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熱を帯びてきた2件:10-nm SoC先陣争い、中国関連の摩擦

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ここのところ半導体業界関連で競い合いの熱さを感じてきている2件。まずは、モバイル機器用SoCに向けた10-nm版の先陣争いである。10-nmプロセスを巡ってTSMCとSamsungの競合が続いていたのが、具体的な製品発表の段階に至って現下ではSamsungの10-nmプロセスによるQualcomm半導体、Snapdragon 835の発表に注目している。もう1つ、Donald Trump次期米国大統領の一挙一動に揺れる世界の政治経済情勢となっているが、半導体関連でも摩擦の兆候予備軍、そして具体的な米中間の摩擦の事例が浮上してきている。

≪競合の構図≫

10-nmプロセスによるモバイル機器用SoCについて、以下の通りの競合模様の中、Samsungの10-nmプロセスによるQualcommのSnapdragon 835が発表されている。

◇Samsung Makes 10nm Q'comm SoC-Snapdragon 835 beats Apple, Mediatek (11月17日付け EE Times)
→Qualcommが、同社次世代モバイルSoC、Snapdragon 835をSamsungの10-nmプロセスで生産していると発表の旨。該半導体は、TSMCの10-nmプロセスをiPhone 8で計画している半導体に用いているとしているApple、および最初の10-nm SoCを出す可能性を発表しているMediatekなど、競合に対抗する初の10-nmでのモバイルSoCとなる旨。該ニュースは、high-endスマートフォン市場での激しい利益競争およびその競争が引っ張っている半導体プロセス技術を強調している旨。

注目の最新鋭モバイルプロセッサということで、業界各紙一斉の反応、表わし方となっている。

◇Qualcomm, Samsung collaborate on 10nm process tech for the latest Snapdragon 835 mobile processor (11月17日付け ELECTROIQ)

◇Next year's premium smartphones may get Qualcomm's Snapdragon 835 chip-The next-generation Snapdragon 835 will be faster and smaller than the 820 and 821 chips, which power devices like Samsung's Galaxy S7-Qualcomm uses 10nm tech in Snapdragon 835 (11月17日付け Computerworld/IDG News Service)
→Qualcommが、最新モバイルプロセッサ、Snapdragon 835 system-on-a-chip(SoC)デバイスを披露、Samsung Electronicsが10-nmプロセスで製造の旨。該半導体は、premiumスマートフォンで来年あらわれる見込み、SamsungのGalaxy S8モデルが可能性の旨。

◇Qualcomm partners with Samsung to launch latest Snapdragon 835 processor-The next-generation processor has slimmed down to 10 nanometers, barely the width of a hair. (11月17日付け ZDNet)

◇Qualcomm's Snapdragon 835 is its first 10-nanometer chip-The company says it conforms to Google's Nougat specs for USB Type-C. (11月17日付け Engadget)

◇Qualcomm, Samsung collaborate on 10nm for Snapdragon 835 mobile chips (11月18日付け DIGITIMES)

◇Snapdragon 835 SoC: Mobile processor to power post-mobile platforms-Qualcomm's Snapdragon 835 will enable high-performance virtual and augmented reality and artificial intelligence-Qualcomm chip looks to the post-mobile era (11月18日付け Network World)
→Qualcommの新しいSnapdragon 835モバイルプロセッサは、より高速、エネルギー効率の高いsystem-on-a-chip(SoC)デバイスであり、artificial intelligence(AI)およびaugmented reality/virtual reality(AR/VR)応用を扱える旨。10-nmプロセスで製造される該半導体は、性能が27%増、電力消費が40%削減される旨。

10-nmモバイル半導体の先を争う活況の様相が、次の通りまとめて表わされている。

◇Market for 10nm mobile chips to heat up in 2017-Battle in 10nm mobile chips seen for 2017 (11月22日付け DIGITIMES)
→10-nmモバイルプロセッサにおける競い合いが、2017年のうちにApple, MediaTek, Qualcomm, Samsung ElectronicsおよびSpreadtrum Communicationsの間で熱気を帯びてくる見込みの旨。TSMCがApple, MediaTekおよびHiSilicon Technologiesに向けても10-nm半導体を作っている一方、SamsungはQualcommおよび自社のhandsetライン向けに先端スマートフォン用ICsを生産していく旨。

