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本格始動に向かう"胎動"、AIの取り組みと中国半導体製造関連

世界半導体販売高が最高水準で推移している現時点であるが、今後を支えていく新技術、新市場の動向、盛り上がりに日々注目しているこのところである。現下の足元で2点、すなわち人工知能(AI)そして中国における半導体製造を巡る取り組み、蠢きを半導体業界の動きの中でも強く感じさせられている。「AI時代の申し子」と言われる将棋の14才、藤井聡太四段の偉業、第1回「AI・人工知能EXPO」の東京での開催など興奮の話題に事欠かないAI、そして半導体・エレクトロニクス業界で否応なく目が離せない中国を巡るものづくりの動き、展開ぶりである。

≪喧噪と興奮の中、様々な切り口の備え≫

現代計算機科学の父、Alan Mathison Turing(英国)に因むAlan Turing awardの50周年イベントのパネル討議にて、AIの意味合いが議論されている。

◇Expert Panel Debunks AI Hype-Neural networks seen as huge but limited (6月26日付け EE Times)
→Association for Computer Machinery(ACM)のAlan Turing awardの50周年に向けたイベント(6月23-24日:San Francisco)でのエキスパート・パネルにて。artificial intelligence(AI)はneuralネットワークスに向けては誤った名称であり、人間の推理および理解の基本形に対応せず、AI構築に向けた長い道のりに取り組むためのtoolsである旨。

AIを駆使する自動運転車に半導体の世界で積極的に取り組んでいるNvidiaが、Volvoとの連携を発表、2021年の生産化を目指すとしている。

◇Nvidia Deals Tilt Robo-Car Race (6月27日付け EE Times)
→自動車メーカーによるrobo-car開発がすでにR&Dフェーズから生産へ移行、Nvidiaが今週3件の新しい連携取引を披露、すべて同社AI car-computingプラットフォームのテコ入れを目指している旨。Nvidiaは月曜26日、VolvoおよびAutolivが2021年の自動運転車生産に向けてNvidiaのDrive PX 2を選択と発表、また、ZF & Hellaとの取引も確認、自動運転車の大量運用に向けたNew Car Assessment Program(NCAP)安全性認証でNvidiaとの協働をcommitの旨。

◇米エヌビディアとボルボ、自動運転車、2021年発売 (6月28日付け 日経)

中国の検索大手、百度(Baidu)が、データセンターにおけるAI処理に向けたベンチマークを更新している。

◇Baidu Upgrades Neural Net Benchmark-DeepBench measures inference and training (6月28日付け EE Times)
→Baiduが、同社のneuralネットワークス用オープンソースベンチマーク、DeepBenchを更新、推理jobsサポートおよびlow-precision mathサポートを追加の旨。DeepBenchにより、データセンターがイメージおよび自然言語認識などのjobsに向けてより大規模で正確なモデルを構築するのを支援する半導体の最適化目標が得られる旨。

IBMの半導体を搭載、AIスーパーコンピュータが動かす趣きを感じる米国空軍のジェット機である。

◇'E-Brain' to Pilot Air Force Jets (6月28日付け EE Times)
→米国空軍が依頼しているIBMのTrueNorth neuromorphic 64-chip array搭載の“brain-inspired supercomputer”は、応用の可能性として航空機および他の大きさ、重さおよび電力の制限があるembedded, モバイル, autonomousシステムがある旨。64 million以上のneuronsおよび16 billion以上のsynapsesを擁する該e-brainのneurosynaptic arrayは、リアルタイムパターン認識およびsensory処理を人間の頭脳より高速、正確にこなす一方、電力は10 watts止まりの旨。

AIに向けた半導体IP、ソフトウェア開発関連の動きである。

◇ARM SoCs Take Soft Roads to Neural Nets-NXP, Q'comm tap inference libraries, extensions -Neural networks get boost from ARM-based SoCs (6月29日付け EE Times)
→NXPは、同社i.MX8プロセッサ上でイメージ認識などの推論jobsをソフトウェアでサポート、今年後半そのアプローチを自然言語処理に拡げる狙い、専用ハードウェアはresource-constrainedシステムでは必要でないとしている旨。NXPは合併パートナー、Qualcommの後についていっているが、Qualcommは専用ハードウェアでcodeを漸次増やしていく見込みの旨。両社共有のIPパートナー、ARMは、coresに向けてneural networkingライブラリを開発している旨。

