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Samsungを巡る熱い動き:年間売上げ首位、Qualcommとの連携、新製品

2017年のSamsungの半導体部門売上げが$69.1 billion、1990年代から首位の座を堅持してきたIntelの$62.8 billionを上回って、世界最大の半導体メーカーになったという見方が表わされている。ひとえにメモリ半導体の価格上昇のなせる業、Intelのシステム性能を牽引するプロセッサとは異なるが、あくまで売上げの結果ではある。この半導体市況がいつまで続くかという議論とともにSamsungを巡る熱い動きが交錯しており、Qualcommとの連携拡大、そして他社へのリードを広げる新製品の打ち上げが行われている。

≪メモリ牽引インパクト≫

Samsung全社の2017年連結決算が次の通り表わされており、半導体メモリが引っ張る内訳である。

◇サムスン営業利益83%増、2017年12月期、半導体牽引 (1月31日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が31日発表した2017年12月期連結決算。売上高が前期比19%増の239兆ウォン、営業利益が同83%増の53兆6500億ウォン(約5兆4200億円)。サーバやスマートフォンの記憶媒体に使う半導体牽引。同部門の営業利益は2.6倍の35兆2000億ウォンと2期連続で過去最高を更新した旨。世界シェア首位の2つの半導体(DRAM、NAND型フラッシュメモリ)の販売価格が上昇した恩恵を受けた旨。外国為替相場のウォン高が、約6600億ウォンの減益要因になったが吸収した旨。

◇Memory Chips Continue to Lift Samsung's Results (1月31日付け EE Times)

半導体販売高について、SamsungがIntelを上回ったとの見方である。メモリおよびプロセッサと両社の主力製品の性格が異なることから、単純な比較とはいかないとの記述が見られている。

◇Samsung Pases Intel as It Posts Record Income, Splits Stock-Samsung ranks as world's biggest chipmaker (1月31日付け Bloomberg)
→Samsungの半導体部門売上げが$69.1 billion、Intelに代わって世界最大の半導体メーカーになった旨。DRAMおよびNANDメモリ半導体が利益増加を支えたとしている旨。

◇Samsung is now the world's biggest chipmaker-Intel processors cede dominance to Samsung memory (1月31日付け The Verge)
→Bloombergが最初に言及、Intelの年間売上げが$62.8 billionでSamsungの半導体部門売上げ$69.1 billionに追い越されて半導体サプライヤ首位の座が替わっている旨。単純に比較とはいかず、Intelはx86プロセッサに重点化、大きくかけ離れたリーダーである一方、Samsungの強みはメモリおよびフラッシュストレージ生産にあるが、金額ベースでは今や後者の事業の方が大きい旨。

Samsungは、Appleと並んで2017年の半導体購入ランキングのトップ2となっている。社内に最大手ユーザを擁する構図は、かつての我が国各社に通じるところである。

◇Samsung, Apple remain top semiconductor customers-Gartner: Samsung, Apple were top chip buyers in 2017 (1月29日付け DIGITIMES)

◇Samsung, Apple Pad Lead in Chip Buying (1月31日付け EE Times)

ただし、Samsungもこの先どうなるか、手放しとはいかない見方が表わされている。

◇サムスン、最高益に死角、頼みの半導体成長鈍化−スマホ・テレビ革新目指す (2月1日付け 日経 電子版)
→2017年12月期の連結営業利益が過去最高を更新した韓国のサムスン電子が危機感を強めている旨。31日に発表した決算は営業利益が前の期比83%増えたが、半導体だけで前の期の2.6倍の3.5兆円を稼ぎ、市況頼みが際立つため。半導体の成長鈍化など、主要3部門に課題を抱える旨。新経営陣のもとスマートフォンやテレビの独自技術を新たな収益源に育てられるか。
今期が試金石となる旨。

