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改めて"グローバルな協調と競争"の重み、東芝−WD:SEMICON JAPAN

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今年の半ばから後半にかけて刻々と動き、成り行きに注目させられていた東芝と米ウエスタンデジタル(WD)の間の東芝・半導体メモリ子会社、「東芝メモリ」を巡るすべての係争が取り下げられ、和解に至っている。残すは各国、特に中国の独占禁止法の審査通過となる。もう1つ、半導体製造装置の国際展示会、「SEMICON JAPAN」に出かけたが、ここでも史上最高を大きく更新する今年の出荷額見込みが席巻する話題となっている。ともに、改めて"グローバルな協調と競争"の重みを感じさせている。

≪感嘆符(!)、WOW!の伸びっぷり≫

半導体市場の熱い活況について、メモリの高値で大きく伸ばしている韓国でも半導体の「スーパーサイクル」とあらわして以下の論説が見られている。好況がいつまで続くのか、という願いにも似た見方とともに、今後に向けた戦略的な取り組みへの遅れの懸念があらわされている。

◇「半導体好況はさらに続く」…投資増やす日米、韓国は? (12月11日付け 韓国・中央日報)
→半導体好況がその他の国内産業の不況を隠しているという「半導体錯視論」が出てくるほど半導体産業が超好況だ。こうした半導体の「スーパーサイクル」はいつまで続くのだろうか。
ひとまず情報技術(IT)分野の専門市場調査会社、ICインサイツの見通しはバラ色。結論から言えば「スマートフォンのようなモバイル需要が減っても自動車とモノのインターネット(IoT)がこれに代わり半導体好況を相当期間引っ張っていくだろう」。
各国政府が率先して半導体関連戦略作りに乗り出したのも予想より半導体好況サイクルが長引くだろうという側に賭けた結果と分析できる。10日付読売新聞によると、日本政府は新型半導体開発拠点の設置に乗り出した。
経済産業省傘下の産業技術総合研究所の施設が有力候補地として検討されている。日本政府はここでPCやスマートフォンに搭載される半導体に比べ処理速度が10倍以上速いながらも消費電力は100分の1以下である自動運転車用とAI用半導体を開発する計画だ。

活況を牽引しているメモリのDRAMであるが、この第四四半期も昨年比65%増の販売高とまさに信じられないほどの伸びを呈して、exclamation point(感嘆符(!))、amazingと驚きに溢れる表し方が見られている。

◇4Q DRAM sales put exclamation point on an amazing year of growth (12月13日付け ELECTROIQ)
→2017年を通してDRAMメーカーは、デバイスのoutput、特にデータセンターサーバで用いられる高性能DRAMおよびスマートフォンなどモバイル製品で用いられる低電力高密度DRAMのそれを高める圧力に直面、力強く引き続く需要がDRAM average selling prices(ASPs)に大きく押し上げる圧力となっている旨。この流れは2017年第四四半期も続いて、DRAM四半期販売高が$21.1 billionと史上最高になり、各四半期DRAM販売高が新たに最高を更新するという信じられない伸びの年を仕上げている。2017年第四四半期の販売高予測水準、$21.1 billionは、2016年第四四半期の$12.8 billionに対し65%増の旨。

さて、東芝と米ウエスタンデジタル(WD)の間の懸案の係争についてであるが、打開に向けた原則的合意から最終的な両社の歩み寄りが以下の通り急展開している。

◇Toshiba, Western Digital Reportedly Close to Settlement (12月11日付け EE Times)

◇Toshiba and Western Digital Settle Spat Over Chip Sale-Toshiba, Western Digital reportedly agree to drop lawsuits (12月11日付け Bloomberg)
→東芝とWestern Digitalが、お互い相手取った法的係争の取り下げに合意、東芝がNANDフラッシュメモリ製造部門を売却する道が開かれる旨。該合意の一環として、Western Digitalは日本の半導体工場への出資も行え、次世代メモリ半導体の供給を受ける旨。

◇Toshiba and Western Digital Resolve Dispute Over Chip Unit -Hurdles remain, including antitrust reviews (12月11日付け The Wall Street Journal)

