微細化・小型化が推進、境界を越える新たな応用市場の開拓&拡大
今年の半導体もこの時節、恒例のInternational Solid State Circuits Conference(ISSCC) 2012≫(2月19-23日:San Francisco, CA)が開催されている。業界一般、そして出席者からいただくネット情報&メールから感じることであるが、微細化・小型化技術の進展に絶え間はなく、かつて出席した1980年代のそのままの息吹の一方で、応用市場のますますの拡大を様々な半導体システムソリューション記事から受け止めている。アジア勢の進出、グローバルなファウンドリービジネス競争にも注目させられている。
≪ISSCC 2012から≫
1980年代半ばにISSCCにいっしょに出席した当時の会社同僚、米国人の方から2月23日のメール連絡である。
…ISSCCに来ている。馴染みの顔はほとんどなく、大半は我々2人世代よりずっと若いよ! 論文情報を送ってあげようと思うけど、このホテルのワイヤレス、どうしようもなく遅くてね。
今回の出席は3200人くらい。アジア、アメリカ、欧州、それぞれ1/3というところ。…
出席世代は移り変わりでいたし方ないが、本年のISSCCの雰囲気が伝わってくる。
関係記事に目を通しながら、まずは変わらない絶え間のない微細化・小型化の流れである。Intelからは最先端、22-nm tri-gate技術プロセッサの詳細が初めて示されている。
◇Intel gives deeper look into Ivy Bridge (2月20日付け EE Times)
→Intelが、同社22-nm tri-gate技術を用いる最初のプロセッサ、Ivy Bridgeの初めての詳細公開、最大のversionでは160-mm2にトランジスタ1.4 billion個が入る該半導体について少なくとも4つの主要variantsを計画の旨。Ivy Bridgeは、20-channelsのPCI Express Gen 3 interconnectおよびDisplayportコントローラを収容、Intel初のPCIe統合半導体である旨。
メモリ関係はフラッシュについて次の拮抗する状況である。
◇ISSCC: SanDisk set to show highest density NAND flash (2月22日付け EE Times)
→SanDisk社が、128-Gbit monolithicデバイス、3-bits/メモリセル、19-nmCMOSのNANDフラッシュメモリの詳細を発表、最高density ICとなる旨。
◇Memory firms detail sub-20-nm NAND chips (2月23日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd., 東芝およびSanDisk社が、それぞれの19-nm NANDフラッシュ半導体の詳細プレゼンで登壇の旨。
Samsung …64-Gbit multi-level cell(MLC) NAND、sub-20-nm技術
東芝 …19-nm multi-level 64-Gbit NAND
SanDisk →前出参照(上記)
あらゆる応用分野に拡がっていく半導体はますます健在であり、論文や展示から注目点ピックアップの下記の記事の内容も非常に多彩と受け止めている。一例として、2.5D、Silicon Interposer、3-D IC stackといった小型化実装分野のキーワードが目についている。
◇ISSCC round-up: 2.5D packaging for IVRs, smallest NAND flash chip, more (2月22日付け ELECTROIQ)
→以下の注目内容:
・On-chip voltage regulator
…Semiconductor Research Corporation(SRC)およびColumbia大。
“A 2.5D Integrated Voltage Regulator Using Coupled Magnetic Core Inductors on Silicon Interposer Delivering 10.8A/mm2”
・THz circuits from CMOS silicon fab
・Smallest NAND Flash
・First use of resonant clock mesh technology in volume ICs
・Wireless sensor, organic electronics work
◇ISSCC: Pictures from a silicon exhibition (2月23日付け EE Times)
→常に半導体設計最新版のグローバルなsmorgasbord(バイキング料理)であるこの場、2012年版も例外ではない旨。以下の注目写真:
・Intelのchief product officer, Dadi Perlmutter氏基調講演
…3-D stacksを用いるteraherz-class clientコンピュータ
・GIT shows Tounge Drive, multicore stack
・Processors and pearls
…Michigan大の3-D IC stack、Centip3De
・Advances in flash, CPUs and moving-object recognition
…Korea Advanced Institute of Science and Technology(KAIST)のreal time moving object認識システム
・Samsung does quad core, 3-D
