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人工知能、自動運転に向けたプロセッサはじめ半導体開発白熱化

スマートフォンの伸びが減速するなか、新技術、新市場への戦略的な切り換え重点化が図られている現下の半導体業界であるが、人工知能、自動運転はじめ具体的なターゲットに向けたプロセッサ、センサなど半導体開発の打ち上げが相次いでいる。数年前になるか、クイズ番組のチャンピオンを破ったIBMのWatsonシステムが登場、つい最近、囲碁の韓国のチャンピオンをGoogleのAlphaGoシステムが負かしたばかり、人工知能(AI)の高度化急成長ぶりが、完全な自動運転車に向けた各社、各陣営の活発な取り組み、先陣争いとともに、当面目が離せないところとなっている。

≪加速する新市場への基軸転換≫

人工知能分野について、Watsonシステムで先行したIBMからは、現時点の人間の脳の働きに近づけるプロセッサ開発が次の通り表わされている。

◇Meet IBM's Brain-Inspired Neurosynaptic Processor-IBM's TrueNorth processor mimics the human brain (5月14日付け Engineering.com)
→IBMが設計したTrueNorthプロセッサは、総数5.4 billion個のトランジスタから成る1 millionディジタルneuronsを擁し、約256 million個のsynapses経由で通じ合う旨。該半導体は、0.8 voltsで動作、cognitive computingおよびシミュレーションに向けて低電力処理が得られる旨。

AlphaGoシステムで一躍注目を浴びたGoogleが、年次開発者会議をこのほど開催、人工知能に向けた自前で開発ののaccelerator半導体、tensor processing units(TPUs)を発表、今後の展開も示して大きな驚きが会場を包んだと表わされている。

◇Google Designing AI Processors-TensorFlow accelerators used in AlphaGo (5月18日付け EE Times)
→Googleのannual Google IOイベント(2016年5月18-20日:Silicon Valley)にて、2時間の基調講演の終わりに大きな驚きのニュース。Googleが、昨年リリースしたopen source TensorFlowアルゴリズムの後、artificial intelligence(AI)に向けた自前のaccelerator半導体、tensor processing units(TPUs)を開発している旨。「構築し始めているTPUsは、AlphaGoシステムを動かした商用FPGAsおよびGPUsより性能/Wattが一桁高い。」と、人間の碁のチャンピオンを負かしたGoogle computerを引き合いに、Googleのchief executive、Sundar Pichai氏。

◇Google Reveals Use of ‘Thousands’ of AI Processors It Designed-Google designed an AI processor in secret (5月18日付け Bloomberg)
→Googleが水曜18日、artificial intelligence(AI)およびdeep-learning neural networks用に向けてapplication-specific integrated circuit(ASIC)を3年にわたって開発したと披露、該Tensor Processing Unitは同社のTensorFlowソフトウェアエンジンと対であり、最近碁の世界チャンピオンを負かしたAlphaGoプログラムで用いられた旨。

本当にどこまで高度化するのか、続く業界各紙の反応である。

◇Google Built Its Very Own Chips to Power Its AI Bots (5月18日付け Wired.com)

◇Google Isn't Playing Games With New Chip -Built in secret, Tensor Processing Unit has strategic role in speeding up artificial intelligence (5月18日付け The Wall Street Journal)

この半導体設計に携わったエンジニアのコメントが示されている。

◇Google's TPU Hit a Tight Sked-Short schedule "answers a lot of questions" (5月19日付け EE Times)
→Googleのmachine learningを加速する新しいプロセッサはきついスケジュールのもとに作られた、と該活動を引っ張った半導体設計のベテランで名高いハードウェアエンジニア、Norm Jouppi氏。「Googleに自分が入ったのは2.5年前、すでに活動がいくつか進んでおり、素早く何かを出していくことが強調された。」と、EE Timesとのインタビューで同氏。

他にも様々なシステム、アプリがあらわれており、今後の展開にそれぞれ注目である。

◇米グーグル:AI搭載、回答するスピーカー発売へ (5月19日付け 毎日新聞)
→米グーグルが18日、カリフォルニア州マウンテンビューで年次開発者会議を開き、音声を認識する人工知能(AI)を備え、リクエストした音楽をかけたり、簡単な質問に答えたりするスピーカー「グーグルホーム」を今年後半に米国で発売すると発表、ネットの画面上で操作している「検索」や「通販」をより手軽にする狙いがある旨。同じ種類の機器を米国で既に販売しているインターネット通販大手アマゾン・コムに追随する旨。同時に新対話アプリ「アロ」も発表、IT業界だけでなく自動車や通販など多様な業種で研究開発が進む人工知能分野への投資を強化の旨。

