セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

平凡な販売高の展望、技術の先行きの見方にも喝入れの必要

半導体業界の売上げ規模も年間$300 billionの規模になると、思い切ったコメントが難しくなっていくところがあると思うが、米SIAからのグローバル販売高月次発表でも着実、穏やかな伸びという模様眺めの表現が少し気になるところを感じている。また、「3-D chips/semis」についての記事を巡って、misleadingと指摘するコメントが即座に行き交っており、ここでも中身、実態をよく把握する必要を感じざるを得ない。両刃の刃ではあるが、関係者お互いのこと、突っ込んだ分析、きめ細やかな精度アップに向けて喝入れと思う。

≪いまいちの先行き展望≫ 
  
今回の米SIAによる5月販売高発表は、次の通りである。全体としては着実、穏やかな伸びということでその通りであるが、新興経済圏の拡大ぶり、日本の大震災インパクトと地域の温度差が際立つ現状であるだけに、内訳の実態がもう少し表わせないかと思うし、伸びる市場分野もタブレット、スマートフォンからさらに中身を一皮剥けないかという感じ方になってくる。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○半導体業界の2011年5月販売高、着実、穏やかな伸び …7月5日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2011年5月の世界半導体販売高が$25 billionで、前月の$24.6 billionから1.8%増加、昨年の2010年5月からは1.3%増加している、と発表した。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「消費者の信頼感にインパクトを与えるマクロ経済要素を考慮すると、我々の業界が5月に示している穏やかながら着実な伸びは励みになるものである。」とSIA President、Brian Toohey氏は言う。「ハイエンドelectronicsのグローバルな需要、半導体技術の広範な製品への引き続く浸透、新興経済圏の伸び、および日本の大震災からの予想を上回る回復ぶりが、2011年の業界の伸長を引き続き引っ張っていく。」

該業界では引き続き、タブレットおよびe-readersの需要の伸び、並びにsolarパネルおよびe-metersのように再生エネルギーを利用する機器を可能にする産業用プロセッサの需要の増加が見られている。加えて、全部の車種にわたって入る電子システムの力強い需要が、我々の業界で表れてきている。

米国内外の経済の不安定性はしっかり注視する必要がある一方、中国およびインドのような新興市場では半導体販売高伸長のさらなるチャンスが集まっている。WSTSからの春季半導体販売高予測において、見通しに沿ったyear-to-dateの結果が最近発表されており、グローバル半導体販売高の伸び率は次の通りとなっている。
 2011年  2012年  2013年
 5.4%増  7.6%増  5.4%増
2010年から2013年にかけての3年compound annual growth rate(CAGR)は6.13%となる。

※5月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/clientuploads/May%202011_Chart_Graph.pdf
★★★↑↑↑↑↑

この発表に先立って、第一四半期の半導体生産capacity統計が、遅ればせ次のように示されている。大震災があってそのマイナス、新興経済圏および先端モバイル機器の伸びのプラスと、激変要素が重なっている本年前半であるだけに、タイムリーでないと頭の整理が追いつかないところを感じている。

◇SIA releases Q1 SICAS fab capacity report (7月4日付け EE Times)
→Semiconductor Industry Association(SIA)が、2011年第一四半期についてのウェーハ製造capacity統計をリリース、稼働率はほとんどの領域で90%を超えたままとなっており、半導体業界全体平均は93.7%であった旨。
事実上該第一四半期の間の半導体業界は引き続き完売に近い旨。

米SIA発表の地域別データを、前月4月そして今回の5月を並べてみると以下の通りで、いくらか状況を推察できるところもあると思う。改めてAsia Pacific地域の販売高が半分を優に超える現状を感じている。  

≪4月≫
【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Apr 2010
Mar 2011
Apr 2011
前年同月比
前月比
========
Americas
4.11
4.67
4.50
9.5
-3.7
Europe
3.07
3.31
3.26
6.0
-1.7
Japan
3.68
3.61
3.42
-7.0
-5.2
Asia Pacific
12.88
13.63
13.49
4.8
-1.0
$23.74 B
$25.22 B
$24.67 B
3.9 %
-2.2 %

≪5月≫
【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
May 2010
Apr 2011
May 2011
前年同月比
前月比
========
Americas
4.38
4.48
4.52
3.2
0.9
Europe
3.12
3.26
3.24
3.8
-0.3
Japan
3.71
3.41
3.34
-9.9
-2.1
Asia Pacific
13.49
13.44
13.92
3.2
3.6
$24.70 B
$24.59 B
$25.03 B
1.3 %
1.8 %

SIAの発表を受けた記事の見出し表現は、例として次の通りとなっている。

◇SIA sees mediocre semiconductor sales ahead (7月5日付け EE Times)