AI関連の刺激的な展開に引き続き注目であるが、転じて中国の半導体製造関連は、生々しい現実のもみ合いに富んだ内容となる。

中国への技術移転を警戒する米国が、波高しの状況を生み出している。

◇China Is Missing Out on the Chips Rush-U.S. lawmakers are blocking Chinese purchases of semiconductor companies as the industry sets a deals record. -US officials block chip sales to China (6月26日付け Bloomberg)
→米国当局が米国の技術capabilitiesをそこに向かわせたくないとして、アメリカの半導体メーカーの中国の会社への売却が止まっている旨。米国Treasury Departmentは、Lattice Semiconductorの中国政府つながりの出資元、Canyon Bridge Capital Partnersへの$1.3 billion売却を引き続き阻止している旨。

中国半導体業界のものづくりの展開に向けて、欧州の製造装置大手、ASMLが入る教育訓練センターの設立である。ベルギーの研究機関、imecと合わせ、欧州の中国への積極的な取り組みがうかがえている。

◇ICRD and ASML sign pact to establish training center in Shanghai (6月26日付け DIGITIMES)
→中国における半導体業界進展に向けた公的リサーチコンソーシアム、Shanghai Integrated Circuit Research and Development Center(ICRD)と半導体製造装置メーカー、ASML Holdingが、上海に共同経営機関を設立するmemorandum of understanding(MoU)調印の旨。ICRDとASMLは、該訓練センターに向けて現状のICRDのcleanroom facilitiesおよびclassroomsを用い、ASMLが供給するlithographyおよびmetrology装置を備える意向の旨。

◇Imec looking to deepen partnerships with China-based chipmakers-Imec boss: China could become semiconductor leader (6月28日付け DIGITIMES)
→Imec Chinaのヘッド、Huiwen Ding氏。中国は、現地プレーヤーが国内的および国際的にリソースをよく活用すれば、world-classの半導体業界になる可能性がある旨。中国政府が現地IC業界分野に財政支援、中国の半導体メーカーは生産capabilityおよびビジネス規模を高めるのに利用できるが、技術capabilitiesについては国際的リソースに頼らなければならない旨。Imecのリソースを利用して、自前のシステムを作るために開発toolsおよびR&Dを構築できる旨。

中国のロジック、メモリ半導体メーカーの積極的なビジネス展開、技術アプローチが、以下の通り続いている。

◇China foundries striving for more dummy wafer supplies-Sources: Chinese chipmakers pay premiums for test wafers (6月26日付け DIGITIMES)
→upstreamウェーハサプライヤ筋発。Nexchip SemiconductorおよびRui-Li Integrated Circuitなど中国のロジックICおよびメモリファウンドリーが、特に12-インチの"dummy"あるいはテストウェーハの供給確保のために価格提示を大手ライバルより20%上げている旨。例えば、TSMCがテストウェーハ購入に$75-80を提示しているのに対し、中国のファウンドリープレーヤーは$90を出している旨。

◇China DRAM startup to enter 19nm chip production in February 2018 (6月29日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Hefei Rui-Li(中国語から字訳) Integrated Circuitが、2018年2月末あたりに19-nmプロセス技術を用いるDRAM半導体を作り始める旨。
前の社名がHefei Chang XinであるRui-Li ICは、2017年末に同社の新しい12-インチfabに装置据え付け開始、予定より先行の旨。Rui-Liは、十分な供給確保に向けてシリコンウェーハプロバイダーとの交渉を始めている旨。

◇SMIC mass producing 28nm HKMG chips-SMIC eyes 2018 for making chips with the 14nm process (6月26日付け DIGITIMES)
→SMICのCEO、Haijun Zhao氏。同社の28-nm HKMGプロセスが量産段階に入っており、2018年にはより新しい14-nmプロセスによる半導体製造を進めていく旨。SMICは他の中国のICファウンドリーとともに、2018年に14/16-nm半導体の量産開始を図っている旨。

中国での車載エレクトロニクス用材料テストに向けた台湾と我が国が共同する取り組みが見られている。

◇IST strikes deal with JFE-TEC to jointly provide automotive-use materials testing services in China (6月27日付け DIGITIMES)
→台湾のelectronics製品検証&解析サービス・プロバイダー、Integrated Service Technology(IST)が、先端解析領域および評価技術の特化した日本のJFE Techno Research(JFE-TEC)とMoU調印、中国での車載electronics向け材料testingサービスを共同で行う旨。

