モバイル活況に立ちはだかるマクロ経済懸念:世界半導体販売高
iPhone 5が市場の話題を賑わせるなか、米国SIAから8月の世界半導体販売高データが発表されている。前月並みの値となっているが、前年同月には3.2%減と及ばず、本年1月から8月までの累計では前年に比べて4.6%減っている。
モバイル活況が引っ張る盛り返しが期待されているが、一方で欧州そして米国と経済の減速懸念がさらに強まって、中国、インドはじめ頼みの新興経済圏の伸びを脅かせており、折しも米国大統領選挙をはじめとする節目の動向に半導体業界も固唾を飲んで注目していかざるを得ないところと思う。
≪8月の世界半導体販売高≫
米SIAからの発表は次の通りである。大統領選挙に向けて経済の安定化、そして浮揚を求めるメッセージが盛り込まれている。
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○8月のグローバル半導体販売高は前月並み …10月2日付けSIAプレスリリース
半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2012年8月の世界半導体販売高が$24.30 billionで、前月の$24.27 billionから0.1%と僅かながら増加、昨年2011年8月の$25.1 billionからは3.2%減少したと発表した。2012年1月から8月までの累積販売高は、$189.46 billionに達し、前年同期比では4.6%の減少である。
「グローバル半導体販売高は、マクロ経済の強い逆風にも拘らずここ数ヶ月堅実に保たれているが、それら難題により伸びが妨げられている。」とSIA president & CEO、Brian Toohey氏は言う。「大統領選挙日が迫ってきて、候補者たちは、ビジネスの不安定性を減らして経済回復を加速させ、アメリカを革新の最前線に維持するための政府施策を遂行することについて精力的に議論すべきである。」
前年比および年初からの累積の販売高は、すべての地域で下回っており、日本およびAsia Pacificでは小幅、EuropeおよびAmericasでは大きな低下となっている。販売高の前月比では、Americasが2012年4月以来の増加(1.0%)、日本も増加(1.0%)したが、Europeは僅かに低下(-1.9%)、Asia Pacificはそのままフラットとなっている。 月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。
【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域 | Aug 2011 | Jul 2012 | Aug 2012 | 前年同月比 | 前月比 |
======== | |||||
Americas | 4.58 | 4.14 | 4.19 | -8.6 | 1.0 |
Europe | 3.07 | 2.82 | 2.77 | -9.8 | -1.9 |
Japan | 3.64 | 3.60 | 3.64 | -0.3 | 1.0 |
Asia Pacific | 13.81 | 13.71 | 13.71 | -0.7 | 0.0 |
計 | $25.10 B | $24.27 B | $24.30 B | -3.2 % | 0.1 % |
※8月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒http://www.sia-online.org/clientuploads/August%202012%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
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これを受けた業界各紙(誌)の見出しタイトル、以下の通り。
◇Chip sales flat in August (10月3日付け EE Times)
◇SIA: Chip sales essentially flat in August (10月3日付け ELECTROIQ)
◇Global chip sales down 3% in August 2012, SIA reports (10月3日付け DIGITIMES)
半導体製造装置業界について、本年のウェーハfab装置spendingが13%落ち込む見通しが出されており、理由にマクロ経済懸念が挙げられている。
◇Fab tool demand on the decline (10月1日付け EE Times)
→Gartner社発。2012年のグローバル半導体ウェーハfab装置spendingが、13%減の$31.4Bの見込み、「マクロ経済が弱含み、半導体装置市場の見通しが悪くなっている」(同社リサーチvice president、Bob Johnson氏)旨。
それもそのはずアジア開発銀行によるアジア地域GDP見通しも大幅に下方修正されており、欧州そして米国の経済の現状が影を落としている。
◇アジア経済、減速鮮明、2012年成長率6.1%に下方修正−輸出や投資の縮小顕著、アジア開銀 (10月3日付け 日経 電子版)
→アジア開発銀行(ADB)が3日、日本など域内先進国を除くアジア地域の2012年の実質国内総生産(GDP)成長率見通しを6.1%と発表、4月の予測から0.8ポイントと大幅に下方修正した旨。輸出や投資の縮小が顕著で、欧州の債務危機や米国の財政問題による世界経済の減速がアジアにも及んでいることを鮮明にした形の旨。中国とインドの内需の陰りが目を引く旨。
