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ISSCCにて改めての注目:アーキテクチャー革新、人工知能、女性進出

メモリ半導体関連の内容を前線時代に活動を共にした方から、いつものようにメール送付いただいたばかりのInternational Solid State Circuits Conference(ISSCC) 2018(2018年2月11日〜15日:San Francisco)であるが、Moore's law、半導体ロードマップはじめいままた時代の大きな変わり目にある今、いろいろな角度、切り口で今後に向けた注目テーマについて考えさせられている。求められるアーキテクチャー革新、急速に普及、進化する人工知能、そして女性進出の流れである。

≪ISSCC 2018記事が映し出すもの≫

今回のISSCCにて、今後の半導体の進展に向けて、新たな創意工夫が求められる空気を一層強く感じる以下の内容である。

◇ISSCC Keynotes Call for Creativity-Chip advances require fresh ideas, speakers say (2月12日付け EE Times)
→International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)の開幕講演で、executivesおよびtechnologistsが、半導体scalingのコストおよびcomplexityは大方思われているよりは良く見える状況として、創意工夫に向けてこの場に集まった数100人の半導体設計者に呼びかけた旨。
「Moore's lawおよびDenard scalingの終焉はinstruction setアーキテクチャーに新たなinnovationsが必要ということであり、我々はcomputerアーキテクチャーにおける別のrenaissanceに入ってきている。」と、venture capitalists(VCs)が昨年半導体startupsに$1.5 billion出資したと特に言及して、University of California-Berkeley(UCB)名誉教授、David A. Paterson氏。

先端微細化を競う"半導体のオリンピック"も健在、EUV SRAMでSamsungがIntelに先行、とここでも今現在の立ち位置があらわれている。

◇Samsung Tops Intel with EUV SRAM-Working 256-Mbit chip eased EUV concerns (2月14日付け EE Times)
→今回のISSCCにて、Intelは10-nm SRAMをプレゼン、Moore's law scalingを維持と訴求、しかしながら、Samsungは、extreme ultraviolet(EUV) lithographyで作ったより小さな256-Mbit SRAMプレゼンで続き、EUVにおける自信を表わした旨。次の両社比較:
 Intelの10-nmプロセス    0.0312-mm2 high density SRAM bitcells
               0.0367-mm2 low-voltage SRAM bitcells
 Samsungの6T 256-Mbitデバイス 0.026-mm2 bitcell
Intelの設計は、同社14-nm SRAMに対して0.62-0.58x scalingとし、Moore's lawを維持しており、最小とされている7-nm cellの15%以内である、と今年のSamsungおよびISSCC 2017でのTSMCからのより小さい7-nm SRAMsを指してIntelのZheng Gui氏。

人工知能について、今回のISSCCで目に留まった以下の内容である。

◇AI's Limits Send Scientists Back to the Brain (2月14日付け EE Times)
→今回のISSCCにて基調講演を行なったCEA-Letiのchief scientist、Barbara De Salvo氏。1950年代半ばのartificial intelligence(AI)の夜明け以降、AIリサーチは起伏の波を経ているが、今こそbrain-inspired技術を真剣に取り上げる時。新しいcomputingパラダイム&アルゴリズムなしでは、該業界はついには壁にぶち当たっていく旨。

◇7 Ideas for AI Silicon from ISSCC (2月15日付け EE Times/Slideshow)
→Googleのengineering managerが、データprivacy保護に向けた分散アプローチなど新しいAIアーキテクチャーを求めたのに続いて、今回のISSCCでは、machine learningへの新規アプローチをあらわすhalf-a-dozen以上の学術論文が続いた旨。以下の7つのアプローチ:
 Google calls for hybrid edge/cloud collaboration
 SRAMs stacked using TSVs and coupling
 Korea accelerates 1- to 16-bit CNNs, RNNs
 Neural-net classifiers ride SRAM arrays
 SRAMs store weights, ADCs compute them
 Low-power array handles inference, training
 Carbon nanotubes meet resistive RAM cells

ISSCCと並行する時間軸にて、Googleより一般に使える形でのAI半導体が次の通りあらわされている。

◇Google Makes Its Special A.I. Chips Available to Others-Google offers access to AI chips through cloud computing (2月12日付け The New York Times)
→Googleのartificial intelligence(AI)半導体, Cloud Tensor Processing Unitsが試用段階にあり、cloud computing環境で他社が使える旨。該半導体は、computer learningの加速に用いられている旨。

◇Google's AI chips are now open for public use (2月12日付け VentureBeat)

