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経営基盤体質の強化の動き/市場実態PickUp/グローバル雑学王−90

高度成長の80年代、失われた10年、など10年区切りで振り返り、また将来を展望するのは、経済界の常ということかもしれない。半導体の世界も、大型メインフレームに向けてデバイス世代の更新に没頭した時代から、今や産業界のほとんどの分野に応用が及び、個人消費者、新興国、環境・エネルギーなどのキーワードを追って先を見据えなければならなくなっている。アジアの半導体最大手で、このような不確実な要因の多い環境の下、経営基盤の引き締め、拡充を図る動きである。

≪経営基盤体質強化の動き≫

三星電子の長きにわたる総帥、李健熙(イ・ゴンヒ)氏が、会長として復帰するという報道に否応なく注目である。

◇サムスン電子、会長辞任の李健熙氏、会長職に復帰。(3月24日付け asahi.com)
→韓国サムスン電子が24日、2008年に会長職を辞任した前会長の李健熙(イ・ゴンヒ)氏(68)が、同日付で会長に復帰したと発表、グループ内から経営復帰を望む声が高まった旨。同社は「世界経済が先行き不透明な中、李会長の指導力が必要との判断から」などと説明している旨。

◇Former Samsung chief Lee returns (3月24日付け EE Times)

さらに詳細はどうか、韓国紙の日本語サイトより以下の抜粋である。

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○李健熙会長「23ヵ月ぶりの帰還」(3月25日付け 東亜日報)

李健熙前三星(サムスン)会長が、三星電子の会長として経営現場に復帰、三星を巡る裏資金説の暴露などにより、検察からの捜査を受け、2008年4月22日公式的に三星電子・代表取締役会長を辞任してから23ヵ月ぶりのこと。

三星社長団協議会は先月17日と24日、李会長の経営復帰を議論、激変する経営環境に李会長の経験やリーダーシップが必要だという意見で一致、復帰を要請する文書をまとめた。当時、日本のトヨタ自動車のリコール事態が明るみに出たことを受け、グローバルのトップ企業も一瞬にして崩壊しかねないという危機感が、社長らの間でみなぎっていたという説明である。復帰要請文は李会長に手渡され、李会長は1ヵ月ほど熟慮した末、今月23日復帰の意思を明らかにした。

李会長は復帰の意思を明らかにしながら、「今こそ本当の危機だ。グローバルのトップ企業が崩壊している。三星もいつ、どのようになるか分からない。今後10年間で三星の代表製品は消えるだろう。再び降り出しに戻り、スタートを切るべきだ。ためらっている時間などない。前に向かって進むべきだ」と語ったとのこと。
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世界のトップ企業であり、半導体の今や主要ユーザでもあるトヨタ自動車のリコール問題に一端を発する危機感が伝わってくる。もう1紙から次の通りである。

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○李健煕氏がサムスン経営に復帰した理由(3月25日付け 朝鮮日報)

「今は本当の危機だ。サムスンもいつどうなるか分からない。今後10年以内にサムスンを代表する事業や製品は大部分が消えるはずだ。ぐずぐずしている時間はない」

サムスン電子会長として経営に復帰した李健煕氏が明らかにした感想は、同氏が感じている危機感を端的に物語っている。

サムスン電子は世界の携帯電話端末市場で2位の座にある。しかし、市場をリードするスマートフォン部門の成績は悲惨だ。競合社より発売が1年近く遅れ、韓国市場でもアップルのiPhoneに完全に後れを取っている。アップル、グーグルなどソフトウエアが主力の企業の営業利益率が30%に達するのに対し、サムスン電子の営業利益率は10%に達しない。サムスン電子が市場をリードするどころか、むしろ追随する側に回っている。その上、最近の冷蔵庫爆発事故、半導体技術の流出問題など、組織の緩みも見られるようになった。李会長が経営復帰を発表した24日にもサムスン電子器興半導体工場で停電事故が起きた。
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大規模、トップとなると、見詰める目も格段に増えて、いろいろな角度から問題指摘が浮上してくるが、停電事故は今回の会長復帰と同じタイミングとなっている。

◇Power outage at Samsung plant may affect memory chip products, say sources (3月25日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsが、24日午後Kiheung生産拠点で停電が発生、生産への大きなインパクトはない、としている旨。しかしながら、1時間の停電で同社の32Gビットなど高密度NANDフラッシュ半導体生産およびすでにタイトであるDRAM市場への供給についてなお懸念が出ている旨。

