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半導体過熱の渦中、メモリ急伸のランキング予想、先行きへの警戒感

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メモリ半導体が引っ張る熱い活況の半導体市場と決まり文句で表わされるこのところの業況となっているが、我が国の10月輸出にも半導体関連が引っ張って中国向けが単月として過去最大を記録する形であらわれている。本年の半導体ベンダーランキング予想がIC Insightsから示されて、販売高が昨年比48%増のメモリのSamsungが同7%増のプロセッサのIntelをついに上回って1993年以降初めてIntel以外の首位になりそうである。一方、あまりの高値がいつまで続くか、先行きへの警戒感が並行して漂う現時点の様相である。

≪信じがたいメモリ価格上昇≫

我が国政府の10月の貿易統計速報で、半導体需要の過熱からくる中国向け輸出の伸びっぷりがあらわされている。

◇半導体需要に過熱感、10月輸出、中国向け最大 (11月20日付け 日経 電子版)
→財務省が20日発表した10月の貿易統計速報(通関ベース)。スマートフォンに使う液晶デバイスなどを製造する半導体製造装置が好調だった中国向けが単月として過去最大を記録した旨。日本経済の成長を支える外需は引き続き堅調といえるが、先行きには気になる点も散見される旨。中国向け輸出は1兆3541億円と、前年同月を26.0%上回った旨。

世界的にも半導体関連株式評価が高まっているなか、アナリストからの警告が以下の通り見られている。

◇Analyst Warns on Semiconductor Stock Valuations (11月22日付け EE Times)
→International Business Strategies(IBS)(Los Gatos, Calif.)のCEO、Handel Jones氏。多くの従業員および投資家に恩恵となる半導体メーカー評価の高い伸びは、overcapacityあるいはグローバルGDP鈍化に関連しての半導体業界低迷の可能性を完全には反映しないと注意を促し、向こう24ヶ月での半導体業界低迷の確率は50%より大きいと警告の旨。

恒例の本年の半導体ベンダーランキング予想が、IC Insightsからファウンドリーを除く形で表わされており、概要を以下に示す。

◇Samsung Forecast to Top Intel as the #1 Semiconductor Supplier in 2017 -Nvidia expected to make its first appearance in the top 10 ranking this year. (11月20日付け IC Insights)
→IC InsightsのNovember Update to the 2017 McClean Reportにて、2017年について予想される半導体サプライヤ・トップ25のランキングデータ。
1993年以来初めてのこと、半導体業界が新しいNo.1サプライヤを見ることになりそうな旨。Samsungが2017年第二四半期に首位となり、1993年以降首位を保ったIntelに取って代わった旨。2016年第一四半期ではIntelの販売高はSamsungより40%上回ったが、1年余りでそのリードは消されている旨。Intelは現時点、2017年半導体販売高ランキングでSamsungより$4.6 billion後れる見込み、Samsungの今年の大幅な販売高増加はDRAMおよびNANDフラッシュaverage selling prices(ASPs)の信じがたいほどの上昇が主に引っ張っている旨。

【世界半導体ベンダー・トップ10(ファウンドリー除く)の2017年予測】

  2017年販売高およびシェア(予測)
2016年販売高
1
  Samsung
$65.6B
15.0%
$44.3B
2
  Intel
$61.0B
13.9%
$57.0B
3
  SK Hynix
$26.2B
6.0%
$14.9B
4
  Micron
$23.4B
5.3%
$13.5B
5
  Broadcom(*)
$17.6B
4.0%
$15.2B
6
  Qualcomm(*)
$17.1B
3.9%
$15.4B
7
  TI
$13.9B
3.2%
$12.5B
8
  東芝
$13.5B
3.1%
$10.9B
9
  Nvidia(*)
$9.2B
2.1%
10
  NXP
$9.2B
2.1%
$9.5B
  トップ10計
$256.7B
58.5%
$202.1B
  半導体市場
$438.5B
100%
$365.6B

(注) * ファブレス

[source: IC Insights]


