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燃え盛るメモリ半導体市場、一層の飛躍を図る韓国はじめ活況の動き

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DRAMはじめ、フラッシュメモリなど、メモリ半導体製品の価格上昇に収まる気配が見られない状況が続いている。史上最高を大きく更新するのは確実で$400 billion台突破をうかがう本年の世界半導体販売高を、メモリ半導体市場が大きく引っ張っている。サプライヤが限られる上に、生産能力も大きくは上がっていない状況が輪をかけているが、首位の韓国のSamsungが昨年の倍を超える設備投資を打ち上げて競合への圧倒的な差をつけるのをはじめ、他のメモリサプライヤおよびメモリ市場関連での熱気に煽られた様々な活況の動きが相次いでいる。

≪引き続く価格上昇≫

メモリ価格の上昇が続く現下の市況について、この10月のDRAMの状況である。

◇DRAM、一段高、10月大口価格、パソコン向けに不足感、スマホ向け需要期入り (11月11日付け 日経)
→DRAMの価格が上昇しており、指標品であるパソコン用DDR3の4ギガビット品は、10月の大口価格が前の月と比べ3%高い1個3.5ドル前後。2年7カ月ぶりの高値となっている旨。データセンターのサーバに向けた受注が積み上がるなか、新型スマートフォンの生産が本格化して不足感が強まった旨。
DRAMの需要はスマホや家電製品の生産が増える秋以降に高まる傾向がある旨。メーカーは例年なら在庫を振り向けて対応するが、2017年は年初から中国や米国の事業者によるデータセンター投資が高水準に推移。多くの受注を抱えたまま、スマホや家電製品の需要期に入った旨。

7-9月、第三四半期のDRAM売上げは史上最高を記録、該業界1位、2位の韓国のSamsung、SK Hynixも売上げ最高となっている。

◇DRAM Price Increases Expected to Persist in Q4 (11月14日付け EE Times)
→DRAMeXchange(台北)発。第三四半期のDRAM売上げが史上最高の$19.2 billionに上り、メモリ半導体capacity不足の渦中でDRAM半導体の契約価格が平均約5%上昇の旨。第三四半期のDRAM販売高は前四半期比16%増化、electronics業界がholiday seasonに備えた旨。

◇Global 3Q17 DRAM revenues climb 16.2%. says DRAMeXchange (11月14日付け DIGITIMES)
→2017年第三四半期のグローバルDRAM市場販売高が、前四半期比16.2%増、最高となる$19.18 billionに増大、各種DRAM製品契約価格が平均約5%上昇の旨。価格上昇は、供給側の伸びの抑制に合わせて需要の季節的上昇が引っ張っている旨。

◇Samsung, SK hynix log record revenues in Q3 DRAM market-Data: Samsung, SK Hynix collectively sold $14.2B in DRAMs in Q3 (11月15日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→DRAMeXchangeがまとめたデータ。韓国のSamsung Electronics Co.およびSK hynix社が、第三四半期のDRAM半導体グローバル市場で売上げの最高を記録した旨。以下の内容:

売上高
前四半期比
市場シェア
Samsung
$8.7 billion
15.2%増
45.8%
SK hynix
$5.5 billion
22.5%増
28.7%
Micron
21%

第四四半期、10-12月についてもDRAM価格上昇が引き続く予測となっている。

◇Server DRAM prices to rise in 4Q17, says DRAMeXchange (11月17日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2017年第四四半期のサーバDRAM契約価格が前四半期比6-10%上昇すると予測、需要が引き続き供給を上回っていく旨。主要サプライヤは、サーバDRAM売上げが第四四半期に今年最高水準に達すると見ている旨。

このような熱い市況のなか、メモリ首位、Samsungのさらに抜け駆ける打ち上げが活発化しており、まずは、来るISSCCでのEUVを用いる7-nm最小SRAMと初物尽くしである。

◇Samsung Shows EUV Design at ISSCC-Advances shown across memories, processors, sensors (11月13日付け EE Times)
→Samsungが、来たる2月のInternational Solid-State Circuits Conference(ISSCC)にて、extreme ultraviolet lithography(EUV)で作られた7-nm SRAMをプレゼンする旨。EUVを用いる最初の半導体メーカーになるという今年始めのcommitmentに応じて、Samsungは、7-nmプロセスでの0.026µm2 SRAM bit cellを示し、来年使用可を目指す旨。該半導体は、これまでで最小のSRAMであり、供給電圧を最小に減らすためにdouble-write driverを用いる旨。

