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スーパーコン、目まぐるしいトップ争い、興味深い応用展開

年2回開催される世界的なスーパーコンピューティングに関する国際会議、ISC'13(International Supercomputing Conference)(6月17-20日:Leipzig, Germany)にて、恒例のトップ500が発表されている。世界各国が威信をかけて計算速度を競うこの場、今回は中国が開発した「天河2号」が、我が国の「京」などを抜いて2年半ぶりの世界一となっている。目まぐるしく変わるランキングとともに、高性能を実現する中身、そしてこのようなアプローチの蓄積から拡がる興味深い応用展開に注目している。

≪スーパーコン関連の動き≫   

今回のISC'13の結果概要が次の通り表わされている。「地球シミュレータ」「京」と、我が国のスーパーコンピュータが世界一となってきたが、もう一度の奮起が望まれるところである。

◇スパコン、中国2年半ぶり世界一、日本の「京」4位 (6月17日付け 日経 電子版)
→世界のスーパーコンピュータの性能を比べる専門家のプロジェクト「TOP500」が17日、最新の計算速度ランキングを発表、中国の国防科学技術大が開発した「天河2号」が日本の「京」などを抜いて世界一となった旨。理化学研究所と富士通が開発した「京」(神戸市)は、前回の3位から4位となった旨。天河2号の計算速度は1秒間に3京3862兆回を記録、1京510兆回の京の約3倍となった旨。2位は前回首位の米エネルギー省のタイタン、3位は同省のセコイアだった旨。
文部科学省は来年度から、京の100倍速い次世代スパコンの開発に乗り出す方針を固めており、2020年ごろの完成を目標にしている旨。

トップ500の全体リストは、以下を参照。
http://www.top500.org/list/2013/06/

今回に関連する動きとして、まず、IntelのXeon Phiプロセッサが、次の通り高速化の推進源となっている。

◇Intel Reveals Details of Next Supercomputing Chip-Intel touts "neo-heterogeneity" in supercomputer processors (6月17日付け The Wall Street Journal/Digits blog)
→IntelのXeon Phiプロセッサが、heterogeneous高性能computingから新しい時代の"neo-heterogeneity"に移行しており、該12-coreプロセッサは世界最高速スーパーコンピュータ500のうち11で見い出される旨。

また、アムダールの法則を巡る動きが以下の通りである。

◇Scientist Out to Break Amdahl's Law-The 46-year old Amdahl's law will be challenged during a presentation at the International Supercomputing Conference this week-German scientist to show ways around Amdahl's Law (6月17日付け CIO.com/IDG News Service)
→今週のISC'13(International Supercomputing Conference)にて、ドイツ・JA1/4lich Supercomputing CentreのThomas Lippert氏が、如何に「Amdahl則の落とし穴がある特別な状況で避けられるか」についてプレゼンする旨。「並列に十分なハードウェアをつぎ込めば、問題を解決できる。まだ直列に何かやらなければならず、tasksを速める上で制限要素となる。」(半導体consulting、Insight 64のNathan Brookwood氏)
(注)Amdahl's law(アムダールの法則)
…システムの一部を改良したときに全体として期待できる性能向上の程度を知るための法則。並列計算の分野において、複数のプロセッサを使ったときの理論上の性能向上の限界を予測するのによく使われる。

今回のISC'13のトップ3が以下の通りであり、世界一となった「天河2号」は上にも示したIntel XeonおよびXeon Phiが動力源となっている。

◇China takes fastest supercomputer crown (6月18日付け EE Times)
→International Supercomputing Conference(Leipzig, Germany)にて今週発表された年2回のスーパーコンピュータTop500 List、トップ3は以下の通り:
1.中国のTianhe-2(MilkyWay-2) …3.12M個のIntel XeonおよびXeon Phiコア
2.Oak Ridge National LaboratoryのTitan …AMD/Nvidia powered
3.Lawrence Livermore National LaboratoryのSequoia …IBM-powered