◇東芝半導体売却、残るハードルは独禁法、WDと和解へ (12月12日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ事業の売却を阻みかねなかった米ウエスタンデジタル(WD)との係争が解消する見通しとなった旨。両社は半年超にわたる法廷闘争を終結させ、協業関係を再構築する旨。東芝は6000億円の増資を実施し債務超過解消にメドをつけたばかり。WDとも和解に至ったことで、メモリ売却に向けた当面の課題は中国など独占禁止法の審査通過に絞られる旨。

そして、両社の和解発表が行われている。

◇東芝・WDが和解発表、先端メモリ共同生産−係争すべて取り下げ (12月13日付け 日経 電子版 10:05)
→半導体メモリ事業を巡り対立してきた東芝と米ウエスタンデジタル(WD)が13日、和解すると発表、お互いを相手取った法的措置をすべて取り下げ、先端メモリの共同投資を進めることで合意した旨。東芝による事業売却の実現に向けた残る焦点は中国の独占禁止法審査に絞られる旨。昨年末に発覚した原発事業の巨額損失で経営危機に陥った東芝の再建が前進する旨。
東芝と半導体メモリ子会社「東芝メモリ」、WDが連名で和解を発表、まず双方が提起したすべての法的措置を取り下げる旨。WDは5月に国際仲裁裁判所に東芝メモリの第三者への売却差し止めを求める仲裁を申し立て、これが売却実現の大きな障害になっていた旨。東芝も6月、係争で生じた損害の賠償をWDに求める訴訟を東京地裁に起こしていた旨。
WDは、東芝による東芝メモリの日米韓連合への売却に同意する旨。半年超にわたった係争は終結する旨。

◇Toshiba, WD Settle Dispute, Extend JV (12月13日付け EE Times)
→東芝とWestern Digitalが、すべての係争および仲裁懸案を決着させる取引を発表、これまでの連携およびNANDフラッシュ開発&製造を延長する旨。

◇Toshiba and Western Digital reach global settlement and agree to strengthen flash memory collaboration (12月14日付け ELECTROIQ)

それにしても10ヶ月にわたる対立の間、メモリ首位の韓国・Samsungは圧倒的な差をつけるべく技術開発、設備投資に邁進していることも頻繁な動きとして受け止めている。今後のグローバルな競争の推移に注目するところである。

◇東芝・WD、和解遅れた代償、遠のく首位サムスン (12月13日付け 日経 電子版 20:37)
→東芝の半導体メモリ子会社「東芝メモリ」を巡り、10カ月にわたり対立してきた東芝と米ウエスタンデジタル(WD)が13日に和解、最新型メモリに共同投資するほか、法廷での係争を終結させる旨。東芝メモリはWDとの協業関係を保つことで首位サムスン電子と戦う体制がようやく整う旨。ただ、迅速な経営判断が必要な半導体業界で「10カ月の空白」の代償は小さくない旨。

SEMICON JAPANに際して恒例の今年の半導体製造装置販売高の見込みがSEMIから発表されているが、これも36%増と史上最高の驚異的な伸び、WOW!の伸びっぷりという表現も見られている。

◇Fab Tool Sales Forecast to Hit Record $56 Billion (12月12日付け EE Times)
→SEMI trade association発。2017年の半導体製造装置販売高が約36%増加する見込み、20%増と見通した前回予測からの上方修正の旨。来年はさらに7.5%増と見ている旨。SEMIはこのほど、今年のfab tools販売高が最高記録の$55.9 billionに達し、初めて$50 billion markを越えるとしている旨。

◇$55.9B semiconductor equipment forecast: New record with Korea at top (12月12日付け ELECTROIQ)
→electronics製造supply chainを代表するグローバル業界団体、SEMIが、annual SEMICON Japan expositionにてYear-end Forecastをリリースの旨。

◇Semiconductor equipment market to break record in 2017, says SEMI (12月13日付け DIGITIMES)

