →現在ではむしろさまざまな機能において競合の後塵を拝している

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