セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

絶え間ない熾烈な性能競争、スパコン「TOP500」現状模様

年に2回発表されているスーパーコンピュータ性能ランキング「TOP500」が、「第47回ISC(International Supercomputing Conference)2016」(6月19日から:Frankfurt)にて恒例の通り表わされている。半導体の微細化と一脈通じるところも覚えて、絶え間のない熾烈な性能競争とその向上ぶりに注目させられている。今回は「TOP500」リストでシステムの数および性能の両方で初めて中国が米国を上回ったとのこと。やはり半導体とは大きく異なる最前線の凌ぎあいの様相、局面を改めて受け止めるところである。

≪飛躍的な更新≫

スパコン「TOP500」について目にして何年になるかとも思うが、手元の10数年前、数年前のデータをめくってみて次の通りである。

〓〓〓〓〓〓〓
◎2003年

◇世界のスパコン性能上位500、「地球シミュレーター」(NEC)がトップ、36兆回/秒の計算速度 (6月25日付け 電波)
→米テネシー大、独マンハイム大の研究者が毎年2回発表

◎2012年

【スパコン性能No.1】

スーパーコンは1位でなければ、2位ではダメ、と話題の決め文句になったのもだいぶ時間が経った感じがするが、我が国「京」の世界一もIBM機に交替するタイミングを次の通り迎えている。そのIBM機の名前が「セコイア」、読み方を日本語にかえてたまたまなんとなく抜きつ抜かれつ、世知辛さを感じるところもあるが、この鬩ぎ合いこそエレクトロニクス業界のエネルギー、パワーの源泉であり、止まることがあってはならない。

◇IBM re-takes lead in Top 500 computers (6月18日付け EE Times)

→世界トップ500スーパーコン・リスト最新版にて、IBMが、150万個以上のカスタムPowerコアを収めた16.32 petaflopsシステム、Sequoiaで、首位を取り戻した旨。該システムは、他の3つのトップ10入りシステムと同じIBM BlueGene/Qアーキテクチャーに基づく旨。

◇スパコン京、2位に転落、米IBM「セコイア」が最速に 6月18日付け 日経 電子版)
→理化学研究所と富士通が共同開発中のスーパーコン「京」が、18日に欧米の大学などが発表したスパコンの性能ランキングで世界最速の座から陥落、2位になった旨。1位は米IBMの「セコイア(Sequoia)」、次の計算速度の比較の旨。
 セコイア →1京6324兆回/秒
 京    →1京 510兆回/秒
〓〓〓〓〓〓〓

それぞれにあれからもう何年と、改めて時間の経過を感じているが、今回の発表はどうであったか。トップ10が以下の通り表わされており、上記の2003年、2012年の内容といろいろ比較してまずは飛躍的な性能数値の向上である。

◇2016年6月の「TOP500」-中国の新型スパコンが93PFlops超を達成し首位を獲得 (6月20日付け マイナビニュース)
→スーパーコンピューティングに関する国際会議「第47回ISC(International Supercomputing Conference)2016」(6月19日から:Frankfurt)にて20日(独時間)、スーパーコンピュータの処理能力ランキング「TOP500」の2016年6月版が発表され、中国National Research Center of Parallel Computer Engineering & Technology(NRCPC)が開発、National Supercomputing Center(Wuxi)に設置された新型スパコン「Sunway TaihuLight」がLINPACKのベンチマークで93.014PFlops/sを達成、1位を獲得した旨。トップ10:

1中国「Sunway TaihuLight(神威太湖之光)」
93.014PFlops
2中国「Tianhe-2(Milky Way-2/天河2号)」
33.862PFlops
3米国「Titan」
17.590PFlops
4米国「Sequoia」
17.173PFlops
5日本「京」
10.510PFlops
6米国「Mira」
8.586PFlops
7米国「Trinity」
8.100PFlops
8スイス「Trinity」
6.271PFlops
9ドイツ「Hazel-Hen」
5.640PFlops
10サウジアラビア「Shaheen II」
5.537PFlops