人工知能に軸足を移すGoogle、戦略の切り換えが明確になってきている。

◇グーグル、AIに軸足、対話アプリなど「スマホの次」にらむ (5月20日付け 日経 電子版)
→米グーグルがスマートフォンの「次」を見据えた成長戦略を加速している旨。中心は急速に進歩する人工知能(AI)。18日にAIを活用した対話アプリや家庭向けの音声認識端末を発表、専用の半導体も自社で開発した旨。同社が強さを誇るスマホ市場の伸びが鈍るなかで、AIに軸足を移す姿勢が一段と鮮明になった旨。

次に、自動運転については取り組み、アプローチの打ち上げが相次いでおり、現下でまずは、NXP SemiconductorsのBlueBox computingシステムが以下の通りである。

◇NXP targets chips for self-driving cars in 2020-NXP's BlueBox platform could revolutionize autonomous vehicle development (5月15日付け VentureBeat)
→NXP Semiconductorsが、同社BlueBox computingシステムを投入、複数sourcesからのデータを結びつけられ、3D-printed自動運転車の生産への進展がより早められる旨。該アプローチが、self-driving cars設計に向けてartificial intelligence(AI)およびデータベースmappingの使用とうまくかみ合わない、のではという批評がある旨。

◇NXP Unveils Open, Modular ADAS Car Platform (5月16日付け EE Times)
→NXP Semiconductorsが本日同社conferenceにて、新しい自動運転エンジン搭載の3D-printed car、Blueboxを披露、固有独自の車体の中でなくmodular、オープンな自動車プラットフォームで自動運転車が開発される未来を映し出している旨。

京セラとTessera Technologies社の子会社、FotoNationからは、intelligent車載カメラの連携である。

◇Kyocera, FotoNation Unite on AI Car Cameras (5月17日付け EE Times)
→KyoceraとTessera Technologies社の子会社、FotoNationが火曜17日、やって来るsemi-および完全自動運転車の時代に重要と考えられるintelligent車載カメラ技術開発での連携合意を発表の旨。Kyoceraはrearviewカメラモジュールで車載分野にすでに手を出しており、携帯電話用computational imagingソリューションで大きなシェアをもつFotoNationは昨年driver monitoringシステム市場に参入の旨。

上記のNXPに対抗してすぐ、STMicroelectronicsがMobileye(イスラエル)と連携、自動運転車用のVision SoC第5世代を打ち上げている。

◇Mobileye/ST Gun for Sensor Fusion, Go after NXP-Battle for autonomous car platform heats up (5月17日付け EE Times)
→NXPの自動運転車エンジン、Blueboxの月曜16日発表に引き続いて、Mobileye(Jerusalem, Israel)とSTMicroelectronicsが、新世代のVision SoC, EyeQ5を駆け込み披露、“sensor fusion central computer for autonomous vehicles”と謳っている旨。Blueboxと違って、EyeQ5はすでにサンプルがあり、2年で対応可能な新しいSoC、10-nm以降のFinFET技術ノードを用いて作られる旨。

◇ST, Mobileye to develop fifth generation of ADAS SoC-ST, startup work on SoC for self-driving cars (5月18日付け New Electronics)
→STMicroelectronicsがMobileye(イスラエル)と連携、自動運転車用のMobileyeのsystem-on-a-chip(SoC)デバイスの第5世代, EyeQ5を開発の旨。「EyeQ5は、将来の完全自動運転に向けてcentralプロセッサとして役立つよう設計されている。」と、MobileyeのCTO and chairman、Amnon Shashua教授。

◇Mobileye, ST to develop autonomous driving SoC-Mobileye and ST are co-developing the 5th generation of Mobileye's SoC, the EyeQ5, to act as the central computer performing sensor fusion for Fully Autonomous Driving (FAD) vehicles starting in 2020. (5月18日付け Electronics Weekly (U.K.))