中国政府が主導する半導体投資であるが、展開状況が以下の通り表わされている。

◇China Big Fund commits investment of CNY85 billion (6月27日付け DIGITIMES)
→Big Fundとして知られる中国・National Semiconductor Industry Investment Fundのpresident、Ding Wenwu氏。該ファンドが、現地のIC業界、主に製造分野にCNY85 billion($12.4 billion)の出資をcommitしている旨。2017年4月末時点で、Big Fundは全体で37企業に出資の旨。

エレクトロニクスに広げて見ると、中国国内に留まるものではないということで、通信機器で我が国に工場進出する動きが次の通りである。今後の展開に注目するものである。

◇華為が日本に通信機器大型工場、中国勢で初、技術吸収 (6月29日付け 日経 電子版)
→通信機器大手の中国・華為技術(ファーウェイ)が初の日本生産に乗り出す旨。年内にも大型工場を新設し、通信設備や関連機器を量産。日本の技術と人材を取り込み、日本や他の先進国で受注を増やす旨。事業買収や研究開発拠点の設置が中心だった海外企業による対日投資が生産まで広がる旨。中国企業が日本に本格的な工場を新設するのは初めて。日本で初となる工場は、千葉県船橋市にある工場跡地と建屋を転用する旨。日本の製造業が低コストを求めて中国に進出する動きが一巡する一方、今後は逆に中国の製造業が日本に進出する動きが活発になりそうな旨。


≪市場実態PickUp≫

【東芝メモリ入札関係】

6月28日の東芝の株主総会を巡る動き、経緯はテレビはじめトップニュースの1つとして大きく報道されており、ここでは業界紙より時間順にまとめて以下の通りである。

28日の総会前の合意「可能」と、事前の東芝の発表である。

◇東芝、総会前の合意「可能」、綱川社長、メモリ事業売却で (6月26日付け 日経産業)
→東芝が23日、2017年3月期の決算内容を記した有価証券報告書(有報)の提出期限の延長を関東財務局に申請し承認を受けたと発表、新しい期限は8月10日。同社の綱川智社長は都内の東芝本社で会見して「株主など利害関係者に多大な心配をおかけすることをおわびします」と陳謝、一方、半導体メモリ事業の売却を急ぐ方針を改めて強調した旨。半導体メモリの売却で産業革新機構と日本政策投資銀行、米投資ファンドのベインキャピタルの連合を優先交渉先に選んだが、綱川社長は東芝の株主総会が開かれる6月28日までの基本合意について「可能だと考えている」と指摘。WDについては「これまでも良いパートナー。WDから話があれば協議をしても構わない」とも語った旨。

一方、Western Digital(WD)はSK Hynixの参加に反対する立場を表明している。

◇Western Digital objects to SK Hynix participation in Toshiba chip unit sale-WD may not let Toshiba chip unit sale proceed (6月26日付け Reuters)
→Western Digitalは、東芝の半導体事業売却提案に対して、優先入札グループにNANDフラッシュメモリ市場での競合、SK Hynixが含まれるならば同意しない旨。該取引完了を急いでいないとされるInnovation Network Corp. of Japan(産業革新機構)およびDevelopment Bank of Japanが資産の適正評価を行っており、東芝は、年次株主総会を行う水曜までに優先入札グループとの取引に到達しないかもしれない旨。

◇Toshiba Chip-Unit Bidders Said to Push Back Final Agreement (6月26日付け Bloomberg)

◇米WD、韓国勢の連合入りに反対、東芝半導体買収 (6月26日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ事業を巡って、協業先の米ウエスタンデジタル(WD)が26日、東芝に改めて反対の書簡を送ったことが分かった旨。東芝が優先交渉相手に選んだ日米韓連合のなかに韓国の半導体メーカー、SKハイニックスが入ることに懸念を示した旨。自社の買収案が日米韓連合に比べ優位である点も強調した旨。WDは米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と組み、産業革新機構と日本政策投資銀行を加えた日米連合として買収をめざす構え。ただ東芝は産業革新機構が主導する日米韓連合を優先交渉先に選んでおり、WDの提案が受け入れられるかは不透明な情勢、東芝は日米韓連合と最終合意を結ぶために詰めの交渉を急いでいる旨。