「TOP500」での中国と米国、そして今回第1位となった中国のシステムの概要が表わされている。

◇China Tops U.S. in Supercomputers-Top ranked system uses China custom CPU-Competition inside and outside China-Inside the Sunway's custom processors-Under the hood of the Sunway system-Intel, Cray, HP hang on to leads in ranking (6月20日付け EE Times)
→初めて自国で設計、製造されたプロセッサ搭載の中国の新しいスーパーコンピュータが、世界ではるかに最も強力なシステムにランクづけされた旨。このニュースは、最新Top500リストでシステムの数および性能の両方で初めて中国が米国を上回ったとして出ている旨。中国江蘇省無錫市(Wuxi)のNational Supercomputing Centerに置かれたSunway TaihuLight(神威太湖之光)が、Linpack benchmarkで93 petaflops/secondそして理論的ピーク性能125.4 Pflop/sを記録、Shanghai High Performance IC Design Centerが設計したSunway SW26010プロセッサ40,960個を用いている旨。中国のTianhe-2(Milky Way-2/天河2号)がすでにここ3年世界最速スーパーコンピュータのタイトルを保持したが、Intelプロセッサと中国で設計されたinterconnect半導体を用いて作られた旨。

第1位の中国のシステムは中国製プロセッサ搭載である点が、特に取り上げられている。

◇World's Fastest Supercomputer Now Has Chinese Chip Technology-China has world's fastest supercomputer, made with its own chips (6月20日付け Bloomberg)
→「これは中国のプロセッサ搭載システム」と、University of Tennessee教授、Jack Dongarra氏。

◇China Makes New Supercomputing Gains-For first time, China places more machines than the U.S. on Top500 list (6月20日付け The Wall Street Journal)

「TOP500」ともう1つ、消費電力当たりの性能で表わす「Green500」が、今回同時に発表されており、これでは我が国が第1位、第2位を以下の通り占めている。改めての注目である。

◇スーパーコンピュータ「Shoubu(菖蒲)」がスパコンの省エネランキングGreen500で3期連続の世界第1位を獲得-「Satsuki(皐月)」も2位を獲得 理研設置のスパコンが1,2位を占める- (6月20日付け 理化学研究所)
→理化学研究所(理研)情報基盤センターが、株式会社ExaScaler、株式会社PEZY Computingと共同で設置した液浸冷却スーパーコンピュータ「Shoubu(菖蒲)」が、2016年6月20日に発表された最新のスーパーコンピュータランキングの消費電力性能部門「Green500」において、世界第1位を獲得の旨。菖蒲のGreen500における第1位獲得は三期連続で三回目、また、LINPACK性能で1ペタフロップスを超える大規模システムがGreen500で第1位を獲得したのは、これが初めての旨。

高性能化に向けた半導体の世界の開発も絶え間ないものがあり、プロセッサ開発の現下の関連する内容に注目して以下の通りである。

◇Behold: The World's First 1,000 Processor Chip-Researchers develop energy-efficient chip with 1,000 processors (6月18日付け Motherboard)
→University of California at Davisが2016 Symposium on VLSI Technology and Circuits(6月13-17日:Hilton Hawaiian Village, Honolulu, HI)にて、世界初の"KiloCore"半導体構築をプレゼン、1,000個の独立programmableプロセッサを特徴とする該高エネルギー効率の半導体は、1.78 trillion instructions per secondが可能、621 million個のトランジスタが入っている旨。Department of Defense(DoD)が一部出資の該KiloCore半導体は、現状の32-nm半導体製造技術を用いてIBMが作っている旨。

◇Researchers Claim First 1,000-core Processor (6月22日付け EE Times)
→該KiloCore半導体は、IBMが同社32-nm PD(partially depleted)-SOI CMOS技術を用いて作っている旨。