市場の支持獲得に向けた各社、各陣営の"グローバルな協調と競争"の新たなフェーズを感じさせている。


≪市場実態PickUp≫

【IBMの3ビット/cell phase change memory】

DRAMおよびフラッシュメモリの特性を兼ね備えた新型メモリのアプローチがいろいろ打ち上げられて時間が結構経っているが、このほどIBM Research-Zurichより3ビット/cellのphase change memory(PCM)が発表され、高信頼性データ蓄積の3ビット/cellは初めてということで以下の通り業界各紙が取り上げている。

◇IBM Reveals 3 Bits/Cell PCM-MLC Challenge to 3DX Stacking-Bold step toward universal memory (5月17日付け EE Times/Blog)
→第8回IEEE International Memory Workshop(IMW)(2016年5月15-18日:Paris Marriott Rive Gauche Hotel, Paris, France)にて、IBM Research-ZurichのNon-volatile Memory Research、manager、Dr. Haralampos (Haris) Pozidis氏が、温度を上げて100万回のendurance(書き込み&消去)サイクルの後で3ビット/cellの4Mcell(32Mbit相当) phase change memory(PCM) arrayでの信頼性あるデータ蓄積に成功した全体詳細を初めてプレゼンの旨。

◇IBM may have a cheaper DRAM alternative-IBM comes up with a 3-bit phase-change memory (5月17日付け Computerworld/IDG News Service)
→IBM Researchが、3-ビットphase-change memory(PCM)デバイスの開発を発表、DRAMsおよびフラッシュメモリ代替を謳っている旨。「PCMは、DRAMおよびフラッシュ両方の特性を備えるuniversalメモリの最初の具体例となり、業界の壮大な挑戦の1つに答えている。3ビット/cell到達は大きなmilestoneであり、この密度ではPCMのコストはDRAMより少なく、フラッシュに近づくものである。」(IBM Research ZurichのHaris Pozidis氏)

◇IBM researchers claim 3bit per cell phase change memory (5月17日付け New Electronics)

◇IBM's phase-change memory is faster than flash and more reliable than RAM (5月17日付け The Verge)

◇IBM scientists achieve storage memory breakthrough (5月18日付け ELECTROIQ)
→初めてのこと、IBM Researchの科学者が、phase-change memory(PCM)として知られる比較的新しいメモリ技術を用いて、信頼性の高いデータ蓄積の3ビット/cellを披露の旨。

【ARMの10-nmテスト半導体】

SamsungとTSMCの7-nm半導体を巡る先陣争いが行われる中、ARMが、TSMCの10-nm FinFETプロセスで作ったテスト半導体を発表、電力および効率ともに16-nmからの特性の飛躍を確認したとしている。

◇ARM Describes 10nm Test Chip (5月18日付け EE Times)
→ARMが、この1月にTSMCでの10-nm FinFETテスト半導体のtape outを発表、該プロセスで作られた半導体が、年末までにhandsetsに入る旨。該nodeは相対的に高価、低電力化に重点の旨。

◇ARM, TSMC create multicore test chip on 10nm FinFET process -ARM, TSMC join forces for a 10nm FinFET test chip (5月18日付け New Electronics)
→ARM HoldingsとTSMCが、TSMCの10-nm FinFETプロセスで作るテスト半導体でコラボ、該半導体は昨年第四四半期にtape out、最近特性確認の旨。

◇ARM announces 10nm test chip (5月19日付け DIGITIMES)
→ARMが、TSMCの10FinFETプロセス技術ベースの初のmulticore, 64-ビットARMv8-Aプロセッサテスト半導体を発表、シミュレーションbenchmarks評価でTSMCの16FinFET+プロセス技術に対する印象的な電力および効率利得が示される旨。該テスト半導体(2015年第四四半期にtape out完了)の確認成功は、ARMおよびTSMCのコラボ継続に重要なmilestoneである旨。

【M&A取引の精査3件】

国益、業界独占など、M&Aを巡る関係機関の監視の目が鋭くなる一途と考えられる現状ではあるが、まずは、半導体製造装置のLam Research社とKLA-Tencor社の合併提案について米国政府のさらなる調査が見られている。

◇Lam, KLA Deal Faces DoJ Scrutiny (5月15日付け EE Times)
→Lam Research社とKLA-Tencor社の$10.6 billion合併提案申請について、米国司法省(Department of Justice:DoJ)が該取引のさらなる情報を求めている、と両社が金曜遅く発表、前進するかどうかアナリストが分かれている旨。DoJが昨年10月発表の該取引について両社から情報およびドキュメントを要求するのは2回目であり、2013年9月に発表されたApplied MaterialsとTokyo Electronのずっと大きな$29 billion合併提案について同様な要求が取引を粉砕したと考えられる要因の1つ、とアナリストが特に言及している旨。

