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雇用・貿易拡大を図る米国、変革が求められる欧州、そして我が国は?

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欧州の金融危機はじめ世界経済の難局にさらされたこの1年、2012年も終わりを迎えようとしているが、半導体・エレクトロニクス業界にもモバイル機器の世界的な熱い活況のなか大きく影を落とす情勢となっている。米国の半導体業界ではここにきて雇用拡大、公正な貿易を訴える動きが改めて見られるし、欧州では今後の業界のあり方を巡って変革を求めるアピールが行われている。非常に厳しい状況に見舞われている我が国の本年であるが、これら欧米の動きと照らして考えるところがある。

≪米欧それぞれ≫  

日米半導体貿易摩擦がバンクーバー協定を経て終結して、今後は世界的な枠組みで取り組もうということで協議したのが、米国、日本そして欧州の半導体業界であり、その世界半導体会議(WSC)の立ち上げに小生も参画した経緯がある。1996年秋のことであるが、それからの変遷を経て、またまた米国、日本そして欧州のオリジナルの半導体3極が次の飛躍世代に向けた動きが求められている、とそんな感じ方がある。

米国SIAからは、このところ続いた雇用のアピールに続いて、こんどは公正な貿易関係を求めてロシアに矛先を向けた以下の発表が行われている。

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○半導体業界はロシアとのPermanent Normal Trade Relations(PNTR:恒久的正常貿易関係)制定を大統領、議会に推賞 …12月14日付けSIAプレスリリース  

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、世界最大の経済圏の1つへの市場アクセスを改善し輸出opportunitiesを拡大することによって米国半導体業界を強化する政策である、ロシアとのPNTRを認める法制化をObama大統領および議会に推賞した。H.R. 6156、Russia and Moldova Jackson-Vanik Repeal Act of 2012は、力強い超党派の支持を得て上院および下院を通過後、本日大統領が法制化の署名を行った。

SIA president & CEO、Brian Toohey氏は言う。「ロシアとのPNTR承認は、貿易障壁を下げ、透明性および説明責任を改善し、市場アクセスopportunitiesを高めて、米国半導体業界が元気づくことになる。我々はObama大統領および議会メンバーがこの重要な法制化に向けていっしょに働くことを称賛する。」

ロシアPNTRは、米国の会社がロシアのWorld Trade Organization(WTO)への最近の加入、引き続いてのInternational Technology Agreement(ITA)に参画するcommitmentからの利点をフルに受けるのを確実にする上で重要である。SIAは、引き続き政権および議会とともにロシアが遅れることなくITAに参画するcommitmentを守るように働きかけていく。特にロシアのITA加入については、ITAがカバーする半導体製品に対する関税が、現在20%のところが削減されることになる。

ロシアはアメリカの輸出業者にとって拡大する半導体市場である。米国のロシアへの半導体輸出は近年劇的に増えており、2007年の$23.6 millionから2011年には$50.7 millionと28.8%の平均年成長率である。米国のロシアとの半導体貿易黒字は、同じ期間29.7%の平均年率で増大している。
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一方、欧州では、固い頭をなんとかというニュアンスを感じるところがある以下の2つの動きである。まずは、EU Commissionerの方からの提言である。

◇European Commission Wants to Create an 'Airbus for Chips'-Airbus, created from defense and aerospace companies across Europe, could be a model for the microelectronics sector (12月18日付け CIO.com/IDG News Service)
→EU Commissioner、Neelie Kroes氏。欧州は、continental半導体会社を構築してaircraftメーカー、Airbusの例を習わなければならないかもしれない旨。ディジタルAirbus、すなわち半導体分野のAirbusがあっていいのではないか?その成功の規模は、境界を取り払って連携して働けば得られるもの、の旨。

続けて次の通りである。

…4月の欧州の半導体販売高が前年から14%以上と記録的な落ち込みを示した、とEuropean Semiconductor Industry Association(ESIA)は言う。最近のfiguresでも改善は僅かであり、10月の欧州半導体販売高はUS$2.79 billionで9月から0.2%増である。

にも拘らず、市場リサーチのIC Insightによると、米国大手、Intelが支配する業界にあってSTMicroelectronicsが唯一、グローバルトップ10プレーヤーに入っている。

