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早々の波紋…アップル業績、Samsung設備投資、在庫高水準

パソコン低迷、モバイル機器活況という時代の節目を感じさせながらの新年となって、今回は必然的にモバイル機器をリードするアップルおよび市場の伸びを引っ張るサムスンの業績、それを受けての設備投資、半導体市場予測の発表という、これも恒例、早々の波紋を受け止めている。アップルは過去最高の四半期売上高&純利益を記録したものの、横這いで次の伸びの一手が見えないという市場の見方から株価急落、時価総額首位の座も明け渡すとともに、サムスンの半導体設備投資にもブレーキがかかる動きとなっている。

≪敏感な市場の反応≫  

昨年、2012年の半導体購入の顧客ランキングが発表され、サムスンとアップルで全体の15%を占めるとともに、サムスンがアップルを追い越すという結果となっている。モバイル機器活況をリードする両社がそれぞれの色濃く表れている。

◇Samsung and Apple bought $45.3 billion in semiconductor chips in 2012, cornering 15% of the market (1月23日付け VentureBeat)
→Gartnerが本日リリース、global semiconductor report発。昨年2012年、自ら半導体メーカーであるSamsung Electronicsが$23.9Bの半導体を購入、一方、Appleは$21.4B、この両社で2012年世界半導体売上げの15.2%を占めている旨。続くのはHewlett-Packard(HP)およびDellであるが、2011年よりも半導体購入が少なくなっている旨。

◇Samsung overtakes Apple as top chip customer-Unlike Apple, it makes its (1月24日付け Techeye)
→Gartner発。2012年のトップ半導体顧客として、SamsungとAppleが該市場を席巻、Samsungが大きな伸びを謳歌、Appleを追い抜いた旨。
・≪表≫ 2012年半導体設計TAMトップ10ランキング
http://news.techeye.net/assets/upload/gartnerjan2013.jpg

アップルの10〜12月期業績発表に世界の注目が集まったが、以下の一連の反応の受け止めである。

◇Apple's stock nosedives after forecasted sales decline (1月24日付け EE Times)

◇Apple Disappointed In Part Due To Supply Constraints (1月24日付け Seeking Alpha)

◇米アップル、成長に陰り 純利益横ばい、次の一手見えず (1月25日付け 朝日新聞デジタル)
→米アップルが23日発表した2012年10〜12月期決算、売上高が前年同期比18%の545億1200万ドル(約4兆8300億円)、純利益が同0.1%増の130億7800万ドル(約1兆1600億円)となり、いずれも四半期で過去最高の旨。

◇アップル時価総額、首位転落の可能性も、株価急落 (1月25日付け 日経 電子版)
→米アップルの株価が急落、23日に発表した1〜3月期の売上高見通しが事前予想より低かったことなどを受け、24日は63.505ドル(12.4%)安の450.50ドルで通常取引を終えた旨。株式時価総額も4230億ドルまで減少、2位のエクソンモービル(4165億ドル)との差が縮まっており、首位転落の可能性も出てきた旨。

◇アップル、時価総額が首位転落、エクソンに明け渡す (1月26日付け 日経 電子版)
→米アップルの株価が25日も下げ、前日比10.62ドル(2.4%)安の439.88ドルで通常取引を終えた旨。株式時価総額は約4130億ドルと前日終値から100億ドル近く減少、石油大手エクソンモービルの時価総額が約4182億ドルと51億ドル程度上回り、ちょうど1年ぶりにアップルが世界首位の座を明け渡した旨。

市場満足を獲得し続けるのは本当に大変と改めて感じざるを得ない敏感な反応である。

この発表の後に行われているサムスンの10〜12月期業績発表であるが、こちらは営業益が前年同期比倍近く、全部門で増益という内容である。

◇サムスン営業益89%増、全部門が増益 10〜12月 (1月25日付け 日経 電子版)
→韓国のサムスン電子が25日発表した2012年10〜12月期連結決算、売上高が前年同期比19%増の56兆600億ウォン、営業利益が同89%増の8兆8400億ウォン(約7500億円)。スマートフォンが収益源となったほか、半導体、ディスプレイ、家電の全部門が前年同期比で増益、ウォン安の修正による業績への悪影響を販売拡大とコスト削減で吸収した旨。
2012年12月期通期の連結決算は、売上高が22%増の201兆1000億ウォン、営業利益が86%増の29兆500億ウォン、日本円換算では約2兆4500億円とトヨタ自動車の過去最高益(2008年3月期の連結営業利益2兆2703億円)と肩を並べる水準になる旨。

しかしながらサムスンは、モバイル機器を製造・販売するとともにアップル向けにプロセッサ半導体を供給する立場であり、アップルの業績発表、続く市場の反応を受けて手放しではいられないということか、本年の半導体設備投資には減額、あるいは慎重というスタンスがこれも矢継ぎ早に放たれている。