次に、中国関連の敏感な摩擦&緊張の事態、事例であるが、まずは、ドイツの半導体製造装置メーカーの中国のファンドによる買収に対して、必要となる米国政府の承認に待ったがかけられている。

◇Showdown Looms as U.S. Questions Chinese Deal for German Chip Designer-Aixtron purchase falls short on US approval (11月19日付け The New York Times)
→Committee on Foreign Investment in the United States(CFIUS)が、国家セキュリティの懸念から中国・Fujian Grand Chip Investment Fund(FGC:福建芯片投資基金)の半導体製造装置メーカー、Aixtron(ドイツ)買収認可に反対を推奨の旨。Aixtronは$710 millionでの買収に同意しているが、法制的に打ち消される一方、Barack Obama大統領がCFIUSの推奨に従うかどうか決定する旨。

◇Aixtron Rebuff Lengthens U.S. Competition Shadow (11月21日付け Bloomberg)

中国のメーカーによる台湾での人材スカウトが表わされている。

◇China firms headhunting talent from Taiwan fabless and DRAM companies (11月22日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国の新興メモリメーカーが、台湾のファブレスおよびDRAMメーカーからの人材スカウトを積極的に行っている旨。Yangtze River Storage Technology(YRST)など新興途上の中国のメモリファブレスおよびファウンドリーが、魅力的な給与条件で台湾のIC設計およびDRAM業界分野からの人材を引きつける意向の旨。

ここまでかと驚かされるが、中国の特許出願での独走ぶりである。

◇中国、特許出願数で独走、米日韓3カ国分並み (11月24日付け 日経 電子版)
→世界知的所有権機関(WIPO)が発表した統計。2015年の中国での特許出願数は約110万件と初めて100万件の大台に乗せた旨。2位以下の米国、日本、韓国の3カ国の合算分並みの出願規模となる旨。中国は2011年に世界トップの出願数を誇るようになり、年々、2位以下との差を広げている旨。
世界全体の特許出願件数は前年比7.8%増の約288万件。認められた特許数は約120万件で5.2%増、分野別にはコンピュータテクノロジーや電機関連の出願が多い旨。
 受け付け国・地域当局別: 中国 約110万件
             米国  約58万件
             日本  約31万件
             韓国  約21万件

半導体もかつて日米貿易摩擦を経てきているが、世界貿易機関(WTO)を舞台に米中間の摩擦が激化の兆しを以下の現下の経緯の通り見せてきている。

◇中国、トランプ氏に警告、高関税ならWTO提訴も (11月24日付け 日経 電子版)
→訪米中の中国商務省の張向晨・国際貿易交渉副代表は23日、トランプ次期米大統領が中国製品に高関税を課すと言及してきたことについて「中国には世界貿易機関(WTO)加盟国としての権利がある」と述べ、措置次第ではWTOへの提訴も辞さない構えをみせた旨。張氏は中国を為替操作国に指定するとのトランプ氏の主張にも強く反論した旨。

◇米、中国の「市場経済国」認定見送り、鉄鋼問題などで (11月24日付け 日経 電子版)
→米政府は23日、中国を世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」と認定しない方針を明らかにした旨。同協定では中国を「非市場経済国」と位置づけ、反ダンピング(不当廉売)などで厳しい条件を課している旨。条件は加盟15年の12月に見直すことになっているが、米国は中国の鉄鋼などのダンピングを厳しく批判しており、要件緩和を見送ることにした旨。

◇対中貿易摩擦、激化の兆し、過剰な鉄鋼が焦点 (11月25日付け 日経 電子版)
→中国と欧米などの経済摩擦が激化する兆しが出てきた旨。米政府は23日、中国を世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」に認定しない方針を表明。欧州連合(EU)も同様で、日本も追随する公算が大。鉄鋼製品など中国の安値輸出に歯止めをかける狙いだが、米国は中国企業による自国企業買収にも警戒感を強める旨。反発する中国は対抗措置を視野に入れる旨。