製造面でのAIの現時点はどうか。関係者の見解が以下の通り示されている。

◇What's the Word on AI in Manufacturing? (2月16日付け EE Times/Slideshow)
→製造におけるartificial intelligence(AI)について、最新世代の製造技術を生み出す各社のhigh-levelリーダー並びにcontractメーカーの見解をまとめた記事。
 What's the Scoop: Artificial Intelligence in the Smart Factory
 ・疑いなく2018年は、SMT(surface mount technology)製造におけるAI運用に向けて重要な年
 ・AIは、Smart Factory Solutionsを可能にする先端製造プラットフォームを牽引
 ・工場自動化に向けたAI応用はすでにあり、人手を介さない自律ロボットなど
 ・プロセス歩留まり改善、工場稼働率上昇に向けて、AIの重要度は高まってきている
 ・AIは製造プロセスを合理化する能力があり、理解し始めている段階
 ・AIはSmart Factory採用で直面するすべての問題を解決する弾ではない
 ・AIの取入れは2018年に最初はゆっくり進め、その後加速していく
Research and Marketsの最新レポートによると、AI市場は2016年に$1.36 billion、2017年から2025年にかけて52%のcompound annual growth rate(CAGR)で増大すると見る旨。

もう1つ、社会問題としての女性進出がISSCCの場でもあらわれている。

◇An Engineer's Guide to Sexism (2月15日付け EE Times)
→ISSCCの場で女性エンジニアが何100もの男性メンバーの前で演壇に立って、該業界での性差別について話すのはそうはないが、日曜11日の夜のeveningセッション、“Workshop on Circuits for Social Good”にて、Atheros Communications(後にQualcommが買収)を共同創設、Stanford大電気工学科初の女性教授を務めたTeresa Meng氏が、“Winning the game in a male-dominated industry”と題する講演を行なった旨。

今回の聴講者で女性参加は2%とあらわされているが、半導体、電子デバイスの世界での今後に向けた大きな壁とも映るところがある。

米国でも女性のためのハイテクconferenceが、次の通り取り上げられている。

◇What #metoo Means to High Tech-What you missed by not attending VerveCon 2018 (2月12日付け EE Times/Blog)
→初めての“women in tech” conference、VerveCon(2月9日:Santa Clara Convention Center)について。700人の女性が参集、Amazon, LinkedIn, Intel, Uber, Facebook, SurveyMonkey, Juniper Network, NetflixおよびIBMなどの各社から、講演者はデータscientistsおよびUI設計者からarchitectsおよびdirectors of engineeringに及んだ旨。

半導体の進展を共にしてきているISSCCが重要なキーワードであることには今後とも変わりなく、時代の変化、変貌を映し出す場として注目していくところである。


≪市場実態PickUp≫

【Qualcomm対Broadcom】

$121 billionに引き上げられたBroadcomによるQualcomm買収入札を巡って、両社のいろいろ下記の言い分の応酬が見られ、2月14日に初めての両社トップによる話し合いの場が持たれている。

◇Qualcomm warns of customer losses, legal hazards to Broadcom buyout (2月9日付け Reuters)
→Qualcomm社が金曜9日、同社がBroadcom Ltdの$121 billion buyout改定提示を受け入れた場合2つの大手のclientsを失う可能性、そして法制承認が得られる道筋が見えない旨。

◇Broadcom Secures as Much as $100 Billion of Debt Funding for Qualcomm Bid -KKR, CVC join Silver Lake in providing $6 billion in convertible debt for the bid-Broadcom secures $100B for Qualcomm buyout, but hurdles remain (2月12日付け The Wall Street Journal)
→BroadcomはQualcomm買収に向けて最大$100 billionの融資を獲得しているが、Qualcommのexecutivesが、Broadcomの取引が受け入れられた場合大手clientsの2つが違約する可能性と警告の旨。両社は水曜14日にQualcommの株主と会い、boardメンバーが3月6日に該取引について投票予定の旨。

◇Qualcomm, Broadcom plan to meet on February 14: sources (2月12日付け Reuters)

◇Broadcom offers $8bn failure fee-Broadcom would pay Qualcomm an $8B breakup fee (2月12日付け Electronics Weekly (UK))
→Broadcomが、Qualcommに対し、買収入札がregulatorsに拒否されるようになれば$8 billionを支払う趣旨の手紙を書いている旨。

◇Broadcom scales back Qualcomm board challenge to simple majority-Broadcom now seeks 6 seats on Qualcomm board, not 11 (2月13日付け Reuters)
→Broadcom Ltdが火曜13日、Qualcomm社に対して獲得しようとしていたboard seatsの数を11から6に減らした旨。これがQualcommの株主をして連続性を保ったまま売却に向けて推進させるとしている旨。

