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ITサービス会社のハード指向はなぜか

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2012年10月26日現在、日本において多数のタブレットが存在する。アップルのiPad mini、アマゾンのKindle、マイクロソフトのWindows 8タブレットが新たに発売される。いずれもクリスマスシーズンを狙った新発売と思われる。まだ直接触ってないので、正確に機能や魅力は述べられないが、端末のマーケットポジショニングを述べてみたい。

今も変わらず、メディアの論評は機能・性能に特化してまず評価される。消費者である筆者にとってはそのようなレポートは無縁な存在である。

筆者の考える今回のユニークな点は、ITサービス企業が端末を発売していることにある。パソコン全盛の頃は、ハードはコンピュータ企業が設計しマーケティングを行い、製造も行い、発売したのが一般的であった。OSはマイクロソフト。

今や、Koboは楽天から発売され、Kindleはアマゾンから、Windows 8タブレットはマイクロソフトから発売されている。GoogleのNexusもそうである。みな、事業の本業製品は別にある。だから、以下のような疑問が出てくる。

1)なぜサービス業がハードウエア設計・製造ができるのであろうか? 
2)なぜサービス業がハードを自分で売るのだろうか?
3)販売目的は何か。利益を得るビジネスソースはどこか?
4)この傾向は続くのか?勝者は誰になるのか?

1)については、以下のトレンドから来ている。端末の必須部品がモジュール化し、誰でも組み合わせで作ることができるようになった。台湾や中国には大量生産に精通した企業集団が発展してきた。一つの大工場で、世界各社のノートブックPCをローコストで生産できる環境が整った。日本で開発を行い、その結果を製品化するという旧来のタイプから、日本で開発しなくても、すべてを受託してくれる企業が存在する。この傾向を加速したのが、オープンソースのOSである。Androidがその代表的なもので、面倒なオープンソース規約(改変した部分を報告したりすること)を不要にして、自由にビジネスに活用できることになった。マイクロソフトのOSには使用料が必要だったが、オープンソースにはそれがない。台湾のHTCは製造受託事業を中心にやってきたが、それを更に進めて、独自ブランドの製品を創りだした。現在NTTドコモを通じてHTCのスマートフォンは販売されている。筆者の想像であるが、今回述べた、ソフトメーカーの端末はこのようにして製造されていると思う。

2)については、サービス業者の心を想像することができる。端末を自社のサービスに紐付けて販売することにより、本業サービスの拡販を図るのが目的であろう。Koboは楽天の電子書籍を、Kindleはアマゾンの電子書籍を簡便に、安価(これは別稿で述べる予定)に販売することで本業に貢献できる。したがって、端末は原価ギリギリ(あるときは原価以下)で販売できる。ECサイトのサービス業者であれば自社のサイトで販売できるし、消費者の紐付けも可能となる。Googleの本業は検索における広告料収入である。利用者の検索キーワードが、事業のリソースとなる。

タブレットはノートブックPCなどとは違い、小さな箱で販売できる。最近は分厚いマニュアルはいらない。ネットから宅急便で提供すればよい。

3)の目的に関してiPadはどうであろうか。アップル社は、先進的な機能と、洗練されたデザインや使いやすさで最大の実績を上げている。タブレットはiPadの牙城、という趣もある。決して端末価格は安くない(一番高い)が、その魅力に消費者はお金を払う。その魅力は、iPadのエコシステムである。アプリや、ゲーム、コンテンツが有料、無料で供給される。Storeはアップルの管理下なのでウイルスを心配せずにダウンロードできる。一旦このエコシステム(Mac、iPhone、iPod、iPadに共通)に入ればサービスがエコシステムに紐付けされるので、抜け出せなくなってしまう。アップルは価格が高めのハード、更にStoreのコンテンツの収入で高い利益を得ている。

マイクロソフトのWindows 8タブレットは全く新しいUI設計がされており、アプリケーションも継続性がない場合が多い。コンシューマ向けの普及については、ビル・ゲーツ氏が太鼓判を押しているが、本当にそのようになるかどうかはこれからだと思う。 ビジネス収入源は、タブレットのOSを含んだハードの価格となる。この収益性は販売台数によると思われる。

4)に関して筆者の予想では、アップルとアマゾンのタブレットはうまくいくと思う。アップルはすでにブランド化している。高くても高級時計が売れるようなもの。アマゾンの場合は電子書籍が紙版より安いことが条件となる。 

マイクロソフトは失敗できない。これは主力商品のはずだから、もし失敗すれば会社のダメージにつながるからだ。Koboは販売初期の楽天の不慣れな失敗が多すぎた。ITの事業の経験がなさすぎた。日本のコンテンツでリードできればとの条件がつくが、しかしアマゾンにもコンテンツは販売されるはずなので、端末の性能とエコシステムの勝負だと思う。 

以上、戯言の塊になったが、来年には勝負がついていると思う。

U'eyes Design取締役 河田 勉

(2012/10/30)

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