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M&Aの嵐が過ぎ去って、メモリが引っ張る熱い波乱&活況の半導体市場

現在の半導体市場の急激な変化、展開模様を如実に示す2点である。昨年、一昨年と非常に大きく吹きまくったM&A(merger and acquisition)の嵐が、今年前半は取引総額が急激に減少しているデータが1つである。もう1つ、メモリが引っ張って過去最高をまたさらに大きく更新する勢いの半導体市場のもと、各社の直近四半期業績が発表されているが、販売高サプライヤ別ランキングの首位を長らく維持しているインテルを、少なくともこの四半期はSamsungが追い越すとのこと。約四半世紀ぶりのこととなる。

≪いつまで続くか≫

IC Insights社よりM&A取引総額のデータが表され、以下の通り激減となっている。M&Aの嵐という表わし方で総括した昨年、一昨年の半導体市場からは、あまりもの変わりようである。

◇Semiconductor M&A Fervor Cools-Chip M&A deals tailing off in 2017 (7月25日付け EE Times)
→2年以上の間半導体業界を席巻したとても熱いmerger and acquisition(M&A)活動のペースが、いわゆる"megadeals"不在で取引全体を大きく下げて、2017年前半は著しく冷めている旨。IC Insights社によると、今年前半に発表された取引十数件の総額が$1.4 billionに過ぎず、2016年前半の$4.6 billionおよび2015年前半の$72.6 billionから低下の旨。「世界中の政府がこれらたくさんの取引を精査しており、確定されていく取引数の減少に役割を果たしている可能性」と、IC InsightsのRob Lineback氏。

◇Value of semiconductor industry M&A deals slows dramatically in 1H17 (7月25日付け ELECTROIQ)

◇Value of semiconductor industry M&A deals slows dramatically in 1H17, says IC Insights (7月26日付け DIGITIMES)

M&A激減ショックに引き続いて、各社から直近四半期の業績が発表されている。まずは、メモリ活況に沸くSamsung。過去最高の四半期利益が達成されている。

◇Samsung Posts Record Profit After Tough Year-Results position the company to top Apple in quarterly profits (7月26日付け The Wall Street Journal)

◇サムスン、4〜6月営業益最高更新、半導体好調 (7月27日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が27日発表した2017年4〜6月期連結決算。総売上高が前年同期比20%増の61兆ウォン、営業利益が同73%増の14兆700億ウォン(約1兆4千億円)で営業益は四半期ベース過去最高を更新の旨。好調な市況を反映し、半導体部門の営業利益も同部門として過去最高の8兆ウォン。
世界シェア首位の2つの半導体メモリ(DRAM、NAND型フラッシュメモリ)が、スマートフォンやサーバ向けに高性能品の搭載が増えた旨。半導体部門の営業利益は、前年同期比で3倍に拡大、サムスンは「スマホ向けは成長ペースが鈍化しつつあるが、サーバ向けは好調だ」と説明の旨。

◇Samsung chip biz drives overall profit growth in 2Q17 (7月27日付け DIGITIMES)

◇サムスン、営業最高益、4〜6月 (7月28日付け 日経)
→韓国サムスン電子が27日、2017年4〜6月期の連結営業利益が前年同期比73%増と大幅に増え、四半期ベースで過去最高になったと発表、半導体部門が8兆ウォン強の営業利益を稼ぎ、全体の過半を占めた旨。他部門の利益は、スマホを主体とする「IT & モバイル」部門が4兆ウォン強、有機ELパネルや液晶パネルを手がけるディスプレー部門が1兆7千億ウォン。

次に、注目のインテルであるが、これも力強さがうかがえる内容である。

◇PC Sales Raise Intel's Q2-Outlook brightens as most groups grow (7月27日付け EE Times)
→半導体全体が非常に活況の年の渦中、1つにPCプロセッサの売れ行きが予想を上回って、Intelが力強い業績発表、そして予測を上方修正の旨。7月1日締め四半期売上げが、前年同期比9%増の$14.8 billion、net profitsが同111%増の$2.8 billion、そして2017年売上げを$61.3 billionと見ている旨。

