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アジア半導体業界で続く去就模様、活況&激動の渦中での世代交代

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メモリ半導体の高値が引っ張る一方、新技術および新分野が同時進行で新たな市場の開拓が行われている、という時代のうねりらしきものを日々感じさせられているが、アジア半導体業界での指導層の交代、移動が相次いで拍車がかかる受け止め方である。台湾・TSMCの総帥、Morris Chang氏の来年半ばでの引退が発表されていろいろ振り返る思いにさせられたのも束の間、韓国・Samsungのデバイス事業トップが退任の意向を表明する一方、中国・SMICではTSMC出身でSamsungに移った経歴のCTOを迎える動きがみられている。

≪時代のうねりへの対応≫

TSMCの総帥、Morris Chang氏の引退は。次の通り発表されたばかりである。

◇TSMC、張董事長が引退へ、脱カリスマへ二頭体制−AIなど成長分野狙う (10月2日付け 日経 電子版)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が2日、事実上の創業者で経営トップを務める張忠謀(Morris Chang)董事長が2018年6月の株主総会をもって引退すると発表の旨。2人の共同最高経営責任者(CEO)のうち、劉徳音(Mark Liu)氏が董事長(chairman of the board)に、魏哲家(C.C. Wei)氏が総裁(CEO)に就任する旨。カリスマによる一極集中の経営から「二頭体制」にシフトし、人工知能(AI)などで成長する半導体需要の開拓を加速する旨。

◇Founder of Apple's Top Chipmaker to Hand Over Reins in June-TSMC founder to retire; foundry sets 3nm fab (10月2日付け Bloomberg)
→TSMCのfounder and chairman、Morris Chang氏が、来年6月に退任予定と発表、co-CEOのMark Liu氏がchairmanとして引き継ぐ一方、co-CEOのC.C. Wei氏がCEOポストに就く旨。一方、TSMCは台湾のTainan Science Parkに$15.7 billionのウェーハfab拠点建設を進め、3-nm featuresの半導体が作れる旨。

それから10日のこと、Samsungのグループ副会長でデバイスソリューション事業を統率するOh-Hyun Kwon(権五鉉[クォン・オヒョン])氏の来年3月で退任する意向が発表されている。

◇Curtain Falls on a Great Tech Rivalry (10月12日付け Bloomberg)
→台湾半導体業界のgodfatherが退任を発表して2週間足らず、Morris Chang氏の韓国の強力な相手が引退の仲間に加わる決断の旨。

◇Samsung Electronics CEO Kwon announces shock resignation as profits surge (10月13日付け Reuters)

◇サムスン副会長が辞意表明、世代交代のサインか? (10月13日付け 日経 電子版)
→韓国でサムスングループが年内に大がかりな幹部人事を断行するとの観測が13日、浮上した旨。稼ぎ頭の半導体の担当役員で、サムスン電子の代表権をもつ権五鉉(クォン・オヒョン)副会長が同日、世代交代を理由に来年3月に退任する意向を表明、社内でも人望の厚い同副会長の辞意表明は、大胆に若返りを進めるサインとの受け止めがある旨。

半導体が絶好調の中での決断となるが、Kwon氏の思いの一端が以下にあらわされていると感じている。

◇Samsung vice chairman Oh-Hyun Kwon to resign (10月16日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronics発。同社vice chairman、Oh-Hyun Kwon氏が、デバイスソリューション事業headを辞任する予定、2018年3月の任期終了で役員会メンバーおよびchairman of the boardとしての再任を求めない旨。全従業員に宛てた手紙でKwon氏は、辞意発表は最も難しいことであったが、今がちょうど適っており、この決断が会社の最善の利益になると信じている旨。

Samsungグループを引っ張る李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が不在の現状のなか、Kwon氏が離れた後のSamsungについての見方が早々あらわれている。