さらに、WDはKKRと組んでの東芝メモリ買収案を再提示している。

◇米WD、KKRと買収提案を再提出、東芝半導体 (6月27日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ事業の売却を巡り、協業先の米ウエスタンデジタル(WD)は27日、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)とともに買収提案を再び東芝側に送ったと発表の旨。東芝は産業革新機構が主導する日米韓連合を優先交渉先に選び詰めの交渉に入っており、WD側の再提案が精査されるかどうかは不透明な情勢の旨。WDとKKRは革新機構と日本政策投資銀行を加えた日米連合での2兆円規模の買収案を提示。東芝側と最終合意間近の日米韓連合に対して「買収の確実性は我々が最も高い」と主張した旨。急造の日米韓連合の提案内容の実現性に疑問を呈した形の旨。

◇Western Digital says resubmitted bid with KKR for Toshiba's chip unit-Western Digital continues quest for Toshiba memory chip unit (6月27日付け Reuters)
→Western DigitalおよびKKR & Co.が、東芝のフラッシュメモリ半導体部門を買収する動きを継続、提示を再提出の旨。しかしながら東芝は、米国private equity会社および日本政府が率いるグループが入る優先入札者との取引に水曜28日調印する予定の旨。

株主総会の前日にも「日米韓連合」との売却契約が締結との表わし方も見られていた。

◇東芝半導体、27日にも「日米韓」と売却契約−再協議条項も (6月27日付け 日経 電子版)
→経営再建中の東芝が半導体メモリ事業を巡り、優先交渉先に選んだ官民ファンドの産業革新機構を軸とする「日米韓連合」と27日にも売却契約を結ぶことが分かった旨。買収金額や条件などについて大筋合意した旨。売却に反対する米ウエスタンデジタル(WD)の訴訟リスクに関しては、売却が差し止められた場合に再協議する条項を盛り込む旨。東芝は経営再建に向けて売却の完了を急ぐ旨。

しかしながら前日にはまとまらず、株主総会を迎えるに至っている。

◇東芝、28日株主総会、半導体売却交渉を継続 (6月28日付け 日経 電子版)
→東芝が半導体メモリ事業の売却に向けた契約締結を巡り、優先交渉先に選んだ「日米韓連合」と調整を続けている旨。27日の締結に向けて契約書を固める作業を進めたが、同日中には終了しなかった旨。28日に開催予定の定時株主総会で株主に対し、締結を報告したいとしてきたが、当初見込みどおりには売却契約はまとまらない可能性が出てきた旨。

◇東芝半導体、晴れぬ視界、総会までに契約できず (6月29日付け 日経 電子版)
→東芝は半導体メモリ事業売却で、期限としていた28日開催の定時株主総会までに契約を結べなかった旨。優先交渉先に選んだ産業革新機構が率いる日米韓連合と調整を続けるが、東芝の綱川智社長は総会で「早期合意を目指し、鋭意交渉中」と話すのにとどまった旨。メモリ事業売却にとどまらず、有価証券報告書の提出の遅れや追加損失リスクなど難題を抱えたままで、再建への視界は依然、晴れていない旨。

株主総会の日に東芝は、WDを「不正競争行為」差し止め仮処分、そして損害賠償を求めて提訴する事態となっている。また、WD側による四日市工場(三重県四日市市)への情報アクセスの遮断を実施、波紋を拡げている。業界各紙のあい続く反応である。

◇東芝、WDを提訴、「不正競争行為」差し止め仮処分も申し立て (6月28日付け 日経 電子版)
→東芝は28日、半導体メモリ事業の売却を巡って対立する協業先の米ウエスタンデジタル(WD)を相手取り、不正競争行為の差し止めを求める仮処分を申し立てるとともに、損害賠償を求めて東京地裁に提訴したと発表、東芝はWD側が売却について拒否権を持つと主張していることを「虚偽」としたうえで競争を不正にゆがめているとし、総額1200億円の損害賠償請求を起こした旨。また5月中旬に保留していたWD側による四日市工場(三重県四日市市)への情報アクセスの遮断を28日に実施することも発表、WDは売却差し止めを求め米裁判所に訴えており、両社の係争は泥沼化の様相を呈している旨。