メモリ価格の信じがたいほどの上昇が謳われているが、Samsung、SK HynixおよびMicronのデータから一目瞭然、示すところとなっている。以下、業界各紙の取り上げである。

◇Samsung sales expected surpass Intel this year -IC Insights: Samsung's 2017 chip sales to exceed Intel's (11月20日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→IC Insightsの評価。Samsung Electronicsの2017年半導体販売高が$65.6 billionになる見込み、Intelの$61 billionを上回る旨。SK Hynixが第3位、およびMicron Technologyが第4位、それぞれ$26.2 billionおよび$23.4 billionと予測している旨。

◇Samsung to unseat Intel as top semiconductor supplier in 2017, says IC Insights (11月21日付け DIGITIMES)

◇Samsung Likely to Unseat Intel as Top Chip Vendor (11月22日付け EE Times)

◇Global #1 Chip Player:Samsung Electronics Expected to Top the Global Semiconductor Market This Year (11月22日付け BusinessKorea)

一方、SEMIからの北米半導体装置メーカーの2017年10月世界billingsデータでは、4か月連続の前月比減少という警戒感があらわされている。本年30%以上の非常に大きな装置spendingの伸びを見込むなかでの見方である。

◇North American Semiconductor Equipment Industry Posts October 2017 Billings (11月21日付け SEMI)
→SEMI発行、October Equipment Market Data Subscription(EMDS) Billings Report発。北米半導体装置メーカーの2017年10月の世界billings(3ヶ月平均ベース)が$2.02 billion、前月比1.8%減、前年同月比23.7%増。「10月の装置billingsは、この記録的な投資の年の間に4か月連続の前月比減少、この季節的な弱含みにも拘らず、装置spendingは今年30%以上増えると見ており、2018年の伸びについて確信している。」と、SEMIのpresident and CEO、Ajit Manocha氏。
ここ半年の推移(金額:USM$):

Billings
Year-Over-Year
(3ヶ月平均)
May 2017
$2,270.5
41.8%
June 2017
$2,300.3
34.1%
July 2017
$2,269.7
32.9%
August 2017
$2,181.8
27.7%
September 2017 (final)
$2,054.8
37.6%
October 2017 (prelim)
$2,017.0
23.7%

[Source: SEMI (www.semi.org), November 2017]


◇North American semi equipment industry billings fall for 4th consecutive month (11月23日付け DIGITIMES)


≪市場実態PickUp≫

【東芝の動き関連】

「東芝メモリ」の売却が遅れた場合にも備える増資の決議が東芝の取締役会で行われる一方、該売却で対立が続く東芝とウエスタンデジタルの間では、和解に向けた詰めとともに両社の共同生産を巡る駆け引きが行なわれている。

◇東芝、6000億円の増資決議、今期末の債務超過回避 (11月19日付け 日経 電子版)
→東芝は19日、同日開いた取締役会で6000億円の増資を決議したと発表、これにより財務改善策の主軸である半導体メモリ事業の売却が遅れても、2018年3月期末の2期連続の債務超過による上場廃止を回避できる見込みの旨。調達資金は破綻した米原子力子会社に関わる債務返済などに充てる旨。債務超過解消にメドが付き、再建に向け大きく前進する旨。

◇東芝・WD、和解へ向け詰め、共同生産巡り駆け引き、係争の取り下げ焦点 (11月21日付け 日経)
→東芝の半導体メモリ事業売却を巡って対立していた、東芝と米ウエスタンデジタル(WD)が和解に向けた協議を本格化させている旨。半導体メモリ生産に共同投資したいWDに対し、東芝はWDによる係争の取り下げを条件としている旨。係争を早く終わらせたい東芝と、最新メモリを確実に調達したいWD双方に和解を進める理由があるが、協議がまとまるかはなお不透明な旨。

【引き続くM&A】

Broadcomが自分より大きなライバル、Qualcommを相手取った史上最大のハイテク買収が仕掛けられたばかりであるが、並行して次のM&Aの動きも見られていた。