半導体業界構築を国家目標に掲げている中国も、メモリ半導体価格には神経を尖らせている様相であり、韓国との間で政府間の接触が行われようとしている。

◇Samsung reportedly to sign MoU with China NDRC (2月2日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsが、メモリ半導体価格上昇におけるSamsungの大きな役割に懸念を表明している中国のNational Development and Reform Commission(NDRC)とmemorandum of understanding(MOU)調印の旨。
Business Koreaの記事は、韓国のfinance ministerでdeputy prime ministerのKim Dong-yeon氏を引用、同氏は中国訪問中にSamsungとNDRCの間のMoUを話し合う計画の旨。

まさに半導体メモリが引っ張るインパクトであるが、現下のSamsungの動きとしてQualcommとの連携拡大がある。通商の公正取引における罰金を科されて苦境にあるQualcommであり、中国とのビジネス関係の改善&強化を施している。

◇Qualcomm in China: BFF or DOA? (1月26日付け EE Times/Blog)
→Qualcommが、ビジネスモデルの変更に努めており、中国に役立つ貢献を提示の旨。中国のBFF(best-friend-forever)になる可能性はあるが、まだ推進には程遠い旨。

◇Qualcomm, Chinese Tech Companies Vow to Push for 5G Devices by 2019-Qualcomm partners with Chinese firms for 5G devices (1月26日付け Wireless Week)
→Qualcommが、中国のスマートフォンメーカーと協働、来年中国向けの5G-ready機器を生産する旨。Lenovo, OPPO, Xiaomiおよびvivoが、複数年にわたってQualcommからradio-frequency(RF)半導体$2 billion以上購入で合意の旨。

Qualcommの直近業績にも罰金が影を落としている。

◇Charges, Apple Dispute Drag on Qualcomm (2月1日付け EE Times)
→Qualcommの12月24日締め四半期の販売高が$6.1 billion、前四半期比3%増、前年同期比1%増。予想を上回ったが、米国税法変更からくる費用およびEuropean Union(EU)が科した$1.2 billionの罰金が大きく足を引っ張っている旨。

そこにSamsungとのグローバル特許cross-license合意拡大の合意が行われており、渡りに船のところがある。スマートフォンについて関係の深い両社であり、Qualcommを支援する動きがとられたものと思われる。

◇With Samsung deal, Qualcomm doubles down on licensing practices-Qualcomm partners with Samsung amid antitrust troubles (2月1日付け Reuters)
→Qualcommが、Samsungとのグローバル特許cross-license合意拡大に合意、該取引にはQualcommの$850 million antitrust罰金の控訴へのSamsungの介入撤退も含まれる旨。該罰金は、South Korean Fair Trade Commissionが科しており、Qualcommがビジネス慣行を通して独占権を作り出したとしている旨。

◇Deal with Samsung could help Qualcomm with Korean legal issue-The chipmaker for phones inks an agreement with Samsung that includes the smartphone maker stepping away from an antitrust appeal in South Korea. (1月31日付け CNET)

◇Qualcomm Expands Licensing Deal With Samsung as Charges Cut Into Profit-Revenue beats expectations, rising to $6.07 billion (1月31日付け The Wall Street Journal)

◇クアルコム、サムスン援軍でも買収防衛に不安 (2月1日付け 日経 電子版)
→米半導体大手、クアルコムが31日、サムスン電子との長期ライセンス契約を拡大更新すると発表、同業ブロードコムによる買収提案にあらがうクアルコムにとり、目下の課題は「単独での成長」を株主に納得させることなだけに、大きな朗報の旨。ただアップルともの言う株主が影を落とし「スマホの支配者」の行方はなお混沌としている旨。

新製品の打ち上げもSamsungは活発に続けており、最近のメモリで先陣を切る3D NANDおよびHBM2(High Bandwidth Memory-2)とともに、supercomputing用800GB Z-SSDが次の通り打ち上げられている。

◇Samsung launches 800GB Z-SSD for supercomputing-The new SZ985 SSD boasts a ultra-low latency of 16 microseconds.-Samsung debuts 800GB SSD for supercomputing use (1月30日付け ZDNet)
→Samsung Electronicsが、supercomputing応用向け800-gigabyte(GB) solid-state drive(SSD)、SZ985 Z-SSDを投入、該SSDのlatencyは16 microsecondsの旨。