◇Toshiba misses self-imposed deadline for chip unit sale, sues Western Digital (6月28日付け Reuters)

◇Toshiba Fires Back at Western Digital, Seeks $1.1B in Damages (6月28日付け EE Times)

◇Toshiba Sues Western Digital for 120 Billion Yen in Damages-Toshiba files $1.1B lawsuit against WD (6月28日付け Bloomberg)

◇Western Digital says Toshiba's actions in chip spat harm customers-WD: Toshiba legal woes hurting company (6月29日付け Reuters)

◇「WDが半導体売却を妨害」東芝が1200億円規模の訴訟提起 (6月29日付け 韓国・中央日報)
→東芝がメモリ半導体事業部売却をめぐり対立している米ウェスタンデジタル(WD)を相手取り1200億円規模の損害賠償請求訴訟を28日に東京地裁に起こした旨。東芝はWDが虚偽事実を流布しており、自社の機密情報を不正に取得していると批判、合わせて東芝はこの日WD社員の自社システムへのアクセスを遮断することにした旨。

これに対して、WDが東芝を非難、応酬合戦の様相を呈している。

◇WDが東芝に反論、アクセス遮断を非難、半導体巡り対立 (6月29日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ事業の売却を巡って対立する協業先の米ウエスタンデジタル(WD)は29日声明を発表、東芝側が情報アクセスの遮断を強行したことを非難した旨。東芝が28日にWDによる「妨害行為」停止を求めて東京地裁に提訴したことについては「訴状が届いておらずコメントできない」としながら、「(既に提起済みの)国際仲裁裁判所と米裁判所での2つの裁判所の審理によって係争解決を進めていく」と主張した旨。

先の展望が開けない中、東芝は四日市工場の増強投資を発表している。

◇東芝、四日市半導体工場に増強投資、新棟に1800億円、WD牽制 (6月29日付け 日経)
→東芝は28日、半導体メモリ事業の四日市工場(三重県四日市市内)の新しい製造棟について具体的な投資計画を決めたと発表、事業子会社の東芝メモリが2017年度中に約1800億円を投じる旨。同事業の売却を巡り、協業する米ウエスタンデジタル(WD)と対立が続くなか、同社への牽制の狙いもありそうな旨。東芝は新製造棟での投資について、「WD子会社のサンディスクと協議中だが、参加しない場合は単独で導入する」と表明。東芝単独での投資も辞さない構えの旨。

韓国では、SK Hynixが浮上する期待のトーンが続いている。

◇SK moves closer to building chip powerhouse-SK eyes No. 2 spot in memory chips (6月28日付け The Korea Herald (Seoul))
→東芝のメモリ半導体部門の買収が達成されれば、SK Hynixはグローバルに第2位のメモリ半導体メーカーとなる旨。東芝は今月、SKを優先入札者としている旨。

「日米韓連合」との最終調整の難航が伝えられている現時点となっている。

◇東芝半導体売却、最終調整で難航 (6月30日付け 日経 電子版)
→東芝の半導体メモリ事業の売却交渉が難航している旨。同社は産業革新機構が率いる「日米韓連合」と最終交渉に入ったが、係争中の米ウエスタンデジタル(WD)への対応を巡る議論も再燃している模様の旨。

【3D NANDの層数】

半導体市場の活況、そして東芝メモリの動きで一層注目の3D NANDフラッシュメモリであるが、高密度化の要となる層数について各社の競い合う取り組みが続いている。トップのサムスン電子は、次の通り該市場を牽引する立場である。

◇韓国・サムスン電子、最先端3次元半導体を過半に (6月26日付け 日経産業)
→韓国・サムスン電子はスマートフォンやサーバの記憶媒体に使うNAND型フラッシュメモリのうち、3次元半導体の最先端品の生産比率を年内に5割以上にする旨。同社は最先端品の生産技術で競合他社を1年以上リードするとされている旨。記憶素子を立体的に積む3次元製品を生産しており、第4世代にあたる最先端品は記憶素子を64層積む。現在の3次元品の生産比率は第3世代の48層を含めて5〜6割とみられる旨。同社はこれを第4世代だけで5割以上にし、近く韓国・平沢工場を新たに稼働させるのを機に増産する旨。