そして、競合への圧倒的なリードを図るべく、$26 billionと昨年の$11.3 billionから空前の規模に本年の設備投資を踏み上げる計画を打ち上げている。

◇Samsung's Capex Seen Crushing Memory Startups (11月15日付け EE Times)
→IC Insights発。グローバルDRAM市場の約半分を占めているSamsungが、今年の半導体部門でのcapital expenditures(capex)計画を倍以上に増やして、ライバルたちを押しつぶす様相、昨年の$11.3 billionから空前の$26 billionに高める旨。メモリ半導体の力強い価格が高めて、直近四半期のoperating incomeが14.5 trillion won($12.8 billion)と最高を記録、大半はモバイルDRAM市場の強力な需要から、第四四半期のDRAM価格は約10%上がる見込みの旨。

◇Will Samsung's 2017 semi capex deliver knockout blow to competition? (11月15日付け ELECTROIQ)

◇Samsung huge chip capex for 2017 shows move to defend its memory dominance (11月16日付け DIGITIMES)

これも首位を走るNANDフラッシュについても、Samsungは中国・西安拠点の能力増強を図るとしている。

◇Samsung expands Xi'an chip facility to build global semiconductor base-Samsung begins expansion of its fab in China (11月15日付け Global Times (China))
→Samsung Electronicsが、中国陝西省西安(Xi'an, Shaanxi province, China)にあるウェーハfab拠点の$7 billion拡張建設を開始、2019年に稼働すると、V-NANDフラッシュメモリ半導体の量産に用いられる旨。

このSamsungの勢いを受けて、今年の半導体ベンダーランキングの首位がどうなるか。長年にわたる半導体全体の市場リーダー、インテルの座が次の通り危うくなってきている。

◇Samsung overtakes Intel as semiconductor leader in 3Q17, says IHS (11月16日付け DIGITIMES)
→IHS Markit発。2017年第二四半期は自前の製品販売によるpure半導体売上げで市場リーダーを維持したが、第三四半期は変わっている旨。

Intel
Samsung
第二四半期
$14.6 billion
$14.4 billion
第三四半期
$15.9 billion
$16.5 billion


第三四半期売上げについて、Intelは前四半期比9%増、前年同期比5%増と堅調であったが、Samsungの前四半期比15%増、前年同期比53%増とは比較にならなかった旨。

メモリ市場の非常な熱気は他のサプライヤそして関連分野を煽っており、まずは、今後に向けた新型メモリ、3D XPointの生産増強を図るインテル/マイクロン陣営の取り組みである。

◇Intel, Micron increase 3D XPoint manufacturing capacity with IM Flash fab expansion (11月14日付け DIGITIMES)
→IntelとMicron Technologyが、IM Flash拠点(Lehi, Utah)でのBuilding 60(B60)拡張の完了を発表、この拡張fabでは、Intel Optane技術のbuilding block、3D XPointメモリmediaが生産される旨。該Optane技術には、clients向けIntel Optaneメモリ、最近発表されたIntel Optane SSD 900PシリーズおよびIntel Optane SSD DC P4800Xシリーズの新たな容量および外形が含まれる旨。IM Flash合弁は、IntelおよびMicron両社用のnon-volatileメモリ製造に向けて2006年に設立、SSDs, phones, タブレットなど用のNANDからスタートしている旨。2015年に、IM Flashは25年ぶりのまったく新しいメモリmedia、3D XPoint技術の製造を開始、該技術は、あらゆる型の顧客に向けてデータニーズの急速な拡大に対応するよう開発された旨。3D XPoint技術は、NANDより大きく高速に状態を切り換えられるcellおよびarrayアーキテクチャーが得られるcrosspoint構造を用いている旨。

マイクロンからは、NVDIMM(non-volatile dual in-line memory module)の容量倍増で来年の拡大に備える動きである。

◇Micron doubles capacity of NVDIMM memory-Larger capacity NVDIMMs means dramatically increased throughput and improved total cost of ownership.-Micron rolls out module that can store 32GB (11月13日付け ZDNet)
→Micron Technologyが、32 gigabytesのデータを蓄積できるNVDIMM-Nを投入、該新メモリモジュールは、DDR4 RDIMM(Registered Dual Inline Memory Module)技術をsingle-level-cell(SLC)フラッシュメモリデバイスと組み合わせている旨。