◇Intel CEO: Data Center 'Reset The Bar' For Intel, Powering Company Through A Solid Second Quarter-Intel CEO touts data-center chips in Q2 results (7月27日付け CRN (U.S.))
→Intelの7月1日締め第二四半期の売上げ$14.8 billionに対しnet incomeが$2.81 billion、平均アナリスト評価を上回った旨。同社CEO、Brian Krzanich氏は、四半期販売高前年比9%増はデータセンター事業に帰するとし、「データセンターが引き続き大きな成長エンジンと見ている」旨。

◇米インテル第2四半期、調整後利益予想上回る、見通し上方修正 (7月28日付け REUTERS ロイター)
→米半導体大手、インテルが発表した第2・四半期(7月1日まで)決算。売上高が$14.76 billionと、前年同期の$12.53 billionから増加、純利益が$2.81 billionと、同$1.33 billionから増加の旨。「上半期の業績が堅調だったこと、パソコン(PC)事業の見通しが上向いていることを踏まえ、通年の売上高と1株利益見通しを上方修正した」と、同社スワン最高財務責任者(CFO)。

◇Intel reports record 2Q17 revenues of US$14.8 billion (7月28日付け DIGITIMES)
→Intelの第二四半期売上げが$14.8 billion、前年同期比9%増、Intel Security Group(ISecG)取引調整後では同14%増の旨。

ただ、メモリによる押上げが非常に大きく、4〜6月期決算ではSamsungがインテルを上回る販売高になっている、と韓国はじめ記事があらわれてきている。メモリは麻薬、魔物とずっといわれてきているが、今の高値基調がいつまで続くか、早速の見方があって当分の観測の論点となりそうである。

◇サムスン電子の半導体、インテル抜き「世界一」に (7月28日付け 韓国・朝鮮日報)
→韓国・サムスン電子が4〜6月期決算で、世界半導体市場で24年にわたりトップを守ってきた米インテルの業績を上回った旨。インテルが27日(現地時間)発表した4〜6月期決算によると、売上高は$14.8 billion(約1兆6400億円)、営業利益は$3.8 billion。一方、サムスン電子は27日(日本時間)発表した4〜6月期決算で、半導体部門の売上高を17兆5800億ウォン(約1兆7500億円)、営業利益を8兆300億ウォンとして、同部門はインテルの売上高を上回り、営業利益でもインテルを大きく引き離した旨。営業利益率をみると、サムスン電子が45.7%を記録したのに対し、インテルは25.7%にとどまった旨。モバイル市場の急成長に伴いDRAMと、NAND型フラッシュメモリを用いた高速記憶装置、SSDの需要が急増し、価格も急速に上昇したことが、サムスン電子の「逆転」につながったとみられている旨。サムスン電子の主力製品であるメモリチップの市場が、インテルの主力のCPU市場よりも大きく成長している旨。

◇Samsung Electronics beats Intel, takes world's largest chipmaker title in Q2-Samsung takes the chip crown in Q2 (7月28日付け Yonhap News Agency (South Korea))

◇Samsung Was No. 1 in Chip Sales in Q2 (7月28日付け EE Times)
→韓国のSamsung Electronics Co. Ltd.が、少なくとも1四半期、世界を引っ張る半導体ベンダーとしてIntel社の席を奪っている旨。Samsungが主導するメモリ半導体市場の活況が、ロジック半導体メーカーより早いペースでSamsungはじめメモリベンダーの伸びを牽引している旨。メモリ半導体市場は名うての循環性があり、Samsungがどれだけ長く半導体販売高首位の座を維持できるか明らかではない旨。DRAMおよびフラッシュメモリ半導体の販売高の伸びは鈍化し始めており、アナリストの予測では、新しいcapacityが稼働、新しい中国の競合が争いに入ってきて、来年後半にメモリの低迷があらわれてくる可能性の旨。

続いてサプライヤ発表を見ていくと、メモリによる過去最高を享受している韓国・SKハイニックスである。

◇SK Hynix delivers another quarter of record results (7月25日付け DIGITIMES)
→SK Hynixの2017年第二四半期の連結売上げがKRW6.69 trillion、前四半期比6%増、前年同期比70%増、operating profitsがKRW3.05 trillion($2.74 billion)、前四半期比24%増、前年同期比574%増。売上げ, operating profitsおよびnet profitsが、2四半期連続で最高を更新の旨。

◇SK hynix's Q2 net shoots up nearly ninefold-SK Hynix reports Q2 net of $2.2B, up 8.6x from a year ago (7月25日付け Yonhap News Agency (South Korea))

