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堰を切ったスマホ、タブレットそしてPCの凌ぎ合いの動き

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Jobs氏死去から2週間、追悼期間の区切りを示すかのように、俄かにエレクトロニクス・半導体業界各社の新製品発表、競合鬩ぎ合いの動きが活発に熱気を帯びて行われている。Jobs氏が強く対抗意識をむき出しにしたというグーグルからも、サムスンと組んだ新規スマートフォンが発表されている。モトローラやカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)も負けじと新たな打ち上げがあり、スマホ、タブレットそしてPCの凌ぎ合いが経済低迷のなかの消費者心理と対峙する形と受け止めている。

≪熱い競い合い≫   

Jobs氏死去の直前に発表された「iPhone 4S」は、あまりiPhone 4と変わらないという評価が先立ったが、その後いくつか新たなfeaturesに評点が高まっているところがある。

◇IHS spotlights iPhone 4S component changes (10月17日付け Electronics Design, Strategy, News)
→IHS iSuppli発。Apple社の最新iPhone、iPhone 4Sは、iPhone 4と類似性が多々あるが、顕著なアップグレードもいくつかあり、アプリ・プロセッサの大きなアップグレード、高解像度のさらに進んだカメラモジュールの使用そして新しいcellular radioが加えられてiPhone 4Sが真の"world phone"になっている旨。

「iPhone 4S」での移行を期待されたA6プロセッサであるが、その生産受託についてサムスンとTSMCの間での競合が見られている。

◇Report: Samsung ramping Apple's A6 chip (10月17日付け EE Times)
→Appleのコンポーネントサプライヤを情報源としたKorea Times発。ライバルのファウンドリー、TSMCが生産安定化に至っていないことから、Samsungが、Apple向けA6 quad-coreアプリ・プロセッサの生産を立ち上げている旨。

「iPhone 4S」を巡る係争の方では、サムスンがアップルへの巻き返しを行っている。

◇サムスン、日豪でも仮処分申請、iPhone 4S巡り(10月17日付け 日経 電子版)
→サムスン電子が17日、日本とオーストラリアの裁判所でアップルのスマートフォンの新機種「iPhone 4S」の販売禁止を求める仮処分を申請したと発表、今月5日のフランスとイタリアに次ぐ申請の旨。日本では「iPhone 4」と「iPad2」でも販売禁止を求めた旨。いずれもアップルの製品がサムスンの保有する特許を侵害したと主張している旨。

係争については、台湾HTCとの間ではアップル優位の仮判断が下されている。

◇「アップル特許侵害ない」米ITC、台湾社訴えに仮決定 (10月18日付け 日経 電子版)
→アップルに携帯端末の特許を侵害されたとして、台湾の電子機器メーカー、HTCが訴えていた問題で、米国際貿易委員会(ITC)が17日、「侵害はない」とする仮決定を出した旨。本決定は来年2月の見通しの旨。

「iPhone 4S」自体の生産委託についても、Foxconn以外への比率を高める様相の動きがあり、ここでも競合の空気が増している。

◇Pegatron is Apple iPhone maker, says report(10月18日付け EE Times)
→Taiwan Economic News発。contract electronicsメーカー、Pegatron社(Taipei, Taiwan)が、Apple社からスマートフォン、iPhone 4S 15M台を作る注文獲得、同業のFoxconnで取引するcontractメーカー、Hon Hai Precision社(Taipei, Taiwan)から奪う格好と考えられる旨。PegatronはすでにiPhone 4Sを作っており、第四四半期の締めでは2M〜2.5M台の出荷、すなわち予想されるiPhone出荷の約10%となる旨。

アップルが引っ張る現状のモバイル機器市場から、半導体市場の方も以下の通り引き上げられる見方につながっている。

◇Smartphones, tablets drive mobile CPU growth (10月18日付け EE Times)
→John Peddie Researchのアナリスト、Jon Peddie氏最新レポート。少なくとも2016年まで予想されるモバイル機器の活発な伸びにより、対応してモバイルプロセッサが爆発的な伸びを示し、2016年には20億個以上の出荷を予想する旨。

◇Smartphones to drive DRAM, says IHS (10月19日付け EE Times)
→IHS発。スマートフォン用DRAMs出荷が、使用ビット数で次のように増大すると見る旨。
 2010年     2011年 
 672M gigabits  1.7B gigabits
2015年の出荷は13.9B台(2011年比700%増)に達すると見る旨。
・≪グラフ≫ グローバルスマートフォンDRAM消費予測
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/pcIHSdramSmartphone.jpg