◇Intel Xeon Phi Solos-May beat GPUs at deep learning (6月20日付け EE Times)
→Intelが、"Knights Landing"の開発コード名で知られる最大72コアの次世代「Xeon Phi」を発表の旨。


≪市場実態PickUp≫

【業界の変容】

新技術、新市場の次の段階を模索して変化が進んでいるエレクトロニクス、そして半導体業界であるが、対応する動き2件。まずは、長年の創業者経営に代わるMarvell Technology(米国)でのトップ人事である。

◇Marvell Technology Names New CEO-Maxim Integrated veteran succeeds husband-and-wife team that led chip maker for two decades-Marvell taps Maxim executive as its new CEO (6月20日付け The Wall Street Journal)
→Maxim Integrated Productsのbusiness units, 販売&マーケティング、executive vice president、Matthew Murphy氏が、Marvell Technology Groupのpresident and CEOに7月11日付けで指名され、Marvellのboardにも加わる旨。「我々の狙いは、半導体業界で進んでいる変容を理解するCEOを同定、確保することであった。」とステートメントでMarvellのChairman、Richard Hill氏。

かつてのエレショーの方がピンとくる小生世代ではあるが、「CEATEC」での変化に沿った異業種の出展である。

◇家電見本市、シーテック、異業種も参戦、三菱UFJなど (6月20日付け 日経 電子版)
→10月に開催する国内最大の家電見本市「CEATEC」に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFJ)やセコムなど多くの異業種が初出展、トヨタ自動車も2年ぶりに参加する旨。家電や電子部品の新製品を発表してきたこれまでの展示を改め、日本の電機の技術を金融や自動車など別分野と融合させる次世代のサービスを世界に発信する旨。

【中国・西安での停電の影響】

古くは中国古代の諸王朝の都となった長安で馴染みが深まるが、中国・陝西省の省都、西安市での停電が、半導体生産に影響を与えている。3D NANDフラッシュメモリの拠点をもつSamsung Electronicsでは、以下の通り表わされている。

◇UPDATE 1-Samsung Elec says minimal impact from China plant power disruption-Samsung's Xian memory fab has a power outage; firm sees little disruption (6月19日付け Reuters)
→Samsung Electronics Co Ltd発。3D NANDメモリ半導体を作る中国・西安(Xian)工場での生産が6月18日の停電で中断、市場への影響は最小限であり、数日内にfull-scale稼働再開予定の旨。この中断で影響を受けたウェーハは10,000枚以下の旨。

◇Samsung fab outage raises flash supply concerns (6月21日付け DIGITIMES)
→フラッシュ生産が乱れたSamsungの中国・西安(Xian) fabでの最近の停電が、2016年後半の需要に供給が追いつかない懸念を生じている旨。

もう1つ、台湾のPowertech Technologyについて次の通りである。

◇PTI says minimal impact from power outage at Xian plant (6月21日付け DIGITIMES)
→実装&テストのPowertech Technology(PTI)の台湾証券取引所filing発。中国・西安(Xian)の同社工場での電源の乱れは、operationsへの実質的なインパクトはない旨。6月18日の早い時間での停電で生産が乱されたが、すでに正常稼働に戻っている旨。PTIのXian工場は、米国・Micron Technologyとの合弁であり、2016年3月以降稼働している旨。

【2015年の車載用半導体市場】

IHS Technologyより2015年の車載用半導体市場のデータが表わされている。
0.2%と僅かながらもプラスの金額の伸びである一方、M&Aの結果からNXP SemiconductorsがFreescale Semiconductorを買収してランキングのトップへの飛躍を示している。

◇Consolidation Shuffles Automotive IC Vendor Rankings (6月22日付け EE Times)
→IHS Technology社(Englewood, Colo.)発。2015年の車載用半導体市場が、通貨変動およびM&A猛威の渦中、鈍化して0.2%増の$29 billion、ベンダーランキングを入れ替えている旨。Freescale Semiconductor社を$11.8 billionで買収したNXP Semiconductors NVがランキングNo.1に躍り出て、124%増、約$4.2 billionの売上げ、該市場の14.4%を占めている旨。