≪市場実態PickUp≫

【DesignCon 2018】

半導体設計関係のDesignCon 2018(1月30日〜2月1日:SANTA CLARA, Calif.)にて、人工知能(AI)の利用、そしてMoore's lawの終焉是か非か、とここでも新旧の業界の主題について以下の通りである。

◇AI Expands Role in Design-EDA's CAEML grows more humps (1月31日付け EE Times)
→DesignCon 2018(1月30日〜2月1日:SANTA CLARA, Calif.)でのパネル討議。ベンダーおよび研究者が、machine learningを半導体設計の困難な問題に適用、大きく進んでいる旨。EDAにおけるAIの利用が、standing-room-onlyの聴衆を引きつけるhot topicであり、該イベントでいくつかの論文が出されている旨。ここ1年、Center for Advanced Electronics through Machine Learning(CAEML)は4つの新しいパートナーを得て、13の業界メンバーおよび4つの大学のチームで取り組みの幅と深さの両方を拡げている旨。

◇Chip Heads Gauge Silicon Roadmap-AMD, ARM, Intel review Moore's law and more-DesignCon panelists discuss the fate of Moore's Law (2月1日付け EE Times)
→DesignCon 2018(1月30日〜2月1日:SANTA CLARA, Calif.)にて、AMD, ARM, およびIntelのtechnologistsパネル討議。Moore's lawは終わっているか、生きているか、半導体ロードマップは大きな課題およびopportunitiesの両方につながる旨。Intelのco-founder、Gordon Moore氏が1965年に認めたように半導体上のトランジスタ数が2年ごと倍増し続けるかどうか、講演者は分かれた旨。「少なくともnode移行の鈍化がある。」と、ARMのfellow & director of technology、Rob Aitken氏。
16-nmおよび10-nm生産の3年の間隔および"我々が扱う種類の回路について90-nmで止まったDenard scaling"のパワー優位性の両方に特に言及の旨。

【Renesas Electronics関連】

Renesas関連の内容が続いて見られ、まずは、米国のMaxim Integratedを買収するという報道が米国で行われたが、Renesasは打ち消している。

◇Renesas Denies Negotiating to Buy Maxim (1月29日付け EE Times)
→Renesas Electronicsが、ライバルのMaxim Integratedを買収する協議に入っていることを否定、取引可能性の報道を受けてMaximの株価が急騰の旨。

◇Japan's Renesas dismisses report on talks to buy Maxim-Renesas says it's not in negotiations to acquire Maxim Integrated (1月30日付け Reuters)
→Renesas Electronics社が、米国半導体メーカー、Maxim Integrated Products社買収に向けて協議中というメディア報道を却下の旨。

◇ルネサス、米半導体マキシムと買収協議、米報道 (1月30日付け 日経 電子版)
→ルネサスエレクトロニクスが米半導体中堅、マキシム・インテグレーテッドと買収協議をしていることが29日わかった旨。米CNBCテレビが報じた旨。成立すれば買収額は200億ドル(約2兆2000億円)に上る見込みの旨。半導体業界では規模の拡大を目指した数兆円規模の買収が相次いでおり、世界では中堅にあたるルネサスやマキシムにもその余波が広がってきた旨。
CNBCによると、買収は協議の段階で成立しない可能性もある旨。マキシムはここ数年身売りを検討しており、過去にアナログ・デバイセズやテキサス・インスツルメンツとも協議をしたが成立しなかった旨。

次に、新製品の発表そして取り組みが次の通り見られている。

◇Renesas adds 38 MCUs-Renesas unveils ultra-low-power MCUs for home, industrial uses (1月29日付け Electronics Weekly (UK))
→Renesasが、同社RX130 Groupにおける38の新しいMCUsの即入手可能を発表、フラッシュメモリsizeを256 KB, 384 KBおよび512 KBに拡大、パッケージ寸法を最大100-pinsに増やして、touch MCUsのRX231/RX230 Groupとのcompatibilityおよび高性能化が得られる旨。