◇Marvell Technology Group in Advanced Talks to Combine With Cavium -Marvell had market value around $9 billion while Cavium's was above $4 billion-Report: Marvell is in merger talks with Cavium (11月3日付け The Wall Street Journal)
→Marvell Technology Group(Bermuda)が、約$14 billion規模の半導体メーカーを作り出すためにCavium(San Jose, California)との話し合いを進めている旨。半導体業界におけるmergers and acquisitions(M&As)がもう一度加速してきている折りのこの話し合い、Broadcomは1年前にNXP Semiconductorsを買収する計画を発表したQualcommを買収する入札を行っている旨。

多彩な色分けがあるストレージ、ネットワーク関連分野のライバル同士であるが、MarvellがCaviumを買収する取引計画が以下の通り発表されている。

◇Marvell Buying Cavium for $6 Billion (11月20日付け EE Times)
→Marvell Technology Group(Santa Clara, Calif.)が、ライバルの半導体ベンダー、Cavium(San Jose)をcashおよび株式$6 billionでの買収に合意、半導体業界最新の大型取引の旨。月曜20日に発表された該取引によると、Marvell自社のHDDおよびSSDストレージコントローラ, ネットワーキングおよびワイヤレスconnectivity半導体に、Caviumのmulti-core処理, networking通信, ストレージconnectivityおよびセキュリティ半導体を合わせて、$16 billion以上の市場に向かえる旨。両社合わせた年間売上げは約$3.4 billionの旨。

◇Marvell Technology to buy rival chipmaker Cavium for $6 billion-Marvell to purchase smaller rival Cavium (11月20日付け Reuters)
→半導体メーカー、Marvell Technologyが、より小規模のライバル、Caviumを約$6 billionで買収する計画、Marvellは該買収に向けて借入金融の$1.75 billionを用い、$40/株 in cashプラス各Cavium株について同社株2.1757を支払う旨。

◇Marvell to Buy Rival Chipmaker Cavium for About $6 Billion (11月20日付け Bloomberg)

この買収案件について、アナリストの率直な見方である。

◇Analysts Applaud Marvell-Cavium Deal-Modest expectations for revenue, profit growth (11月21日付け EE Times)
→Marvelは成長の注入を得て、Caviumには利益性への道筋が見えてくるかもしれないが、両社$6 billion合併提案から生じるより多角化した半導体メーカーは、売上げおよび利益の伸びについて比較的控え目な展望に直面する、と該取引を称賛するアナリストの見方。Marvellは、両社で平均年当たり6-8%の伸び、年間売上げ総計$3.4 billionと見積もっているが、それはMarvellのこれまでの見通しおよび半導体業界全体の長期的平均を僅かに上回っているにすぎない旨。

さらに、以下のM&Aの動きが目についている。

◇Siemens Acquires Solido Design Automation (11月20日付け EE Times)
→Siemens(Munich)が、半導体業界向けvariation-aware設計&特性評価ソフトウェア・プロバイダー、Solido Design Automation(カナダ)の買収に合意の旨。該取引は、Siemensが今年始めMentor Graphicsを$4.5 billionで買収して以来のEDA領域での買収の旨。Solidoは、MentorのIC検証ソリューションdivision傘下となる旨。

◇Synapse Design buys Tech Vulcan-Synapse Design acquires IC design firm Tech Vulcan (11月20日付け Electronics Weekly (UK))
→Synapse Design(Santa Clara, CA)が、IC design house、Tech Vulcan(San Diego, CA)を買収、45人のエンジニアおよびCaliforniaで2番目のデザインセンターを得る旨。

【Intel半導体におけるバグ】

Intelの半導体についてcybersecurity研究者による欠陥報告が行なわれ、Management Engine featureが攻撃を受ける危険があるとの内容。Intelは注意勧告を出す一方、米国政府も産業界に向けて警告を発している。