◇Micron unveils 32GB NVDIMM technology (11月14日付け DIGITIMES)
→Micron Technologyが、現状のNVDIMMsの2倍の容量の新しい32GB NVDIMM-Nを発表、システム設計者およびoriginal equipment manufacturers(OEMs)に高速persistentメモリのより大きなデータsetsと協働する新たなflexibilityが得られる旨。

◇Micron Tweaks NVDIMM Architecture (11月15日付け EE Times)
→Micron Technologyが、同社non-volatile dual in-line memory modules(NVDIMMs)の容量を倍増しており、該persistentメモリがさらに大きなデータsetsを保てるようにして、来る年における採用の加速の兆しとなる可能性の旨。Micronの32GB NVDIMM-Nの密度とまさに同様に重要なのがlatencyおよびバンド幅、とMicronのcompute and networking事業部門、director of marketing、Ryan Baxter氏。

そして、重みを増していく中国、および中国のメモリサプライヤの立ち上げの動きと続くが、今後如何に食い込んでくるか、目が離せないところである。

◇China to make $78 billion worth of ICs this year-China's domestic IC production this year will be worth $78 billion - 19.39% up on 2016 - says TrendForce.-Data: China's 2017 chip output worth $78B (11月14日付け Electronics Weekly (UK))
→TrendForceの見積もり。今年の中国国内の半導体生産額が19.39%増の$78 billion、2018年も同様な伸びで約$93 billionと見ている旨。「2017年から2018年の間では、国内supply chainのIC設計分野が伸び続けていく」とTrendForceのJeter Teo氏。

◇China IC firm sets milestone with rollout of 3D NAND flash (11月15日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Tsinghua Unigroup傘下のYangtze River Storage Technology(YMTC)が、32-層3D NANDフラッシュ半導体の開発に成功、中国のメモリ半導体業界における新しいmilestoneおよび大きな科学技術ブレイクスルーを記している旨。この開発成功はYMTCを64-層技術開発踏み上げに動かす見込み、近い将来Samsung, SK Hynix, Micron/Intel, および東芝/Western Digitalの各陣営による3D NAND市場の席巻を打破するチャンスが出てくる旨。

製造装置業界への現下のメモリ市況が及ぼす波紋である。

◇3次元半導体、装置株を左右、東エレクやディスコ、ほぼ2倍、今年、設備投資の恩恵に差 (11月15日付け 日経)
→株式市場で半導体装置株の評価が分かれている旨。半導体メーカーの活発な設備投資を追い風に、2018年3月期は大手7社のうち5社の連結純利益が過去最高となる見通し。好業績にもかかわらず、株価は一様ではなく、格差が生じている旨。読み解くカギが最先端メモリの3次元半導体、設備投資の恩恵の度合いに温度差がある旨。

Siウェーハについても、最高更新が引き続く増勢が見られている。

◇Silicon wafer shipments hit record high in 3Q17, says SEMI (11月13日付け DIGITIMES)
→SEMI Silicon Manufacturers Group(SMG)発。2017年第三四半期の世界シリコンウェーハ面積出荷が、前四半期比0.7%増で増勢が引き続き、四半期出荷で最高更新の旨。
2Q16-3Q17の間のシリコン面積出荷(million平方インチ):

2Q16
3Q16
4Q16
1Q17
2Q17
3Q17
2,706
2,730
2,764
2,858
2,978
2,997

[Source: SEMI, compiled by DIGITIMES, November 2017]

熱いメモリ市況と台頭する新分野・新市場の日々の動きに続けて注目である。


≪市場実態PickUp≫

【史上最大のハイテク買収の件】

Broadcomがより大規模のライバル、Qualcommに仕掛けた超大型買収の1件であるが、Qualcommからは以下の通り過小評価として拒否反応があらわされている。

◇Qualcomm draws up plans to rebuff Broadcom's $103 billion offer: sources-Sources: Qualcomm likely to reject Broadcom's bid (11月13日付け Reuters)
→本件事情通筋発。Qualcommが、Broadcomの買収提案投げかけについて低過ぎる評価として却下しようとしている旨。QualcommのCEO、Steven Mollenkopf氏は、この突然の入札への対応について株主と協議している旨。

