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スマートフォンの次世代ディスプレイはもっと美しくなる

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初代iPhoneが2007年にアップル社より発売されて以来、スマートフォンが進化し続けている。スティーブ・ジョブズが最初に定義したようにスクリーンを指でタッチするインターフェイスの仕組みは、ほとんどのスマートフォンに採用されている。使われているディスプレイは、その表示メカニズムや性能は液晶から幅を広げて進化を続けてきた。これからもっと飛躍できるかどうかを考えてみるのが本稿の目的である。

もともと液晶は、1973年シャープの液晶ディスプレイ電卓で最初に商品化された。同時にカシオなどでも腕時計に採用された。表示形式も文字ストロークを構成するセグメント方式から、画面をドットで構成するドットマトリックスとなり、表示の多様性が得られた。液晶はTVのディスプレイとしても利用されてきた。TV応用では色再現、大画面、高速表示などが追求され、最近では4K2K(約4000 x 2000画素)まで解像度が上がってきた。一方、携帯電話のディスプレイとして使われてきた液晶はスマートフォンに採用され高解像度、低消費電力を追及する技術開発が進められてきた。

現在のスマートフォンで先端ディスプレイとして代表されるのは次の4種類。アップル社のiPhone、iPad全製品で採用されているRetinaディスプレイ、サムスンのGalaxyシリーズを中心に採用されているAMOLEDディスプレイ、ソニーのXperia、GoogleのNexusで採用されているIPS液晶、アマゾンのKindle Fire HDXで採用したHDXディスプレイ(原理は量子ドットディスプレイ)などである。

アップル社のRetinaディスプレイはその名の通り人間の目の網膜(retina)に匹敵する解像度を持つ液晶ディスプレイである。解像度は320dpi(ドット・パー・インチ)程度以上ある。解像度の基準を、網膜レベルというわかりやすい表現で示したもので、韓国や日本の液晶メーカーが製造を担当している。現在では他社もこの解像度をクリアーするものを最新のスマートフォンに投入している。Retinaディスプレイは発光の原理までは定めていない。一般的なディスプレイでは、後段に述べるIPS液晶が現状では主流である。

AMOLEDとは、アクティブマトリックス式有機EL(Active Matrix Organic Light Emitting Diode)を利用したディスプレイである。サムスン製のスマホGalaxyシリーズで採用されている。利点は液晶と違い自ら発光し高コントラストで表示できることが挙げられる。また原理上薄く、省電力となる利点もある。弱点としては発光デバイスであるため直射日光下では見えにくくなる可能性がある。スマホではタッチパネルを上に重ねるために光を反射しやすくなったり、映り込みが発生しやすくなったりすることがある。

IPS液晶(In-Plane-Switching LCD)は液晶分子の回転方向を従来の液晶が垂直であったものに対して水平方向に制御するものである。IPS液晶は日立製作所によって1995年に発表され、翌1996年に実用化された。従来型のTN液晶(Twisted Nematic)、VA液晶(Vertical Alignment)などの方式では、液晶分子に電界をかけると、液晶分子が基板に対して垂直に立ち上がるように制御される。これに対してIPS液晶の場合、液晶分子が基板と平行に回転するように動く。視野角が広がり、色調やコントラストの変化が少なく、より自然な表示が維持できるようになっている。応答スピードが遅いなどの欠点が改善され広く使われている。

ディスプレイ用のバックライト材料として量子ドット(Quantum Dot)が注目されている。直径がナノメータサイズの量子ドットは半導体結晶の一種である。粒子が小さいほど波長の短い光を発生し、大きいほど波長の長い光を発生する。この量子ドットをバックライトに使う場合、青色LED光源の波長を自在に変えられる。従来の液晶バックライトに比べ省電力で高輝度なのが特徴である。また有機ELに比べて長寿命で、プロジェクタの光源として大画面にも使えるといった特長がある。バックライト光源として、アマゾンのKindle Fire HDXにすでに使用されている。

次世代ディスプレイ用として量子ドットをそのまま応用しようという提案もある。その特長は色の表現力が秀でていることであり、量子ドットにすることにより表現できる色の幅が広くなり、色再現率を90%以上も上げられるといわれている。スマートフォンの新機種が今年も続々発売されるが、さらに先の次世代には素晴らしくきれいなディスプレイをまとった製品の出現が大いに期待できると思う。筆者はそれが量子ドットディスプレイであると予言しておきます。

Agile Tech技術本部長 河田 勉
(2014/04/03)

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