…2-Dおよび3-D画像を捉えられるプロセッサ
・Resonaters and recognizers
・Low power everywhere
…Rambusの16-Gbit/s differential bi-directional parallel link
また、健康・医療への応用も今後の伸びを予感させている。
◇ISSCC highlights sensors and semiconductor technology in medicine (2月24日付け EE Times)
→今年のISSCCのセッション17は、健康に向けた診断および健康維持に役立つ技術に焦点、センサおよび半導体技術の最近の進展に影響力を及ぼしている旨。以下の例:
*SoC solution for continuous EEG(electroencephalography:脳波計) monitoring
*Real-time seizure(発作) detector SoC
このような新旧入り交じる様相とともに、ISSCCノミネート状況においても北米を上回るアジア勢、我が国を上回る韓国と現下の趨勢を改めて確認している。
◇半導体技術のオリンピック、論文数、韓国が日本抜く。 (2月20日付け 日経)
→「半導体技術のオリンピック」とも呼ばれる国際学会「ISSCC」で韓国の今年の論文発表件数が前年比5割増、アジア地域で日本を抜いて初の首位に立った旨。韓国が牽引力となってアジアは初めて北米地域を上回り、世界全体の36%を占めた旨。
今年の世界の合計論文数は202件、首位の米国は65件で昨年比8件減、韓国は昨年、20件で3位だったが今年は30件で2位に浮上、日本は25件で昨年比1件増にとどまり、2位から3位に後退した旨。
研究機関や組織別の件数ランキングでは、韓国科学技術院(KAIST)が米インテルと並んで首位、韓国のサムスン電子も4位、日本は東芝の10位が最高の旨。
最先端製造技術で顧客の設計を受けるビジネスについて、SamsungとTSMCの応酬模様が見られている。
◇Samsung positions its fab to take on TSMC (2月21日付け EE Times)
→Samsungが火曜21日、同社の新しい32-nm high-k metal gate(HKMG)プロセスをお披露目、供給に制約のあるTSMCから顧客を引き入れる期待のfeaturesを示している旨。
◇Samsung may give TSMC a run for its money (2月23日付け EE Times Asia)
このファウンドリー業界、もう一つの注目、Globalfoundriesについて、次の記事はISSCCとは関係ないが、もう一つの応酬模様と感じている。
◇Globalfoundries to acquire ProMOS for NT$20-30 billion, say sources (2月24日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Globalfoundriesが、苦境のProMOS Technologiesを$0.7B〜$1Bで買収することに合意の旨。グローバル製造拠点にProMOSの12-インチウェーハfab(台中・台湾[Taichung, central Taiwan])を加えて、Globalfoundriesは中国および台湾のICデザインハウスからの受注獲得に努める旨。
≪市場実態PickUp≫
話がファウンドリー業界に移ったついでではないが、Intelが、programmableロジックstartupへのファウンドリー対応、2件目を確認している。
【Intelのファウンドリー対応】
◇Intel confirmed as foundry for second FPGA startup (2月21日付け EE Times)
→programmableロジックstartup、Tabula社(Santa Clara, Calif.)が、同社の22-nm 3PLD製品をIntel社が3-D tri-gateトランジスタを用いて製造する旨。2010年10月のAchronix Semiconductor社のIntel製造22-nm FPGAsに続いて、TabulaはIntelのCustom Foundry部門ファウンドリーサービスを受ける2番目のprogrammableロジックstartupとなる旨。
◇Tabula's next-gen FPGAs to use Intel's 22nm process featuring 3-D tri-gate transistors (2月21日付け EE Times)
先般、2月14日に、韓国・ハイニックス半導体が、韓国財閥3位、SKグループにより買収され、DRAMに偏重してきた事業構造の見直しにまず取り組むとしているが、こんどは韓国もう一方の雄、Samsung ElectronicsからLCD事業の分離が発表されている。
【韓国両雄の事業再構築】
◇Samsung drops LCD business (2月20日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.の役員会が、同社LCD事業を分離する計画を承認、3月16日予定の総会で株主の承認を得る運びの旨。結果として、該LCD事業は2012年4月1日付けでSamsung Electronicsの完全子会社となり、Samsung Mobile DisplayおよびS-LCD社との合併などいろいろな再構築を考えている旨。
原子1個、世界最小と銘打つトランジスタが、オーストラリアと米国などの大学チームにより製作されている。さらに先に夢をつなげる材料として注目ということと思う。
【原子1個のトランジスタ】