◇Renesas SoC to Double EyeQ5 Efficiency-Renesas readies R-CAR SoC for deep learning (2月2日付け EE Times)
→2020年の先端自動運転車に向けて、2019年にサンプル配布を始めるRenesasの新しいSoC、deep learningに向けて設計された次世代R-CAR SoCについて、独占インタビュー記事。該R-CAR SoCは、Intel/Mobileyeの来るEyeQ5 SoCと比べてdeep-learning性能効率を倍にする旨。

人工知能(AI)の工場拠点への適用計画があらわされている。

◇ルネサス、スマートファクトリー拡大、AI活用、2020年めど3拠点に (1月30日付け 日刊工業)
→ルネサスエレクトロニクスが、スマートファクトリーの取り組みを広げる旨。那珂工場(茨城県ひたちなか市)で行っている人工知能(AI)を活用した生産革新を他の工場にも展開し、2020年までに主力3拠点(西条工場[愛媛県西条市]や川尻工場[熊本市南区]など)でAIを適用する旨。さらにエンジニアのように、データから推論できるAIの開発も進める旨。「インダストリー4.0(I4.0)」などにより成長が期待される半導体市場で、自社の取り組みをテコに商機をとらえる旨。

【iPhoneXインパクト】

アップルのiPhoneX減産が打ち出されている。

◇iPhoneX生産半減、1〜3月計画比、高価格で不振 (1月29日付け 日経 電子版)
→米アップルがスマートフォンの最新モデル「iPhoneX(テン)」を減産する旨。1〜3月期の生産量を当初計画から半減させる見通しで、各種部品を供給する国内外のメーカーに通達した旨。1台11万円を超える高価格が世界の消費者に受け入れられなかったもよう。有機ELパネルを初採用した「X」の販売低迷は、日本など世界の部品メーカーの生産や業績に影響しそうな旨。

有機ELディスプレイを供給するSamsungへの影響である。

◇iPhoneX不振、サムスンにも波及、影響500億円規模か (1月31日付け 日経 電子版)
→米アップルのスマートフォンの不振が、韓国サムスン電子のディスプレイ事業の成長に影を落としている旨。同社が31日発表した2017年10〜12月期連結決算は、高精細な有機ELパネルを主体とするディスプレイ事業の営業利益が1兆4100億ウォン(約1420億円)と前年同期比5%増にとどまった旨。
市場予測を4000億〜5000億ウォン(400億〜500億円)下回った旨。

機器受託製造のFoxconnにとっては、危機感丸出しの反応が見られている。

◇鴻海株安「アップル不調で」、郭董事長、スマホ依存に危機感、IoT関連子会社上場へ (2月1日付け 日経)
→台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘董事長は31日、自社の株価低迷について、重要顧客である米アップルに引きずられる形で下落していると不満を示した旨。郭氏が個別の企業名をあげて言及するのは異例。顧客に依存する下請け中心の成長モデルへの危機感の表れでもあり、今後は受託生産主体の成長モデルからの転換を急ぐ旨。

当のアップルは、10-12月が史上最高を記録する売上げであり、これも先が読めない波乱含み必至の展開模様となっている。

【仮想通貨】

不正流出で連日のニュースになっている仮想通貨取引であるが、中国市場を受けて台湾の半導体各社が製造、組立&テストのビジネス対応を行う動きが以下の通り見られている。

◇Taiwan IC packagers to cash in on mining craze in 2018-Cryptocurrency mining drives demand for assembly/test firms (1月30日付け DIGITIMES)
→業界筋発。cryptocurrency mining向け需要に適合するよう、台湾のIC組立&テストcontractorsには、中国などの市場からapplication-specific integrated circuits(ASICs)およびgraphics processing units(GPUs)の受注が増えている旨。Advanced Semiconductor Engineering(ASE), Siliconware Precision Industries(SPIL)およびKing Yuan Electronicsは、gamingおよびmining用のAdvanced Micro Devices(AMD)およびNvidia向けGPUsを組み立てており、スマートフォン半導体の弱含みな需要を埋めている旨。