◇Qualcomm rejects Broadcom takeover bid-Qualcomm: Broadcom's acquisition bid is undervalued (11月13日付け BBC)

◇CORRECTED-UPDATE 2-Qualcomm rejects Broadcom's $103-billion takeover bid (11月13日付け Reuters)

◇Qualcomm Rejects Broadcom's Takeover Bid -Qualcomm's board says Broadcom's $105 billion offer dramatically undervalues them (11月13日付け The Wall Street Journal)

◇クアルコム、ブロードコム買収提案を拒否、1株70ドルは「過小評価」 (11月13日付け 日経 電子版)
→半導体世界3位の米クアルコムは13日、同5位のブロードコムによる買収提案を拒否すると発表、1株あたり70ドルという株式の買い付け価格は「クアルコムの企業価値を過小評価している」とした旨。ブロードコムは敵対的であっても買収を続ける構えで、今後、価格の引き上げなどに動く可能性がある旨。

◇Chip maker Qualcomm rejects hostile takeover bid by Broadcom worth US$103 billion (South China Morning Post (11月14日付け Hong Kong))

◇Qualcomm rejects Broadcom acquisition bid (11月14日付け DIGITIMES)

対してBroadcomは、引き続き買収に取り組むスタンスとして次の通りである。

◇敵対的買収に発展へ、クアルコム巡りブロードコム、通信用半導体、覇者へ執念 (11月15日付け 日経)
→米半導体大手、クアルコムが13日に同業のブロードコムによる買収提案を拒否したことを受け、ブロードコムは即座に「買収に取り組み続ける」と声明を出した旨。敵対的買収に発展するが、ホック・タン最高経営責任者(CEO)は通信用半導体の覇者になるチャンスとみる旨。買収提案から1週間。クアルコム経営陣は事前報道通り「拒否」の結論を出した旨。13日にブロードコムが公表した声明文には「クアルコムの株主からの反応に勇気付けられている」「主要顧客からは前向きなフィードバックをもらっている」といった挑発的なコメントが並んだ旨。

応酬が続く雲行きであるが、QualcommはNXP Semiconductors買収の案件を抱えており、こちらは欧州公正取引当局のOKが得られるかどうか、以下の分かれる見方となっている。食うか食われるか、絡み合う推移に注目である。

◇Qualcomm-NXP ruling may be in 2018: EU competition commissioner-EU ruling on Qualcomm-NXP merger could come in 2018 (11月15日付け Reuters)
→QualcommによるNXP Semiconductorsの$38 billion買収提案に対するEU裁定は来年持ち越しになる可能性、とEuropean commissioner for competition(競争総局)のMargrethe Vestager氏。Qualcommは、欧州antitrust regulatorsへの譲歩としてNXP買収をいくつかの特許なしで提示している旨。

◇Qualcomm to Win EU Approval for NXP Deal by End of Year-Report: Qualcomm-NXP merger could move faster (11月16日付け Bloomberg)
→QualcommによるNXP Semiconductorsの$47 billion買収提案が、今年末前にEU antitrust regulatorsからの青信号を得る可能性、Qualcommは、該取引にNXPの標準重要およびsystem-level特許を含めないよう誓っている旨。

この事態の中で中国市場でのシェア確保に向けたMediaTekの動きである。

◇MediaTek touts Helio P in China amid Qualcomm speculation (11月16日付け DIGITIMES)
→業界筋発。MediaTekが、Broadcomの買収入札によりoperationsが影響を受けそうなQualcommに大きく依存するリスクを減らすよう、中国のスマートフォンベンダーに対してHelio Pプロセッサの採用を積極的に説得している旨。中国のベンダー、特にlow-endおよびmidrangeスマートフォンのベンダーは、Broadcomの最近のQualcomm買収入札の展開をしっかりと見つめてインパクトを確認している旨。

【東芝の動き関連】

日米韓連合への東芝メモリの売却契約が正式に発表されて、表面的には収まっているものの先行きの障壁、懸案は残ったままであり、財務の健全化を図る東芝の動きはじめ以下の通りの現時点である。