◇SKハイニックス最高益、4〜6月営業益6.7倍、メモリ牽引 (7月26日付け 日経)
→韓国半導体大手、SKハイニックスが25日発表した2017年4〜6月期の連結決算。売上高が前年同期比70%増の6兆6923億ウォン、営業利益が同6.7倍の3兆507億ウォン(約3050億円)、前四半期に続いて四半期ベースで過去最高の営業利益を達成の旨。製品別ではサーバ向けの需要が伸びているDRAMが約4分の3、スマホ向けなどが好調なNAND型フラッシュメモリが約4分の1を占めた旨。

設備投資の方も勢いが増す計画である。

◇SK hynix to invest 9.6 tln won on DRAM, NAND facilities-SK Hynix budgets $8.5B for memory expansion (7月26日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→SK Hynixがregulatory filingにて、DRAMsおよび3D NANDフラッシュメモリデバイスの生産capacity拡大に向けて2017年に約$8.5 billionを充てる計画、半導体投資37%増の一部はR&Dにも向けられる旨。

車載、産業分野向けが好調なTexas Instruments社である。

◇Texas Instruments Signals Growing Demand in Chips for Cars-Auto chips drive Q2 results, Q3 forecast for TI (7月25日付け Bloomberg)

◇Automotive, Industrial Continue to Drive TI's Sales Gains (7月26日付け EE Times)
→Texas Instruments社(TI)(Dallas)の第二四半期販売高が$3.69 billion、利益が$1.06 billion、それぞれ前年同期比13%増、29%増。車載および産業半導体分野が引き続き力強い旨。

STMicroelectronicsも予想を上回る業績で、アップル対応の期待が寄せられている。

◇ST Prepares for ToF Sensor Product Ramp-ST ramps time-of-flight sensors for the iPhone (7月26日付け EE Times)
→STMicroelectronicsの第二四半期net売上げが$1.92 billion、前四半期比5.6%増、前年同期比12.9%増と予想を上回るが、アナリストが特に関心を示すのが同社のimaging製品分野、今年後半に予想されるAppleのiPhone 8がST time of flight(ToF) imagingセンサを取り入れると業界に憶測がある旨。

インテルに対抗するAMDも、グラフィックスともども力強い売れ行きとなっている。

◇AMD's New Chips Are Stacking Up -Strong results from the heavily shorted chip maker should calm some nerves-Happy days are here again at AMD (7月25日付け The Wall Street Journal)

◇AMD Surprises Wall Street With Strong Results, Outlook (7月26日付け EE Times)
→Advanced Micro Devices(AMD)社の第二四半期販売高が$1.22 billion、前四半期比24%増、前年同期比18%増。同社Ryzenプロセッサの売れ行きおよびグラフィックス半導体の引き続き力強い販売が引っ張っている旨。

◇Chipmaker AMD forecasts current-quarter revenue above estimates (7月26日付け Reuters)

このようにメモリが牽引して全体的に活況を呈している現下の半導体業界であるが、新市場、新分野の寄与が大きく地固めしている。代表格のinternet of things(IoT)であるが、規模および市場範囲ともに茫漠とするところもあって、以下にもあるいろいろな見方のスタンスがあらわれている。

◇ARM designs to power 100bn chips over 4 years, CEO says-SoftBank unit foresees explosive market growth as 'internet of things' takes root-ARM CEO: IoT will drive firm's growth (7月21日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→ARMのCEO、Simon Segars氏。ARMの設計が入る半導体約100 billion個が向こう4年で出荷されると予測、大方は特にサーバプロセッサでのinternet of things(IoT)応用向け需要が引っ張る旨。「この技術プラットフォームの構築を図っている」と同氏。

◇IoT Growth Slower Than Expected-Units won't crack billion/year until 2019 (7月25日付け EE Times)
→Linley Groupのseniorアナリスト、Mike Demler氏。IoT市場が10億個/年のrun rateに当たるのは2019年以降であり、そのときまでに低コスト化および使用容易化でconsumer市場にhigh gearが入って、2023年の総数23億個市場に向かっていく旨。