◇Automotive semiconductor market grows slightly in 2015 while ranks shift (6月22日付け ELECTROIQ)
→IHS Technology社(Englewood, Colo.)発。2015年車載用半導体サプライヤ・トップ10、下記参照。
http://electroiq.com/wp-content/uploads/2016/06/IHS_Auto_Semis_Ranking_2015.png

◇Automotive semiconductor market grows slightly in 2015 while ranks shift, IHS says (6月23日付け DIGITIMES)

【5月の半導体製造装置BB比】

恒例のSEMIおよびSEAJからのそれぞれ北米および我が国の半導体製造装置の月次BB比であるが、この5月についてそれぞれ1.09および1.04と、また、この半年で見ても連続して1を上回るという今後への期待を膨らませるデータとなっている。

◇North American semiconductor equipment industry posts May 2016 book-to-bill ratio of 1.09 (6月17日付け ELECTROIQ)
→SEMIのMay Equipment Market Data Subscription(EMDS) Book-to-Bill Report発。北米半導体装置メーカー、2016年5月の世界受注が$1.75 billion、book-to-bill(BB)比が1.09。ここ半年の推移(金額:USM$):

Billings
Bookings
Book-to-Bill
(3ヶ月平均)
(3ヶ月平均)
December 2015
$1,349.9
$1,343.5
1.00
January 2016
$1,221.2
$1,310.9
1.07
February 2016
$1,204.4
$1,262.0
1.05
March 2016
$1,197.6
$1,379.2
1.15
April 2016 (final)
$1,460.2
$1,595.4
1.09
May 2016 (prelim)
$1,601.1
$1,749.3
1.09

[Source: SEMI (www.semi.org), June 2016]

◇North American semiconductor equipment industry posts May 2016 book-to-bill ratio of 1.09, says SEMI (6月20日付け DIGITIMES)

◇Fab Tool Book-to-Bill Remains Above Parity (6月23日付け EE Times)

◇半導体装置、不足感が緩和、5月BBレシオ、下期からは受注増の見通し (6月20日付け 日経産業)
→日本半導体製造装置協会(SEAJ)が17日発表した5月の日本製半導体製造装置のBBレシオ(3カ月移動平均の受注額を同・販売額で割った値、速報値)は1.04、6カ月連続で1を上回り、需要が供給よりも多いことを示している旨。2016年下半期には記憶素子を立体的に積み上げる3D(3次元)NAND型フラッシュメモリの投資が牽引、半導体製造装置の受注額も再び増加に転じると予測する声が多い旨。

【中国との緊密化】

台湾のIC設計大手、MediaTekが、台湾政府に対して投資および合併など中国資本の台湾へのアプローチに門戸を開くよう働きかけている。

◇Taiwan IC design sector should open doors to China capital, says MediaTek chairman-MediaTek chairman wants Chinese firms to invest in Taiwan IC design houses(6月20日付け DIGITIMES)
→MediaTekのchairman、MK Tsai氏。中国企業は台湾のIC design housesへの出資を認められるべき旨。自由市場経済をもって台湾は、中国の会社が台湾現地のIC設計メーカーにおけるstakesをとることへの禁止を解くべき旨。

◇Taiwan Chip Designers to Lobby for Ability to Work With China-Taiwan firms seek closer ties with Chinese interests (6月22日付け Bloomberg)
→台湾のIC design housesが、グローバル市場で競争力を維持するために投資および合併など中国の半導体counterpartsとのより密接な関係に向けて政府の許可を望んでいる旨。「戦略的な柔軟性が必要であり、どこにも行け、誰とでも話し、そしてcashあるいは株式での買収あるいは合弁を求められるということ。」と、MediaTekのChief Financial Officer(CFO)、David Ku氏。