モバイル活況を受けて半導体業界盛り返し気運を引っ張っていたファウンドリー業界であるが、本年後半に入ってからの受注が減り始めて、売上げの方は第四四半期に大きく落としていく見方となっている。
◇Foundry sales growth hitting the skids (10月5日付け EE Times)
→IHS iSuppli(El Segundo, Calif.)発。専業半導体ファウンドリーの販売高の伸びが、力強かった第二四半期を経て、2012年後半は鈍化している旨。ファウンドリーでは、第三四半期の間に今後の販売高につながる受注が減少し始めている旨。先端技術需要が引き続き全体の売上げの伸びを引っ張っていく一方、ファウンドリーはグローバル経済悪化はじめ外的影響の効果を感じるようになると見る旨。
・≪グラフ≫ 世界専業ファウンドリーの2012年四半期売上げ推移&予測
⇒http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/121005_ihs_foundry.jpg
≪市場実態PickUp≫
かつての"エレショー"の呼び名がついて離れないところがあるが、恒例のCEATECが開催され、足を運んでみた。以下にある通り、自動車関係の出展初登場、走るエリアブースが見られて、昔の立て込んだ印象からだだっ広くなった様変わりの雰囲気もある。
【CEATEC JAPAN】
◇シーテック、幕張で開幕、家電・ITの最先端技術が集結 (10月2日付け 朝日新聞デジタル)
→国内最大の家電・情報技術の見本市、「CEATEC JAPAN」が2日、千葉市の幕張メッセで開幕、20の国と地域から624社が参加、高精細な「4Kテレビ」など最先端の技術を出展する旨。13回目の今年は、トヨタ自動車が初めて出展するなど、自動車メーカーが電機大手と協力して大きな展示スペースを構えた旨。コードをつながずに電気自動車を充電する装置や、車から住宅に電力を送るシステムなどが紹介される旨。
◇Toyota 'Insect': A smart concept car (10月3日付け EE Times India)
→トヨタ自動車が今回の場で、"Smart Insect"コンセプトの1人乗り電気自動車を披露、外観下記参照。
⇒http://www.eetindia.co.in/STATIC/ARTICLE_IMAGES/201210/EEIOL_2012OCT03_EMS_INT_OPT_SENS_NET_NT_01.jpg
いくつかプレゼンを聞いたが、タイトル&キーワードを並べると次の通り。
・スマートコミュニティのビジネスモデル
・スマートハウス実現への取り組み
・ITを活用した社会全体のスマート化
・スマートシティソリューション
・クラウドを核に産業と社会をつなぐ
半導体デバイスがシステムにすっぽり入ってしまって、今やスマート社会の実現となにか茫漠とした印象が否めないところがある。ものづくりの中核をしっかり表わして一般の理解を得る必要性を一段と感じるところであるが、中国を見遣って次のようなコメント記事も見られている。
◇Yoshida in China: Awaiting a Chinese CES (10月4日付け EE Times)
→CEATECでのホットな製品について読んでいると、頭に急にひょいと出てくる一つの疑問、CEATECあるいはCESのような大きなconsumer electronics trade showが中国で見られるのはいつだろうか?
Sun Microを買収して時間が経つOracleについて、同社を中軸とするいくつかの連携の動きに注目している。
【Oracleを軸とする動き】
◇Oracle CEO: Oracle, Fujitsu Developing New Sparc Chip-Fujitsu and Oracle are working on new Sparc processor, Ellison says (9月30日付け The Wall Street Journal/Dow Jones Newswires)
→OracleのCEO、Larry Ellison氏。同社は、新世代のSparc MPUについて富士通とコラボ、"たくさんのソフトウェア機能のシリコンへの移行"を目指す旨。OracleのOpenWorld conference(San Francisco)にて同氏は、Exadata X3データベースマシンを投入、cloud computingにおけるイニシアティブを発表の旨。
◇AMD Teams Up with Oracle to Explore Heterogeneous Computing for Servers. (10月1日付け XBitLabs.com)
→JavaOne 2012(9月30日〜10月4日:San Francisco)の戦略基調講演で、Advanced Micro Devices(AMD)が、OpenJDK communityのOracleはじめメンバーとコラボ、OpenJDKプロジェクト、"Sumatra"への参加を発表、サーバおよびcloud環境向けJavaにheterogeneous computing対応をもたらす支援を行う旨。
◇AMD wants graphics processors to run Java (10月2日付け EE Times)