◇Intel Chip Flaws Leave Millions of Devices Exposed-Intel advisory warns of chip security flaw (11月21日付け Wired online)
→Intelが月曜20日、cybersecurity研究者による同社への欠陥報告を受けて、同社半導体のManagement Engine featureがattackersにより危険にさらされる可能性と、勧告を出した旨。この脆弱性は、多くの新しいinternet of things(IoT)機器, PCsおよびサーバに存在する可能性の旨。

◇U.S. government warns businesses about cyber bug in Intel chips (11月22日付け Reuters)

【Qualcomm関連】

Qualcommに超大型買収を仕掛けたBroadcomの意図の1つとして、いろいろ摩擦を引き起こしている特許licensing事業のあり方を変えることがあるとされている。

◇Broadcom eyes big changes for Qualcomm's patent practices (11月21日付け Reuters)
→Qualcomm社を買収する$103 billion入札の一部として、Broadcom Ltdが、Qualcommにとって大きなドル箱であるがregulatorsおよびApple社などkey顧客との厳しい衝突の源である特許licensing事業を大きく変えていくと暗示している旨。

台湾政府からもロイヤリティ慣行について罰金が科されたばかりのQualcommであるが、このほど台湾での産業用IoT(IIoT)プロジェクトを中止する動きに出ている。

◇Qualcomm suspends IIoT development projects with Taiwan IT players, say sources-Report: Qualcomm puts IIoT projects in Taiwan on hold (11月21日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Qualcommが、台湾の公正取引当局による同社を相手取ったantitrust裁定に対して台湾・Industrial Technology Research Institute(ITRI)との5G small cellコラボプロジェクトを止めると決定後、Industrial Internet of Things(IIoT)関連応用の開発についての台湾のITプレーヤーとの協力も一時的に中止する可能性の旨。台湾・Fair Trade Commission(FTC)は、不公正なロイヤリティ慣行があったとしてQualcommに対しNT$23.4 billion($774 million)のantitrust罰金を10月半ばに科している旨。

【HPEのCEO交代へ】

ヒューレット・パッカード(HP)がHPとHewlett Packard Enterprise(HPE)に分けられて6年とのこと。業界の激動の渦中の時間の早さを改めて思い知らされるところがあるが、この再構築をとり行ったHPEのCEOの交代人事が発表されている。

◇HPE Names Engineer to Succeed CEO Whitman-Reorg continues, but tech may take bigger focus (11月22日付け EE Times)
→Hewlett Packard Co.の再構築で6年、Meg Whitman氏が来る2月でHewlett Packard Enterprise(HPE)のchief executiveを退任の旨。HPEは、computerエンジニアで22年のHPベテラン、Antonio Neri氏を次期CEOに指名、技術の変化が今後より大きな役割を果たす可能性を示している旨。

◇米HPE、ホイットマンCEO退任へ、世紀の分割「正しかった」 (11月24日付け 日経産業)
→米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)は、メグ・ホイットマン最高経営責任者(CEO)が退任すると発表、2018年2月1日付で現社長のアントニオ・ネリ氏が後任に就く旨。ホイットマン氏が2011年に旧ヒューレット・パッカード(HP)の再建を託されて6年。HPとHPEの2社に分ける「世紀の分割」を見届けて、次世代へとバトンを渡す旨。


≪グローバル雑学王−490≫

激動の世界の政治・経済を反映してか、本年読み進めてきた新書は、新潮流、世界激変、大激転、米中経済戦争と、それらしきタイトルを選ぶ流れとなっている。続く今回からは、

『国際法で読み解く戦後史の真実 −文明の近代、野蛮な現代』
 (倉山 満 著:PHP新書 1116) …2017年10月27日 第1版第1刷

に目を通していくが、本書の著者は40才代半ばの気鋭の憲政史研究家。大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を展開している方。以下の主張があらわされており、これらを頭に入れて疎く感じることの多い第一次世界大戦後、第二次世界大戦後の時代観、世界観に触れていく。
・第二次世界大戦後、「人類史は進歩している」と考えるのは大間違い
・冷戦と革命と地域紛争と虐殺に明け暮れ、むしろ「野蛮に退化した時代」
・なぜか。文明のルールだった「国際法」を米ソが破壊した
・複雑な戦後から現代の世界情勢を一刀両断に解明する。