◇Scientists develop single-atom transistor with 'perfect' precision (2月20日付け ZME Science)
◇We can do no Moore: a transistor from a single atom (2月20日付け Ars Technica)
→single-atomトランジスタのelectron micrograph、下記参照。
⇒http://static.arstechnica.net/assets/2012/02/simmons_singleatomtransistor_weboptimised-4f426cc-intro-thumb-640xauto-30468.jpg
◇The ultimate limit of Moore's Law: The one-atom transistor (2月21日付け ELECTROIQ)
→New South Wales大、Purdue大およびMelbourne大の研究チームが、1個のphosphorous原子を用いた最小トランジスタを製作の旨。
◇原子1個のトランジスタ、米豪のチーム成功、世界最小 (2月21日付け 朝日新聞デジタル)
→原子1個だけでできているという世界最小のトランジスタの製作にオーストラリアと米国などのチームが成功、19日付の専門誌ネイチャー・ナノテクノロジー電子版で発表した旨。
≪グローバル雑学王−190≫
とりあえずのビール、赤白のワインが、居酒屋の最盛期であるヨーロッパ中近世の人々が囲むテーブルを飾っていることを、
『居酒屋の世界史』 (下田 淳/著:講談社現代新書 2120)
…2011年 8月20日 発行
より、想像を巡らしている。ビールやワインの源流、教会や修道院を通しての発展など、コミュニケーションの場とその広がり&深まりに欠かせないお酒に纏わるエピソードを、またまた手前勝手な解釈で味わいながら読み進めている。
第二話【前半】 ヨーロッパ中近世 − 居酒屋の最盛期
・ヨーロッパの居酒屋−12世紀前後に成立
→二通りの成立パターン:
*教会や修道院の醸造所から発展
*女性が自宅で作るビール、それが居酒屋に
・16世紀前後、特に居酒屋が増加
→教会で酒が飲めなくなったことも関係
→宗教改革で決定的に
・民衆にとって不可欠の存在
→居酒屋の「多機能性」:
−コミュニティセンター
−娯楽の場
−商取引の場
−金貸し
−祭り・冠婚葬祭の宴会の場
−巡礼宿
・農村にも居酒屋
→貨幣経済の農村への浸透
・古代と同様、知識人や上流階級が居酒屋を悪事の巣窟と非難
○帝国とともに消滅した居酒屋
・アルプス以北の最初の居酒屋 →ローマの属州に成立
→ローマ帝国の終焉とともに消滅
○居酒屋復活の条件
・12世紀頃、居酒屋が復活登場
→農奴に土地を貸与、その見返りに年貢を徴収する荘園制が成立
→十字軍の時代、巡礼者が増加 …居酒屋(宿屋)の発展に貢献
○エールの国・イングランド
・ビール製造法 →フェニキア人がヨーロッパ、そしてイギリスにもたらしたという説
・イギリスのビール →エールと呼ぶ
→エールが上面発酵、対してラガーは下面発酵のビール
・質の良いエールをつくる家が、居酒屋(エールハウス)へと発展
→主人も女性が多い
・1552年、イギリスでエールハウス開店の認可(免許)が必要に
・エールハウスは、16世紀から17世紀にかけて激増
→聖と俗が混淆していた教会、宗教改革前後から俗の部分が居酒屋に移行
○イン・エールハウス・タヴァン
・16世紀中葉以降のイギリス、三つのタイプの居酒屋
→イン …宿屋。食事、エールも提供。
エールハウス …エール祭:貧民救済、互助、慈善のためのお祭り
→エール祭は17世紀以降衰退
タヴァン(↓)
○上流階級逢引の場所−タヴァン
・タヴァン(ラテン語のタベルナに由来)
→ワイン居酒屋、16-17世紀が全盛期、上流階級用
→ロンドンの上流階級の集会所、商取引所
→上流階級(とはいっても下級貴族程度?)の逢引の場所でも
○デフォーがみた乱行
・1665年、ロンドンではペストが大流行
→『ロビンソン・クルーソー』で有名なダニエル・デフォーによる、ある居酒屋での乱行ぶりの描写が見られる
○コミュニティセンターとしての居酒屋
・中近世のイギリスの居酒屋
→農村では人びとのコミュニティセンター
…商談、村人の会合
…情報収集の場
…様々なエンターテインメント
○フランスとドイツの居酒屋禁制
・フランスとドイツ
→しだいに居酒屋開設権を、都市や在地の貴族、教会、修道院などに授封(権利を授ける)
・領主は、しだいに自らが公認した居酒屋以外で、ビールやワインを領民が飲むことを禁じるように
→「居酒屋禁制」
→例:ドイツ・バイエルンの居酒屋禁制 …1702年まで存続
・フランスでは、修道院と世俗の領主がこぞってワイン禁制を布いた
・居酒屋禁制がなくなるのは、地域によっても異なるが、18世紀になってから
○宿や居酒屋を意味する語
・ラテン語の「ホスピタリア」を語源とするフランス語のホテル(オテル)
→フランスの宿や居酒屋を意味する語:
−「オベルジュ」 …宿屋
−「カバレ(キャバレー)」 …大衆飲み屋
−「タヴェルン」 …大衆飲み屋
−「ガルゴット」 …安料理屋
−「ギャンゲット」 …郊外居酒屋
・18世紀:「ターブル・ドート」(安食堂)
「タバジー」(喫煙酒場)
19世紀:「ビストロ」「ブラスリ」(ビヤホール)
「アソモワール」(安居酒屋)
○修道院がワインをつくった
・10世紀以前、セーヌ川、ロワール川流域に修道院が数多く、ワイン醸造が行われた。
・1098年、ブルゴーニュ・シトーの森にシトー修道院を創設
→ぶどう畑の開発に精を出す
→ブルゴーニュ・ワインのもとに
・修道院がワイン造りを行った背景
→修道院のもつ神秘主義的傾向にあるか …酒は精神を高揚