この三星電子の動きと同様に映るのが、昨年のTSMCでのやはり総帥、Morris Chang氏の復帰である。遡って再生、以下の通り:

◇Morris Chang to resume helm of TSMC (2009年6月11日付け DIGITIMES)
→TSMCが本日発表、Rick Tsai氏がCEO職を退任、chairman、Morris Chang氏が指揮に戻る旨。

◇Chang reassumes control of TSMC in shakeup(2009年6月12日付け EE Times)
→大きな、そして驚かせるTSMC(Hsinchu, Taiwan)の組織改造。Morris Chang氏が、6月12日付けで、現在のchairmanとともにchief executiveを務める旨。Chang氏(78才)を継ぐことが確実と見られていた現在のCEO、Rick Tsai氏は、New Business Development Organizationのpresidentに就く旨。

◇TSMC CEO seeks new growth markets(2009年6月12日付け EE Times)
→TSMCが、新市場を追及する新組織を作る理由:
1. 2012年まで、TSMCの販売高が2008年の$10Bには戻らないと見る。
2. 2012-2018年で6%伸長を仮定すると、2018年売上げは約$14B-$15B。これだと2008-2018年のCAGRは3%。
3. しかしながら、新ビジネスで2018年までに年間$2Bの売上げが加われば、そのCAGRは4.5%に。TSMCは全く異なるvaluation classに入ることに。

◇TSMC increases 2009 capex to US$1.9 billion, says CEO(2009年6月19日付け DIGITIMES)
→TSMCのchairman and CEO、Morris Chang氏。売上げ減が予想されるにも拘らず、TSMCは2009年capexを約$1.9Bに上げる計画、$1.89Bの2008年レベルに近い旨。

その後のTSMCは、40-nmの歩留まり問題、GlobalFoundries出現によるファウンドリー業界の競合激化などいろいろ揉まれながらも、堅調な回復基調を示している。今回の三星電子の動きとほぼ同じタイミングで、TSMCは今後に期待の大きいLED事業について起工式を行っている。

◇TSMC breaks ground on LED lighting wafer fab(3月25日付け EE Times)
→TSMC(Hsinchu, Taiwan)が、照明用light emitting diodes(LEDs)を開発、製造するR&Dセンターおよびウェーハfabの起工式を開催、今までICsファウンドリー供給に焦点を当ててきている同社が大きく変わる動きとなる旨。

◇TSMC breaks ground on fab for LED lighting business(3月25日付け DIGITIMES)
→TSMCが本日、Hsinchu Science ParkにてLED照明R&Dセンターおよびfabの起工、グリーンエネルギー参入に向けて重要なmilestoneとなる旨。

ファウンドリーから大きく軌道の変わる派生展開ということで注目である。
このLED、インドでも次の動きとなっている。

◇Report: India plans wafer fab for LED lighting(3月25日付け EE Times)
→Business Standard発。De Core Nanosemiconductors Ltd.が、インド西部のGandhinagar, Gujurat(グジャラート州)でのLEDsに向けたウェーハfab建設に約$200M投資する計画の旨。


≪市場実態PickUp≫

今年の半導体市場を盛り返す筆頭に挙げられているDRAM、次の力強い予測が発表されている。

【DRAM売上げ】

◇DRAM revenue to increase more than 70%, Semico reports-On the heels of 33% and 40% sequential DRAM revenue increases in Q3 2009 and Q4 2009 respectively, market researchers at Semico forecast DRAM revenue will increase by more than 70% this year, compared to 2009.(3月26日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Semicoの見方。2008年12月に底に達して以降、DRAM ASPsは108%上昇、DRAM業界は回復してきており、2009年10月から2010年1月にかけてDRAM ASPsはさらに18%上がってきている旨。ASPを下げる兆候は業界になく、今年のDRAM売上げを力強く見ている旨。

DRAMとともに期待の大きなフラッシュメモリ、東芝のfab建設発表が市場、業界に与えるインパクトに注目である。

【フラッシュメモリ生産】

◇Toshiba to add NAND fab in Japan (3月23日付け EE Times)
→東芝が火曜23日、NANDフラッシュメモリを製造する新しい半導体fabを、今年後半、三重県四日市市の現在fabsに隣接して建設を始める計画の旨。