台湾のMediaTekと中国のカーナビ用ディジタル地図最大手、NavInfoの間の取引については、台湾・Ministry of Economic Affairs(MOEA)の精査が入っている。

◇MediaTek joint venture plan with Chinese firm requires regulatory nod-MediaTek-NavInfo deal needs regulatory approval (5月15日付け The China Post/CNA)
→金曜13日に発表されたMediaTekとNavInfo(北京四維図新科技)の間の$600 million取引は、Ministry of Economic Affairs(MOEA)の精査を受けなければならない旨。MediaTekは、MOEAのInvestment Commissionに合弁提案についての申請を出す必要がある旨。

半導体M&Aを国家支援で引っ張る中国のTsinghua Unigroupが台湾の2社の買収を提案している件は、この20日発足の台湾の蔡英文(Tsai Ing-wen)政権の早々の判断が問われることになる。

◇Taiwan begins review of Chinese Tsinghua's chip stake deals in island-Taiwan regulators eye Tsinghua's deals with Powertech, ChipMOS (5月17日付け Reuters)
→台湾が、中国の国家が支援するTsinghua Unigroupの台湾半導体メーカー2社、Powertech Technology社およびChipMOS Technologies社における約$1 billion相当のstakesを買収する提案について見直しを始めており、中国に向かって友好度の低い新政府の厳しい精査を受けることになる旨。金曜20日に就任するTsai Ing-wen総統新政府にとって試練となる最終判断であり、Tsai氏は以前、Tsinghuaの提案を台湾にとって"巨大な脅威"とこきおろしている旨。

【NXP/FTF Technology Forum】

NXP SemiconductorsがFreescale Semiconductorを買収したため、NXP/FTF Technology Forum 2016と新しい名前でフォーラムが開催されている。注目したその概要として、以下の通りである。

◇IoT Security: Taming a Perfect Storm-NXP FTF panel asks 'can we weathered it?' (5月18日付け EE Times)
→NXP/FTF(NXP/Freescale Technology Forum) Technology Forum 2016(5月17-19日:AUSTIN, Texas)にて。Internet of Things(IoT)は安全確実かどうか、これを探るエキスパートパネルでは"no"が鳴り響いている旨。

◇NXP Focuses on Smart Cities, Security in Keynote-CEO challenges semi makers (5月19日付け EE Times)
→新たに命名されたNXP/FTF Technology Forum 2016(AUSTIN, Texas)にて、17日のNXPのCEO、Richard Clemmer氏開会基調講演では、セキュリティおよびsmart citiesが強調された旨。

◇MIT Media Lab Founder: Biotech Will Grow Computers-"Incremental changes enemy of creativity" (5月20日付け EE Times)
→NXP/FTF Technology Forum 2016(AUSTIN, Texas)にて、Massachusetts Institute of Technology(MIT) Media Labのco-founder、Nicholas Negroponte氏の基調講演。21世紀を見やって、biotechnologyを用いる将来のcomputersを如何に成長させるか問うている旨。

【2016年半導体販売高予測】

今年、2016年も2.3%とまた減少すると、International Data Corp.(IDC)が半導体販売高予想を発表、ほかの調査関係数社の仲間入りをしている。僅かにプラスと表わしたWSTSも、今後にアップデートがあるかどうか。それよりも思いのほかの好転を期待するところではある。

◇Evidence of Chip Sales Decline Mounts (5月16日付け EE Times)
→International Data Corp.(IDC)がこのほど、2016年の半導体販売高について2.3%減の$324 billionと予測、今年は半導体売上げが減少とすでに予測しているGartner社, IHS社およびIC Insights社などライバルたちに加わっている旨。半導体業界メンバー会社によるデータをまとめ、それに基づいて予測しているWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationは、引き続き半導体販売高が2016年は"僅かにプラス"、2017年は穏やかな伸びと見ている旨。WSTSのデータ&予測は、Semiconductor Industry Association(SIA)などの機関が配布している旨。

◇Second down year for semis, says IDC-The chip market will fall 2.3% in 2016, says IDC-IDC forecasts second annual decline in chip sales (5月16日付け Electronics Weekly (U.K.))
→IDC発。今年の世界半導体販売高が2.3%減の$324 billionになるとの見方、2年連続の半導体販売高減少を予測するたくさんの他の市場リサーチ会社に加わっている旨。IDCは、向こう4年にわたって1.9%の年間成長、2020年には$364 billionの半導体販売高を予測している旨。