◇半導体装置の世界出荷額、17年ぶり最高、今年6.3兆円、メモリ好調、東京エレクなど工場増強 (12月13日付け 日経)
→半導体製造装置の世界市場が17年ぶりに過去最高を更新する旨。業界団体の国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は12日、2017年の世界出荷額が前年比35.6%増の$55.9 billion(約6兆3千億円)となる見通しと発表、メモリの増産投資が堅調で、2018年も前年比7.5%増を見込む旨。東京エレクトロンなど装置各社は工場増強に動き始めている旨。特に3次元フラッシュメモリの生産に必要な特殊な製造装置が足りず、米ラムリサーチや東京エレクトロンの装置をメモリメーカーが奪い合う構図となっている旨。世界首位の韓国サムスン電子がメモリ全体で年間1兆円規模の設備投資で装置を発注する旨。

◇Industry enters the age of WOW (12月13日付け ELECTROIQ)

SEMICON JAPANについての記事の1つである。

◇「セミコン・ジャパン」開幕、半導体装置「スゴ技」結晶、「次の成長」に照準 (12月14日付け 日経産業)
→半導体製造装置の国際展示会「セミコン・ジャパン」が13日、東京ビッグサイトで開幕、半導体市場はシリコンサイクルを覆す勢いで成長が続いているが、ディスコや日立ハイテクノロジーズ、アドバンテストはパワー半導体や電気自動車(EV)用半導体、フレキシブル基板など次の成長市場を見据えて技術を競った旨。

"グローバルな協調と競争"の中での立ち居振る舞いの重みをここでも一層感じさせられている。


≪市場実態PickUp≫

【STMicroelectronics関連】

欧州の半導体はまだまだ冷めてはいないと、STMicroelectronicsを取り巻く動きが熱を帯びてきている。“3D sensing”がもたらす好調な業況が見られている。

◇ST, Ams Sense 3D Trend-Ams CEO talks to EE Times-Analysis: ST and ams lead EU comeback in chips (12月13日付け EE Times)
→業績が好調に推移しているSTMicroelectronics(Geneva)およびAms(Premstaetten, Austria)。欧州で静かに醸し出されている3つの大きな変化:
  sensing”および“automotive”など成長領域に大きく重点化
 △困辰蛤戮い分析の戦略、センサ市場で“3D sensing”を最大の成長分野と同定
 5蚕儚発の情熱は決して諦めておらず、STおよびAmsともに社内製造capabilitiesが今やうまくいこうとしている

ソフトウェア開発toolsサプライヤを取り込む買収が行われている。

◇STMicroelectronics acquires Atollic-ST pays $7M for Atollic, adding software tools (12月13日付け New Electronics)
→STMicroelectronicsが、同社microcontroller(MCU)ラインサポートに向けて、ソフトウェア開発toolsサプライヤ、Atollic(スウェーデン)を$7 million in cashで買収の旨。Atollicは、TrueSTUDIO統合開発環境を支えており、すでにSTMのArm Cortex-M設計コアベースMCUs、STM32ラインをサポートしている旨。

◇ST buys Atollic (12月13日付け Electronics Weekly (UK))

◇STMicroelectronics acquires Atollic (12月14日付け DIGITIMES)

【Nvidia関連】

Teslaが自動運転向け半導体を自前でも起こして、Nvidiaへの依存を減らすというアップルに続く半導体自立化の動きである。

◇自動運転向け半導体、自前で、テスラ、エヌビディア依存減らす (12月14日付け 日経産業)
→米テスラは自動運転向けの半導体開発を自前でも進める旨。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が人工知能(AI)開発者のイベントで明らかにした旨。自動運転の試作車向けで圧倒的シェアを誇る米画像処理半導体(GPU)大手、エヌビディアへの依存を減らす狙いがあるとみられる旨。

一方、Nvidiaの日本でのイベントにて、建設機械のコマツにAI半導体を供給する提携が見られている。

◇エヌビディア、コマツにAI半導体、建機の自動運転も (12月13日付け 日経 電子版)
→米半導体大手、エヌビディアが13日、コマツと提携すると発表、コマツの建設作業の効率化システムに人工知能(AI)半導体を供給する旨。コマツはカメラとAI半導体を組み合わせた画像解析技術を活用し、建機の稼働状況や作業の進捗を分析、建設工事の効率化につなげる旨。将来は建機の自動運転・無人作業も視野に、共同で関連技術を開発していく旨。