後述するように、Intelから過去最高の四半期業績発表が行われ、PCも堅調という見方、論調である。

◇Intel's Q3 looks to ultrabooks as opportunity, adds jobs (10月19日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Intelの業績数字が証明するように、タブレットはPC市場の勢いを殺いではいない、しかし、市場は確実に変化している旨。

アップルに対抗するグーグルとサムスンの発表の動き、次の通りである。

◇グーグルとサムスン、最新版OS搭載のスマホ発表 (10月19日付け 日経 電子版)
→米グーグルと韓国サムスン電子が19日、香港でOS「アンドロイド」の最新版を搭載したスマートフォン「ギャラクシー・ネクサス」を発表の旨。両社は米アップルのスティーブ・ジョブズ会長の死去を受け、同機種の公表を延期していたが「iPhone 4S」の売れ行きが好調でアンドロイド陣営との競合が激化、「追悼期間」を終え新OS搭載機投入で対抗する旨。新OS「アンドロイド4.0」は、開発コード名「アイスクリーム・サンドイッチ」。

◇Google rolls out Android 4.0 with Samsung (10月19日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Goggleが、スマートフォン、タブレットおよびディジタルTVs用で別々に分かれていたOSを一本化、Android 4.0, 別名Ice Cream Sandwichをリリース、このニュースは、Samsungが該ソフトウェアを用いる最初のスマートフォン、Galaxy Nexusを発表したHong Kong press conferenceにて入ってきた旨。

モバイル機器業界の老舗の感が深まるモトローラ、リサーチ・イン・モーションからも新たな取り組みの打ち上げである。

◇超薄型携帯「レーザー」、スマホで復活、米モトローラ (10月19日付け 日経 電子版)
→モトローラ・モビリティが18日、厚さ7.1mmのスマートフォン「ドロイド・レーザー」を11月から全世界で順次発売すると発表、2000年代中ごろに世界的に大ヒットした同社の超薄型携帯「レーザー(RAZR)」のスマホ版。

◇「ブラックベリー」の加RIM、OSを一本化−スマホとタブレット、対応アプリの開発促す (10月19日付け 日経 電子版)
→スマートフォン「ブラックベリー」を販売するカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)が18日、従来は別々だったスマホとタブレットのOSを統一すると発表、新OSは、米グーグルの「アンドロイド」向けのアプリ・ソフトも使える旨。

いろいろな切り口での一気に溢れる展開にしばし注目である。


≪市場実態PickUp≫

アップルそしてインテルから過去最高の四半期業績が揃って発表されている。鈍化に悩む先進圏経済で大方はマイナスの業績発表となっているなか、突出して見える両社は振興国の伸びと比率の高まりを象徴している形と受け止めている。

【過去最高業績】

◇Apple's quarterly sales come up short (10月18日付け EE Times)
→Apple社(Cupertino, Calif.)の9月24日締め第三四半期販売高$28.27B、前四半期($28.57B)比約1%減、前年同期比39%増、四半期net profitは$6.62Bすなわち$4.64/株、前四半期比9%減、前年同期比54%増。

◇Intel's Q3 sales top $14 billion (10月18日付け EE Times)
→Intel社の第三四半期、販売高最高を記録:

前年同期比
販売高
$14.3B(最高)
29%増($3.2Bアップ)
operating income
$5.1B(最高)
22%増
net income
$3.7B
24%増

◇米アップル54%増益、7〜9月、iPhoneなど好調 (10月19日付け 日経 電子版)
→米アップルが18日発表、7〜9月期の純利益は前年同期比54%増の66億2300万ドル(約5100億円)と大幅増、中国などで販売が伸び7〜9月期としては過去最高の旨。ただ、「iPhone」の販売が市場予想を下回り、米株式市場の時間外取引でアップル株は売られ、一時7%超下落した旨。

◇米インテル最高益、7〜9月、新興国向け好調(10月19日付け 日経 電子版)
→米インテルが18日発表した7〜9月期決算、純利益が前年同期比17%増の34億6800万ドル(約2660億円)となり過去最高を更新の旨。景気減速に伴ない先進国での個人向けパソコン販売は低調だったが、新興国向けが好調に推移、法人向けも堅調で主力のMPUの販売を押し上げた旨。売上高は142億3300万ドル、6四半期連続過去最高を記録の旨。「世界のパソコン市場は姿を大きく変えており、中国が世界1位、ブラジルが3位になった」(ポール・オッテリーニCEO)