話題性ではIoTを上回っている感じ方があるartificial intelligence(AI)は、関連する動きが以下の通りひっきりなしとなっている。

◇Inside Microsoft's Plan to Bring AI to its HoloLens Goggles-New HoloLens processor will let mixed reality goggles recognize speech and images-Microsoft prepares chip for quick AI processing (7月23日付け Bloomberg)
→Microsoftが、on-boardプロセッサの形でartificial intelligence(AI)に向けた基軸ソリューションを開発、cloudに入力を送る必要があるデバイスで行えるより応答時間が早くできる旨。いまだ開発中の該半導体は、MicrosoftのHolographic Processing Unitの一部であり、HoloLensの次のバージョンに入る運びの旨。

◇TSMC to expand CoWoS capacity to fill increasing AI chip packaging orders-Sources: TSMC looks to AI chip packaging for orders (7月24日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCが、AI半導体に向けたNvidiaおよびGoogleからの受注増大を満たすために、同社CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)実装およびtesting capacityの初めてとなる拡張を計画、台湾の半導体業界が次第にdeep machine learningおよびAI応用の新時代を受け入れていることを示している旨。該拡張は、台湾北部Taoyuan City(桃園市)のLongtan Science Parkにある同社第3 IC実装およびtesting工場で打ち上げられる旨。

◇Google Aims to Beat the Brain-Can DeepMind ‘solve intelligence’? (7月25日付け EE Times)
→Googleのartificial-intelligence(AI)の指導者, Demis Hassabis氏が、人間の頭脳で用いられるアルゴリズム、アーキテクチャー、機能および表現を解明して知能を打開していく同社の壮大な計画を披露の旨。

◇Taiwan IC design service and IP firms land AI chip orders from China (7月26日付け DIGITIMES)
→業界筋発。台湾のIC設計サービス会社およびシリコンIPプロバイダーが、中国のIC業界およびacademiaからのartificial intelligence(AI)応用向け受注を獲得し始め、中国からのAI関連半導体需要が立ち上がる見込みの旨。Global Unichip, eMemory TechnologyおよびAlchip Technologiesには、主にTSMCからファウンドリーサポートを求めている中国の各社からのAI関連半導体需要の増大が見えている旨。

変化要素に富んだメモリが引っ張る市場の活況もいつまで続くか、新分野の台頭とともに目が離せないここ当分である。


≪市場実態PickUp≫

【東芝メモリ入札関係】

優先とした日米韓連合はじめ残っている入札グループの提示を改めて検討する東芝の役員会も進展に至らなかった一方、米カリフォルニア州の上級裁判所での2回目の審問が開かれ、売却可否の判断は示されず、代わりに売却が完了する二週間前にウエスタンデジタルに通告するよう求めて審議終了となっている。東芝の事業の売却が実際に進むかどうかは、今秋に始まる国際商工会議所(ICC:パリ)の国際仲裁裁判所での裁定に委ねられている。以下、関連する動きをまとめている。

◇Toshiba board to meet Wednesday, weigh offers for chip unit: source-Source: Toshiba to look at offers for chip unit (7月25日付け Reuters)
→本件事情通筋発。東芝が、同社半導体事業に向けたWestern Digital, Foxconn Technology GroupおよびBain Capital, SK Hynixなどの優先入札グループからの買収提示の検討で役員会を召集する旨。同社は、日本政府が支援するファンドが入っている該優先入札先と取引に到達できていない旨。

◇Toshiba transfers Phison shares to memory unit (7月26日付け DIGITIMES)
→台湾のメモリデバイスコントローラ・サプライヤ、Phison Electronics発。東芝が、Phisonにおける持ち株の一部を東芝メモリ(TMC)に移す旨。
東芝は12,296,416のPhison株式をTMCに移し、東芝保有の残る7,524,696のPhison株を8月始めにTMCに移す旨。

◇東芝半導体、協議進展せず、年度内売却に暗雲 (7月27日付け 日経 電子版)
→東芝は26日、取締役会を開き半導体メモリ事業の売却方針について協議、優先交渉先である「日米韓連合」と同日中の合意を目指していたが決着せず、米ウエスタンデジタル(WD)など他陣営との協議も進展がなかった旨。
最終合意は8月以降にずれ込む見通し。独占禁止法の審査には半年以上かかるとされ、上場維持の条件である年度内の売却完了には暗雲が垂れ込めている旨。半導体子会社「東芝メモリ」の買い手候補に残っているのは、米投資ファンドのベインキャピタルらが主導する日米韓連合と、WDと米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の連合、そして台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の3陣営。各陣営は25日までに最終買収案を提示し、東芝は26日の取締役会で協議した旨。