◇Samsung CEO's resignation viewed as ‘unfortunate’ by semiconductor industry-Observers see Samsung CEO's resignation as "unfortunate" (10月17日付け The Korea Herald (Seoul))
→市場観測筋発。Samsung ElectronicsのCEO、Kwon Oh-hyun氏の辞任は、同社の短期的展望に影響がある可能性、「同氏は、同社構築の良い働きをしている故に、不運なこと」と、IHS Markitのdirector and chief analyst、Len Jelinek氏。加えて、「同氏の辞任は短期的には同社にインパクトがあろうが、SamsungがNo. 1の位置からNo. 5に落ちるとは思わない」旨。

◇サムスン電子、経営陣若返りへ、権副会長が辞意、李副会長も不在続く (10月18日付け 日経)
→サムスン電子の経営陣が若返りそうだと市場関係者がみている旨。同社の権五鉉(クォン・オヒョン:64才)副会長が先週辞任の意向を発表、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長も不在が続いている旨。アナリストらは権氏と同世代の最高幹部が同時に退任する場合を見据え、後継者として金奇南(キム・ギナム:59才)氏ら3人の名前を候補に挙げている旨。新指導部が発足すれば李副会長の力は増すとみられている旨。

台湾、韓国と指導層の交代の大きな動きを受け止めて息つく間もない感じ方があるが、中国半導体業界を代表するファウンドリー、SMICにて、Dr. Liang Mong Song氏のco-CEO就任が発表されている。TSMCの今後に通じるco-CEOという立場に加えて注目は、Liang氏の波乱に富んだ経歴であり、以下に示してある通りTSMCにてFinFET製造プロセス開発に従事した後、Samsungに移りこのほどSMICへという動き方となっている。豊富な特許、技術論文にも注目させられているが、係争絡みの展開が予想されるところがある。

◇Dr. Haijun Zhao, Dr. Liang Mong Song appointed as SMIC co-CEO and Executive Director (10月16日付け ELECTROIQ)

◇Leaker of TSMC Secrets Joins SMIC as Co-CEO (10月17日付け EE Times)
→数年前にSamsungにプロセス技術をリークしたTSMCの前従業員、Liang Mong-song氏が、SMICにco-CEOとして参画する旨。2015年にTSMCは、28-nmプロセス技術など秘密情報をファウンドリー事業でTSMCの最大のライバル、Samsungに漏洩した前R&Dのsenior director、Liang氏を相手取った訴訟に勝利の旨。TSMCを去った後、Liang氏はSamsungのシステムLSI部門のchief technology officer(CTO)に就任、該TSMC訴訟はLiang氏がSamsungで働くのを防いだ旨。

◇Liang Mong Song becomes SMIC co-CEO-SMIC adopts a co-CEO management model (10月17日付け DIGITIMES)
→SMICにおいて、Liang Mong Song氏が、現職のCEO、Haijun Zhao氏とともにco-CEOに就く旨。33年以上の半導体業界のベテラン、Liang氏は、450-plus件の特許を持ち、350以上の技術論文を出している旨。

◇Will Mong-song Liang face another trade secrets lawsuit? (10月19日付け DIGITIMES)
→TSMCおよびSamsung Foundryで先端プロセスR&DをみていたMong-song Liang氏が最近、別のICファウンドリー、SMICにて新しい仕事を開始、新たな役割の中で同氏は、中国・SMICが14-nm以降のFinFET生産に入るのを支援する見込みの旨。Liang氏は、アジアのファウンドリー業界で物議をかもす人物であり、Samsungに加わる前、Liang氏は約20年TSMCで働き、TSMCのFinFET製造プロセス開発で重要な役割を果たしている旨。同氏は、2008年にTSMCを離れ、Samsungのファウンドリーoperationsに入って、2011年7月にSamsungのシステムLSI事業部門のCTOに就任、台湾の前の会社が起こしたtrade secrets訴訟で追われた旨。以下、次の内容項目:
 -Rumors about SMIC approaching Liang surface in end-2016
 -SMIC newly-appointed CTO
 -Samsung ready to sue Liang?