来るARM TechCon(10月25-27日)で詳細が明らかにされるとのことであるが、パワー効率化に向けた新たなプロセッサコアに基づく戦略が打ち上げられており、今後ここでも熱い論議を呼び起こしそうである。

【ARM最新プロセッサ】

◇ARM deployments outgrowing world's population (10月16日付け EE Times)
→Semicastが最近出したレポート。ARM-ベースデバイスが2015年までに世界の人口の1人あたり2個となる旨。以下の見方:


2000年
2016年
国連データベース世界人口
6.1B
7.6B
ARM-ベースプロセッサ稼働数
0.4B
17B
                 

◇ARM reveals 'little dog' A7 processor (10月19日付け EE Times)
→プロセッサIP licensor、ARM Holdings plc(Cambridge, England)が、パワー効率の良いCortex-A7プロセッサコアを披露、heterogeneous power-driven multicore戦略の一環として同社のtop-of-the-range Cortex-A15と併用する狙い、パワー効率のニーズに基づいてアプリを走らせるためにコアが選択されるようパートナーが"little dog, big dog"戦略を実行することを期待の旨。

◇ARM unleashes 'little dog' on Intel's tail (10月20日付け EE Times)
→ARMは確かに"big-little" A7/A15コアcomboで大きな取引をしようとしているが、パートナーはそのアイデアに完全には担がれないだろう、との見方。

◇ARM A7 comes under the microscope (10月20日付け EE Times)
→来週のARM TechCon(10月25-27日:Santa Clara Convention Center)で、ARMからの最新プロセッサ、A7に纏わる技術の詳細が初めて明かされる旨。

1990年代から半導体生産統計というとSICAS(Semiconductor International Capacity Statistics:世界半導体生産キャパシティ統計)が定番であったが、ここのところ発表の遅れの目立ちを感じていたら、次のような状況になっているとのことである。

【世界半導体生産capacity統計】

◇Foundries opt out of chip manufacturing stats (10月21日付け EE Times)
→米SIA(Washington)が、第二四半期のウェーハ製造capacity統計をリリース、世界の半導体製造capacityが前四半期比14%減となっているが、以前のSICAS統計レポートと比べて参加ベースが"大きく"変わってきていると強調の旨。最も大きいのは、台湾のTSMC、UMCおよびNanya Technology社がSICASプログラムから脱退、National SemiconductorもTexas Instrumentsによる買収から消えている旨。SICAS統計が1990年代に製造統計を出し始めた頃は世界の半導体fab製造capacityの約88%を表わしていたが、今時点では約57%となっている旨。


≪グローバル雑学王−172≫

無線通信で知られるマルコーニについて、

『世界を変えた発明と特許』 (石井  正 著:ちくま新書)  
 …2011年 4月10日 第一刷 発行

より、世界のどこでも通信という非凡な構想力、若くして各国に会社を設立する事業戦略、そして無線通信への貢献が評価されてのノーベル物理学賞と、恵まれた環境のなかでの天才ぶりの発揮の過程を辿っていく。三極真空管、RCA社の設立、パテント・プール方式と、無線技術が世界に広まっていく上でのキーワードとそれぞれの果たす重要な役割の度合いに改めて注目するところ多々である。


第4章 マルコーニの世界戦略−−−無線と国家安全保障

□米国の国家戦略に関わる無線技術
・1900年に創設された英国マルコーニ社は、第一次世界大戦においてその無線技術の威力を発揮
 →無線設備は販売することなく、すべて貸し出し、使用に応じて無線設備使用料
・1919年以降の米国、次々と政府に無線の規制権限を与える法制化
 →マルコーニ社の無線支配を抑制、拒絶するもの
・GE社が米国マルコーニ社の支配権を買い取り、新会社を設立
 →英国側はこの提案についに同意、1919年、ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(RCA)が設立
  →RCAは、米国あるいは世界のエレクトロニクス産業と技術の中心に