応用展開の動きとして、NvidiaのGraphics Processing Units(GPUs)上での神経computingネットワークスの構築が行われている。GPUs上での大きな進展に注目である。

◇Nvidia's graphics brawn powers supercomputing brains-The company's graphics chips are finding a foothold in neural networks, a biology-inspired form of computing that is moving from research to commercial tasks like Google's photo recognition. -Nvidia wants a piece of the supercomputing sector (6月18日付け CNET)
→グラフィックス半導体メーカー、Nvidiaが、supercomputing分野に進出の意向、脳の神経細胞の電気的振る舞いを複製する神経computingネットワークスをGPUs上に構築の旨。結果としては安価なcomputing powerとなり、「以前はスーパーコンピュータで走ったプログラムが、今やGPUs上で何分の1かの価格で走るよう書き直せる」(University of California, Berkeleyのcomputer scientist、David Anderson氏)旨。

IntelのXeon Phiは、次の通り応用の多角化に向けた展開が引き続き行われている。

◇Intel's budget supercomputer diversifies (6月19日付け EE Times)
→IntelのXeon Phiは、世界最高速のスーパーコンピュータ、中国のMilkyWay-2を動かしているだけでなく、さらに多くのコンピュータユーザがmassively parallel supercomputingを利用できるversionsを擁して多様化している旨。Intelの今日出ている3つの新しいXeon Phiモデルに、来年世界初の14-nm high-performance computer(HPC) central-processing unit(CPU)の見込みが加わって、supercomputing-型big-data analyticsをどのユーザcaliberにももたらすことを狙う旨。
・≪図面≫ Intelは今後のXeon Phi CPUsのdieの真上に100-Gbit/sec interconnection fabricを統合
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Dylan/2013_01/130617_rcjXeonPhi_290.jpg


≪市場実態PickUp≫

AMDが、サーバ用半導体の2014年ロードマップを披露、説明している。スマホプロセッサ技術、ARMアーキテクチャーの適用による構築が特色として挙げられる。

【AMDの2014年ロードマップ】

◇AMD slates first ARM server chip, 'Seattle,' for 2014-AMD advances ARM chip strategy with "Seattle" project (6月17日付け PCWorld)
→Advanced Micro Devices(AMD)が、スマートフォンプロセッサで用いた技術をサーバラインに適用開始、来年16 CPU core ARM半導体の新しい一式をリリース、同社Opteron x86半導体より4倍高速の旨。この64-ビット半導体, Seattleは、AMDのflagship Cortex-A57プロセッサ設計で構築され、2014年後半の投入時にはIntel, AppliedMicroおよびCalxedaからの半導体と競合する旨。

◇AMD touts trio of 2014 server chips (6月18日付け EE Times)
→Advanced Micro Devices(AMD)(Sunnyvale, Calif.)が、企業およびデータセンター向けサーバ用プロセッサの2014年portfolioのいくつか詳細を説明の旨。以下の内容:
 Accelerated Processing Unit(APU)、Berlin
 2-および4-socket CPUs、Warsaw
 64-ビットARMアーキテクチャーサーバプロセッサ、Seattle
 これらの発表は、Opteron X-Seriesプロセッサ, 前コード名Kyotoの一般リリースに続く形の旨。

◇AMD details ARM server chips in 2014 roadmap (6月19日付け EE Times India)

グラフィックス半導体の設計・製造・販売というこれまでの殻を破って、Nvidiaが、自社のgraphics processing unit(GPU) intellectual property(IP)についてライセンス供与していくと発表している。対するAMDは、このような計画はないとしている。

【Nvidiaのライセンス供与】

◇Nvidia to License Technology, Not Just Sell Chips-Nvidia will license its GPU intellectual property (6月18日付け The Wall Street Journal/Digits blog)
→Nvidiaが火曜18日、"Kepler"コアを他の半導体メーカーにライセンス供与する旨。該graphics processing unit(GPU) intellectual property(IP)は、IC設計のグラフィックスcapabilitiesを改善するのに用いられる旨。

