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iPhone向け新OS(iOS 7)に見るアイコンのフラットデザインへの変遷

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iPhone 5s/5cが発表される前、そのベースとなるOSの最新版iOS 7が明らかにされた。このOSではアイコン表現に大きな変化があった。アイコンはGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)の要素としてオブジェクト(データやアプリなど)を画面上で視覚的に表現するために用いられる。

最初にコンピュータ上にアイコンが出現したのは1970年代である。オブジェクト指向言語Smalltalk-76では洗練された形でPC画面上のアイコンとして表現され、これを見たスティーブ・ジョブズがLisaに採用し、同じ時にビル・ゲーツも同じものを見て後にWindow 95で採用したといわれている。PCの画面で慣れていたアイコンが、スマートフォンのiPhoneの狭いホーム画面でも有効に使われている。Android OSも同じである。

2007年にアップル社から発表されたiPhoneはパソコン(メールやネット)と携帯電話、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラを一体として融合した画期的な‘再発明’であった。それらの機能が一覧できるのがこのホーム画面である。アイコンが生き生きとオブジェクトの機能・魅力を表現している(図1)。


図1 iOS 6 (左)とiOS 7 (右)の違いをiPhoneのホーム画面で見る 従来のiOS 6では立体感があったが、iOS 7ではフラットな感じに変わっている

図1 iOS 6 (左)とiOS 7 (右)の違いをiPhoneのホーム画面で見る 従来のiOS 6では立体感があったが、iOS 7ではフラットな感じに変わっている


性能が向上したパソコン上ではアイコンの表現に現実のメタファー(紙質、フェルト、木材など)を導入していた(スキューモーフィズム表現と呼ぶ)。まだコンピュータになじんでない人々に現実的・具体的なメタファーでコンピュータの使い方を教えるためであったといわれている。iPhoneではさらに進んでUI操作が、マウスからタッチスクリーンに完全に移り変わっている。ユーザーにタッチ方式が親しみやすく、快適なものであることを感じさせるために、現実のメタファーがまだ使われ続けた。今ではタッチでの操作は当たり前のものとして幼児から老人まで自然に受け入れられている。

スマートフォンの機能はますます多様・複雑なものになっている。現実のメタファーでは操作を表現できなくなっている。それを改善するためにはデザインの原則を変更する必要がある。アップルのiPhoneのハードウエアのデザイナーでもあるジョナサン・アイブ氏がOSも担当することになり、「複雑性のなかに秩序をもたらす」と宣言して、新しいデザインを採用した。それは「フラットデザイン」である。フラットデザインとは、現実に近いメタファーのようなものを極力排した単純で平面的なデザインのこと。すでにWindows Phone、Windows 8やAndroidスマートフォンでもフラットデザインは採用されている。

iPhoneのOSが日本時間9月19日にiOS7にアップデートされ、見慣れた画面にフラットデザインでのいろいろな変化が現れた。私が操作してみた感じからすると、全体に統一がとれていて自然に受け入れられると思う。明るくてシンプルな表現は好ましく感じられる。

図2は音楽再生中の画面である。スタート・ストップ・音量は見慣れた表現をなされているが、左下には「曲をリピートする」というテキストが表示され、ボタンや絵での表示ではなくなっている。まさにフラットである。このまま突き進むのか、今後変化するのかはユーザーの受け入れ方次第である。マイクロソフトはフラットデザインのメトロインターフェースをWindows 8で投入したが今年末には変更バージョンがリリースされる予定である。


図2 音楽再生中のiPhone 5の画面 iOS 7を使っている

図2 音楽再生中のiPhone 5の画面 iOS 7を使っている


図3には以前の電卓表現と、それをiOS7のフラットデザインにしたものを示す。フラットたるところが明快である。


図3 電卓のデザイン 左は旧、右は新フラットデザイン

図3 電卓のデザイン 左は旧、右は新フラットデザイン


スティーブ・ジョブズ氏はフラットデザインの有効性を熟知していたが、まずタッチインタフェースに慣れてもらうために、現実を模倣するタイプ(材木、フェルトの感覚)のデザイン(スキューモーフィズム)手法を採用したと伝えられている。

アイコンはオブジェクト指向と同時期に生まれ出た技術であり、さらに進化するモバイルデバイスの重要な要素として今後のさらなる変化に注目が期待される。何しろユーザーが毎日接するものであるから。

(2013/10/09)

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