◇Tablets, E-Readers Fuel Semiconductor Sales in May: SIA-Demand for tablets and e-readers helped blunt the impact of the Japanese earthquake and tsunami on the semiconductor industry, according to a report by the SIA. (7月5日付け eWEEK)


≪市場実態PickUp≫

「三次元半導体」を巡って、TSMCがIntelに先行か、という記事が、次の通り多くのコメントが行き交う経緯を呼んでいる。

【3-D chips/semis記事】

◇Report: TSMC may beat Intel to 3-D chips (7月5日付け EE Times)
→Taiwan External Trade Development Council(TAITRA)、火曜5日発。TSMCが2011年末までに3-D interconnectsを擁する最初の半導体を供給、最初の3-D半導体提示でIntel社の機先を制する可能性がある旨。
⇒本記事については、TSMCはthrough silicon vias(TSVs)利用の3-Dである一方、Intelの方は3-Dトランジスタ、FinFetsであり、並べて比較はおかしいというコメントがいくつか寄せられている。

もう少しざっくばらんに表わした記事が、以下の通りである。「三次元トランジスタ」と「三次元実装」は、取り組む顔ぶれが半導体業界の中でも違っており、同じ土俵で扱う表現に見えるところから、今回の顛末となっていると思う。現地、現物、現場と、実際に立ち会って実態を理解する必要の重みをまたも感じている。

◇TSMC challenges Intel to 3-D semis-Should be in the shops by Christmas (7月6日付け TechEye)
…3-D interconnectsを擁する半導体出荷となると、TSMCはIntelのよい相手となれる。該技術を発表しているIntelにも拘らず、2012年前までに3-Dトランジスタが店で手に入るとは思われていない。しかし、Taiwan External Trade Development Council(TAITRA)が回したレポートによれば、TSMCの3-D半導体供給見込みがIntelのそれに匹敵している。このレポートは、最初の3-D半導体製造を巡ってTSMCとChipzilla、Intelの間の競争があることを暗に示している。
しかしながら、Electronic Timesによると、取り上げられている技術同士は異なるものである。TSMCなど、長い間3-D interconnectを擁する半導体用技術を開発してきている。それはThrough Silicon Vias(TSVs)と呼ばれ、同じパッケージの中で異なる半導体層と接続するためにdieを突き抜ける垂直connectionsを作り出す。
Chipzilla、Intelのtri-gatesは、現実の3-Dトランジスタであり、FinFetsとして知られるが、そのシリコンchannelが半導体基板から突き出るひれに似ているからである。
TAITRAは、該新技術が二次元で電子を動かせるだけの従来の"planar"トランジスタが課すたくさんの問題を押し切ることが見込まれる、としている。TSMCのR&D、senior vice president、Shang-Yi Chiang氏によると、担当する部隊は3-D半導体技術を商用化するために、半導体パッケージ関係および設計自動化ソフトウェア・プロバイダーと密接に作業を進めている。

Intelがロシアに進出して20年、現地のマイクロエレクトロニクス業界が岐路を迎えているとのこと。Intelはソフトウェア工学の道を推しているようであるが、さてグローバル半導体プレーヤーの道とのどちらを選択するか、ロシア政府の出方に注目である。

【ロシア半導体の方向性】

◇Software to save Russia's semiconductors push(7月5日付け EE Times)
→Intelのロシア20周年でSkolkovo来訪、Intelのsenior vice president、Tom Kilroy氏による予測。ソフトウェア工学がロシアのmicroelectronicsを守り、ロシアには大手グローバル半導体技術プレーヤーに追いつく期待はない旨。

◇Microelectronics Stands at the Crossroads (7月5日付け The Moscow Times)
→ロシアのマイクロエレクトロニクス業界は変わり目にあり、考えられる2つの将来がある旨。1つは、IntelのKilroy氏のような人々が示すようにソフトウェア工学に向かうシフト、もう1つは、世界の他地域に追いつくよう重点化することの旨。ロシア政府が追求することを定めるこの決定は、Skolkovoイノベーションセンター、米国Silicon Valleyのロシア版のようなプロジェクトに大きなインパクトを与える可能性の旨。

ブロードバンドネットワークスの広がりが飽和してきて、米国キャリアの設備投資が昨年減少に転じ、今後数年減っていきそうという見込みが出されている。

【米国キャリアの設備投資】

◇Report: Capex declining for U.S. carriers (7月6日付け EE Times)
→Columbia Business SchoolのColumbia Institute for Tele-Information(CITI)発。ブロードバンドネットワークスのavailabilityが平坦域に達して、米国のcarriersが設備投資予算を縮減する見込みの旨。
推移&見込み、次の通り:
 2009年  2010年  向こう数年
 $64B   $62B   $55B
全く新しいネット運用よりも現状システムのcapacity拡大にcarriersが移行していることによる旨。