新技術を固めてから新分野の開拓というフェーズから、同時に急速な展開を図るという新たな時代への移行という雰囲気の日々強まりを感じてきているが、各社そして各国・地域の業界の対応にここ当分目を遣り思いを巡らすことになりそうである。


≪市場実態PickUp≫

【東芝メモリ関係】

東芝と「東芝メモリ」を買収する日米韓連合を率いるBain Capitalの取り組みが、追加支援を入れてあらわされる一方、現下の逼迫して好機となっているNANDフラッシュ市場に向けて増産追加投資の方針が示されている。

◇Toshiba, Bain executives join in push for memory-chips sale-Bain, Toshiba want to progress on chip unit sale (10月13日付け The Brownsville Herald (Texas)/The Associated Press)
→東芝およびBain Capitalは、東芝のメモリ半導体事業の3月末までの売却完了に取り組んでいる旨。Western Digitalは、auctionプロセスから締め出されて該売却に対し法的障壁を追及している旨。

◇「東芝メモリに1兆円追加支援」、米ベインが方針−杉本・日本代表に聞く (10月15日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ子会社「東芝メモリ」を買収する日米韓連合を率いる米投資ファンドのベインキャピタル。杉本勇次日本代表が15日、日本経済新聞のインタビューに応じ「東芝メモリへの資金支援は今後(買収額の2兆円とは別に)1兆円を超えるだろう」と語った旨。

◇東芝メモリ、増産投資継続、「WDと協業で」 (10月14日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ子会社「東芝メモリ」は今後、年間三千数百億円の設備投資を続ける旨。同社の成毛康雄社長が13日、三重県四日市市で開いた記者会見で方針を明らかにした旨。四日市工場(同市)や岩手県北上市で工場建設を進め、供給不足のメモリの増産を急ぐ旨。係争中の協業先、米ウエスタンデジタル(WD)と共同開発を続け、韓国サムスン電子を追う姿勢を示した旨。

◇Toshiba discloses further investment in 3D NAND flash facility (10月16日付け DIGITIMES)

このような中、東芝のNANDフラッシュ生産が一時中断の事態に見舞われたと以下の記事が見られている。

◇Toshiba reportedly suspends NAND flash production in Japan (10月16日付け DIGITIMES)
→channel distributors筋発。東芝が最近、同社computerネットワークでのransomware攻撃から、日本拠点でのNANDフラッシュ生産を一時中断、グローバルNANDフラッシュの供給を厳しくする出来事の旨。東芝は、該hackingの処理で3-6週間生産の停止を決定、現在は正常に戻っているが該中断によりウェーハ約10万枚の生産減となっている旨。2017年第四四半期からNANDフラッシュメモリの価格低下が予想されていたが、引き続き高値のままで維持される可能性がある旨。

【Samsungの新分野/最先端の取り組み】

新分野として、Internet of Things(IoT)およびsmart音声サービスに向けたSamsungの取り組みである。

◇Samsung Secures IoT Node-to-Cloud (10月18日付け EE Times)
→Samsungが、Internet of Things(IoT)に向けた終始一貫のセキュリティofferingを発表、IoT end nodesおよびgateways、並びにmachine learningを含むcloudサービス用の半導体における事業を作り上げる積極的な動きの一環の旨。その方向の次のステップとして、Samsungは11月に安全確実なIoT製品一式の出荷を開始、暗号および認証に向けたハードウェアroot-of-trust(信頼の基点)を伴ったモジュールに及ぶ旨。

◇Samsung Finds its Online Voice
 -Bixby aims to be more open than Alexa, rivals
 -Remodeling the living room, then the kitchen
 -Demo shows prototype Bixby dongle
 -Making a side bet on AR with Google
 -Artik takes a stand on the show floor
 -Hubs and TizenRT invade the home
 -A 3D 360 camera for professionals (10月19日付け EE Times/Slideshow)
→Samsungが開発者会議(San Francisco)にて、スマートフォンの先に向けて同社Bixby smart音声サービスを視野の中核に置いている旨。同社は、それぞれの音声ベースmachine-learningサービスをもつパートナー/ライバルのAmazon, Apple, Alibaba, BaiduおよびGoogleからの厳しい競合に直面している旨。