□無線で通信ができるのか
・ドイツの物理学者、ハインリッヒ・ヘルツ(Heinrich Rudolf Hertz:1857〜1894年)は1888年、電波の存在を実験で確認
・オリバー・ロッジ(Sir Oliver Joseph Lodge:イギリス:1851〜1940年)は、電波を通信に利用
・ロシアのアレクサンドル・ポポフ(Александр Степанович Попов:1859〜1905年)は1895年、無線通信実験に成功
・イタリアでは、ボローニャ大学のアウグスト・リーギ(Augusto Righi:1850〜1920年)が、20才のマルコーニに電波実験を伝える

□天才マルコーニの挑戦
・グリエルモ・マルコーニ(Guglielmo Marconi、1874年4月25日ボローニャ- 1937年7月20日ローマ)
 →生まれはまったく不自由ない家庭環境
 →非凡な構想力 
  …無線による世界のあらゆる場所での通信を直ちに構想
   →イタリアの政財界のネットワーク、英国政財界のネットワークを使用
・1897年、マルコーニ23才、イギリス・マルコーニ会社設立
・1901年、大西洋を越えての無線通信に成功
 →最も威力を発揮する船舶通信

□マルコーニの世界戦略
・マルコーニは各国にそれぞれのマルコーニ会社を設立
・当初の投資欠損から、1910年からは一転して莫大な利益
・1909年、無線通信への貢献を評価、ノーベル物理学賞を受賞
・ロッジ(上記)による選択同調回路の特許権とフレミング(下記)による二極真空管の特許を入手
 →マルコーニ会社の独占的な営業

□忘れられたエジソン効果
・ジョン・フレミング(Sir John Ambrose Fleming:1849〜1945年)による真空管の発明
 →天才、エジソンの関わり 
  →エジソンによるエジソン効果発明の特許…真空管の基本
・エジソンは1883年に特許出願、ただそこで研究をストップ

□用途発明としての真空管
・ロンドンのエジソン電灯会社の科学顧問をしていたフレミング
 →エジソンの二極管に注目
  →電球の中に挿入した電極による整流作用
   ⇒無線が実用化されるために最大の貢献をした重要発明
・フレミングはエジソンの発明した二極管の新たな用途を見出した
 →いわば用途発明

□三極真空管とフィードバック回路
・米国の個人発明家、リー・ド・フォレスト(Lee De Forest:1873〜1961年)
 →1906年、陰極と陽極との間にグリッドと呼ばれる第三の電極
  ⇒三極真空管の発明 …無線の技術発達に決定的に影響
・三極真空管の増幅作用
・AT&Tは、ド・フォレストからフィードバック回路に関する権利の他に、三極真空管に関する権利も取得
 →AT&Tでも技術的改良
・無線技術において真空管技術が決定的な役割
 →1912年から1926年まで、GEとAT&Tの間だけでも20件以上の特許紛争

□無線特許管理会社=RCA社の設立
・1919年、無線特許管理会社であるRCA社設立
・1920年1月、AT&TはRCAの株を250万ドルで購入し、RCAを軸として、GEとAT&Tは10年間、一切の特許使用料を支払うことなく無線特許を相互に使用可に
・続いて、AT&T、GE、RCAおよびウェスティングハウス社間の無線に関する相互認可協定
・無線技術を利用する企業あるいは海外政府は、必ずRCAと特許使用契約を行う必要
 →1919年から1923年にかけて、次々に …日本帝国政府、ドイツ国逓信省、・・・

□RCA社の特許戦略
・ラジオ放送の普及 →1920年代半ば、無線技術は大きな飛躍
・RCAは1927年、売上高の7.5%の特許料を要求
 →猛烈な反対を受ける
 →1932年、7.5%から5%に下げる
・それでもRCAの特許料収入は増大する一方

□ラジオからテレビの開発へ
・RCAは、次なる電子技術はテレビジョンと見る
 →ロシアからの亡命電子技術者、ウラジミール・ツヴォルキン(Vladimir Koz'mich Zworykin)を招請
 →1930年代に総額925万ドルの巨費をテレビジョン開発に
  …内訳で、特許関係費になんと212万ドル

□パテント・プールというビジネス・モデル
・パテント・プール…関連する技術の特許権を集めて、これをまとめてライセンスする方式
・特許権を利用するやり方=ビジネスモデルが、独占禁止法から見て不適切な場合
 →独占禁止法違反という厳しい指摘
・米国RCA社が作り上げた、特定技術分野の特許権を数多く保有し、使用希望会社に一括で提供するビジネスモデル

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