◇Samsung may cut expenses as Apple shops elsewhere for chips (1月24日付け Reuters)
→金曜に記録的earningsを発表したSamsung Electronics Coが、今年はcapital spendingを1/5ほど落とす可能性、グローバル金融危機以降初の減少、コンピュータ用半導体需要が弱含み、ライバルのApple社がiPhoneおよびiPadで用いるSamsung製MPUs購入が減りそうな様相の旨。

◇Samsung puts lid on capex for the first time since financial crisis-Samsung reins in capex, sets budget at 2012 level (1月25日付け Reuters)
→グローバル金融危機の間を除いて毎年capital expenditures予算を従来高めてきているSamsung Electronicsが、今年は慎重なスタンスになっており、2012年とほぼ同水準に置いている旨。

そこで気になってくる当面の半導体市場であるが、在庫が高い水準にあり、以下の通り半導体販売高は前四半期比で以下の推移予測が出されている。

2012年10-12月  2013年 1- 3月  2013年 4- 6月
  0.7%減     3%減      4%増

◇Excess chip inventory set to hurt Q1 (1月25日付け EE Times)
→IHS発。2013年第一四半期の半導体売上げが、2012年末に半導体サプライヤ保有半導体在庫が高水準に達し、前四半期比3%低下する様相、2012年第四四半期の前四半期比0.7%減に重なる旨。

◇Global IC sales to recover in Q2, iSuppli report says (1月25日付け Taipei Times)
→iSuppli発。スマートフォンおよびタブレットcomputers用のロジック、アナログおよびNANDフラッシュ半導体に向けた堅実な需要を受けて、グローバル半導体分野が、第一四半期の落ち込みを経て本年第二四半期には回復すると見る旨。産業用機器および車載用半導体も販売高の伸びを引っ張る見込みの旨。グローバル経済が改善していって、世界半導体販売高は、第一四半期に前四半期比3%低下の後、第二四半期には同4%増えると見る旨。


≪市場実態PickUp≫

PCが低迷、モバイル機器活況のなか、Intel社のモバイルプロセッサ向け市場の足場を強化する動きが次の通り見られている。

【Intelのモバイル傾注】

◇The world's largest chipmaker is counting on its U.S.-based manufacturing to earn it a toehold in the market for mobile processors-Intel to fabricate 14nm chips at Ariz. fab by end of 2013 (1月21日付け MIT Technology Review online)
→Intel executives発。IntelのFab 42(Chandler, Ariz.)が新しい生産装置を据え付け、2013年末までに14-nm features半導体を作り始める旨。同社は昨年、他の2拠点、IrelandおよびOregonでも14-nm半導体を作るとしていたが、今回そのtimetable更新はしなかった旨。

◇Back Against The Wall, Intel Ramps Up Investment For 2013 To Make The Shift To Mobile Processors-ARMs race: Intel will target mobile with $13B R&D budget (1月21日付け TechCrunch)
→Intelが、今年R&Dに$13Bかける旨。下記の通り前年比約30%増、アナリスト予測評価$10Bを大きく上回る旨。
 2011年  2012年  2013年
 $8.35B  $10.15B  $13B
ARM Holdings供給のコアベースで半導体設計を行っている競合に追いつく意気込みの旨。

PCからモバイル機器への動きをこの数年、特に昨年来強く気づかされるところであるが、かつてデスクトップからノートに移った流れに相通じる新たなロードマップの節目という以下の見方と思う。同じように、かつての白物家電製品が、Internet of Things(IoT:モノのインターネット)という新たな機能の装備を伴なって再来しているという感じ方が表わされている。

【転換と回帰】

◇IDC Announces Study Highlighting New Roadmap on the Future of Personal Computing (1月21日付け IDC - Press Release)
→ユーザ経験およびtransparent computingの進化からcomputingが再定義され転換点にある業界、ちょうどnotebooksが20年以上前にdesktopsに替わっていったように、タブレットがPCsの延長になっていく旨。

◇Yoshida in Japan: Second-coming of Steve Jobs (1月24日付け EE Times)
→ホームentertainmentシステムを超えた先に、International CESにてホームappliancesが、ホットな新製品に仮装して今突然に見えてきている旨。
21世紀が1950年代に逆戻りするのを見て、少なからず当惑している旨。

米国政府に半導体業界の重みを訴え続けている米SIAが、本年も早々以下の通り産官学結集の取り組みを打ち上げている。

【米SIAの取り組み】

◇Semiconductor Industry Forms Unique Partnership with Government and Universities to Develop Next-Generation Chip Technology-New STARnet program includes research partnerships with 39 universities; size and scope of program unmatched by any other industry (1月17日付け SIA Press Release)
→米SIAが、次世代のmicroelectronics技術を開発するために重要な大学リサーチに出資する半導体業界と政府の間の連携を続けると発表、Semiconductor Research Corporation(SRC)が運営管理し、業界およびDefense Advanced Research Projects Agency(DARPA)が共同で出資するSemiconductor Technology Advanced Research network(STARnet)が、最先端半導体リサーチに対して米国中の39大学に向こう5年にわたって総計$194Mを割り当てる旨。