◇INCJ-led consortium makes final bid for Toshiba memory unit-Group makes best and final offer on Toshiba chip unit (7月27日付け The Japan Times/Jiji Press)
→産業革新機構(Innovation Network Corp. of Japan)とそのコンソーシアムパートナーが、東芝の半導体事業に対する最終入札を提示、東芝役員会はまだ選択決定には至っていない旨。

◇東芝半導体訴訟で再審議、仲裁裁判断が次の焦点 (7月28日付け 日経産業)
→東芝の半導体メモリ事業の売却差し止めを求めた米ウエスタンデジタル(WD)の訴訟で、米カリフォルニア州上級裁判所は28日(米国時間)に再審議する旨。14日の第1回審問で判事は「調停の場ではない」と明言しており、売却可否の裁定は出ない見通しの旨。今秋に始まる国際商工会議所(ICC:パリ)の国際仲裁裁判所の審理が次の焦点になる旨。

◇東芝の半導体事業売却、加州裁判所は判断示さず (7月29日付け 日経 電子版)
→米カリフォルニア州の上級裁判所は28日、米ウエスタンデジタル(WD)が求めている東芝の半導体メモリ事業の売却差し止めについて2回目の審問を開いた旨。判事は売却の可否について判断を示さず、代わりに売却が完了する二週間前にWDに通告するよう東芝に命じ事実上一連の審議を終了した旨。WDは国際商業会議所(ICC)の国際仲裁裁判所にも売却差し止めを求めており、東芝の事業の売却が実際に進むかどうかは今後始まるICCでの裁定に委ねられることになった旨。

【熱さ増すファウンドリー市場】

ファウンドリー市場のTSMCの牙城にくさびを打ちつけるべく、Samsungがこの市場でも覇権獲得に向けてまずは5年以内に3倍のシェア、No. 2の市場位置を視野に入れた計画を打ち立てている。

◇Report: Samsung Plans to Triple Foundry Market Share (7月24日付け EE Times)
→Reuters news service、月曜24日発。韓国・Samsung Electronics Co. Ltd.のファウンドリー部門head、E.S. Jung氏が、同社のファウンドリー市場シェアを現在の10%以下から25%の伸ばしていく計画、こうするために積極的に顧客を加える、としている旨。圧倒的なプレーヤー、TSMCに続くNo. 2の市場位置を視野に入れている旨。

◇Samsung takes aim at TSMC with plans to triple chip foundry market share-Samsung wants to be No. 2 in the foundry market (7月24日付け Reuters)
→Samsung Electronicsのexecutive vice presidentでファウンドリー事業head、E.S. Jung氏。Samsung Electronicsは、5年以内にグローバルファウンドリー市場の25%を占めるよう熱望、SamsungからAppleをつかみ取って現在該ファウンドリー市場の約半分を押さえているTSMCに続く2番目の位置をとっていく旨。その目標に達するには、SamsungはGlobalFoundriesおよびUnited Microelectronics(UMC)を追い越さなければならない旨。

TSMCの方は、Apple対応はじめ10-nm半導体の量産を着実に進めている。

◇TSMC to enter mass production for new 10nm HiSilicon chips in September, says report (7月28日付け DIGITIMES)
→TSMCが、AppleのA11半導体, 並びにHiSiliconのKirin 970-シリーズに向けた受注遂行により、第三四半期に10-nm半導体の量産を開始の旨。

【追いかけるUMC】

ファウンドリー業界でのプレゼンスを上げるよう、UMCの以下奮闘ぶりである。TSMCと比べたコストメリットから、同じ台湾の中での駆け引きではあるが、MediaTekが28-nmモバイル半導体発注の一部をUMCに振り向けようとしている。

◇MediaTek to transfer 28nm chip orders to UMC-Sources: MediaTek shifts 28nm chip orders to UMC from TSMC (7月25日付け DIGITIMES)
→業界筋発。MediaTekが、コストを下げるためにAmazon Echo Dot向けなど28-nmモバイル半導体受注の一部を2018年からTSMCからUMCに移す計画の旨。AmazonのEcho Dotで用いられる28-nm半導体について、MediaTekの見積もりは約$5の旨。TSMCのファウンドリーおよびbackendサービスコストを控除して、MediaTekには約$2/半導体が残る可能性の旨。