◇Toshiba fab portends more NAND capacity adds(3月25日付け EE Times)
→東芝の発表を受けて、他のNANDベンダーが有利となっているpricing状態のもとcapacityを積み増していくとアナリスト連は見ている旨。

Sematech Surface Preparation and Cleaning Conference(SPCC)(Austin, Texas)にて、米国Sematechの新しいトップからのプレゼンである。

【最先端技術の実情】

◇Chip Companies Must Dig Deep for 450 mm(3月24日付け Semiconductor International)
→今週行われている2010 SPCC(Austin)にて、Sematech(Austin, Texas and Albany, N.Y.)の新しいCEO、Dan Armbrust氏の講演。450-mm装置開発コストには半導体最大手の助けが必要、"そのロードマップはますます高価になっている"旨。
関連資料図面、下記参照。
・NEMS(nano-scale MEMS)はback end of the line(BEOL)で構築の可能性(Source: Sematech)
http://www.semiconductor.net/photo/259/259904-NEMS_could_be_built_in_the_back_end_of_the_line_Source_Sematech_.jpg
・Grapheneはキャリア移動度が非常に高いが、扱いが困難(Source: 2009 DRC graphene short course)
http://www.semiconductor.net/photo/259/259903-Graphene_has_very_high_carrier_mobilities_but_is_difficult_to_handle_Source_2009_DRC_graphene_short_course_.jpg

次世代送電網、スマートグリッドについて以下の動きである。いろいろ考える点を内包している様相となっている。

【スマートグリッド】

◇Google, Microchip develop energy monitor software-Reference API is a step towards Google home energy monitor sensor networks(3月24日付け EE Times)
→MCUのMicrochip Technology社(Chandler, Ariz.)が、ソフトウェア大手、Google社とのGoogle PowerMeter application programming interface(API)のreference implementationを生み出す提携の結果を発表、PowerMeterはsmartmeterあるいは別のelectricity monitoring機器から受け取った家庭エネルギー消費の詳細を示す無料ソフトウェアの旨。

◇Comment: Google PowerMeter is watching you (3月24日付け EE Times)
→Google PowerMeterは意欲的なプロジェクトで良くなることではあるが、社会的影響が多々含まれる旨。

◇Groups seek path to bring smart grid home-U-Snap members ship home net modules this summer(3月24日付け EE Times)
→U-Snap(Utility Smart Network Access Port) Allianceメンバーが今夏、ホームネットワークスにわたるsmart gridデータ運用スペックに基づく最初の製品を投入する期待の旨。

3D、三次元という用語が、テレビと半導体小型化・微細化の両方にあって紛らわしいが、半導体の方は以下の状況という見方である。

【2つの三次元】

◇MarketEye: 3D Packaging: No Glasses Required (3月22日付け TTI)
→Avatarはじめ3D映画が好評、3D-capable flat panel TVsが発表されてきているが、"Silicon Valley"、即ち半導体の世界での3Dはどうか?
Yole Developpement(Lyon, France)によると、15以上の300mm 3D IC pilotラインが世界中で流れたり、現在構築されている旨。


≪グローバル雑学王−90≫

米国の実像、そして最新の事情、実態を、

『アメリカを知る』(実 哲也 著:日経文庫1213)…2009年12月 1版1刷

より認識、アップデートしてきたが、今回が最終章になる。今までの長年に及ぶ米国の世界をリードするスタンスは、今後どうなっていくのか、強い絆をもつ我が国、我々であり、お互いのこととしてさらに一層発展的になるようよく考えていくべきことと思う。