→JavaOne 2012 conference(9月30日〜10月4日:San Francisco)にて、AMD Corporate FellowでHeterogenous System Architecture(HSA)のpresident、Phil Rogers氏基調講演。Advanced Micro Devices(AMD)社が、Oracle社と一緒になってJavaがgraphics processor units(GPUs)を含むプロセッサエンジンmixで如何に加速されるかに取りかかる旨。
STMicroelectronicsの積極的な取り組みはじめ、MEMS業界の話題の高まりを感じている。半導体の微細加工、高密度実装との融合化という大きな流れの兆しが表われてきている。
【MEMS業界】
◇ST plots wireless MEMS roadmap (10月3日付け EE Times)
→STMicroelectronics NVが、MEMSへのsystem-in-package(SIP)アプローチを推進しており、2013年末までにワイヤレスMEMSコンポーネント、そして2014年には環境MEMSにgasセンサが統合されると見る旨。STは近年、事業のディジタル面では苦しんでいるが、MEMS事業は顕著な成功を収めており、2011年の売上げ約$900Mで業界を引っ張る位置づけの旨。
◇Gearing up for growing MEMS market: Q&A with Multitest VP of sales and marketing James Quinn (10月4日付け DIGITIMES)
→MEMSデバイスのグローバル市場が、車載応用を超えて拡大しており、センサ価格が下がり続ける一方、センサの生産メーカーはまた、3D heterogeneous integrationなど高密度form factors設計において高まる困難に直面している旨。
華やかで大きく伸びる市場の影について回る品質クレームそして模造品であるが、現下の実態の一端が以下の通りである。consumer市場の修理、repairには及ばない、及べない実態を再確認している。
【品質、模倣の実態】
◇One in 10 smartphones gets returned, study finds (10月1日付け EE Times)
→NPD Groupによる最新調査。昨年米国で購入されたスマートフォン10台に約1台の割合で、しばしば欠陥に気づく形で返却されており、スマートフォンが最も返却されるconsumer electronicsアイテムとなっている旨。戻した人々の約60%が、同じブランドあるいはモデルの別のものと交換している旨。
◇Counterfeiting problems not getting any better-IHS: Chip counterfeiting incidents are on the rise in 2012 (10月3日付け Electronics Weekly (U.K.))
→IHS発。模造半導体発生件数が、2011年の107.1/月に対して、今年は107.3/月平均できている旨。National Defense Authorization Actのもと、米国防総省が本日、軍事/宇宙航空分野で重大な問題と考えられている半導体模造についての情報を更新する運びの旨。
≪グローバル雑学王−222≫
日本の名人、名匠の世界に誇るワザ、その前半として、建築、ヘアサロン、そして和包丁について、
『世界がうらやむ日本の超・底力』 (ロム・インターナショナル/著:KAWADE夢新書)
…2012年 5月10日 初版発行
より、その世界に対するインパクトを再確認する。普段目にしているだけに我々には当たり前感覚が伴ないがちになるが、それぞれの貴重、有り難さの再確認でもあると感じている。
4.歴史と伝統が紡いできた世界に誇る"名人"ワザ ≪前半≫
・日本が長い歴史のなかで培ってきた、世界に誇るべき"名人"たちの技術
→和箪笥
→欄間
◆独創的なデザインで世界を席巻する建築家
・世界中から引っ張りだこの日本人建築家
→日本人建築家の作品が世界各地で誕生
・日本建築界の第一人者・安藤忠雄
→安藤忠雄氏…関係する各賞を総なめ
→ほかに日系アメリカ人、ミノル・ヤマサキ氏…ワールドトレードセンタービル(9・11テロで倒壊)を設計
・斬新なアイデアに息づく和の伝統
→日本が長い時間をかけて育んできた伝統的な建築文化
…シンメトリー(対称性)とは正反対の美学
→先例にこだわらない斬新なアイデアとすぐれた施工技術
◆「世界一のサービス」と絶賛されるヘアサロン
・世界大会での実績が証明する技術力
→日本の理容室、美容室やヘアサロンで提供される美容サービスは、世界一の水準
→日本人はもともと手先が器用、ミリ単位のレベルで仕上がりにこだわる繊細な感性
・質の高いサービスが生まれた理由
→「おもてなしの心」が反映
→日本独特のサービス…タオルによる首周りのガード
→至れり尽くせりのサービスが日本全国津々浦々、どこの美容室でも
→日本の美容界の底力を示す一端
◆西洋のシェフからも熱い支持を受ける和包丁
・「料理の鉄人」がブームの火付け役に
→欧米での日本食ブームの広がり、人気を集める「和包丁」
→フレンチ、イタリアン、中国料理など幅広いジャンルのシェフや一般の主婦が、和包丁を選ぶ
・ていねいな手仕事が鋭い切れ味を生む
→和包丁は、日本刀に源流をもつ鍛造工程のつくり、切れ味バツグン
→種類が豊富、目的に応じて使い分け
・大阪の地で発展をとげた製造技術
→特に海外で人気、堺(大阪府)の和包丁
→日本国内でも業務用シェアの約9割