先端プロセスにおいてもUMCは、14-nm製品の生産をスタート、売上げに計上して、TSMC、Samsungを追いかけている。

◇UMC Breaks into 14nm (7月27日付け EE Times)
→台湾第2のファウンドリー、UMCが、14-nm製品の最初の生産を開始、より大手の競合、TSMCおよびSamsungとの技術gapを詰めている旨。今年第二四半期で14-nmが初めて売上げ全体の1%を占めた旨。

【最高更新を続けるウェーハ出荷面積】

現下の半導体業界の活況をここでも映し出して、SEMIから四半期ベースで発表されるシリコンウェーハ出荷面積が過去最高を更新し続けている。今年に入ってからの前半2四半期の伸びが特に注目される推移となっている。

◇Second Quarter 2017 Silicon Wafer Shipments Increase Quarter-Over-Quarter; Continue to Ship at Record Levels (7月24日付け SEMI)
→SEMI Silicon Manufacturers Group(SMG)のシリコンウェーハ業界四半期分析。シリコン出荷面積の推移(単位:100万平方インチ):
 1Q2016  2Q2016  3Q2016  4Q2016  1Q2017  2Q2017
 2,538  2,706  2,730  2,764  2,858  2,978
(注) 半導体応用のみ対象 [Source: SEMI, (www.semi.org), July 2017]

◇Second quarter 2017 silicon wafer shipments increase quarter-over-quarter (7月25日付け ELECTROIQ)

◇Wafer area shipments grow 4.2% in second quarter-Q2 silicon wafer area shipments were up 4.2% on Q1, says SEMI's Silicon Manufacturers Group(SMG).-SEMI: Wafer shipments continue at record pace (7月25日付け Electronics Weekly (UK))
→SEMIのSilicon Manufacturers Group(SMG)発。第二四半期のシリコンウェーハ出荷面積が2.98 billion平方インチに達し、第一四半期の2.86 billion平方インチから4.2%増、前年同期比10.1%増、該分野の最高を引き続き更新の旨。「これら最高記録水準は、200mmおよび300mm両方の出荷が引っ張っている」と、SEMI SMGのchairman、Chungwei Lee氏。

◇Silicon wafer shipments remain at record highs, says SEMI (7月25日付け DIGITIMES)

◇半導体ウェーハ、出荷面積最高に、世界の4〜6月 (7月25日付け 日経 電子版)
→半導体製造装置の業界団体、SEMI(米カリフォルニア州)、24日(米国時間)発。半導体基板に使うシリコンウェーハの4〜6月の世界の出荷面積が29億7800万平方インチ、四半期として過去最高を更新、前四半期比4.2%増、前年同期比10.1%増。

【模造半導体】

半導体市場がかくも熱を帯びてくると、裏の模造市場の方もおとなしくいられないということか、以下の動きがあらわされている。

◇Fake Chips on Amazon Are Nothing New-Amazon's sale of fake chips is an old issue (7月24日付け EE Times/Semi Conscious)
→Amazon上での模造販売についての報道が、e-commerce retailersだけでなく半導体業界を長らく悩ませている問題を映し出している旨。厄介な模造半導体との戦いを支援するために、Semiconductor Industry Association(SIA)はanti-counterfeiting task forceをもち、JEDECはJESD243標準を構築している旨。

◇Semiconductor Counterfeiting is a Global Problem-Analysis: The worldwide problem of counterfeit chips (7月26日付け EE Times/Semi Conscious)
→模造半導体の問題が、米国の国境を遥か超えて拡がっている旨。
Semiconductor Industry Association(SIA)などの努力にも拘らず、中国その他からの模造半導体が半導体supply chainにいつものように潜入している旨。「模造はグローバルな問題」と、SiliconExpertのsenior product manager、Thomas Ruzika氏。


≪グローバル雑学王−473≫

筆者が定義する激転妖怪たちの危険の度合いをどう評価、測定するか、

『世界経済の「大激転」――混迷の時代をどう生き抜くか』
 (浜 矩子 著:PHPビジネス新書 378) …2017年6月1日 第1版第1刷発行

より、ポイント2点、すなわち今、何が最も警戒すべきことなのか、そして今、誰が最も警戒すべき者なのか、が以下表わされている。保護主義そして国家権力の強化と、米国および日本の政府への信頼感が各種データで低迷している現在、良きグローバルのあるべき姿というものをアンテナをしっかり立てて把握する必要性の重みを感じている。