◇TSMC lands big orders for mining ASICs from Bitmain-Bitmain places orders for packaging mining ASICs with TSMC (1月30日付け DIGITIMES)
→業界筋発。台湾の半導体各社に2018年のグローバルなcryptocurrency mining大流行からくる大きな売上げ増が見えており、TSMCが中国の大手Bitcoin ASIC設計のBitmainからmining半導体を製造するかなり大きな受注獲得の一方、Advanced Semiconductor Engineering(ASE)およびTSMC-関連のGlobal Unichipがbackend実装&テスト受注を分け合っている旨。

【米国SIAの政策プラン】

米国Trump大統領初めての一般教書演説が行われたが、合わせて米国Semiconductor Industry Association(SIA)から2018年に向けた半導体業界政策プランがあらわされている。米国政府のお膝元で敏感に反応、主張を打ち上げる業界模様が恒例である。

◇Our 2018 Policy Plan to Drive U.S. Semiconductor Industry Growth and Innovation (1月31日付け SIA Blog)
→米SIAのPresident & CEO、John Neuffer氏記事。昨晩の一般教書演説においてTrump大統領は、政権初年の実績および2018年に向けた政策agendaに焦点を当て、税制、通商および移民など米国半導体業界に重要ないくつか含め広範な問題に触れた旨。今後に向けてSIAは、米国半導体業界、ひいては広範な技術分野そして我々の経済を強化する政策推進に向けてTrump政権および議会との協働に引き続き重点化していく旨。
8項目の政策計画:
 RESEARCH - Increase Federal Investments in Semiconductor Research
 TRADE - Expand Access to Global Markets
 TAX - Make the U.S. Tax System Globally Competitive
 EXPORT CONTROL - Reduce Burdens on the Export of Commercial Semiconductors
 WORKFORCE - Strengthen America’s Technology Workforce
 ENVIRONMENT, HEALTH & SAFETY - Support Sustainability
 ANTI-COUNTERFEITING - Combat Counterfeit Semiconductors
 INTELLECTUAL PROPERTY - Promote Innovation by Protecting Valuable IP


≪グローバル雑学王−500≫

第一次世界大戦後、近代史で初めてのこと、アメリカと日本が欧州以外で世界の大国に。ところが満洲事変で日本と国際連盟が衝突、不幸な決裂を迎え、そして第二次世界大戦後、国際法違反によって成立した体制が、現在まで続いている、と

『国際法で読み解く戦後史の真実  −文明の近代、野蛮な現代』
 (倉山 満 著:PHP新書 1116) …2017年10月27日 第1版第1刷

より著者の目で見た戦後史の真実を読み進めてきたが、今回で終わりとなる。国家間の合意というものに齟齬をきたしている状況は日々の我が国を取り巻く動きで知り過ぎるところであるが、我々国民一人ひとりが賢くなること、という著者の熱い主張を受け止めている。


終章 あらためて、なぜいま国際法を学ばねばならないか

□2016年12月のプーチン訪日に見る「ヤクザの仁義」
・2016年12月、プーチンが来日、安倍・プーチンの日ロ首脳会談
・ロシアにとっての「国際法」
 →外交とは命がけのシノギ、力のない者のいうことは聞かない
・北方領土とは、1945年にソ連が日ソ中立条約を破棄して対日参戦して占拠した、国後・択捉・歯舞・色丹の四島
 →1956年、日ソ共同宣言が締結、歯舞・色丹の二島については平和条約が締結された後に引き渡すと定め
  →日本は国後・択捉の二島を譲らなかったため、その後のソ連は「領土問題は存在しない」ことを公式見解に
 →1997年11月の橋本龍太郎・エリツィン会談で、2000年までに平和条約を締結するとまで話が進んだかに
  →エリツィンが健康上の理由からプーチンに大統領を禅譲、「単なる努力目標」というところまで後退
・今回、一島も帰ってこないどころか、「そんな問題自体、存在しないが、話し合う用意はある」というところまで、さらに後退