熱を帯びてきたこれら重要懸案に引き続き注目していくことになる。


≪市場実態PickUp≫

【現下のモバイル機器市場関連】

モバイル機器市場の直近データ、まずは、この7-9月四半期のグローバルスマートフォンの利益シェアである。Samsungの発火事故が影響して、Appleが新記録の91%に達する一方、Samsungはその他(Others)に置かれる落ち込みとなっている。中国の3社、Huawei、VivoそしてOPPOは、"三銃士"という表現もみられるが、主要ベンダーの一角を着実に占めてきている。

◇Strategy Analytics: Apple Captures Record 91 Percent Share of Global Smartphone Profits in Q3 2016 (11月22日付け Strategy Analytics)
→Strategy Analytics発。2016年第三四半期の間のグローバルスマートフォンの利益総額が$9 billionに達し、Appleが全体の91%を席巻、新記録のシェアとなっている旨。
Operating Profitのベンダー比率:
 Apple $8.5 billion  91.0%
 Huawei $0.2 billion  2.4%
 Vivo  $0.2 billion  2.2%
 OPPO $0.2 billion  2.2%
 Others $0.2 billion  2.2%

中国におけるモバイル機器用applicationプロセッサの出荷について、現下の10-12月四半期の伸びが前四半期比11.6%増と大きく見込まれている。

◇Digitimes Research: China mobile AP shipments to rise 11.6% in 4Q16 (11月23日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Research発。中国におけるスマートフォンおよびタブレット用モバイルapplicationプロセッサの出荷が、2016年第四四半期に前四半期比11.6%増の見込みの旨。Qualcommの該四半期出荷が前四半期比19%増と大きく伸びる見込み、中国のモバイルoperatorsが必要としているLTE Cat. 7仕様をサポート可としてすでに検証されている製品の出荷により高められる旨。Qualcommはまた、Oppo, VivoおよびXiaomiからmid-rangeおよびhigh-end機器用受注を得ている旨。

Appleの来年に向けたiPadの大型画面モデルの展開が、次の通り進められている。

◇Apple to add 10.5-inch models to iPad series in 2017, say Taiwan makers (11月24日付け DIGITIMES)
→台湾のsupply chainメーカー発。Appleが、現状の7.9-インチiPad mini,9.7-インチiPadおよび12.9-インチiPad Proに加えて、2017年に10.5-インチiPadを打ち上げ、生産が12月に始まる旨。主に米国で10-インチ以上のタブレットが法人および教育分野で人気があるための打ち上げの旨。現状の9.7-インチiPadでは小さく、12.9-インチiPad Proでは高価なところがある旨。

【中国・華為技術(Huawei)の動き】

上に述べた中国のモバイル機器"三銃士"の一角、華為技術(Huawei)について、来年のシェアアップ計画に向けた方策が表わされている。

◇Huawei to ramp up its share in global smartphone, notebook and tablet markets in 2017 (11月21日付け DIGITIMES)
→台湾のIT製品supply chain筋発。中国のHuawei Technologiesが、グローバルなスマートフォン、notebookおよびタブレット市場でのシェア上昇に向けて台湾のODMsとの協力を踏み上げる見込みの旨。Huaweiは、すべての分野で現地のライバルとの競合に向けてスマートフォンportfoliosを引き続き拡大する予定、若年層に支持を訴える一方、OppoおよびVivoなどライバルに直接対抗するために、新たに開発されたNova-シリーズ製品のリリースを続けていく、と特に言及している旨。

さらに、我が国でのプレゼンスを高めようと、幕張メッセでの展示会が開催されている。

◇華為、日本で存在感じわり、初の展示会開催、企業は連携に慎重、サイバー攻撃巡り警戒 (11月25日付け 日経産業)
→中国・華為技術(ファーウェイ)が日本市場での存在感を徐々に高めようとしている旨。24日には日本で初めてとなる通信技術の展示会を幕張メッセで開催、次世代無線規格「5G」や、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」などの分野で、日本企業との関係を強化する狙いの旨。ただ、華為が米国市場から実質的に締め出されていることから日本企業は慎重姿勢を保っている旨。