第1章−5 妖怪万華鏡時代 ――「激転」に向かって突き進む魔物軍団

6 激転妖怪たちの危険度をどう測定するか

・妖怪万華鏡を覗き込む時、我々が神経を集中すべきポイント2点

●反グローバルの落とし穴
*ポイントその1: 今、何が最も警戒すべきことなのか
          →「反グローバルの落とし穴」
・経済がグローバル化 →格差が広がる
           →貧困が深まる
           →地域社会が消滅に追い込まれる
           →自然が破壊されて行く
           →カネに人が振り回される
           →モノづくりがカネ回しに敗北する
・だが、反グローバルのノロシを上げることは危険

●上げるべきは良きグローバルのノロシ
・反グローバルを掲げること →排外主義を掲げることにつながる
 →国家主義、国家至上主義
 →人々の基本的人権が「お国のため」に損なわれることをよしとする
・上げるべきは、良きグローバルのノロシ
 →次章以降の課題
 →その前に、反グローバルという概念と激転妖怪たちとの関係をしっかり見定めておく必要

●グローバル主義対愛国主義
・4月のフランス大統領選に向けて、本格始動を宣言する中、マリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)氏(…フランス「国民戦線」党首)が2017年2月初めに発信
 →「もはや、右翼も左翼もない。あるのは、グローバル主義対愛国主義の対立のみ」
・この呼び声が声高になればなるほど、我々妖怪バスターズは警戒心を強め、力強く身構えなければならない

●「グローバル・ブリテン」に到達したメイ首相
*ポイントその2: 今、誰が最も警戒すべき者なのか
          →答えは、ズバリ、妖怪アホノミクス。「世界の真ん中で輝く」ことを目指している
・2017年1月17日、メイ首相、「ブレグジット」に臨むイギリスの基本姿勢を演説
 →繰り返し登場したのが、「グローバル・ブリテン」
 →なかなか思いの籠もった演説

●「グローバル・ブリテン」と「アメリカ・ファースト」は両端か
・「グローバル・ブリテン」に込められた広い世界との親和性を求める姿勢
 →開放的
・「アメリカ・ファースト」→閉鎖的…国境という囲いの中に引きこもろうとしている

●アメリカの先にあった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
・激転妖怪度計測定規
 →「グローバル・ブリテン」側から遠ざかれば遠ざかるほど、激転妖怪度が高まる
 →「アメリカ・ファースト」はこの定規上の1つの通過点
・その向こう側には、まず「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
 →攻撃型…世界を蹴散らしながら生きて行くという発想

●今、最も警戒すべき者
・そのさらに向こう側に、「世界の真ん中で輝く日本」ポイント
 →自分が太陽と化した状態を想定
 →極限的激転妖怪ポイント…我々が最も到達してはいけないポイント

●つける薬がないかもしれない極限的激転妖怪
・極限点の「世界の真ん中で輝く」主義に到達している妖怪は、実は、そう多くない
 →つける薬の調合が難しい。つける薬は無いのかもしれない
 →どこに希望を見い出すか…本書、第3章、第4章の課題

●なぜ人々は妖怪たちに引き寄せられるのか
・なぜ、「我が国ファースト」ポイントから向こう側へと、人々は引き寄せられて行くのか
 →人々が追い詰められている
     救いを求めている
     不安な思いに駆られている
・「我が国」と「我々」を混同してしまう劇薬的媚薬を、激転妖怪たちが撒き散らす
 →惑わされないためには、我々がお互いの痛みを自分の痛みとして感じ取れる必要

●国民に奉仕することを忘れた国家
・国家というものが、国民というお客様のために奉仕することを忘れた
 →間隙を縫って国家主義者どもが人々の魂目がけて触手を伸ばして来ている
 →それが、現状では
・国家権力を強化することが人々の憂いの解消に繋がるという論法は、明らかに詭弁

●国から余計な役割を引き剥がして行く時代
・グローバル時代は、国々からどんどん余計な役割を引き剥がして行く時代かも
 →剥がし切った最後に、どうしても残る国々の役割
 →それを見極めることができた時、国々は国家主義の呪縛から解放され、本当に人々のために尽くすことができる

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