◇Komatsu adopts Nvidia AI technology (12月14日付け DIGITIMES)

◇Nvidia's AI tech to go into Komatsu construction machinery (12月14日付け Nikkei Asian Review (Japan))

【Appleの出資】

アップルが、augmented reality(AR) featuresを盛り込む今後の展開で重要となるレーザ半導体を独占的に得られるよう、Finisar(Sunnyvale, California)への出資を行っている。

◇Apple grants $390 million to Finisar to boost laser chip production-Finisar attracts $390M investment from Apple (12月13日付け Reuters)
→Appleが、Animojis, 顔認証(Face ID)およびportrait-mode写真などiPhone X features関連の半導体生産強化に向けて、Finisar(Sunnyvale, California)に$390 million出資する旨。Finisarは、該投資を垂直キャビティ面発光レーザ(vertical-cavity surface-emitting lasers:VCSELs)に注力する生産拠点の再開に向けるとしている旨。

◇Apple Awards $390 Million to Optical Components Supplier Finisar (12月14日付け EE Times)

◇Finisar deal helps Apple block rivals' path to AR features (12月14日付け Reuters)
→Apple社が水曜に発表した半導体サプライヤ、Finisar社の$390 million買収取引により、augmented reality(AR) featuresを支持して今後の製品で大きな役割を果たすとAppleが見ているコンポーネントの供給が閉ざされていく旨。

【中国市場関連】

中国のIC設計の今年の売上げ規模が$30 billionとの見方である。

◇China IC design industry tops $30bn-IC design firms in China post $30 billion revenue (12月8日付け Electronics Weekly (UK))
→Trendforceの評価。中国のIC設計メーカーの今年の総売り上げが$30 billionの一方、2018年は$36 billionと見込む旨。中国の大手design housesはartificial intelligence(AI)および5Gワイヤレス通信を狙っており、low-endおよびmidrangeスマートフォン半導体に重点化するメーカーでは伸びはより小さい旨。

中国のメモリ業界について、Samsungはじめ既存の主要プレーヤーと張り合う前には特許はじめ法的係争問題が立ちはだかると表わされている。

◇Tech infringement lawsuits casting clouds on China memory sector-Sources: Micron suit could chill China's memory biz (12月11日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国のメモリ業界が自前の生産技術展開に向けて全力で動いているが、その展開速度が中国のメモリメーカーを相手取った通商機密および技術特許侵害訴訟があらわれてきてそがれる様相があり、最近では米国・Micron Technologyが台湾・United Microelectronics(UMC)およびその関連で中国のメモリメーカー、Fujian Jinhua Integrated Circuit(JHICC)を相手取った提訴がある旨。MicronはNorth California District連邦裁に提訴、同社がDRAM IPsの保護で台湾海峡を横切って法廷係争を広げるのは初めて、今までは通常台湾の半導体プレーヤーに対してである旨。

◇For China's Memory Firms, Legal Tests May Loom (12月15日付け EE Times/Semi Conscious)
→Tsinghua Unigroupなど中国のメモリ新興勢がSamsung, HynixおよびMicronと市場で相対する前に、法廷で戦うことになりそうな旨。

グーグルが、中国側との微妙な取引バランスのもと、中国でのR%D活動を再開している。

◇グーグル、中国でR&D再開、自動運転にらみAI拠点 (12月13日付け 日経 電子版)
→米グーグルが8年ぶりに中国で研究開発(R&D)を再開、北京に人工知能(AI)を対象とした拠点を開く旨。中国当局はネット言論の統制を強める一方、自動運転などAIの用途開発を後押しする旨。緊張感を伴いながらも、巨大な中国市場に関与したいグーグル側と、高い技術力を獲得したい中国側の思惑が一致した模様の旨。