Intelも、ここにきて世界初とする商用64-層を打ち上げている。

◇Intel intros 64-layer, 3D NAND SSD-64-layer 3D NAND SSD announced by Intel (6月28日付け DIGITIMES)
→Intelが、世界初の商用64-層, TLC 3D NAND SSDを投入の旨。

東芝メモリは上記の売却を巡る喧騒の中、株主総会と同日に96層の3D NANDと留飲を下げるかのような内容の打ち上げを行っている。

◇Toshiba takes flash to 96 layers-Toshiba launches 96-layer flash device (6月28日付け New Electronics)
→東芝が、3bit/cell技術による96層BiCS FLASH 3Dメモリのprototypeサンプルを開発、容量256 Gbitで、64層unitsに比べて約40%のcapacity bump/chipが可能、2017年後半リリース、量産は2018年の予定の旨。

◇東芝メモリ、96層3D構造のNAND型フラッシュメモリ、来年量産 (6月29日付け 日刊工業)
→東芝の半導体メモリ子会社、東芝メモリが28日、記憶素子を96層積み重ねた3次元(3D)構造のNAND型フラッシュメモリを開発したと発表、容量は32ギガバイト、単位面積当たりのメモリ容量は64層品に比べて約1.4倍になる旨。2017年後半にもサンプル出荷をはじめ、2018年の量産開始を計画する旨。96層品の量産計画を公表するのは、東芝が初めて。データセンターやパソコン向けのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、スマートフォン向けなどに提案する旨。

【欧州も“Europe First”】

トランプ大統領はじめ保護主義基調の現下の世界政治・経済となっているが、欧州の半導体、microelectronics業界でもその基調の色合いが増していく以下の動きが見られている。フランスとドイツにおける革新強化を目指すLetiとFraunhoferの連携であるが、我が国はどうかと照らしてみるところがある。

◇‘Europe First’ Emerges as Theme of Tech Reboot (6月29日付け EE Times)
→半導体製造再起動など欧州microelectronics業界のモットーが、ますます“Europe First”になっている旨。

◇Leti and Fraunhofer team up to strengthen microelectronics innovation in France and Germany (6月29日付け ELECTROIQ)
→Letiの50周年となるLeti Innovation Daysにて、CEA Techのリサーチ機関、Leti(Grenoble, France)と欧州最大のsmartシステムのR&Dプロバイダー、Fraunhofer Group for Microelectronics(Berlin)が、それぞれの国での革新を焚きつけ、欧州の戦略的および経済的主権を強化するために、革新的な次世代microelectronics技術を開発する新しいコラボを発表の旨。当初はCMOSおよびMore-than-Moore技術に重点化、Internet of Things(IoT), augmented reality(AR), 車載, ヘルスケア, aeronauticsなどの分野応用に向けた次世代コンポーネント、並びにフランスおよびドイツの業界をサポートするシステムを可能にしていく旨。

【CMOSイメージセンサ市場の止まらない最高更新】

ここまで規模が拡大と改めて知るようなCMOSイメージセンサ市場の受け止めがあり、今年で7年連続販売高最高更新のペースに乗っており、モバイル機器に続いて車載はじめ新分野が押し上げるセンサ用途となっている。

◇Nonstop CMOS image sensor sales records seen through 2021 (6月28日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsの2017 O-S-D Report-A Market Analysis and Forecast for Optoelectronics, Sensors/Actuators, and Discretes発。CMOSイメージセンサ販売高が、今年7年連続の最高記録更新の勢いにあり、2021年までのさらなる年間記録更新を止めるものがないと見る旨。2017年に9%増の約$11.5 billionになってから、世界CMOSイメージセンサ販売高は、8.7%のcompound annual growth rate(CAGR)で増え続けて、2021年には$15.9 billionに達すると予測の旨。今までの最高記録は2016年の$10.5 billion。

◇CMOS image sensor sales to reach another record high in 2017, says IC Insights (6月28日付け DIGITIMES)

【裁定・審査関連の動き】

European Union(EU)関連の3件、すなわちインテルとグーグルの独禁法絡みの裁定2件とQualcommが提案しているNXP Semiconductors買収への審査対応、それぞれにもつれ含みの状況がうかがえている。