最先端プロセスについては、8-nm LPP(Low Power Plus)プロセスの開発完了を目玉に以下の最新プレゼンが行われている。

◇Samsung completes qualification of 8nm LPP process (10月18日付け ELECTROIQ)
→8LPPのavailabilityおよび7-nm EUV開発などSamsungのファウンドリー・ロードマップの最新アップデート詳細が、Samsung Foundry Forum Europe(2017年10月18日:Munich, Germany)にてプレゼンされる旨。該フォーラムは、今年始め米国、韓国および日本で開催された旨。

◇Samsung develops 8-nanometer foundry process-Samsung has completed development of its 8-nanometer foundry process and stressed that it was continuing to cooperate with its biggest client, Qualcomm.-Samsung wraps up development of 8nm process (10月18日付け ZDNet)
→Samsung Electronicsが、8-nm features半導体用の製造プロセスの開発を完了、Qualcommなどファウンドリー顧客向けに用いる旨。該8 Low Power Plusプロセスは、1年前に量産に入ったSamsungの10LPPプロセスに比べてエネルギー効率が10%高く、使用スペースが10%少ない旨。

◇Samsung completes development of 8-nano process (10月18日付け Yonhap News Agency (South Korea))

◇Samsung completes qualification of 8LPP process (10月19日付け DIGITIMES)

半導体事業を統率するOh-Hyun Kwon(権五鉉[クォン・オヒョン])氏の辞任の意向表明が上記の通り行われる中、今後に向けた積極的な展開の意志があらわされている。

◇サムスン電子、半導体、拡大路線を堅持、来年3つの先端品 (10月19日付け 日経)
→韓国サムスン電子が、半導体製造技術の開発を加速、電子機器の頭脳部となるシステムLSIの受託製造事業で、2018年に3つの先端品を投入する旨。
先端品の投入が1つだった2017年は、重要顧客をライバルに奪われた旨。
半導体の担当役員は辞意を表明したが、拡大路線を堅持。受託製造事業で競う台湾積体電路製造(TSMC)を追撃する旨。サムスンは18日、米半導体大手クアルコムと連携し、回路線幅8-nmのシステムLSIの量産技術を確立したと発表、今年量産を本格化した10-nm品に比べ面積が10%縮小し、消費電力も10%減る。来年の量産開始を見込む旨。

【シリコンウェーハ出荷予測】

メモリが引っ張る世界半導体市場の活況をこれまた映し出して、SEMIによるシリコンウェーハの世界出荷予測が、2016年のこれまでの最高を2019年まで更新し続けるという見方となっている。

◇Wafer Shipments Forecast to Increase in 2017, 2018 and 2019 (10月16日付け SEMI)
→2017年シリコン出荷予測(Millions of Square Inches:MSI):
        Actual      Forecast
  2015 2016 2017 2018 2019
 MSI 10,269 10,577 11,448 11,814 12,235
 Annual Growth 4.5% 3.0% 8.2% 3.2% 3.6%
[Source: SEMI (www.semi.org), October 2017]

◇Wafer shipments forecast to increase in 2017, 2018 and 2019 (10月17日付け ELECTROIQ)

◇SEMI forecasts record silicon wafer shipments-SEMI: 2017 wafer shipments to hit record 11.45B square inches (10月17日付け DIGITIMES)
→SEMIによるpolishedおよびepitaxialシリコンウェーハの世界出荷予測:
 2017年   2018年   2019年
 11.448   11.814   12.235 billion平方インチ
 2016年の最高を更新し続けるという見方。

◇半導体ウエハー8.2%増、出荷面積2017年予測 (10月18日付け 日経)

【TSMCの業績&見方】

TSMCの第三四半期、7-9月期業績が次の通り鈍化している。

◇TSMC 3Q17 profits slip (10月19日付け DIGITIMES)
→TSMCの2017年第三四半期の連結売上げがNT$252.11 billion、前四半期比17.9%増、前年同期比一桁減。net profitsがNT$89.93 billion($2.97 billion)、前四半期比35.7%増、前年同期比一桁減。前四半期比の増加は、"主要モバイル製品の打ち上げおよびcryptocurrency miningなど概して健全な需要環境"によるとしている旨。米国ドルでのTSMCの2017年第三四半期売上げは$8.32 billion、前四半期比17.9%増、前年同期比1.5%増。