◇東芝、投資家の獲得カギ、6000億円の資本増強検討 (11月11日付け 日経)
→東芝が6000億円規模の資本増強策の検討に入った旨。2期連続の債務超過による上場廃止を避けるため半導体メモリ事業の売却を決めたが、手続きが年度内に完了しない事態に備える旨。思惑通り資金調達できれば税負担の軽減も見込め、財務が大きく改善しそうな旨。一方で不適切会計などで東芝の信用は大幅に低下。巨額の出資に応じる投資家の開拓が焦点になる旨。

◇東芝とWD綱引き、半導体工場の新棟、投資条件で (11月15日付け 日経)
→東芝と米ウエスタンデジタル(WD)が半導体メモリ事業の共同投資の条件を巡って綱引きを続けている旨。同事業の売却に関して両社が対立した影響で、四日市工場(三重県四日市市)の新製造棟の投資が遅れている旨。東芝は共同投資の条件としてWDに法的措置を取り下げるよう求めているが、WDはなお受け入れていない旨。

◇東芝、パソコン売却交渉、台湾のエイスースと (11月17日付け 日経)
→経営再建中の東芝は不採算のパソコン事業の売却に向けて台湾の華碩電脳(エイスース)と協議を始めたことが16日わかった旨。東芝は債務超過を解消するため、半導体メモリ事業を米投資ファンドなどに売却することで9月に合意。さらにテレビやパソコンなど非中核事業についても売却を進めることで財務の健全化を目指す旨。

【スーパーコン・トップ500】

Supercomputing Conference 2017(SC17)(2017年11月12-17日:Denver, CO)が開催され、恒例春秋のスーパーコン性能競争のアップデートである。今回の概要が次の通りであり、米国を追い抜いた中国、そして性能/電力効率での我が国の健闘に注目である。

◇China Passes U.S. in Supercomputers-After leap forward, leapfrogging expected -High Performance Linpack (HPL) mark (11月13日付け EE Times)
→スーパーコンピュータ最新トップ500リスト発。中国が、該リストにおける数および全体性能で世界をリード、初めて米国を抜いた旨。中国のサーバメーカー2社、InspurおよびSugonが、唯一大きく上昇したシステムベンダーである旨。トップ500のうち、中国が201を占めてこれまでで最大、対して米国は最低の145である旨。トップ500上のシステム全体性能について、中国がまた35.3%でリード、米国は29.8%で第2位の旨。
トップ500ランキング・トップ5:

High Performance
Power(MW)
Linpack(HPL) mark
1  Sunway TaihuLight中国
93.01 petaflops
15.4
2  Tianhe-2(Milky Way-2)中国
33.86 petaflops
17.8
3  Piz Daintスイス
19.59 petaflops
2.27
4  Gyoukou日本
19.14 petaflops
1.35
5  Titan米国
17.59 petaflops
8.2

性能/電力効率によるグリーン500ランキングのトップ5:
(https://www.top500.org/green500/より)

トップ500
Power
Power Efficiency
順位
(kW)
(GFlops/watts)
1  259Shoubu system B日本
50
17.009
2  307Suiren2日本
47
16.759
3  276Sakura日本
50
16.657
4  149DGX SaturnV Volta米国
97
15.113
5  4Gyoukou日本
1,350
14.173


別の評価指標でのランク評価も見られている。

◇スパコン京の性能、世界1位に (11月15日付け 神戸新聞NEXT)
→世界のスーパーコンピュータの性能指標で、理化学研究所と富士通が開発した神戸・ポートアイランドの「京」が1位になった旨。産業利用などに向けた計算能力を競う「HPCG(High Performance Conjugate Gradients)」と呼ばれるランキングで、昨年11月、今年6月に続いて3期連続。米国で開催中の国際会議で発表された旨。スパコンの頭脳に当たる中央演算処理装置(CPU)計約8万3千台を用い、1秒間に約600兆回の演算を達成。反復計算で大規模な連立一次方程式の正解を導く能力を発揮した旨。一般的な順位付けに使われる「トップ500」では10位だったが、同指標1位に立った中国の「神威太湖之光」をHPCGで上回った旨。