寄せ集めの全欧州の政策の枠組みは、部分的には悪いことがあるかもしれないが、競い合って半導体を生産するグローバルな課題に直面するために欧州業界にKroes氏が緊急に結束を呼びかける所以である。

"自己満足は決定的な打撃となる。"と彼女は言う。"ディジタル経済はほ かよりも7倍早く伸びているが、我々はリスクをとる必要がある。
Brusselsではリスクの回避があまりに多過ぎる。"…

次に、このところ積極的な発言が見られるGlobalfoundriesのManocha氏からまたまた以下のコメントである。

◇Globalfoundries: Europe 'fundamentally flawed' on manufacturing (12月20日付け EE Times)
→GlobalfoundriesのCEO、Ajit Manocha氏。欧州は、製造となると優先順位を置き違えている旨。European Commissionの技術への考え方に"致命的な欠陥"があり、重点化とリソースすべてをイノベーションに置き、製造は無視している旨。"Brusselsは目を覚ます必要がある。

この2件合わせると、Brusselsは固くて動かない傾向の印象が残ってしまうが、我が国にも照らすところ多々と思う。

米国、欧州ともに次の飛躍に向けて最先端技術そして市場を引っ張っていくための動きであり、議論を高めているということと思う。我が国のあり方というものを並べて考えている。

≪市場実態PickUp≫

いろいろ厳しい難局に見舞われた本年について、上がり下がりなど目立つ業界の動きトップ10のまとめである。

【本年の動きトップ10】

◇Slideshow: Top 10 shifts in chips, comms (12月17日付け EE Times)
→厳しい本年、予測の下方修正に追われた市場watchersによると、半導体業界は約4%縮減との見方。この責の多くは欧州にあり、ギリシア、スペイン、イタリアそしてアイルランドが代わる代わる財政崩壊の脅威に直面、European Union弱体化の危険性に。米国は鈍い回復を通して苦闘、グローバル成長エンジンの中国すらも嵐を予想して難局に当たった旨。このような2012年の上下変動、勝者&敗者など、半導体、通信におけるshiftsトップ10:
A down year
 …半導体販売高
The shift to the mobile cloud
 …牽引役がPCからモバイル、cloudへ
The rise of the mega data center
 …Amazon, eBay, FacebookおよびGoogle
Moore's Law slows
 …モバイル需要に応えるには鈍い28-nm
The winners: ARM
 …Microsoftの熱い支持を得て、ARMにとって良い年
MIPS on the ropes
 …x86およびARMに引き離される
More winners: Apple, Samsung, Qualcomm
 …モバイルシステム3社
Roads diverge for Wintel
 …Intelのスマホプロセッサ
The Losers: Elpida, Nokia, AMD, Renesas, STM, TI
 …厳しい1年
The next big thing in networking: SDN
 …software-defined networking

アップル対サムスンの特許係争は、米国西海岸ではアップルの勝訴という評決がこの夏の終わりに出されたが、こんどはサムスン製品の販売差し止めまでは必要ないという裁定となっている。

【販売禁止までは不要】

◇サムスン製品の販売差し止め請求棄却、米連邦地裁−「アップル特許の侵害は機能の一部」 (12月18日付け 日経 電子版)
→カリフォルニア北部地区米連邦地裁(San Jose)が17日、韓国サムスン電子製品の販売差し止めを求めていた米アップルの訴えを棄却、「アップルの特許を侵害したのはサムスン製品の一部。販売禁止までは必要ない」とした旨。アップルはサムスン製品がアップルの特許を侵害しているとして提訴、今年8月にサムスンの26製品が特許6件を侵害しているとする陪審評決を勝ち取っていた件。

入札価格の値踏みが繰り返されたMIPS事業買収の件、Imaginationに落着という結果になっている。特許の件数とその買収価格に注目している。

【MIPS事業買収】

◇Imagination Tech lands MIPS with $100 million offer (12月17日付け Reuters)
→MIPS事業買収を巡ってCevaからの$90M競合オファーを受けて、Imagination Technologies Groupが、該入札価格を$100Mに増やした旨。