◇Qualcomm, Broadcom Meet to Discuss Offer (2月15日付け EE Times)
→Qualcommが水曜14日、同社トップexecutivesがBroadcomの代表と$121 billion買収提示についての話し合いで初めて会った旨。Chairman、Paul Jacobs氏, CEO、Steve Mollenkopf氏およびPresident、Cristiano Amon氏などQualcomm代表が、Broadcom側と2時間会い、"彼等が言うべきことに注意深く耳を傾けた"旨。

◇Qualcomm meets Broadcom to discuss $121 billion acquisition offer-Qualcomm, Broadcom discuss merger proposal (2月15日付け Reuters)
→QualcommとBroadcomのboard membersが水曜14日、BroadcomによるQualcommに対するunsolicited $121 billion買収提示を話し合うために会合、その結果は次の段階を決めると思われるが、両社中身を明らかにしなかった旨。

しかしながら、この会談後もQualcommは買収提案を拒否している。

◇クアルコム、首脳面談後も買収提案拒否、「対話余地は残す」 (2月17日付け 日経 電子版)
→米半導体大手、クアルコムは16日、ブロードコムからの買収提案を受け入れないと発表、14日に両社首脳が会談したが、1株82ドル(総額1210億ドル=約13兆円)からの買収額引き上げが見込めず、規制当局の承認を得るための取り組みの説明も不足していた旨。「対話の余地は残す」ものの、IT業界で過去最大の買収劇は、株主を巻き込んだ委任状争奪戦に行方を委ねられそうな旨。

【中国での投資関連】

中国の紫光集団(Tsinghua Unigroup)が、重慶市などとともに向こう10年最大$100 billionの半導体投資計画を打ち上げている。重慶市の工業園区が具体的に動き始めている。

◇Tsinghua Unigroup, Chongqing to invest up to $100 bln in IC sites over next decade-New Chinese investment fund will spend $100B over 10 years (2月14日付け Reuters)
→Tsinghua Unigroup, 重慶市(the city of Chongqing, China), およびSino IC Capitalが、登記資本$15.8 billionの投資会社を設立、Tsinghua Unigroupの半導体operations拡大に向こう10年で最大$100 billionを充てる計画の旨。Tsinghua Unigroupは、重慶市にindustrial parkを現在展開しており、該プロジェクトに$9.46 billionを予算化の旨。

◇Tsinghua in Deal to Invest $100 Billion in Fabs (2月15日付け EE Times)

【アップルの中国製メモリ検討】

まだまだこれから立ち上げに時間がかかると思われる中国でのメモリ半導体について、アップルが以下の通りiPhoneなどに向けて採用するアプローチが見られている。仕向け先、用途を限ったスタートになるものと思われる。

◇iPhoneに中国の半導体メモリ、アップルが検討 紫光集団グループ会社を想定 (2月14日付け 日経 電子版)
→米アップルがスマートフォンiPhoneなどの製品に、中国企業の半導体メモリを採用する検討に入った旨。コスト削減が狙いで中国国有半導体大手、紫光集団傘下の長江ストレージからの調達を想定している旨。ただ、半導体は機密保持など安全保障における重要性が高く、まずは中国国内向け製品に限り採用するとみられる旨。

◇Apple in talks for first order with a Chinese chipmaker-A deal with Yangtze Memory will mark milestone in China's tech development -Apple negotiates with Yangtze Memory for NAND chips (2月14日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→Appleが、中国の半導体メーカー、Yangtze Memory TechnologiesからのNANDフラッシュ半導体の購入を交渉しており、現地市場に向けた高まりが得られる可能性の旨。うまくいけば該連携は2019年あるいは2020年に始まる様相、YangtzeがApple要求の半導体を作るには時間を要する旨。

【不透明感漂う台湾市場】

台湾の半導体各社、1月の売上げが以下の通り低迷気味であり、TSIA(Taiwan Semiconductor Industry Association)の発表を見ても、熱い活況のメモリ半導体の比率が低いだけに5.8%増と割合控えめな今年のIC生産額見込みとなっている。

◇TSMC January revenues hit 6-month low (2月9日付け DIGITIMES)
→TSMCの2018年1月連結売上げがNT$79.74 billion($2.72 billion)と6ヶ月ぶりの低水準、前月比11.3%減、前年同月比4.1%増。

◇UMC January revenues increase, VIS drop (2月12日付け DIGITIMES)
→UMCの2018年1月連結売上げがNT$13.18 billion($449.3 million)、前月比23.5%減、前年同月比4.1%増。