SC17の場では、IBMの量子computerが商用化に向かっている。

◇IBM makes 20 qubit quantum computing machine available as a cloud service-IBM leaps to 20-qubit quantum computer for cloud service (11月10日付け TechCrunch)
→IBMが、cloudサービスとして20-qubit量子computerを提示、50-qubit prototypeに取り組んでいる旨。IBMのresearcher、Dario Gil氏(VP of AI and IBM Q[業界初の商用利用可能な汎用量子コンピューティングシステム])は、error rateを低くしてqubitsを増やせるとしており、「より多くのqubitsとより少ないerrors、合わせてより多くの問題を打開していく」と特に言及の旨。

◇IBM's Quantum Computer Goes Commercial (11月13日付け EE Times)
→IBMの量子computerが、今週のSupercomputing Conference 2017(11月12-17日:Denver, CO)にて商用化されている旨。

【20周年を迎えるcopper interconnects】

アルミ配線の難点克服に向けて登場した銅配線であるが、IBMが導入して20年、今や広く行き渡って節目を祝うとともに、"copper forever"の打ち上げが行われている。

◇SUNY Poly, IBM celebrates 20th anniversary of copper interconnects during Albany nanotechnology symposium (11月14日付け ELECTROIQ)
→SUNY Polytechnic Institute(SUNY Poly)主催の第11回IEEE Nanotechnology Symposium(2017年11月15日:同所world-class Albany NanoTech Complex)について。今回、IBM Fellow、Dr. Dan Edelsteinはじめcopper(Cu) interconnectsの半導体業界導入に向けての貢献で表彰される旨。

◇IBM: Copper Interconnects Here to Stay-It's "copper forever" for interconnects, IBM says (11月15日付け EE Times)
→aluminum(Al) interconnectsが180-nm nodeにてCMOSには遅過ぎるようになって、IBMが1997年から今やあまねく使われているcopper interconnectsの道筋を引っ張ってきている旨。20周年を迎え、IBMが今週のIEEE Nanotechnology Symposium(Albany)にて、"copper forever"を謳っており、さらに詳細が来月のIEEE International Electronic Devices Meeting(IEDM)(San Francisco)にて披露される予定の旨。

◇Twenty years ago, IBM changed the computer chip (11月15日付け Times Union)

【artificial intelligence(AI)関連】

引きも切らないAI関連の動きであるが、startupの資金調達の2つの展開が以下の通りである。

◇Graphcore raises $50M amid a flurry of AI chip activity-Investors put $50M more into AI chip startup Graphcore (11月13日付け TechCrunch)
→Graphcore(Bristol, UKおよびPalo Alto, CA)が、artificial intelligence(AI)およびmachine learning応用に向けたintelligence processor unitの開発継続のためにSequoia Capitalが主導するprivate fundingでさらに$50 millionを調達の旨。該startupは、7月にAtomicoなど個人投資家から$30 millionを取り入れた旨。

◇AI Chip Startup Graphcore Lands $50 Million in Funding (11月14日付け EE Times)
→machine learningおよびartificial intelligence(AI)用プロセッサ開発のstartup、Graphcore(英国)が、追加出資$50 millionを獲得、ここ18ヶ月にわたって約$110 millionを全体で調達の旨。Sequoia Capitalが供給したGraphcoreのseries C fundingは、同社の最初の半導体、Intelligence Processing Unit(IPU)の生産に向けられる旨。Graphcoreは、該IPUを来年始めにearly access顧客に届ける計画の旨。

◇Qualcomm invests in Chinese AI facial recognition startup SenseTime-SenseTime, an AI startup, gets Qualcomm investment (11月15日付け Reuters)
→顔認識に向けたartificial intelligence(AI)技術を開発している中国のstartup、SenseTime Group(日本・香港・北京・深センに拠点)が、$500 millionを調達する期待の新しいfunding roundでの投資家としてQualcommを引きつけている旨。SenseTimeは7月に、CDH InvestmentsおよびSailing Capitalが主導するroundで$410 millionを調達の旨。

台湾が挙げてAIに取り組む動きが以下の通り相次いでいる。

◇Synopsys extends help for Taiwan AI development-Taiwan taps Synopsys to help boost AI infrastructure (11月14日付け DIGITIMES)
→Synopsysが、台湾政府傘下のリサーチlabとletter-of-intent(LOI)調印、台湾のartificial intelligence(AI) ecosystem展開を支援する戦略的partnershipを形成する旨。台湾政府は2017年をAI初年と定義づけ、AI展開に向かう大きな1ステップをとっており、Ministry of Science and Technology(MOST)が、台湾におけるAI業界展開を支えるためにNT$10 billion($333.14 million)超の予算化を行っている旨。