◇Ceva Refrains from MIPS Bidding War with Imagination.-Imagination Tech to Obtain MIPS Business for $100 Million (12月19日付け XBitLabs.com)
→Cevaが、Imagination Technologies Groupが提示した$100Mを超えるMIPS Technologiesのoperating事業買収への入札は行わない旨。MIPS資産には、MIPS特許498件買収に$350M支払っているAllied Security Trustに売られていない特許82件が含まれる旨。

米国での最先端半導体工場誘致の活発な動きの一端を示す以下の内容である。上記の米国雇用拡大を目指す各州の間の凌ぎ合いの様相を受け止めている。

【Oregon州半導体工場誘致】

◇Oregon courts mysterious 'Project Azalea,' said to be a massive chip factory (The Oregonian (12月18日付け Portland))
→Oregon州当局が、Beaver Stateでのウェーハfab拠点建設にある半導体メーカー、コード名Azaleaを誘致しようとしている旨。Azalea事情通筋によると、同じ半導体メーカーにNew York州から声がかかっており、いろいろなメディア報道によると、その半導体メーカーはTSMCかもしれない旨。

◇Report: TSMC confirms U.S. wafer fab site hunt (12月20日付け EE Times)
→Taipei Times発。Supply Chain Management Forum(Hsinchu, Taiwan)にて、TSMCのchairman and CEO、Morris Chang氏。TSMCはウェーハfabに向けた場所を探し求めており、米国は考慮対象の1つ、しかしAppleとは関係ない話の旨。

≪グローバル雑学王−233≫

地球温暖化、環境破壊、資源の枯渇と、化石燃料依存型の経済からの脱却が唱えられ続けているが、経済成長は右上がりの一方、CO2排出量は右下がりというデカップリング経済の推進について、

『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』  
 (三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行

より見ていく。旧態依然から生まれ変わって新たなやり方に乗り出していく推進力、モチベーション如何と、デンマーク、ドイツ、イギリスの来し方に注目かと思う。

I部 新しい日本に生まれ変わる
第4章 デカップリング経済のすすめ       ≪前半≫

□豊かな社会をもたらしたハイカーボン・グロウス
・18世紀後半からの産業革命を支えたエネルギー源が石炭
・20世紀、石炭に代わって石油に人気
 →自動車王、ヘンリー・フォードが1908年、T字型フォードの生産を発表
 →1920年代、GMがフォードを急追
 ⇒アメリカ経済は石油と自動車を両輪、目覚ましい発展
・第二次世界大戦後、「アメリカに続け」を合言葉、ヨーロッパや日本がアメリカ型の大量生産方式
・石炭や石油などの化石燃料に依存した経済成長
 →「ハイカーボン・グロウス(高炭素型成長=化石燃料依存型成長)」

□一方で温暖化の原因に
・ハイカーボン・グロウス →環境破壊や資源の枯渇
・現在、経済活動などによるCO2排出量は世界全体で年約72億t(炭素換算)
 →自然が吸収できる量はその半分
・温暖化対策への積極的な取り組み
 →日本人にとっても優先度の高い責務
 ⇒大幅削減を成功、世界の模範を示すぐらいの心意気を!

□ローカーボン・グロウスへの転換を急げ
・そのためのキーワードが、デカップリング(decoupling)
 →経済成長と化石燃料との密接な関係を引き離すこと

□経済成長は右上がり、CO2排出量は右下がり
・ハイカーボン・グロウスからローカーボン・グロウスへの転換が急務

□成功したEU諸国
・1990年から2007年までの17年間
 →デンマーク、ドイツ、イギリスは、GDPは増加、GHG(温室効果ガス:Green House Gas)は減少
・アメリカと日本、まだ20世紀型のカップリング経済から抜け出せていない
・アメリカは2001年3月、京都議定書から離脱
 →これまでと同様のやり方で高い経済成長を目指す
・今の中国やインドもアメリカ型

□日本企業もデカップリング経営が必要
・日本では化石燃料の消費を厳しく抑制する政策を推進
 →企業が生き残るためには化石燃料依存度を低下させる経営が必要に

□1980年代の日本は実現していた
・1970年代から1980年代にかけて2度の石油ショック
 →原油価格が高騰、4万2000円程度に上昇(1979年)
 ⇒日本産業の省エネ化が大きく進み、デカップリング経済が実現

□1990年代以降に逆戻り
・1990年の原油価格は2万円程度まで低下、1995年には1万1000円程度に

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