【引き続くM&A】

半導体業界のM&A(企業の買収・合併)が続いており、アナログ高周波、マイクロ波など半導体大手、MACOM Technology Solutions Holdings社が、ConnectivityおよびComputingのApplied Micro Circuits Corporation(AMCC)の買収を発表、以下業界各紙の表わし方となっている。

◇Macom Buys Applied for Comms-X-Gene SoC for sale in $770M deal (11月21日付け EE Times)

◇MACOM Announces Definitive Agreement to Acquire AppliedMicro (11月21日付け ELECTROIQ)
→高性能アナログRF、マイクロ波、ミリ波およびphotonic半導体製品の大手サプライヤ、MACOM Technology Solutions Holdings社(Lowell, MA)が、次世代cloudインフラおよびデータセンターに向けたConnectivityおよびComputingソリューションのグローバルleader、Applied Micro Circuits Corporation(Santa Clara, CA)を買収する最終合意に入った旨。

◇Macom Buys Applied Micro for $770M-Macom to pay $770M for Applied Micro (11月21日付け Light Reading)
→Macom Technology Solutionsが、Applied Micro Circuitsを約$770 millionのcashおよび株式で買収することに合意、cloud computingおよびデータセンター向け通信用半導体を加えていく旨。Macomは、該取引完了100日以内にサーバ用ARM-ベースX-Gene system-on-a-chip(SoC)デバイスを供給するApplied MicroのCompute事業を売却する意向の旨。

◇Macom Buys Applied Micro to Expand Into the Cloud-Cash and stock deal valued at $688 million (11月21日付け The Wall Street Journal)

◇Analog chipmaker Macom to buy Applied Micro for $770 million (11月21日付け Reuters)

◇ARM's Race: Who Will Buy Applied Micro's Compute Unit?-Applied Micro's Compute unit to attract buyers (11月23日付け Light Reading)
→Macomが、Applied Micro Circuits買収を発表してからほとんど息つかずに、売却する意向のApplied MicroのCompute事業について可能性のある買い手リストをすでに作成している旨。

この買収取引完了後にAMCCのCompute事業を売却するとしているが、半導体業界のM&Aが新たな段階に入って取引の質も変わってきていると、以下の見方が表わされている。

◇M&A Takes New Twists (11月25日付け EE Times/Blog)
→半導体のmergers and acquisitions(M&A)の熱狂が、競合の少ない方向と論じ得る大胆な新しい段階に入っている旨。ここ2年でのM&Aの規模は歴史的な記録を遥かに上回っているが、今や該取引の質も変わってきている旨。例えば、MacomのApplied Microへの入札そしてBroadcomのBrocadeへのそれは、private equity取引のようなもので、買い手が会社の分割を狙い、儲かるところを取って残りを売却しようとしている旨。

【Embedded Technology 2016 conference】

Embedded Technology 2016 conference(11月16-18日:パシフィコ横浜)より、IoTセキュリティはじめここでも新たな取り組みのオンパレード、以下の通りである。

◇15 IoT Devices Running on 7 Apps?-NXP exec talks IoT and smart home security (11月17日付け EE Times/Blog)
→Embedded Technology 2016 conference(横浜)にて、NXP SemiconductorsのIoTセキュリティ、lead product manager、Denis Noel氏。
home automationにはあまりに多くのスマートフォン応用が関わり、internet of things(IoT)機器がhackingの影響を受けやすい旨。「2年前、IoT機器を開発している人々はセキュリティのことは考えなかった」と同氏。