◇AI to bring opportunities, challenges for Taiwan semiconductor industry-TSMC co-CEO: AI can change people's lives (11月16日付け DIGITIMES)
→Taiwan Semiconductor Industry Association(TSIA)のannual conference(11月15日)にて、TSMCのco-CEO、CC Wei氏がTSIA chairmanの立場で講演。artificial intelligence(AI)は台湾の半導体業界に非常に大きなビジネス機会および課題をもたらし、該業界は半導体技術開発に中央および地方政府両方が全力で備えている中国からの熾烈な競合に直面していく旨。

◇Taiwan R&D Group Rolls AI for Fault Prediction (11月17日付け EE Times)
→台湾・Industrial Technology Research Institute(ITRI)が、生産ライン装置でのbreakdownsを予言し、工場downtimeを減らし人の生産性を高めるよう支援するAIソフトウェア、Prognostic and Health Management Software in Semiconductors(PHM)を投入の旨。


≪グローバル雑学王−489≫

時あたかもトランプ大統領のアジア歴訪、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会合など出席の動きを連日目にする中、米中間の経済関連せめぎ合いの経緯、実態を、

『「米中経済戦争」の内実を読み解く』
 (津上 俊哉 著:PHP新書 1105) …2017年7月28日 第1版第1刷

より迫真的に目にしてきたが、今回で読みおさめとなる。中国経済専門の著者が、2017年1月上旬から3月末まで、勉強のために米国ワシントンDCに短期滞在ということで、折も折トランプ政権の荒れ模様のスタートの渦中での本書の著述に引き込まれるところを感じてきている。最終章は戦略的な日中関係に向けて焦点を当てており、我が国を取り巻くまさに現時点の問題意識、そして今後を考えさせられている。


第9章 戦略的な日中関係のために

〇視界不良になった世界
・日本を含む北東アジア地域が「中国の地政学的台頭」に遭遇した、この10年間あまり
 →日本は近隣に「能力」も「意図」も兼ね備えるように見える仮想敵国を持つことに
・この1年で、Brexit(英国のEU脱退問題)、トランプ大統領当選と、西側先進国まで様子がおかしく
 →移民やdiversity(多様性の尊重)が今後の人類がなお進むべき途であっても、西側の民主政体はもはやその方向を支持しきれなくなりつつある

〇日本外交の進歩から取り残された対中外交
・グッドニュースは、日本外交のグレードアップ
 →第二次安倍政権の安定化・長期化、霞が関に対するリーダーシップの確立
 →政治家として自分の言葉で語る外交へ;国際援助というツールを用いた外交の戦略性も向上
 →我々日本人にとって心強い材料
・「エンゲージメント」と「ヘッジ」という対の概念
 …以下参照:
   ≪グローバル雑学王−484≫
   第4章 習近平の対トランプ政策 ――首脳会談での「踏み込んだ」発言?
 →この分類に従ったとき、いまの日本の対中外交は「ヘッジ」に傾斜し過ぎていないだろうか
・「オリーブ・ブランチ(Olive Branch[枝])を差し出す
 …外国に善意・協力の外交姿勢を示すこと
 →安倍総理は必ずしもガチガチの反中派ではなく、政権の浮揚力が高められるなら、オリーブ・ブランチの提案も受け容れるのではないか
・「待ち」の姿勢にせず、官邸が「耳に痛い情報、オリーブ・ブランチの提案も一緒に持って来い」と霞が関に明確に指示すること
 →「政治主導」時代のリスク管理では

〇ヘッジ傾斜の対中外交はリスキー
・これからの世界、これからの時代に、ヘッジ側に傾斜し過ぎた対中外交を行うのはリスキーだと思う理由
 →第1:日本と中国が切実な利害を共有し、かつ、その問題で中国が果たす役割が決定的に大きいという問題がいろいろ、北朝鮮問題がその典型
 →第2:トランプ政権では、「日本の頭越し」で米中ディールをやられるリスクに備えておかなければならない
 →第3:東南アジアは日本と中国の援助を天秤にかけて「いいとこ取り」をするだけ、中国と対抗する日本に同調している訳ではない
    →「いざとなったら、日本に相談すればよい」…そういう関係を築いておく方法はあるのでは