もう1つ、中国・SMICと米国・Qualcommの北京の合弁fabにて、Qualcommの28-nm Snapdragonプロセッサ製品が、顧客認定を経て本格量産をスタートしている。中国市場での挽回を図っているQualcomm、中国ファウンドリーとしてステップアップを図るSMIC、ともに大きな1ステップである。

◇SMIC announces mass production for Qualcomm Snapdragon 425 chips in Beijing (6月22日付け DIGITIMES)
→SMIC発。QualcommのSnapdragon 425プロセッサおよびMDM9x07が、SMICがmajorityをもつ北京の合弁fabにて、顧客認定に合格、量産を開始の旨。
北京での28-nm Snapdragon製品の生産成功は、SMICの28-nm技術にとって重要な1ステップとなる旨。この成果は、QualcommとSMICの北京&上海チームの間の緊密なコラボの結果である旨。

◇SMIC begins mass production of Qualcomm Snapdragon 425 processor in Beijing (6月23日付け ELECTROIQ)


≪グローバル雑学王−416≫

半導体業界は昨年来従来の記録を大幅に塗り替えるM&Aが行われ、いまだ余波が続いているが、我が国内企業もグローバルな成長戦略のもと海外企業の買収(クロスボーダーM&A)が活発化しており、

『M&Aの「新」潮流』
 (山本 貴之 著:エネルギーフォーラム新書 036) …2016年1月15日 第一刷発行

よりその現況、M&Aによる海外展開における留意点、そして逆に海外企業による日本企業の買収について以下見ていく。国・地域別にやり方、文化など相互のプラットフォームを乗り入れできるよう合わせていく諸点が、ここでも大事な留意事項として表わされている。

第9章 海外企業買収(クロスボーダーM&A)

【成長戦略のために活発化するクロスボーダーM&A】

■過去最大のクロスボーダーM&A件数
・日本企業の関わるM&Aのうち、3件に1件はクロスボーダー案件というのが現状
 →特にIN-OUT案件の増加が近年の特徴
・IN-OUT案件、2014年の地域別件数
 →アジアの232件に続き、北米が159件、欧州が117件
・2014年のアジアの国別件数
 →シンガポールが43件で最多、続いて中国37件、インド27件、韓国23件
・IN-OUT案件、地域別金額
 →2010年代でアジアは約13%止まり、北米が約46%、欧州が約29%
 →大型のIN-OUT案件は北米・欧州が中心

■活発化するクロスボーダーM&Aの背景等
・2011年を底に、増加傾向に転じている日本企業の関わるM&A
 →1)企業利益の改善・向上
  2)株主から経営執行者に対する成長戦略への期待
  3)金融緩和に伴う低金利による資金調達の容易化
  4)戦略的なM&Aに関する情報とノウハウの普及
・日本企業によるクロスボーダーM&Aの取り組み・検討が増加する背景
 →1)国内市場の縮小傾向
  2)海外市場の拡大傾向、特にアジア新興国の経済成長
  3)グローバル競争の激化