□ルールの範囲で「話があるなら聞いてやる」
・プーチンの基本的なスタンス
 →国際法(1956年の日ソ共同宣言のこと)を守れ、そのルールの範囲で「話があるなら聞いてやる」というもの
・こういう交渉は、すればするほどハードルを上げられるだけ
 →交渉そのもので、相手を譲歩させるなどできるはずがない

□プーチンの政敵には原因不明のヘリコプター事故死が多い
・アレクサンダー・レベジ
 →エリツィンと組んで、西欧諸国ではNATOに、アジアでは日米と接近して、中国と対抗しようとした政治家
 →2002年4月28日、謎のヘリコプター事故で死亡
・プーチンの政敵には原因不明のヘリコプター事故死が多い

□領土問題をなかったことにされてしまった安倍首相は完敗
・2014年のクリミア併合に対して、日本は欧米とともにロシアに経済制裁
 →四島を特区にした経済協力に関して、「制裁を受けたまま、どうやって経済関係を新しいより高いレベルに発展させるのか?」とプーチン
・日本にも日本の立場があることなど、プーチンには百も承知
 →あえて返す言葉がないような当然の理屈

□プーチンは国際法を使いこなすのがうまい
・本来、隣国が仮想敵国だというのは国際関係の常識
 →プーチンにとっては、中国は領土侵略の脅威を感じないわけにはいかない相手
 →しかし、中国はアメリカと敵対している国という点で、手を組める相手
 →プーチンの権力基盤となっているガスプロム社にとっては重要な顧客でも
・伝統国際法が崩壊して70年、国際法は武器たりえるということをプーチンは教えている
 →国際法の使いこなし方がうまい

≪おわりに≫――日本が進むべきは「徳川家康の道」か「今川氏真の道」か

・時空を超えた比較 …吉田茂と徳川家康、どちらが偉いか
・吉田は、日本の再軍備を頑なに拒否
 →強い思いであった、「アメリカの手伝い戦に駆り出されたくない」は実現
・家康率いる三河武士団は、命あらばどこまでも戦い抜くことを厭わない人たち
 →国境を防衛し続ける戦いを、20年続けた
 →三河武士団は気がついたら日本最強の武士団に
 →戦国の覇者となったのは、信玄でも信長でもなく、家康
・吉田やその後の歴代政権の路線を戦国にたとえると、「織田・徳川同盟における三河武士団になるのが嫌だ」
 →吉田茂は、徳川家康になる道を捨てた
・今後、われわれはどのような未来に進むべきか
 →いまこそ家康の道を歩む千載一遇の好機
 →現在、アメリカのトランプ大統領は、自由主義陣営で孤立
・我が国のやり方
 →まず景気を回復させる
  …我が国はいまでも、世界有数の経済大国 →潜在的軍事大国
・習近平もプーチンも金正恩も、力の論理の信奉者
 →何よりも大事なことは、賢くなること …国民一人ひとりがなすべきこと
・日本の言論界のいま
 →「安倍アンチ」と「安倍信者」の2つしか
 →二択しかない悲惨な言論状況で、一人ひとりの国民が賢くなることこそが、国を護るということ
・我が国は嫌でも世界の中で生きていくしかない。しかも、実に野蛮な国々に囲まれて
 →かつての大日本帝国が世界に誇れる文明を持っていたことを、全人類の模範たる国際法の先進国であったことを、見直すべき
 →この不愉快な現実を見据えなければ、未来は勝ち取れない
・幕末日本。軍事力でも、経済力でも、科学技術力でも劣っていた。しかし、魂だけは負けていなかった
 →みんなが頑張ったから、日本は誰にも媚びないで生きていける国、文明国になった

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