◇TSMC、7%減益、7〜9月、米アップル向け低調 (10月20日付け 日経)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が19日発表した2017年7〜9期連結決算。売上高が前年同期比3%減の2521億台湾ドル、純利益が同7%減の899億台湾ドル(約3350億円)。減益は2四半期連続。米アップルの新型スマートフォンの寄与の遅れが響いたもよう、為替の台湾ドル高も足かせになった旨。

 今後に向けてはiPhone Xの市場牽引に期待が寄せられている。

◇TSMC Foresees Double-Digit Sales Growth as iPhone X Hits Shelves-TSMC posts Q3 net of $3B, sees Q4 revenue boost of 11% to 12% (10月19日付け Bloomberg)
→TSMCが、大きな期待のiPhone Xが売り出されるholiday四半期の売上げについて11-12%増を見込む旨。

◇TSMC Expects 10nm Demand to Soar (10月20日付け EE Times)
→TSMCが10-nm製品需要が今年高まると見ている一方、その最大顧客、AppleがiPhone Xの生産を立ち上げている旨。

Morris Chang氏が来年6月の引退を発表、その後のトップ一翼を担うco-CEO、Mark Liu氏が、本年の半導体市場を明確に分析している。

◇TSMC raises IC market forecasts for 2017 (10月20日付け DIGITIMES)
→TSMCが、2017年のグローバルファウンドリーおよびIC全体の市場予測を、前回の6%および12%から、今回それぞれ7%および16%増に上方修正、また、2017年capexについて前回の$10 billionから今回は$10.8 billionに達すると見ている旨。TSMCのco-CEO、Mark Liu氏は、2017年はメモリ半導体分野が力強い51%の伸びを記録、半導体市場伸長全体を引っ張っており、メモリを除く半導体全体はずっと小さく6%増である旨。TSMCとしては、2017年は8.8%の売上げの伸びを見ている旨。

【またも上方修正】

本年の世界半導体販売高予測について、IC Insightsが年央時点からさらに上方修正して、22%増とかつての大飛躍時代を思い起こさせる伸びとなっている。DRAMsとNANDフラッシュメモリ合わせて$122 billionの見方と、大台の$400 billionを総額で越える期待のなか、その比率の大きさを改めて感じるところである。

◇IC Insights Raises 2017 IC Market Forecast to +22% -Strong growth to be driven by a 74% surge in the DRAM market and 44% jump in the NAND flash market. (10月18日付け IC Insights)
→IC Insightsが、2017年IC市場伸長予測を22%と、同社Mid-Year Updateでの16%増から6%ポイント上方修正の旨。IC出荷数量伸長予測も、Mid-Year Updateでの11%から現時点14%に上げている旨。該市場予測改定の大部分は、急増するDRAMおよびNANDフラッシュ市場による旨。

◇IC Insights raises 2017 IC market forecast to +22% (10月19日付け ELECTROIQ)

◇IC Insights raises 2017 IC market forecast to 22% growth-IC Insights predicts 22% growth for 2017 chip sales (10月19日付け DIGITIMES)
→IC Insightsが、今年の世界半導体販売高予測について、前回の16%増から今回22%増に上方修正の旨。今年のDRAMs販売高が今や$72 billionに達する見込みの一方、NANDフラッシュメモリデバイスは$49.8 billionを記録すると予測している旨。

ここまでの勢いだと、その後がどうなるかに目が行きがちとなるが、来年のパソコン出荷について本当に久方ぶりの増加に戻る見方があらわれている。

◇After Long Decline, PC Shipments Forecast to Rise in 2018 (10月19日付け EE Times)
→Gartnerの最新予測。2018年のPCs出荷が、6年連続の減少の後、冷めた伸びではあるが増加に戻ると見る旨。多くの地域、特に西欧でのWindows 10へのアップグレード高速化が引っ張って、ビジネスPCsの出荷が今年末までに増加に戻し、2018年も続くと見る旨。その結果として、来年のグローバルPC出荷が僅かながら0.8%増の予測となっている旨。