≪はじめに≫

・日本人は、全人類に対する罪を自覚すべき
 →大東亜戦争において国策を愚かに誤り、世界を野蛮にしてしまった罪
・満洲事変が起こった1931年、間違いなく大日本帝国は無敵の国
 →ところが、たった15年で滅びてしまった
・第一次世界大戦後にヨーロッパは没落、近代史において初めて、欧州以外の国が世界の大国に
 →アメリカと日本
 →国際紛争を解決する普遍的国際機関、国際連盟も設立
  →しかし、アメリカは世界の秩序に責任を持つことを放棄
・第一次世界大戦後の秩序を担ったのは、大日本帝国
 →ところが、満洲事変で日本と国際連盟が衝突、不幸な決裂を迎えた
 →そして、第二次世界大戦において世界は不幸のどん底に
・そして、現代
 →今日も、北朝鮮の核開発をめぐり、アメリカと中露両国がにらみ合っている
・本書では、国際法を通じて現代史を振り返りながら、いまの野蛮な世界でどのように我が国が生き残ればいいのか、考えていきたい

第1章 「文明の近代」はなぜ野蛮化したのか

□「現代のほうが文明的」は単なる勘違い
・「現代のほうが文明的」という考えは単なる勘違い
 →現代社会は昔よりも、はるかに「野蛮」
・戦前の日本は、世界の文明の維持発展のために重要な役割を担う存在
 →大日本帝国が敗れて、世界は野蛮になった
・本書は、大日本帝国が敗れた後、戦後の世界がどのように動いていったのかという「現代史」が主題

□国際法とは積み重ねられた慣習の集大成
・本書でいう国際法
 →日本国憲法第98条2項がいう「確立された国際法規」、すなわち「慣習国際法」のこと
 ※日本国憲法第98条2項…日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする
 →歴史としての蓄積によって破れない法となったもの
・国際法は、国と国どうしの合意によって成立する「合意法」
 →自力救済ができるのが国
  …自分の国が存続するためのあらゆる努力をしてよいということ
 →最もわかりやすいものとして、自衛のための軍隊を持つこと
・国際法は、歴史の中で国家間の合意として当然のこととして積み重ねられた慣習の集大成
 →「文明国間の法」とも

□「無法で残忍な人殺し」から「ルールに基づいた決闘」へ
・国際法は、1648年に成立したウェストファリア条約(Peace of Westphalia)に始まる
 →30年戦争と呼ばれる宗教戦争の講和条約
・その時代に登場したのが、オランダの法学者、フーゴー・グロチウス(Hugo Grotius)
 →戦争を「無法で残忍な人殺し」ではなく、「ルールに基づいた決闘」に変えることを考えた
・いまも世界中で行われている宗教戦争や民族紛争は、30年戦争への先祖返りといっても過言ではない
 →こうした悲惨な様相を少しでも和らげようとしたのが、グロチウス

□「総力戦思考」か「目的限定戦争思考」か
・現在、最も確立された国際法としていわれている3つ:
 →第1:世の中の状態には戦争と平和の区別がある
 →第2:戦時において味方と敵と中立の区別をつけねばならない
 →第3:戦時において戦闘員と非戦闘員の区別をつけねばならない
・もうローマ教皇の命令に従って無益な殺し合いをしたくない国王たち
 →ウェストファリア条約締結を機に神聖ローマ帝国皇帝とローマ教皇から独立、主権国家として対等の関係を確立へ
 →これが、現代に続く国際社会=ウェストファリア体制
 →集まった対等の国家間の合意で生まれたルールが国際法
・以後の戦争は「目的限定戦争思考」で考えられていくように
 →相手を殲滅させなくても目的が達成できればいいという合理主義