【日本企業のM&Aによる海外展開における留意点】

■戦略/具体的着手/プロセス/PMI
≪戦略≫
 ・日本企業によるクロスボーダーM&Aの狙い
 →1)縮小する国内市場への対応
  2)拡大する海外市場の取り込み
  3)先進技術の獲得
・大別される類型
 →1)同業企業の買収による対象国・地域への進出
  2)周辺事業企業の買収による対象国・地域の既存事業の強化
  3)買収対象企業の優れた技術を獲得、国内を含めグローバルに展開
≪具体的着手≫
・クロスボーダーM&AにおいてFA(フィナンシャル・アドバイザー)に求められる要素
 →1)海外企業との交渉力
  2)財務分析力
  3)海外における情報収集力(得意な業種、案件規模等にも留意)
  4)多数の関係者をまとめながら案件を進めて行く調整力
  5)各専門家の隙間を埋める柔軟性・機動力
  6)自社の戦略や社風、意思決定プロセス等に関する理解
  7)自社検討チームとの相性の良さ
・ターゲット企業が自社ニーズに完全に合致することは必ずしも多くない
 →買収後の整理(売却・撤退)を前提に容認する柔軟な姿勢も大切
≪プロセス≫
・国内M&Aと比較すると、交渉ではロジックがより重視され、事実およびデータをベースに議論が進むことが多い
・まずは電話会議等によるFA間の議論が中心
 →最終契約交渉の段階になると、最終契約書ドラフトに基づく双方のリーガル・アドバイザー間の協議も重要に
・要所で買い手側が現地へ赴きプリンシパル(当事者)同士で集中的に議論、ギャップを埋めていくことに
・国内のM&A案件と比較して細かな規定が含まれる傾向があるため、ページ数が膨大になりがち
 →通常100ページを超える
≪PMI(経営統合)≫
・日本企業を悩ませるのが、PMI(ポスト・マージャ―・インテグレーション=買収・合併後の経営統合)
・議論されることが多い点
 →1)現地マネジメントの報酬体系(ベース、短期・長期インセンティブ)
  2)ターゲット企業へ日本から派遣する人材のポジション・役割
  3)ターゲット企業へ日本から派遣する人材の選定
  4)本社との情報共有・協議体制(頻度・内容)

■国別の留意点(欧米、東南アジア、インド)
・実際には交渉スタイルやプロセス面、また法規制面で地域・国毎の違いが大きく、以下、それぞれの地域における一般的な留意点
≪米国・欧州主要国≫
・交渉ではロジックが重視され、事実および定量化された数値をベースに議論
・提示条件次第で売却を積極的に検討することが多い米国・英国等
 →ドイツ・フランス・イタリア等のオーナー企業は、家業としての思いからか、比較的買収打診に応じにくいことが多いよう
≪東南アジア≫
・日本と異なる複雑な法規制に留意が必要、変更も多く常にアップデートしておく必要
 →1)持ち分割合に関する制限(規制業種に該当する場合)
  2)株主構成に関する制限
  3)取締役会構成に関する制限
  4)不動産保有に関する制限
  5)国外親会社への配当・金利支払いに関する制限(税務面を含む)
・非公開企業の定量情報に関するデータベースが充分に整備されておらず、事前に情報が取得しにくいことも
≪インド≫
・日本と異なる複雑な法規制に留意が必要
・あれこれと躊躇無くいろいろな提案、面食らうことも多々
・余り時間をかけずにYES/NOを明確にし、毅然とした対応を取るのがよい
・概して競合相手はインド進出を狙う欧米企業となることが多い

【M&Aを活用した対日投資の動向】

■現状
・海外企業による日本企業の買収(OUT-INディール)は、まだまだ一般的とは言えない
 →買収後の経営スタイルの違いに対する不安感、買収後のリストラや商取引への悪影響に対する過剰な警戒感、交渉プロセスにおける言語の違い、 など
・近年は、積極的に大手海外企業の傘下に入ることにより、親会社の保有する海外ネットワークや資本力の活用を狙うケースも
 →日本企業のマインドセットも変化しつつあるよう

■海外企業に事業売却する際の留意点
・日本企業を買収しようと考える海外企業の一般的特徴
 →1)会社または事業部門のトップがハンズオンで対応
  2)意思決定が迅速
  3)社内M&Aチームが存在することが多い
  4)日本の企業文化・特殊性を理解しようとする姿勢を持つ
  5)日本企業側の英語力が拙くとも辛抱強く対応する
・海外企業に事業売却する際には次のような点に留意
 ≪ロジックの構築≫
 …ロジックを重視する傾向が概して強い
 ≪スピード感≫
 …可能な限り迅速な情報開示、意思判断を行い、モメンタムを維持すべき
 ≪日本の企業文化・商慣習への理解≫
 …それなりに理解している、あるいは理解しようとするケースが大半

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.