◇EU court seen ruling on Intel antitrust case next year: judge-EU's General Court expected to decide Intel antitrust appeal next year (6月26日付け Reuters)
→European Union(EU)のGeneral Court(一般裁判所)、vice president、Marc van der Woude氏。European Commission(EC)が対抗措置をとっている公正取引の告発のIntelの控訴について、EUのGeneral Courtが来年裁定する予定の旨。該決定は、EUでビジネスを展開している他のハイテク各社に大きなインパクトを与える可能性の旨。

◇グーグルに制裁金3000億円、欧州委、独禁法違反で最高 (6月27日付け 日経 電子版)
→欧州連合(EU)の欧州委員会は27日、米アルファベット傘下のグーグルがEU競争法(独占禁止法)に違反したとして、24億2000万ユーロ(約3000億円)の制裁金を払うよう命じた旨。欧州委による独禁法違反を巡る単独企業への制裁金では過去最高額。インターネット検索市場での支配的地位を乱用し、買い物検索で自社サービスを優遇するなど公正な競争を阻害したと判定した旨。グーグルに対する制裁金は、2009年に欧州委が米半導体大手のインテルに命じた金額(10億6000万ユーロ)を上回り、過去最高額を更新した旨。グーグルは27日公表した声明で、欧州委の判断は「不服」だとして、EU司法裁判所への上訴を検討する姿勢を示した旨。

◇EU antitrust regulators halt Qualcomm, NXP deal review-EU pauses review of Qualcomm-NXP merger (6月29日付け Reuters)
→European Commission(EC)が、Qualcommが提案しているNXP Semiconductors買収についての綿密な調査を一時中断、両社がantitrust regulatorsが要求している情報提供を行わなかった旨。
もう1つ、半導体実装&テストの大手同士、ともに台湾のASEによるSPIL買収の1件について、中国当局の承認がなかなか下りずに時間が経過している。

◇ASE seeks to extend SPIL bid deadline-ASE could ask for extension if SPIL acquisition is not approved (6月29日付け The Taipei Times (Taiwan))
→Advanced Semiconductor Engineering Inc(ASE)が昨日、中国が年末までに進める許可を認めなければ、ライバル、Siliconware Precision Industries Co Ltd(SPIL)を買収する入札の期限を先延ばししたいとしている旨。NT$128.7 billion($4.24 billion)規模の該取引について、台湾、米国および韓国、並びに欧州など各国のregulatory当局から承認を得ている旨。


≪グローバル雑学王−469≫

特に今年に入ってからの日々世界情勢の激しい変化から、「新潮流」、「激変」とタイトルにある新書を読み進めてきたが、こんどもまた

『世界経済の「大激転」――混迷の時代をどう生き抜くか』
 (浜 矩子 著:PHPビジネス新書 378) …2017年6月1日 第1版第1刷発行

を取り上げて「大激転」と、深刻の度合いが増していくのも現在の流れを映し出す感じ方がある。「大激転」を阻むため、歴史に問い、事象の本質を見極める「知」という武器を授ける1冊として、辛口批評のイメージが強い筆者が訴える独特の表わし方に触れていく。「都民ファースト」と都議会選の演説が聞こえてくるが、筆者の言う妖怪軍団のトップバッター、「アメリカンファースト」を謳う米国・トランプ大統領にまずは注目である。


≪はじめに≫

・「激転」…激しく転換する
 →著者の造語
 →とてつもなく、取り返しのつかない悲惨さを激しく内包する転換
・絶対に起こってはならない逆戻り、それが今、我々を脅かそうとしている
 →1930年代への逆戻り
  …国々の我欲がぶつかり合う、その衝突が炸裂させる火花が、大火と化して、世界を呑み込んでいく
 →残念ながら、我々にそれを懸念させる現状が、今、我々の目の前にある
 ⇒激転阻止。本書の旅は、そのための旅。
・本書の段取りと筋書き
 →第1章:激転に向かって我々を引っ張り込んでいこうとしている妖怪軍団の顔ぶれ
  第2章:国境無きグローバル時代の力学に上手く対処できていない国々の政策
  第3章:政策不全が続く中、激転妖怪的思惑や企みが、どのような形で今日の政策運営の中に忍び込もうとしているか
  第4章:グローバル時代が激転すなわち時代逆行的退行を免れるための道筋を展望
・さしあたりはざっくりとしか針路が描き込まれていない地図を頼りに、またもや旅に