≪グローバル雑学王−485≫

トランプ大統領の発言に端を発して一触即発の気配が世界に轟いて、各国・地域からの北朝鮮制裁の音頭が依然鳴り響いているが、

『「米中経済戦争」の内実を読み解く』
 (津上 俊哉 著:PHP新書 1105) …2017年7月28日 第1版第1刷

より北朝鮮問題を巡る米中をはじめとする駆け引きに迫っていく。中国の働きかけを期待する米国の一方、歴史的にも民族的にも北朝鮮の存立維持を必須とする中国、と行き着く解のない問題となるが、今後動く可能性のある政治体制の変化に触れるに至っている。


第5章 北朝鮮問題 ――中国による「レジーム・チェンジ」の可能性

・トランプ政権が発足したばかりの頃、優先課題だったとは思えない北朝鮮問題
 →主流派が米国外交・安保の実権を奪還するのと軌を一にして、北朝鮮問題は比重をどんどん増していく
  …国防長官、国務長官、さらには副大統領が入れ替わり立ち替わり日本や韓国を訪問、同盟国の結束を再確認
・トランプ政権は、北朝鮮対策の重点を中国に
 →前後して、北朝鮮に対する威嚇姿勢を大幅に強めた

〇米国による北朝鮮空爆の可能性
・トランプが「もし中国がしないなら、我々がやる」と発言、北朝鮮に対する威嚇姿勢を強めた
 →(著者が)ワシントン滞在中に何人かの専門家に尋ねたが、返ってきた答は一様に否定的
  …北朝鮮の核・ミサイル開発が格段に進んだ今、実力行使の可能性はいよいよなくなった
・とくに武力行使の功罪を知悉する軍人出身者がトランプ政権の外交・安保政策の主導権を奪還して以降は、リスクの高い武力行使の可能性はいっそう遠のいた
 →米軍が北朝鮮を武力攻撃する事態というのは、非常に考えにくい

〇制裁の強化
・中国は、これまで国連ベースであっても北朝鮮に強い制裁を科すことには反対してきた
 →「北朝鮮の国民生活に影響を及ぼす」ような制裁には反対する立場
・合意した範囲についても、実際には中国企業が取り決めに違反する貿易を公然とやる尻抜け状態だったとも
 →本気で制裁を強化すれば地域経済にとって大きな打撃になることを覚悟しなければならない
・米国は、そのような中国の手ぬるい姿勢に従来から不満
 →2017年3月にも制裁合意違反の取引を行っていた中国企業を槍玉に挙げて、制裁措置を科した
・想定されていたのは、米国が北朝鮮と取引のある中国企業をもっと広範に、かつ厳しく制裁すること
 …「二次制裁」
 →世界貿易から締め出す制裁手段を持つのが覇権国、米国の強さ
・「二次制裁」を発動されることは、習近平にとって是非とも避けなければならない事態
 →「北朝鮮が再び核実験を行えば、中国が独自の制裁を科す」というコミットメントか?
 →北朝鮮も中国を名指しして「アメリカに同調して圧力をかけている」と非難
  …5月3日付け『朝鮮中央通信』
  →北朝鮮の側も最近の中国側の「ただならぬ気配」は察している

〇トランプも習近平に譲歩?
・確たる証拠はないが、いくつか気になること
 →第1:トランプが米メディアに対して「中国が北朝鮮問題を解決するなら、米国との通商合意ははるかに良いものになると習主席に説明した」と述べたこと
 →第2:ホワイトハウス当局者がTHAADミサイルの在韓米軍への配備について「数週間か数ヶ月遅れるかもしれない」と述べたこと
 →第3:トランプが米太平洋艦隊の「航海の自由(FON:Freedom of Navigation)作戦」の実施を抑制している可能性があること
    …他国が領海など海洋権益を過剰に主張していると判断した場合、米国がその海域や上空に軍艦、軍用機を派遣して既成事実化を認めないための作戦
・トランプは臨機応変のディールが売り物だが、その分「戦略に欠ける」という評
 →政権スタッフには米国が育ててきた戦略の重要性を大統領にしっかり教育してほしいもの