◇Nvidia's stock jumps on license plan; Wall Street eyes Apple-Nvidia's IP licensing plan boosts stock; AMD isn't following suit (6月19日付け Reuters)
→Nvidiaが自社GPU IPを他社にライセンス供与する計画の発表を受けて、投資家が同社株式を高値にせり上げ、一方、Advanced Micro Devices(AMD)はグラフィックス処理IPを他社にライセンス供与する計画はない旨。

◇Nvidia plans to licence graphics technology (6月20日付け EE Times India)
→活況のスマートフォンおよびタブレット市場を最大限に活用しようと、Nvidia社が、新しいビジネス戦略の概要を説明、自社のgraphics processing unit(GPU)プラットフォームを他のシリコンベンダーにライセンス供与する計画の旨。同社はこれまでGPU半導体の製造・販売だけを行っていた旨。

PC用ICsの低迷に対して、タブレット用ICsの際立つ活況ぶりを示すデータが、またまた示されている。PC、タブレットを合わせた全体のICs販売高は、$77.6Bで前年比3.6%増に留まり、タブレット用の37%増、$14.7Bが支えるという現状の度合いを表わしている。

【タブレットIC販売高】

◇Tablet ICs up; PC ICs down-IC Insights: Tablet chip market to hit $27B in 3 years (6月19日付け Electronics Weekly (U.K.))
→IC Insights発。今年のタブレットcomputersに入る半導体販売高は、37%増の$14.7B、2016年には$27Bに達すると見る旨。標準PCsに入る半導体は、今年$62.5Bの市場、2012年から2%減少する旨。

◇Tablet IC sales to soar in 2013, says IC Insights (6月19日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。notebooksの弱含みが、touch-screenタブレット、特に7-および8-インチ画面の小型モデルの力強い数量の伸びで打ち消され、2013年のすべての型のPC製品に向けてのIC販売高が4%増加すると見る旨。
標準PCs, タブレットおよび新しいcloud-computing portablesについて合わせたIC販売高:

2011年
2012年
2013年
$79.6B
$74.9B
$77.6B

キーボード装備の標準PCについてのIC販売高:

2011年
2012年
2013年
7%減
12%減
2%減
$62.5B

キーボード装備の標準PC分野については、主にnotebooksの出荷鈍化が影響しており、世界中のconsumer computing市場でタブレットに取って代わられている旨。

半導体製造装置市場の2017年まで見渡したデータが、Gartner社から発表されている。本年は3.5%減と低下の一方、2014年は14.2%増、2015年は10.1%増と戻していく見方となっている。

【半導体製造装置市場】

◇Chip making equipment market to bounce back in 2014 (6月20日付け EE Times)
→Gartner社発。2013年の半導体製造装置市場は、2012年から5.5%減の$35.8Bになりそうな状況、建屋構築など半導体業界のcapital spending全体は2013年に3.5%減少すると見る旨。しかしながら、2014年および2015年には大方の分野で活況となり、capital spendingがそれぞれ14.2%増および10.1%増と推測する旨。
・≪表≫ 世界半導体製造装置市場予測:2012〜2017年 (単位 USM$)  Source: Gartner
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20130620pcGartnerChipMakeMarket.jpg

◇Global semiconductor manufacturing equipment spending to decline in 2013, says Gartner (6月20日付け ELECTROIQ)

◇IC manufacturing equipment spending to slip 5% in 2013, says Gartner (DIGITIMES)


≪グローバル雑学王−259≫

元素周期表から、宇宙、地球、人体の成り立ちと我々の根源に至るすべてに  

『元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち』  
  (吉田 たかよし 著:光文社新書) …2012年10月20日 初版1刷発行

よりアプローチしてきたが、いよいよ大詰めに近づいている。残り2回に分けて、我々の健康に有益か、毒性があるか、周期表での法則性というものを見ている。今回は最もこの法則性が典型的なグループ12の亜鉛・カドミウム・水銀について掘り下げていく。