[VIII] 米国の時代は終わるのか

1 避けられぬ経済力の相対的低下
(1)金融肥大化に終止符
・米国の金融制度や金融風土に問題があったのは確か
・危機によって何が変わり、何が変わらないのかを冷静に見極めることが必要
・今回の経済金融危機が米国の先行きに直接与えるインパクト
→肥大化した金融部門はスリム化に向かい、金融機関の利益率も以前よりは低下
→極端な短期利益志向の風土を改めつつ、前向きなリスクマネーの供給は続けられるよう、金融規制や監督のあり方がバランスよく見直されるかどうか
(2)消費者主導は大きく変わらず
・住宅バブル崩壊をきっかけにした経済金融危機
→消費者は少なくとも当面は倹約せざるを得ない
・米国は先進国では珍しく人口が大幅に伸びているのは消費の下支え要因
・米国では住宅は手入れさえ怠らなければ、資産価値は目減りしない
(3)バランス重視で危機対応
・金融界に向けられた米国民の凄まじい怒り
→米議会でも厳しい報酬規制などを求める動きが活発化
・規制を強化し過ぎて金融イノベーションの芽を摘むようなことがないよう、バランスを重視する姿勢も
(4)多極化する世界に向き合う
・米国はすでに輸出額では中国に抜かれ、国内総生産(GDP)の規模も2020年代には逆転されるのはほぼ確実
・経済力の相対的な衰えは、基軸通貨であるドルの地位にも影響
・米国社会は、米国の相対的な地位の低下と多極化が進む世界の現実に向き合おうというムードに変化へ
(5)活力ではなお勢い
・総合的な豊かさや影響力では米国を超える国はなかなか現れない
・経済や社会が停滞していた1970年代や1980年代初頭と比べれば、相対的に豊かで犯罪も少ない社会は維持
・人口も年に1%ずつ増 →先進国の中でも例外的な傾向
・新しいトレンド、仕組みを生み出し、育む力もなお健在
・現時点の米国を見るベース・シナリオ
 …米国の相対的な経済力は徐々に低下するものの、活力があり、影響力が最も大きい先進国としての地位は維持し続ける

※筆者が最後に述べている通り、"世界の活力を引っ張る米国"というのが最もフィットする感じ方である。世界に広がっていく新しい話題、テーマのリファレンスは、当分は米国にアクセスして調べるという習慣は続くものと思う。

2 カギはオープンな風土の維持
(1)よそ者を受け入れる
・よそ者や挑戦者を受け入れる包容力
・経験やコネがなくても、良いものは受け入れるというオープンな風土
・能力があれば肌の色や人種、性別にこだわらず採用し、重用
・失敗が終わりを意味しないのも米国の特質
(2)人の流入に警戒感
・同時テロの後、外国人に対する労働ビザの供与は厳しく制限
→ビジネス界などからビザ制度の見直しを求める声
・同時テロ後に減少していた留学生の数はここにきて再び増え、過去最高に
(3)挑戦者阻まぬ規制が必要
・ストックオプション制度の見直し
・破産制度が見直されるかどうか
→リスクに無頓着な経営や生活を招いているという批判も
・見直しをし過ぎれば、米国の活力を減殺する懸念も

※オープンな風土あってこその世界の活力源ということで、制限、制約は時と場合によって変化しようが、維持され続けないとそれこそ米国の存在感に関わってくることと思う。

3 必要な「機会均等」の再構築
(1)基盤揺らぐ中間層
・中間層の生活はグローバル化や技術革新による変化の中で脅かされやすくなっている
(2)アメリカンドリームは幻想に?
・揺らぐ機会均等への信頼
 …高騰する大学の授業料
 …貧しい地域ほど低い公立の小中学校の教育の質
(3)注目される教育・医療改革の行方
・オバマ政権は中間層の苦境や機会の不平等、格差の行き過ぎといった問題に敏感
→医療保険改革
→教育改革
・世界の中で米国の競争力を維持していくためにも重要となる教育

※偏在を打破していくことは、オバマ政権の最大の課題と思うし、米国の競争力維持の成否を決することと思う。

4 自己修正力は健在か
(1)危機克服の歴史
・自ら壁を乗り越える変革力の発揮 →米国の歴史
・過去の誤りを正し、現実を重視しながら再生への道を探る
(2)強い個人が支える民主主義と市場
・米国の再生力には、強い民主主義と同時に市場メカニズムが機能
 …「ふるい」をかける機能、すなわち市場機能がどこよりも働いている
(3)課題は日本も共有
・米国の本来の強みや修正能力がどうなっているのか
・多かれ少なかれ日本やほかの先進国が抱えている共通の問題
・日米双方が互いの経験や政策から学び合う必要

※最後に我が国も課題共有と出てくるが、世界の活力を引っ張るのは米国だけではなく、我が国も独自の強みを発揮して一員にならなければと思う。
日米のみならず"国際交流力"の発揮如何が問われることと思う。

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