□惨たらしく人を殺してはいけません
・「決闘としての戦争をやる資格を持つ主権国家」
 →対内的には警察力を発動して国をまとめ上げる力を持つ
 →同時に、対外的には排他的支配を確立できるだけの軍事力を持っている国家
・ウェストファリア体制の中で、文明国が共有している価値観
 →「人は殺してはいけません。まして、惨たらしく殺してはいけません」
・宗教的寛容の定着
 →1648年の条約締結から約100年もの歳月をかけ、ようやく共有することができるようになった価値観
・そのような価値観を、はるか昔からつくりあげていた国
 →その国こそ、日本
 →「和を以て貴しとなす」で始まる聖徳太子が定めた十七条憲法の第一条
 →戦国時代はおろか、『古事記』の時代から日本では、「無意味に人を殺すのは悪いことだ」という価値観が染みつく

□宗教原理主義、共産主義における虐殺の論理構造
・相手を殺し尽くすことが当然とされた中世の宗教戦争
 →その宗教だけが正しく、他はすべて「ありえない」ということに
・多くの日本人は、こうした宗教原理主義的な発想がなかなか理解できない
 →近現代の共産主義国で行われる粛清や虐殺も、同じ原理
 →絶対とするものが宗教ではなく、独裁者、あるいは党に置き換わるだけ
・共産主義を考え出した思想家、カール・マルクス(Karl Marx)
 →「宗教を否定するところから始まる宗教ほど危険なものはない」
 →自分で言い出した共産主義が、その通りに
・日本は八百万の神様を祀り、かつ仏様を敬う国
 →宗教観そのものが、日本人は特有

□日本は国際法を使いこなし「非文明国」の道から逃れた
・15世紀に始まった大航海時代以降、ヨーロッパ各国は競うようにアフリカ大陸や南北アメリカを植民地化
 →トルコは、蹂躙された植民地にはならず、「半文明国」という新しい概念を生み出した
 →ヨーロッパ以外の、キリスト教国以外の世界も含めた合意法、「国際法」
・世界中を植民地や属国にしながら勢力を拡大した最後に辿り着いたのが、日本
 →ムガール帝国や清と違って日本国としては戦うことなく、植民地化を免れることができたことは特筆すべきこと
 →当時の日本人が戦時国際法を理解し、その適用を諸列強に認めさせた
・キリスト教国ではなくても、国際法のルールを受け容れ、世界一遵守し、使いこなすことができる――その道を進んだのが日本

□第一次世界大戦後、日米英独ソが「真の五大国」に
・列強諸国に「半文明国」の烙印を押された明治の日本
 →日清、日露戦争の勝利を経て、1919年の第一次世界大戦後のパリ講和会議(ベルサイユ会議)での真の五大国に
  …日米英独ソ
・非ウェストファリア型国家のアメリカが入ったことで、1919年以降の世界は野蛮な歴史へと回帰、現代に至る

□国際連盟を支えていた日本の優秀な人材
・第一次世界大戦中の1918年にアメリカのウィルソン大統領が提唱、1920年に発足した国際連盟
 →当のアメリカは議会の上院が否決したため参加できず
 →鉄・金・紙すべての力を備えた大国、日本は仲裁者に最適
  ※「鉄」…軍事力
   「金」…経済力
   「紙」…国際法や地政学を使いこなす力
・いかに日本が国際連盟に、ひいては世界の秩序に重要な存在だったか
 →日本が満洲事変をきっかけに、1935年に完全に撤退、たちまち連盟が機能しなくなっていき、形骸化

□国家には「獅子の腕力と狐の知恵」が不可欠
・国際法は、「戦争を、あまりにも残酷で非道すぎるものでなくするための最低限のルール」を規定するもの
 →背景に、宗教的寛容、他者について「存在は認めてやる」という精神
・ニッコロ・マキャベリの表現、「獅子の腕力と狐の知恵」
 →国際法の主体となる国家として認めてもらうには、この2つとも必要
・国際社会がこのようなルールで合意したことこそ「文明」
 →この「文明」を、徹底的に破壊したのが第二次世界大戦、その後の「野蛮」な戦後世界のあり方

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