◇Worldwide semiconductor revenues to fall 2.3% in 2016, says IDC (5月16日付け DIGITIMES)
→IDC発。2016年の世界半導体売上げが、2年連続の減少、2.3%減の$324 billionと見ている旨。2015年から2020年にかけて売上げはCAGRが1.9%と予想、2020年に$364 billionに達する旨。中国および新興市場での経済減速および米国での全体的な見通し軟化が、2016年のグローバル半導体需要に影響を与えるカギの要因である旨。LTE携帯電話が、2015年の52.5%に対して2016年は8%と引き続き控え目な伸び、自動車市場およびconsumerの選りすぐりの部分が、半導体業界下降の年で引き続きbright spotsのままともなる旨。


≪グローバル雑学王−411≫

先週のこと、日産自動車と三菱自動車が開いた資本・業務提携のニュースが大きく取り上げられ、これからのデューディリジェンスというくだりが出てきたが、企業価値評価について見ていく後半は、

『M&Aの「新」潮流』
 (山本 貴之 著:エネルギーフォーラム新書 036) …2016年1月15日 第一刷発行

よりM&Aプロセスにおけるこの評価の運び、段取りが表わされている。実際にはいろいろ個々の事情経緯があり、ケースバイケースでの柔軟な対応の必要性が指摘されている。


第4章 企業価値評価 =後半=

【M&Aプロセスにおける企業価値評価】

■企業価値評価の前提条件
・企業価値評価においては妥当性の高い前提条件を設定することが最も重要
・前提条件における重要な論点
 →「スタンド・アローン・イシューによる影響」
  …譲渡者が企業である場合、対象企業が譲渡者の企業グループを離脱することに伴う、対象企業の独立した企業としての体制整備に関連する事項
  →取得者は、スタンド・アローン・イシューに関連して追加的に発生する費用の増減については、企業価値評価に反映した上で、M&Aの意思決定をする必要
 →「ストラクチャーによる影響」
  →合併等の組織再編によるM&Aでは、対象企業において会計・税務面での影響
  →海外案件の場合には、現地の制度への対応の要請
  →少なくとも税務面については、影響を考慮した上でのM&Aの意思決定が必要
 →「シナジー効果及びディス・シナジー効果の取り扱い」
  →M&Aの取引価格にシナジー効果を反映させるか、また、反映させる場合のその水準は、まさしく取得者と譲渡者の交渉力の中で決定される

■M&Aプロセスと企業価値評価
・M&Aプロセスでは、対象企業の資料・情報は、M&Aプロセスにおける案件の進展に応じて段階的に開示
 →企業価値評価も対象企業の資料・情報の開示状況に応じて精緻化
・案件検討開始から秘密保持契約を締結する前の段階
 →入手できる情報が非常に限られる
 →市場株価法、類似会社比較法および類似取引事例法による取引価格の目線づくりに留まる
・秘密保持契約を締結、取得者と譲渡者の間で基本条件の合意に向けた協議、デューディリジェンスに進む
 →対象企業は営業秘密を含む詳細な情報を開示することに
 →基本条件の合意に必要な範囲で、決算書、事業計画、事業内容・組織体制等に関する主要な資料・情報が開示
・基本条件に合意した後は、最終契約の協議・合意に向けたデューディリジェンスが行なわれる
 →取得者のM&A実行の意思決定に必要な対象企業のすべての資料・情報の開示を受けることに
 →「企業価値算定書」と呼ばれる取得者のM&Aの取引価格の意思決定に必要な資料を作成することに
・最終契約を締結することとなった場合
 →企業価値算定書の最終報告を受領し、最終契約に関する機関決定を行うことに
・実際のM&A案件では個別事情が存在するため、それに応じた柔軟な対応が必要
 →個別事情に即した進め方を選ぶことでM&Aの成約率を高めることが可能

■企業価値評価と専門家の役割
・専門家の専門知識と豊富な経験を利用して対象企業の企業価値に関する理解を深めること
 →M&Aの意思決定における判断材料の質を高める
 →相手方との交渉において有利な取引条件を引き出す
・経営陣は、M&A、特に諸条件の中でも取引価格に関する経営判断の合理性
・妥当性について株主に対する説明責任を負う
 →専門家を起用して、より適切なプロセスを経た意思決定であることを証することができる

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