インドにおける革新的な取り組みについて、multi-nationalと現地startupsが共同して引っ張っていく形が現実的という見方が発表されている。

【インドでのイノベーション推進】

◇Study: Startups, multi-nationals drive innovation in India (7月7日付け EE Times)
→Zinnov Management Consulting発。インドのITメーカーが、グローバル買収の轍を踏んで同国中にR&Dラボを設立、現実的なイノベーションの可能性はmulti-nationalメーカーとインドのstartupsの間の共創にある旨。


≪グローバル雑学王−157≫

地図の上の道筋を辿れば、世界の歴史が新鮮に読み解ける、ということで、

『世界の「道」から歴史を読む方法』 (藤野  紘 著:河出書房新社)  
 …2011年 3月 5日 初版 発行

より、今回からは世界の"道"が語る歴史経緯を詳らかにしていく。世界史は、学校の頃、そして事あるごとにアップデートしてきているつもりでいたが、この読み始めから今はこうなのか、という新たな認識更新を求められる個所多々である。。


≪まえがき≫ 人やモノの流れがつくる世界の"道"から歴史の必然性を読みとる

・約7万年前に我々の祖先がアフリカを旅立って以来、数え切れない多くの"道"
・世界を大きく変えて歴史に燦然と輝いた道 
 →「ローマ街道」
 →「聖遷(ヒジュラ)の道」
 →「シルクロード」
・本書は、世界史のエポックとなり、歴史を作った道の数々を紹介


1章 世界史の幕開けを促した太古の「道」−−−人類はこうして拡散し文明社会を営みはじめた

1.ここから世界中に散らばった…
 人類の「出アフリカの道」
□DNA研究が導き出した「アフリカ単一起源説」
・最新のDNA研究
 →現代人の祖先は10万年前頃にアフリカで誕生した新人
 →世界各地へ拡散 →各地の現代人に
 ⇒「アフリカ単一起源説」…現在有力視
□アフリカを出る二つのルートとは
・一つは、北へ。シナイ半島を抜けて中東へ。
 →旧人のネアンデルタール人に勢力負け →進出は失敗
・もう一つ、南ルート:エチオピア→紅海→アラビア半島→南アジア
 →人類の歴史の幕を開ける道に
・新人のインド到達は、約6万7000〜5万1000年前
 →ここから大きく二つ:アジア北ルートおよび東南アジアルート
□ネアンデルタール人を滅ぼす
・約3万年前、ネアンデルタール人は絶滅
・アフリカで誕生した新人は世界各地へ、現代人の祖先に

2.イスラエルの民を連れて"約束の地"へ…
 モーセが率いた「出エジプトの道」
□イスラエル人の受難
・紀元前16世紀頃、エジプト人はイスラエル人を疎んじるようになり、奴隷に
□モーセ、神の声を聞く
・モーセの登場、彼が歩く道こそが、ユダヤ教成立のすじ道に
・モーセは、イスラエル人と家畜を連れて、ナイル川のデルタ地帯にあるラセメスの町からスコテへ旅立ち
 →「出エジプト」
□エジプトを出て約束の地「カナン」へ
・困難の連続、エジプトを出てから約束の地「カナン」への道
 →モーセの奇跡として有名な海割れ現象
 →シナイ山でモーセは神から「十戒」を授けられる
□議論が絶えない出エジプトの経路
・シナイ山はどこに?
 …考古学的調査の裏づけがとれていない
・モーセの後継者たちがはるかなカナンの地にたどり着く
 →子孫がイスラエル建国の立役者に

3.1000年の時をへて日本へ伝来…
 アジアに広がった「仏教伝来の道」
・紀元前5世紀頃にインドのシャカ族の王子シッダルタが開いた仏教
□王子の身分を捨て、悟りを開く
・シッダルタは、29才で出家、35才で悟り、ブッダ(真理に目覚めた人)と呼ばれる
・欲望を捨てて精進、誰でも煩悩から解放、という説教
 →階級に左右されず誰でも平等
□仏教伝来の二つのルート
・一つは、インドからセイロン島、東南アジアへと向かう南ルート
 もう一つは、シルクロードを通り、中央アジアを抜けて中国、朝鮮、日本へと向かう北ルート
□日本に伝わった大乗仏教
・少し異なる性格:
 南ルートの仏教 →「自利」を追求 …「上座部仏教」
 北ルートの仏教 →「他利」を追求 …「大乗仏教」
・大乗仏教→「皆が乗れる大きな船で衆生を彼岸に渡す」
 →日本に伝わったのは、6世紀、欽明天皇の時代
 →仏教推奨派の蘇我氏と反対派の物部氏

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.