◇MediaTek January revenues fall to 23-month low (2月12日付け DIGITIMES)
→MediaTekの2018年1月連結売上げがNT$16.84 billion($574.3 million)、前月比9.7%減、前年同月比8.1%減。この売上げは2016年3月以来の低水準。MediaTekは、2018年第一四半期の売上げをNT$48.3 billion〜NT$53.2 billionと見込んでおり、前四半期比12-20%減となる旨。

◇Semiconductor output forecast to grow about 6%-Forecast: Taiwan's chip output to rise 5.8% to $88.56B (2月14日付け The Taipei Times (Taiwan)/CNA)
→Taiwan Semiconductor Industry Association(TSIA)、13日発。台湾の今年のIC分野生産額は、堅調な需要が継続、NT$2.6 trillion($88.56 billion)と昨年から5.8%増を見込む旨。次の内訳:
 IC設計 6.6%増      IC製造  5.9%増 
 IC実装 4.5%増      ICテスト 4.2%増
半導体分野の昨年の生産額は0.5%増のNT$2.46 trillion、メモリ半導体が大方で高まったグローバルIC業界の21.6%増からは大きく下回る旨。

IT機器に広げても、1月の売上げは精彩を欠いており、旧正月明け以降特に注視していく必要がある。

◇台湾ITに不透明感、19社の1月売上高「失速」、iPhoneX、苦戦響く (2月16日付け 日経産業)
→世界のIT業界の生産を担う台湾企業に不透明感が強まっている旨。主要IT19社の2018年1月の売上高を集計したところ、合計額は前年同月比13.2%増えたが、中華圏の春節(旧正月)の時期が変わった影響で押し上げられた面がある旨。米アップルの最新型スマートフォンの不調の影響で鴻海(ホンハイ)精密工業などが失速した旨。

【市場データのコントラスト】

あまりもの価格上昇で伸びた昨年のDRAM市場。それでは今年はどうか、ということで、DRAMeXchangeは昨年の半分にもいかない金額の伸び、それでも30%以上という見方を出している。先行き分からず、こうしか表わせないところを受け止めている。

◇Global DRAM output value to rise over 30% in 2018, says DRAMeXchange-Forecast: DRAM output value will increase 30% this year (2月13日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchangeの予測。世界DRAM市場金額が、2017年の76%増の後、今年は30%以上増、$96 billionに達すると見ている旨。2017年第四四半期では約$21.9 billionで前四半期比14.2%増、スマートフォンの季節的需要およびモバイルDRAMの価格上昇が効いている旨。

一方、MPU市場のインテルのシェアは60%を下回るという見方が表わされている。ARM-ベース、embeddedと伸びるカテゴリーのなか、かつての席巻ぶりが薄まっていく状況が見られている。

◇Intel's Microprocessor Share Slips Below 60% (2月14日付け EE Times)
→IC Insights発。ここ数年PC出荷が連続して減少、スマートフォンが爆発的に伸びて、microprocessor(MPU)市場全体のIntelのシェアが60%を下回っている旨。computerおよびサーバ用PCプロセッサは依然MPU市場の半分以上を占めている(2018年で52%の見通し)が、車載、IoTなどの応用向けARM-ベースモバイルSoCsおよびembeddedプロセッサがここ5年にわたってMPUsの他のcategoriesよりも早く伸びている旨。


≪グローバル雑学王−502≫

「人工知能」という言葉の起源、人工知能は話す言葉をどのように理解するか、そして人工知能によってガラリと変わったコンピュータ翻訳の世界について、

『知識ゼロからの 人工知能入門』
 (清水 亮 著:スマート新書 003) …2017年12月1日 初版第1刷発行

より推移を辿っていく。人間が生まれたときから自然に身につけて話す言語、すなわち自然言語を初期の人工知能(AI)の方向性を明確にするうえで重要になっている。まだ不自然さを多々感じるコンピュータ翻訳であるが、大量の対訳データを積んでいけばだんだんと自然に磨かれていく今後を知らされている。


第3章 人工知能は、人が話す言葉をどのように理解するか

・人の話す言葉
 →たいていの言葉は誰かがいつのまにか言い始めて、いつのまにかみんなが真似をするようになって普及
・「人工知能」という言葉の出自
 →1956年、アメリカ合衆国・ニューハンプシャー州のダートマス大学での会議
  …Dartmouth Conference