◇Joe Pasetti, Dustin Todd Join Semiconductor Industry Association as Government Affairs Directors -Bipartisan team to work with Congress, Administration to advance key industry priorities (1月24日付け SIA Press Release)
→米SIA、本日発。政府関係事項directorsとして、Joe PasettiおよびDustin Todd両氏がSIAに参画する旨。両氏は、法人税改革、輸出管理改革、半導体セキュリティ&技術政策課題および高度熟練技術者immigrationなど米国半導体業界の重要な法制化および規制政策を推進する一方、議会、White Houseおよび連邦当局に対しては業界senior representativesとして務めを果たす旨。「米国半導体業界は、アメリカの経済の力強さ、国家安全およびグローバル競争力に対して非常に重要である。
Joe Pasetti氏の広範な知識、スキルおよび経験は、我が業界の重要な政策優先順位のWashington, D.C.での理想的な唱えとなる。同氏をSIAチームに迎えてわくわくするものがある。」(SIAのpresident and CEO、Brian Toohey氏)


≪グローバル雑学王−238≫

3K立国第1要件、科学技術についての後半として、産業構造はどう変わるかを、

『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』  
  (三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行

より見ていく。2つのポイント、技術集約型で付加価値の高い部品産業を分野横断的に育成すること、および外国と比べ比較優位にある先端技術産業の育成、が挙げられている。ボーイング社の最新鋭中型旅客機「787」のトラブルの渦中にある現時点であり、原因の解明、万全の処置に馳せる思いである。


II部 新しい日本を創る
第6章 3K立国[その1]−−−科学技術     ≪後半≫

(3)産業構造はどう変わるか

□アセンブリー産業時代の終焉
・中小零細企業が多く連なる巨大なピラミッド構造の加工組立型産業(アセンブリー産業)
 →一国の経済を発展させるためには自動車産業を育成することが早道、とよく言われる
 →日本でも高度成長時代を推進

□進む工場の海外移転
・2000年以前の世界の自動車市場
 →売り上げの約9割が日米欧などの先進国市場
・2010年には、新興国の売り上げ比率が50%に
 →日本の自動車メーカーは生産拠点を海外に移転させる動き
 →日本産業の空洞化が急速に

□技術集約型、高付加価値部品産業の育成
・生産は外国に移転させても、技術集約的な高性能部品、中間製品をしっかり押さえておくこと

□国際競争力のある部品産業
・第1:技術集約型で付加価値の高い部品産業を分野横断的に育成すること
 →専門性の高い部品、世界市場の3割、4割を占めるような部品を作れる企業を戦略的に
 →自動車部品と電動工具のメーカー、ロバート・ボッシュの例

□日本にも技術集約型部品企業が育っている
・日本にも、高度な専門技術を持ち、国際競争力を備えた部品メーカーは多い
・技術集約的な部品や製品の開発
 →異業種の企業、大学、研究機関などと緊密な提携関係
 →世界の先進情報を常時入手できる体制

□比較優位にある先端技術産業
・第2:外国と比べ比較優位にある先端技術産業の育成
 →例:炭素繊維…現在日本は世界シェアの約7割
    →米ボーイング社の最新鋭中型旅客機「787」の機体
     …欧州やアメリカへの中型直行便が可能に
    →エコカーの開発:風力発電の羽根の素材:ゴルフシャフト

□エコカーなど環境関連技術に期待
・エンジンとモーターを動力源として組み合わせた低燃費車、ハイブリッド車
 →ガソリンを使用、CO2は排出
・水素を使った燃料電池を動力源にしてモーターで走る燃料電池車
 →CO2の排出はゼロ
・リチウムイオン電池の登場、電気自動車時代が間近に

□リチウムイオン電池でも優位
・リチウムイオン電池…リチウム酸化物の正極と、カーボンなどの負極の間をリチウムイオンが行き来、充放電を繰り返す電池
 →正極・負極・セパレータ(分離膜)・電解液の主要4部材
・日本の電池メーカーは、自動車メーカーと提携、高性能の自動車用電池の開発に力

□電気自動車でも先行
・日本はハイブリッド車に続いて、電気自動車の開発でも他国より先行
・電気自動車の国際競争は今後一気に過熱へ

□環境を壊さない小型の科学技術開発を重視せよ
・科学技術立国、日本に求められる技術
 →環境保全型、健康にプラスになる技術、平和に寄与する技術

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