※元素周期表として、理化学研究所 仁科加速器研究センターからの次の例がある。
http://www.rarf.riken.jp/enjoy/images/genso.pdf


第7章 周期表からリスクと健康を見きわめる  ≪前半≫

□亜鉛・カドミウム・水銀
・元素は、天然には90種類あまりが存在
・周期表からは、健康や医学についての知識も読み解くことができる
 →少なくとも次の2つの法則:
 1.周期表で人体がよく使う元素の真下にある元素は、毒性があることが多い
 2.遷移元素が健康に有益か毒になるかは、周期表の横一行がだいたい同じ
・最も典型的なのが、グループ12の亜鉛・カドミウム・水銀
 →カドミウムと水銀は、周期表では亜鉛の真下に位置

□亜鉛(Zn)
・人間にとって、亜鉛は必要不可欠な元素
 →100種類を超える酵素が亜鉛によって活性を高めている
・亜鉛の不足によって味覚障害が起こり、味を感じにくくなる
・亜鉛は男性機能を高めるために役立つ成分
 →亜鉛が不足すると精子が形成されにくくなるのは確か
・亜鉛が不足すると赤血球も少なくなって貧血が起こる
 →白血球も少なくなり、亜鉛の不足は免疫力の低下にも

□カドミウム(Cd)
・富山県の神通川の流域にて、日本の四大公害病のひとつ、イタイイタイ病
 →神岡鉱山で採掘していたのは、カドミウムではなく亜鉛
  →亜鉛の鉱石には、不純物として1%程度のカドミウム
・宇宙に存在するカドミウムの量は、亜鉛の100分の1よりやや少ない程度

□水銀が生んだ映画のキャラクター像
・水俣病を引き起こした水銀
 →四大公害病のうち3つもがグループ12の元素が原因
・水銀にメチル基が結合、メチル水銀という化合物に
 →脂に溶ける性質に変わり、人体に吸収されやすく
 →システインというアミノ酸と複合体をつくり、脳にどんどん入っていく
・亜鉛はグループ12の元素だからこそシステインと結合して健康を守る役割
 →一方、水銀はグループ12の元素だからこそシステインと結合して健康を害する
 ⇒なんとも皮肉
・化学反応を利用して金をつくろうとした昔の錬金術師
 →あとを絶たなかった精神に異常をきたしてしまうケース

□イオウと仲良くできるかが鍵になる
・少なくとも人体にとっては、グループ12の元素は、イオウとの結合に始まりイオウとの結合に終わる
・イオウと正しく結合する亜鉛が健康の味方、イオウと間違って結合するカドミウムや水銀が健康の敵

□かつての10倍の水銀にさらされている私たち
・環境中にどれだけの水銀
 →16世紀から徐々に増え始め、工業化が進んだ18世紀から一気に増加
 →1950年代の半ば、以前の100倍の量に
 →現在でもかつての10倍程度の水銀
・微量の重金属が体内に入った場合に、どのような影響?
 →科学的に明らかにするのは、きわめて困難
・原発事故と同じことが、水銀やカドミウムにも
 →自然に体内に入る重金属の影響、分かれる研究者の主張

□デトックス療法の功罪
・体内にある微量の水銀やカドミウムを力ずくで体外へ出す
 →「デトックス療法」
 →水銀やカドミウムと結合する性質をもつキレート剤を点滴で体内に
 →人体に不可欠な亜鉛などもくっついて失われ、別に点滴などで補う
・亜鉛は周期表の真下にある水銀やカドミウムの健康への被害を防ぐ働き
 →加工食品を多くとっている現代人は、亜鉛が不足気味の方が圧倒的に多いのが現状
 →亜鉛は、牡蠣や牛肉、ウナギ、ナッツ類に豊富

□典型元素のその他の毒
・グループ12の元素で水銀の下にあるコペルニシウム(Cn)
 →化学的な性質は水銀によく似ていると推測

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