◇10 Cool Discoveries at Japan Embedded (11月18日付け EE Times)
→Embedded Technology 2016 conference(11月16-18日:パシフィコ横浜)より以下の注目内容:
 ARmKeypad技術…ウェアラブルグラスを用いて、作業者の腕を仮想キーボード化し、非接触での操作を実現
 Think Silicon(Patras, Greece)のGPU、Nema
 早稲田大とSTMicroelectronicsの連携によるhumanoidサキソフォン演奏
 Lapis Semiconductorのトラックなど移動中の積荷の状況のリアルタイム監視システム
 富士通の“F-Cue” CPUボード…deep learning歩行者検出
 Zigpos(Dresden)のenergy efficient real-time location system、“eeRTLS”…GPSなしのpositioningエンジン
 NextDrive社(台湾)の“世界最小IoT gatewayデバイス”、NextDrive Cube
 台湾のPCメーカー、AcerのAcer BYOC(Bring Your Own Cloud)
 Ghosta(台湾)のsmartヘルメット
 Japan Embedded Systems Technology Association(JASA)の漫画キャラクタ

【半導体製造装置業界】

半導体製造装置業界の月次データ、BBレシオが、10月は日米で対照的な内容となっている。日本業界が1.07と今後に期待がもてる方向であるのに対し、北米業界では0.91と割り込みを見せている。アップダウンは付き物ではあるが、今後の変化、新しい流れに注目である。

◇日本製半導体製造装置、BBレシオ10月1.07、中国スマホに需要 (11月21日付け 日経産業)
→日本半導体製造装置協会(SEAJ)が発表した10月の日本製半導体製造装置のBBレシオ(3カ月移動平均の受注額を同・販売額で割った値:速報値)が1.07、2カ月ぶりに1を上回った旨。中国製のスマートフォンの高機能化などで半導体需要は堅調、回路の微細化や3次元化など新技術の量産応用も目白押しで、装置への需要は高水準の旨。受注額は前月比7.3%増の1393億円、販売額は同1.5%減の1305億円。

◇Japan chip gear orders rise 7% in October, says SEAJ (11月22日付け DIGITIMES)
→Semiconductor Equipment Association of Japan(SEAJ)発。日本の半導体装置メーカーの2016年10月受注がJPY139.3 billion(US$1.3 billion)、前月比7.3%増、前年同月比68.1%増。2016年10月のbook-to-bill(BB)比が1.07、9月の0.98から上昇。

◇North American Semiconductor Equipment Industry Posts October 2016 Book-to-Bill Ratio of 0.91 (11月22日付け SEMI)
→SEMIが本日発行、September Equipment Market Data Subscription(EMDS) Book-to-Bill Report発。北米半導体装置メーカーの2016年10月世界受注が$1.49 billion(3ヶ月平均ベース)、book-to-bill(BB)比が0.91。ここ6ヶ月の推移:

Billings
Bookings
Book-to-Bill
(3ヶ月平均)
(3ヶ月平均)
May 2016
$1,601.5
$1,750.5
1.09
June 2016
$1,715.2
$1,714.3
1.00
July 2016
$1,707.9
$1,795.4
1.05
August 2016
$1,709.0
$1,753.4
1.03
September 2016 (final)
$1,493.3
$1,567.2
1.05
October 2016 (prelim)
$1,627.5
$1,487.2
0.91

[Source: SEMI (www.semi.org), November 2016]

◇US fab tool book-to-bill ratio slips below parity (11月23日付け DIGITIMES)


≪グローバル雑学王−438≫

学校では東パキスタンと習ったが、その後の翻弄され続ける歴史があって、1971年に独立したバングラデシュ。洪水、貧困が思い浮かぶこの国に単身飛び込んで、子どもたちに向けて青空教室から始まって教育施設を十数年で具体化した恐るべき行動力の方の奮闘を、

『なぜ世界の隅々で日本人がこんなに感謝されているのか』
 (布施 克彦/大賀 敏子 著:PHP新書 1055) …2016年7月29日 第一版第一刷

より見ていく。ベンガル語をマスターして、現地の人々との軋轢にもめげず、溶け込んでいくプロセスが表されている。普通には選ばないコース選択であるが、学生時代に乗り越えた地獄、そして思い立ったら是が非でも実行に移す性分がそうさせている、という理解である。