〇「本物のワル」になったのか?
・金正日時代の核・ミサイル開発は、無関心な米国に自分の方を向かせるためにやっているようなところ
 →最近は技術開発が進捗したおかげで「悪い子ぶる」段階はもう卒業して「本物のワル」になったという自信も
 →核による自衛手段を保有しないかぎり、体制の安全はぜったい保障されないとの確信
・交渉開始に応じても、「我が国が既に核保有強国になったという現実を追認せよ」という主張を一歩も譲らないだろう
 →ここから始まる、日本にとって、ほんとうの北朝鮮核・ミサイル開発問題

〇SS20の故事
・1970年代旧ソ連が欧州に中距離核ミサイル、SS20を配備した故事
 →最終的には中距離核戦力(INF:Intermediate-range Nuclear Forces)全廃条約として結実
・北朝鮮の核・ミサイル危機が話し合いで解決されるなら喜ばしいことだが、解決の中味は精査する必要
 →我々は、往時の欧州指導者と同様に、自らの境遇を自ら懸念する必要があるのでは

〇交渉で問題が解決できるのか――不信感に充ちた中朝関係
・北朝鮮の核・ミサイル危機を話し合いにより平和的に解決することは本当に可能なのだろうか
 →そこで交渉が妥結しても、北朝鮮がその合意を遵守することはなく、隠れて開発を続けると思われる
・南・北を問わず朝鮮半島の歴史と民族アイデンティティを彩るのは、「罪もないのに、数千年にわたって周辺の大国(中国、ロシア、日本)に翻弄され、虐げられ続けたのが朝鮮だ」という強烈なルサンチマン(ressentiment:被害者意識)
 →中国も、「非常にやりにくい」という苦手意識を抱いている相手が北朝鮮

〇中国による「レジーム・チェンジ」の可能性
・北朝鮮が開発を止めることはない、との前提に立って2つの可能性
 →1つ:他国を核兵器で威嚇して経済利益を得ようとする「喝上げ」
 →もう1つ:麻薬、偽札、大量破壊兵器などを公然と貿易する、それをどこの国も止められないという構図
・中国は「緩衝地帯」としての北朝鮮を必要としているので、追い詰めるような制裁措置はもともと科すつもりがない
・そうは言っていられない最悪の事態が起きたらどうするか?
 →素人なりに(著者が)行った思考実験
  …兵糧攻めはしない(一気に行く)
  …中国は独りで「悪役」を買って出ない
   →朝鮮半島から『また中国に侵略された』と記憶されて、後世の中朝関係に祟りが及ぶ

〇中国がレジーム・チェンジに踏み切る条件
・現体制に代わる新体制のあり方が、中国として受け入れ可能なものになる見通しが立つことも重要な必要条件に
 →「事態」後の朝鮮半島が完全に非核化されることは必須

〇在韓米軍撤退?
・もう1つ、米韓相互防衛条約や在韓米軍の取り扱い
 →「米国が同盟国である韓国主導の統一を画策して中国の利益を脅かすのではないか」という不安・不信感が障碍
  …2017年3月、米国外交専門誌『Foreign Policy』
 →中米両国は「統一された、中立(non-aligned)」の朝鮮半島」を未来像として共有すべき
 →日本にとっては国の安全保障の基本的前提条件の大転換に

〇日本が採りうる手段
・日本は何をすべきで、何ができるだろうか
 →朝鮮半島問題の討議の場に積極的に関与すること
 →決定的な役割を果たす中国との関係はもっと改善し、突っ込んだ話ができるように改めないと
・その先に日本が採りうる手段
 →1つ:何らかの形で北朝鮮問題が解決を見た後の北朝鮮地域の経済を復興、開発するための経済協力
     …北東アジアに残る最後の開発フロンティアは、実は北朝鮮とその周辺
 →実は日本にはもう1枚のカード
  …日本の核武装
  →そんな展開にはならないことを切に願っている

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