□1ヶ月にも及んだ会議
・1956年7月から8月にかけて、1ヶ月にも及ぶ壮大なブレーンストーミング
 →ダートマス大学に在籍、ジョン・マッカーシー(John McCarthy)の主催
  …人工知能(Artificial Intelligence)という言葉を公に最初に使用
  …のちに人工知能研究に盛んに使われることになるLISP(list processor)言語の生みの親
  …タイムシェアリングシステムを提唱
・人工知能のコンセプトそのものは、マッカーシーと以下のメンバーなどとの共創
 →Claude Elwood Shannon …情報理論の大家
  Nathan Rochester    …IBMの汎用コンピュータ開発者
  Marvin Minsky     …ニューラルネットワークの基礎理論

□AI研究のふたつの方向性
・このころからすでに人工知能研究には2つの方向性
 →1)ニューラルネットワーク
   …生物の神経細胞をシミュレーションして知能を追求
   →deep learning(深層学習)の直系の先祖
  2)知識ベース処理
   …知識を体系化、推論すれば人間と同等以上の知性に到達可能
・人間が生まれたときから自然に身につけて話す言語(自然言語)をAIがどのように理解するか
 …自然言語処理
 →初期のAIの方向性を明確にするうえで重要なものに
・膨大な可能性の中からできるだけ少ない質問数で可能性の枝を絞り込み、正解にたどり着く
 …後ろ向き推論
 →クイズで人間に勝ったIBMのAI Watsonも原理的には同じ仕組み

□一大ブームのあとにぶちあたった壁
・知識を体系化し、目的の知識に素早く到達するためのシステム
 …「エキスパートシステム」
 →1980年代には一大ブーム
・該システムは、知識ベース処理の壁にぶち当たった
 →知識を体系立てて入力する手間がとんでもなく膨大
 →第二次人工知能ブームが終焉を迎えるきっかけに
・知識は本や論文の形であちらこちらに
 →それを機械が読むことができれば、自動的に知識ベースが構築できるはず
 →人工知能研究者の大半が自然言語処理へ向かう動機

□自然言語処理がすべてを解決してくれる?
・自然言語処理
 →自然言語を品詞に分解、分解した品詞同士の関係性を類推して構文木を構築
  …構文解析
・日本語や中国語はまず品詞に分解する必要
 …形態素解析
・文章から知識を覚えさせようと思ったのに、文章だけからは学び取ることができない知識をどうやってAIに教えればいいというのか
 →自然言語処理の目下の限界
 →それは完璧すぎるということ
  →実際の自然言語は完璧とは程遠い

第4章 人工知能によってコンピュータ翻訳の世界がガラリと変わった

・自然言語処理の難しさ
 →構文解析だけでは現実世界の知識や理解が不足していて、ごく単純な文章であっても正しく解釈することができない
・特に形態素解析は厄介
 →辞書が必要であり、辞書の性能によって品詞分解の性能が左右されてしまうという欠点も

□「らき☆すたオモロい」は形態素解析できない
・スペースで区切られない日本語の場合、どこが言葉の切れ目なのか機械的に判別が困難
・構文解析も実は万全とは言い難い
・構文解析を元にした機械翻訳では、どうしてもひとつの文としてこれを日本語で再構築しようとする
 →AIが悪戦苦闘した結果、大変読みづらく、また、意味もとりづらい内容に

□かなりの注目を集めたWord2Vecという技術
・統計的機械学習という手法の興味深い例の1つ、Word2Vec
 →「同じ文脈でいっしょに出てくるから近い」という尺度でベクトル化
・Word2Vecのアイデアは考古学にヒント
 →3種類で同じ内容が書かれた石碑、ロゼッタストーン
  …古代エジプトの神聖文字(ヒエログリフ)
   民衆文字(デモティック)
   ギリシャ文字
 →ヒエログリフの解析が飛躍的に進んだ

□旧来からの人工知能研究者を戸惑わせた重大かつブレイクスルーな発見
・Word2Vecの一歩進んだ技術、深層学習
・Googleが発表したニューラル機械翻訳に関する論文
 →Seq2Seq(Sequence to Sequence)という手法
  …ある文字の並びを別の文字の並びに変換することを学習するためのニューラルネットワーク
・ある言語の文章と対訳の例文を大量に用意
 →たとえば英語とフランス語の対訳、日本語と英語の対訳などが大量にあれば、あとは勝手に学習してしまう
・なんとなく大量の文を読ませることでAIが自動的に構文を読み取り、一方の言語の構文ともう一方の言語の構文のニュアンスの違いを読み取り、自然な翻訳を可能に
・Seq2Seqを獲得した人工知能は、人と会話することさえ可能
 →ときには高度に哲学的な会話さえも
 →次章で、Seq2Seqの驚くべき機能と可能性について

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