第8章 バングラデシュで貧困と闘う

◆「黄金のベンガル」から「貧困のベンガル」へ
・バングラデシュの国土は日本の38%、一方、人口は日本より30%以上も多い
 →雨季には、毎年国土の3分の1が水に浸かる
・都市国家などの小国を除けば、バングラデシュは世界で最も人口密度の高い国
 →人々の工夫によって、農作物栽培条件に適した土地となり、これまであまたの恵みを生み出してきた…「黄金のベンガル」という言葉
 →大量の水と上手に共生する知恵を得ることで、東ベンガルを生活基盤の確立できる土地へ
・非情な歴史が東ベンガルを翻弄し続けた
 →国家全体に貧困が広がり、かつての「黄金のベンガル」は、「貧困のベンガル」へ

◆貧困のベンガルの子どもたちに光を
・バングラデシュに単身飛び込んで、貧困層の子どもたちの将来に、光を与えようと取り組んでいる、渡辺大樹さんという人
 →まずは、基礎教育を施すための青空教室をスタート
 →社会性を身につけてもらうための施設、シェルターホームを開設
  …2016年3月現在、45名の子どもたちが生活
 →社会に出る前の最終準備をするための教育施設「エクマットラ・アカデミー」を、2016年からスタート
・渡辺さんは、大学を卒業後、裸一貫で見知らぬ外国の地にひとりでやってきた
 →十数年のうちに、上記の仕事を具現化
  →恐るべき行動力

◆高校時代に乗り越えた地獄
・渡辺さんは、1980年生まれ
 →高校の野球部で練習時、異常なほどの体力の衰えを感じた
 →一向に改善しない体力、あるとき医者の診断を受けて、胃に大きな穴、体内の血液が生存必要量の半分しかなかった
・治療を終え、本来の体力を取り戻した渡辺さんは、大学では一転ヨット部に
 →クラブの中心として活躍
 →平日、居酒屋でアルバイト
  →従業員たちのやる気を鼓舞させる熱い雰囲気
   …毎日の朝礼で、従業員全員に夢や抱負を語らせる場
・平日や冬は朝から晩まで居酒屋で働き、週末や夏休みは全てヨットの合宿
 →渡辺さんの大学での生活

◆プーケットの出会いからバングラデシュへ
・アルバイトで金を貯めて参加した、プーケットでの国際ヨットレース大会
 →豪華な二階建てバスでの移動中のこと
 →赤信号の交差点で、バスが一時停止、そこはリゾート地、プーケットにも残る、巨大な貧民街の一角
 →男の子が貧民街の入り口に立って、バスを見上げている
 →「豪華な二階建てバスの二階から見下ろしている自分と、貧民街の入り口で羨ましそうにこちらを見上げている男の子」
 →「わかりやすい上下の構図が、巨大な衝撃となって自分を突き抜けていった」と語る渡辺さん
・プーケットから帰国した渡辺さんは、バングラデシュへ行くことを決断
 →小学校六年生の社会科教科書に、「洪水、サイクロン、自然災害に立ち向かうアジア最貧国、バングラデシュ」というくだり
 →プーケットの貧民街で出会った男の子の目が、突如浮上させた思い
 →バングラデシュに行き、貧しい人たちの役に立つ。それが自分のこれからやるべき仕事。
 →渡辺さんは、思い込んだら即実行せねば気の済まない性分
・もとより渡辺さんは、万人の考えるコース選択をするような人間と、周囲から見られていなかったよう