第1章−1 妖怪万華鏡時代 ――「激転」に向かって突き進む魔物軍団

1 今、求められる妖怪プロファイリング

●妖怪退治は大仕事
・著者の著作
 →『国民なき経済成長 脱アホノミクスのすすめ』(2015年4月初版:角川新書)
  …「妖怪アホノミクス退治後」の展望に目を向けよう
 →『アホノミクス完全崩壊に備えよ』(2016年6月初版:角川新書)
・意気込んでいるわりには、なかなか妖怪退治が実現していない
 →妖怪退治はそれなりに大仕事。そう簡単に決着はつかない
 →あらかじめ、その後の展開を考えておくことは重要

●世はさながら妖怪万華鏡
・何とも鼻息の荒い新人妖怪がグローバル経済の舞台上に
 →むろん、ドナルド・トランプ
・欧州に目を転じても、何やら妖怪が群れを成し始めている気配
・ロシアと中国の妖怪模様も見逃せない
・世は、さながら妖怪万華鏡状態
 →彼らを生み出す土壌とは、どのようなものなのか
 →グローバル経済のどのような側面に、妖怪を育む糠床となってしまうものが潜んでいるのか
 →激転回避のために見定めておく必要

2 鬼型妖怪、ドナルド・トランプ登場

●日本昔話の鬼は哀愁漂うが……
・さて、これより妖怪プロファイリングを開始
 →ひとまず目を向ける対象は、やはり、何といってもドナルド・トランプ氏
  →むしろ鬼さんのイメージが強い

●この鬼の目に涙なし
・トラ鬼(トランプ鬼)さんはどうか
 →「再びアメリカを偉大にする」→偉大な人にはゆとりがある
 →「鬼の目にも涙」、トラ鬼さんの目からさえ、もらい泣きの涙が流れる日が来るか
 →就任演説の内容、就任後の動き方、その日が来るとは、どうもとうてい考え難い

●愛国消費と愛国雇用に徹する
・2017年1月20日、トラ鬼さんの就任演説
 →最も耳に残る一文:「保護は、大いなる富と力をもたらす」(Protection will lead to great prosperity and strength)
 →最後に来る宣言…「我々は2つの単純なルールに従う。Buy American そして Hire American」
         →愛国消費と愛国雇用に徹する

●「僕富論」と「君富論」の綱引き
・筆者のかねがねの考え
 …グローバル時代は「僕富論(ぼくふろん)」対「君富論(きみふろん)」の綱引きの時代
  →「自分(僕)さえ良ければ」対「あなた(君)さえ良ければ」
・グローバル時代は、誰もが「君富論」に徹しなければ存続不能
・いま目の前に、全面的な「僕富論」人間が出現
 →本章でプロファイリングを進める妖怪たちは、いずれ劣らず相当に筋金入りの「僕富論」の塊ばかり
・オバマ前大統領の2009年の就任演説
 →「今や、子どもじみた振る舞いと決別する時が来た」
 →「僕富論」は、明らかに子どもの行動原理。「君富論」には、成熟した大人の感性を要する

●オバマ時代8年間分の大統領令発令件数を1年で上回る?
・トラ鬼さんの大統領ライフ、就任最初の1週間を通じて、「大統領令」を連発、14件に
・大統領令…アメリカの大統領が連邦政府や軍に対して発する命令
 →議会の承認や立法措置を経る必要がない
 →議会は大統領令に反対する対抗的な法案を提出することができる
 →だが、大統領令が出てしまえば、さしあたり、行政はその方向で動くことに
・就任第1週のペースで大統領令を打ち出しまくれば
 →オバマ時代の8年間分を最初の1年で飛躍的に上回ることに

●世界を唖然とさせた措置
・何といっても世界中を唖然とさせたのが、人の移動に関するもの
 →新たな入国審査体制を確立するまでの一連の措置
  …シリア難民の受け入れ無期限停止 など

●人権侵害の大統領令
・この措置によって、旅券所持者や永住権保持者まで、アメリカ行きの飛行機への搭乗を拒否されて拘束を受けることに
 →どう考えても、あまりにも露骨な人権侵害
・このようなことがまかり通る世の中に向かって、時代が激転し、退行していくことを許すわけにはいかない
 →我々の妖怪退治は、まさに新たに緒に就いた

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