〇「一帯一路」、AIIB――いつまで続く「日米共闘」?
・ヘッジ修正を修正する方法の具体例
 →「一帯一路」とAIIB構想
・AIIBについては2つの変化
 →1)2015年春、欧州諸国が雪崩を打つように加盟を決めた結果、「中国主導」色が薄まった
 →2)AIIBが世界銀行(世銀)やアジア開発銀行(ADB)との協調(相乗り)融資を業務の中心に据えている
   →世銀もADBも、AIIBとの提携で必要な融資額を分担してもらえるのはウィンウィン
・一帯一路についても、状況は3年前とは変わりつつある
 →我田引水の大風呂敷から、いまは回収確実性を重視する現実的な姿勢に転じつつあると感ずる
 →一般国民の「海外事業に金をばらまくような真似はいい加減にしてほしい」と不満を募らせている事情
・変わってきた米国の論調
 →米国財務省の態度も「加盟はしないが、平和共存は可能」という風に軟化しつつあるように思える
・習近平政権は二期目でも「一帯一路」やAIIBを中国発の世界経済ビジョンとして推進へ
 →日本は一貫してヘッジの姿勢を採り続けているが、変化も踏まえると、エンゲージメントの方向に姿勢を転じる方が良いと思う

〇真に「戦略的」な日中関係を
・「ヘッジ傾斜」は「強い外交」路線のように見えて、実はそうではない
 →対中外交にも、もっとメリハリや陰陽の襞を付けるべき
・安倍総理は2017年6月5日、東京で開催の国際交流会議「アジアの未来」にて、「一帯一路について協力をしていきたい」と表明、これまでの慎重姿勢を転換
 →トランプ政権の誕生や北朝鮮問題の深刻化といった情勢変化を踏まえると、適切な判断と思う

〇ポストTPP問題
・今後の日本外交の進むべき途について、もう1つTPP問題を取り上げて本書の〆に
・3つの通商政策上の選択
 →【選択1:米抜きTPPの推進】…「TPPマイナス・ワン」、「TPPイレブン」
   …難点:1)米国抜きのTPPは経済的価値が大きく下がる
       2)「日米基軸」外交から離間していくような憾み
 →【選択2:RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の推進】
   …難点:1)TPPほど「ハイグレード」な市場開放・制度構築の効果が期待できない
       2)おそらく中国主導になり、中国が「アジアの盟主」にまた一歩近づく
 →【選択3:日米二国間FTAの推進】
   …難点:1)環太平洋地域に広く高水準の経済制度を普及、構築していく目標が達せられない
       2)日米交渉がやり直し(リ・オープン)になると追加的な譲歩を迫られる

〇TPPジグソーパズルの勧め
・ワシントンに滞在してわかったことの1つ
 →TPPから早々脱退すると決めたことで、大統領と与党共和党はかなり大きなコストをかぶっている
・ソリューションとして、米抜きTPPも日米二国間FTAも両方やるということ
・米国と並んでTPPを引っ張ってきた日本としては、己のことだけでなく残された10か国のことも考える責任がある
・11個の対米FTAと米抜きTPPをジグソーのピースのように机の前に並べていくと、TPPが復元されているのでは???
 →流れとしてはこの方向で大きく構えるべき
 →日本がジグソー式にTPPを復元する努力をしているところをマレーシアやベトナムに見せることが必要
・NAFTA見直し交渉がTPP水準へのバージョンアップ程度で収まるのであれば、TPPジグソーパズルにいちばん最初にはめ込まれるピースは、カナダとメキシコの2つになると見ることも

≪おわりに≫

・人口減少やグローバリゼーション、技術革新といった出来事の先の22世紀の世界はどんな風になっている???
 →まず21世紀中に経済、社会に大変革が起きる過渡期の急流を渡り切らないと
 →足元の2017年、「なんだ。試練はもう始まっているじゃないか」と思える展開に
・揺らぎ始めた米国の覇権、台頭を続けながらも経済の土台が蝕まれている中国の間で、日本はどう身ごなししていけばよいのか?
 →本書のもともとの執筆動機だったが、直截簡明な結論を出すのはやはり難しかった
・世界中の誰も確たる見通しを持てない時代
 →立てた仮説を不断に検証することを含め、今後自分の考えの至らないところを改善していきたい

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