NXP SemiconductorsのAlibaba Cloudとの戦略的連携である。

◇NXP pushing partnerships with China developers (12月14日付け DIGITIMES)
→NXP Semiconductorsが、Alibaba Groupのcloud computing事業部門、Alibaba Cloudとの戦略的連携を発表、該2社は、edge computing応用に向けた安全確実なsmart機器の開発を一緒に可能にしていき、さらにInternet of Things(IoT)ソリューションを展開する計画の旨。該連携の一環として、Alibaba IoT operating system(OS)、AliOS Thingsを、NXP applicationsプロセッサ, microcontroller(MCU)半導体, およびLayerscape multicoreプロセッサ上に統合していく旨。

【台湾市場】

台湾の11月輸出が史上最高の月次水準を示している。

◇Taiwan November exports hit record (12月11日付け DIGITIMES)
→台湾・Ministry of Finance(MOF)発。台湾の2017年11月の輸出入総額:
  輸出 $28.88 billion 前月比4.9%増 前年同月比14.0%増
      …史上最高の月次水準
  輸入 $22.92 billion 前月比2.6%増 前年同月比 9.0%増
 台湾製製品で輸出額最大のelectronicコンポーネント:
     $10.195 billion 前月比1.8%増 前年同月比16.0%増
 1-11月累計:
  輸出 $287.88 billion 前年同期比13.1%増
  輸入 $236.14 billion 前年同期比12.6%増

そんな中、台湾の主要半導体プレーヤーの11月業績を見ると、減少、良くてもフラットというデータ内容となっている。従来基準では異常な高値が引っ張るメモリとは対照的な様相を呈している。

◇TSMC November revenues flat (12月11日付け DIGITIMES)
→TSMCの2017年11月連結売上げがNT$93.15 billion($3.1 billion)、前月比1.4%減、前年同月比0.1%増。1-11月売上げ累計がNT$887.55 billion、前年同期比2.0%増。

◇UMC sees November revenues decrease (12月11日付け DIGITIMES)
→UMCの2017年11月連結売上げがNT$12.155 billion($405.13 million)、前月比11.98%減、前年同月比5.89%減。1-11月売上げ累計がNT$138.617 billion、前年同期比2.44%増。

◇MediaTek reports decreased revenues for November (12月11日付け DIGITIMES)
→MediaTekの2017年11月連結売上げがNT$20.739 billion($691.23 million)、前月比1.3%減、前年同月比11.8%減。1-11月売上げ累計がNT$219.56 billion、前年同期比13.61%減。


≪グローバル雑学王−493≫

ヨーロッパ文明の精華の1つであった「国際法秩序」が、第一次世界大戦そして第二次世界大戦を経て、国際法を理解できないアメリカと、国際法を理解して破るソ連により、世界はすっかり「野蛮」になってしまった、と

『国際法で読み解く戦後史の真実  −文明の近代、野蛮な現代』
 (倉山 満 著:PHP新書 1116) …2017年10月27日 第1版第1刷

より著者の見方に迫っていく前半である。第一次世界大戦後にアメリカ第28代大統領、ウッドロー・ウィルソンが高らかに謳った「14ヵ条宣言」が第二次世界大戦後の世界で起きている紛争の大半の誘因になっているとしている。また、アメリカ政府の方針さえも左右したスパイなど、ソ連の面の皮が厚い手強さが言い表されている。

第3章 国際法を理解できない者 VS 理解して破る者の「仁義なき冷戦」
    …前半

□「辺境の野蛮人のどす黒い嫌らしさ」に満ちた世界
・第二次世界大戦後の現代史の大きな枠組みとなる、アメリカとソ連の冷戦構造
 →国際法を理解できないアメリカと、国際法を理解して破るソ連の覇の競い合い
 →世界はすっかり「野蛮」になってしまった
・米ソ両国によって、ヨーロッパ文明の精華の1つであった「国際法秩序」も破壊されてしまった
 →第一次世界大戦後に五大国の1つとなった日本を叩き落とすことに血道を上げたのも、米ソ両国
・差別されている側が、差別する側に回ったときの「どす黒い嫌らしさ」については、あらためて指摘するまでもない