◆エクマットラを立ち上げる
・2002年12月、渡辺さんはひとり、バングラデシュの首都、ダッカに飛んだ
 →同国の最高学府、ダッカ大学を訪れ、飛び入りで入学の許可を得た
  …現代語研究所のベンガル語学科
・情熱的な学生たちと議論を重ね、意気投合した仲間たちと、翌2003年、エクマットラという組織を立ち上げ
 →「エクマットラ(EKMATTRA)」…ベンガル語で、一本の線を意味
 →近年の経済成長で恩恵を受ける層とそうでない貧困層、社会を分断するこれら2つの層を近づけ、皆が共有できる一本の線を目指す
・まずは、ダッカ市内で始めた青空教室に通う、子どもたちを集めること
 →対象は、売春を生業とする女性や路上生活者の子どもたち
・人々の拒否反応は半端ではない、それでも渡辺さんは、めげずに毎日通った
 →自信と信頼を持ったはずの、自分の力量を試す正念場、蛮勇をふるうしかない
・驚き呆れられた日を境に、人々の態度が柔らかくなり、渡辺さんの話を聞いてくれるように
 →ようやく青空教室に生徒が集まり始めた
・座学以外の多彩な授業を取り入れたメニュー
 →子どもたちの態度が一変、青空教室に積極的に通う生徒の数が増えていった
・今では、歌、劇、踊り、絵といった情操教育に識字教育を組み合わせた独自のカリキュラムが確立
 →ダッカ市内数ヶ所の青空教室には、100人近くの子どもたちが通っている
 →大学時代、熱い雰囲気の居酒屋でのアルバイト経験が、青空教室運営の円滑化に役立った
 →他者のテンションを上げる方法を身につけていた
・その後始めた共同生活の場、シェルターホームでも、親たちから子どもたちを送り込むことへの承諾を得る必要
 →渡辺さんには、どんな激しい拒否反応や脅しにも怯まない度量ができていた
 →日参して示す日本人の誠意と、その日本人が操る流暢なベンガル語が、人々の心を動かす切り札に

◆事業資金は自ら稼ぐ
・エクマットラの理念の実現に当たっては、事業資金をできるかぎり自ら稼ぎ出すことを基本方針に
 →主な収益事業は、映像制作や、バングラデシュ進出を目論む企業、特に日本企業への、通訳、翻訳などのアシスト業務
・特筆すべきは、ダッカに流れてくる子どもたちの状況を描いた映画『アリ地獄のような街』の制作
 →2009年に完成、バングラデシュで約80ヶ所、日本では約100ヶ所で上映
・事業収益が運営資金の強化に結びつき、エクマットラの目指す富の再分配構想が、徐々にではあるが、動き出している
・社会に出る前の最終準備をするための教育施設、エクマットラ・アカデミーが、2016年7月にスタート
 →200名の青少年の学びの場
 →その一方、ダッカのストリート・チルドレンの数は30〜40万人
 →渡辺さんの展開する事業はまだ緒に就いたばかり

◆天職と思い込むこと
・渡辺さんは、決して無名の人ではない
 →2010年には、人間力大賞グランプリ内閣総理大臣奨励賞などを受賞
・渡辺さんはこれまで、高校時代は野球、大学ではヨット、そして今は、バングラデシュでの社会貢献活動に熱中
 →どれもが、自分の選択した最適の道。特に今の仕事を、天職と信じている
・今自分の立っている舞台に誇りを持ち、その舞台でいかに輝けるかのみを考えて全力を尽くす
 →その結果、その道が自分にとって最適のものという自信
 →仕事であれば天職になる、という渡辺さんの考え方

◆日本人への高い評価に対する危機感
・渡辺さんは、2012年に日本人の女性と結婚
 →バングラデシュに戻った渡辺さんを待っていたのが、バングラデシュ人たちが準備した盛大な結婚式
 →それも最初はダッカで、さらにはマイメンシンという地方都市と二度の祝宴
・彼の業績が日本人の評価につながっていることは間違いない。だが渡辺さんは、そんな日本人の評判に対して危機感
 →もとよりバングラデシュは大変な親日の国
 →日本の先人たちに感謝する一方、今の日本人たちは、その財産を食いつぶしていないだろうかと、渡辺さんは危惧
 →日本人同士のコミュニケーションはうまくできても、相手が外国人となった瞬間、力を1割も出せない人がとても多い
・渡辺さんは、日夜奮闘
 →バングラデシュ人の心に植え付けられた親日感情を空洞化させることなく、新たな価値を付加して膨らませていくことは確か

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