□「諸悪の根源」としてのウィルソン主義
・第一次世界大戦後、世界の超大国へのし上がっていったアメリカの本質
 →最も重要な人物こそ、アメリカ第28代大統領、ウッドロー・ウィルソン(Thomas Woodrow Wilson)
 →1945年以降の世界で起きている紛争の、控え目にいって90%の元をつくった
・1918年1月8日、アメリカ連邦議会で彼が高らかに提唱、「14ヵ条宣言」
 →主な内容:「秘密外交の廃止」「公海航行の自由」「通商障壁撤廃」
       「軍備縮小」「民族自決」
       「ロシアからの撤兵とロシアの政治制度選択の自由の保障」
       「バルカン半島と中東の新秩序構築」
・その国が主権国家に値するかどうか
 →治安維持能力(国内を統治する能力)と、条約遵守能力(国際間の合意法を守る能力)の2つの力が必要
・「民族自決」とは、主権国家でない「民族(エスニック)」も主権国家(ネイション)として格上げするという内容
 →世界中で少数民族が独立運動を起こすことに
・1つの民族で1つの国になるということは、異民族がそこにいることを認めないということ

□共産主義を扶け、国家間の恨みを増進し、帝政を破壊する
・第4条でウィルソンは「軍備の縮小」を提言
 →このとき、ロシアでレーニンによる共産主義革命が進行
 →1921年のワシントン海軍軍縮会議での日英米の「恨みの三角関係」
  …「英:米・日」の主力艦比率を「10:10:6」に
  →軍縮を実行することで、それぞれがそれぞれに恨みを持つ状態に
  →一方、軍縮会議には参加しないソ連は伸び伸びと軍事力を強化
・ウィルソンの「14ヵ条宣言」は、第一次世界大戦後の世界秩序をアメリカ優位に作り変えようとしたもの
 →「民族自決」は、主権国家間の合意法である国際法を事実上破壊する内容
・ウィルソン主義は、アメリカの対外政策で大きな影響を持っている

□なぜロシア・ソ連は、面の皮が厚く手強いのか
・ロシアは、「国際法」を熟知したうえで破る国
 →外交能力も謀略能力も格段に上
・(著者が)挙げた「ロシアの法則」
 →一.何があっても外交で生き残る
  二.とにかく自分を強く大きく見せる
  三.絶対に(大国相手の)二正面作戦はしない
  四.戦争の財源はどうにかしてひねりだす
  五.弱い奴はつぶす
  六.受けた恩は仇で返す
  七.約束を破ったときこそ自己正当化する
  八.どうにもならなくなったらキレイごとでごまかす
・国際法も、それを使ったほうが都合がいい場合には、徹底的に使う
 →一方、国際法を破ったほうがいいときには、何の躊躇もなく破る
  →第二次世界大戦末期、日ソ中立条約を平気で破って、満洲、樺太、千島列島に攻め込んできた
・共産主義者は使える法律だけは使って、使えない法律は無視

□アメリカ政府の方針さえも左右したソ連スパイ
・戦前期のアメリカ、ローズベルト政権の内奥深くに多数のソ連のスパイが浸透、政権の方針さえも大きく左右
 →かつて植民地だった諸国では共産主義勢力が跋扈、共産政権が次々に誕生
 →このような事態を前に、アメリカはやりたい放題にやられていた

□アメリカが「敵と味方を間違える天才」だったせいで……
・アメリカも遅ればせながら1947年頃までには状況を正確に把握、共産主義勢力を甘く見過ぎていたことに気づいていった
 →米ソ冷戦が始まることに
 →ソ連と戦うために味方になってくれそうな国は、ことごとく第二次世界
  大戦とその後の国際状況の中で、大きなダメージを受けていた
  …イギリス、日本、中華民国、・・・

□中国はなぜ共産主義になったか――その背景
・アジアでは第二次世界大戦が終わった後から、本格的に共産主義の魔の手が広がっていくことに
 →中国大陸では、蒋介石率いる中華民国の国民党軍と、毛沢東率いる中国共産党の人民解放軍による国共内戦が始まる
・蒋介石はソ連を信用しておらず、中国共産党がソ連の傀儡であることをわかっていたので、反共
 →アメリカはプロパガンダをやり返されて毛沢東支持に傾いた
 →アメリカ人の敵と味方を間違える天才ぶり

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