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International SEMATECH Annual Report 2006を読んで

International SEMATECHのホームページにAnnual Report 2006が掲載されている。20周年記念号とのこと。日本人には公開しないという形でSEMATECHとして発足してから早くも20年になるかと思うと、当時を知る者としては感慨深いものがある。

 激しいジャパンバッシングと、米国の商習慣に合わないというだけでアンフェアコールを浴び、「一生懸命努力をし、こんなに苦労をして、安くて良い物を作って世の中に貢献しているのに一体どこが悪いのか」、と当時英国で半導体製造に携わりながら憤ったものだった。「日本の超エルエスアイ共同研究組合を散々アンフェアと言っておきながら、同じ組織を作って一体何なのだ」と思ったものである。

 さて日本の超エルエスアイ共同研究組合が大成功を収めたように、このSEMATECHも大成功で、米国半導体産業の復権に貢献し、その後International SEMATECHと名を変え、徐々にオープンになって現在に至っている。事実このAnnual Report 2006を読むと、驚くほど透明度が高い。日本人オフリミットの時代と隔世の感がある。即ち、どのような企業が参画し、どのようなデータを得ているか、どのような設備が最先端の設備として評価されているか、そしてどのような数値がその最先端の設備で得られているか、など一昔前なら完全に企業秘密であった内容が、実に詳細に明らかにされている。

 ご高承の通り、余りにも海外からのアンフェアの声が高かったためか、日本ではそれ以後、国の支援による共同研究体制が敬遠されてきた。「米国こそアンフェアではないか、あんなに日本を責めておいて」と言った時、「日本もやれば良いではないか。どうしてやらないのだ」と米国の研究者に笑われた記憶がある。長いブランクがあったが、ようやく日本でも10年ほど前から再び半導体産業研究所を梁山泊として民間企業出資の株式会社半導体先端テクノロジーズと超先端電子技術開発機構が発足し、他の共同研究組織も誕生、変遷を重ねながら現在に至っている。

 是非日本もこのような共同研究を有効に活用し、産業の活性化に役立ててもらいたい。SEMATECHは発足後10年にして米国産業復権という時期を迎えている。その年数から判断すると日本もそろそろ半導体で復権という兆しを期待しても良い頃ではなかろうか。しかも元株式会社半導体先端テクノロジーズ代表取締役専務の小宮啓義氏がSEMATECHを訪問された時、「『日本の超エルエスアイ共同研究組合とまったく同じではないか』と言ったら『当然だ、そっくり真似したのだから』と言われた」1)とのことである。

 米国特許庁のホームページで調べると「SEMATECH」という語が明細書あるいは表紙に入っている米国登録特許数は619件(SEMATECH出願58件、SEMATECH技術が何らかの形で影響していると考えられる他者出願特許561件)、それに対して日本の特許電子図書館で調べた「半導体先端テクノロジーズ」という語が入っている日本特許も594件ある。2) 産業界に対する特許から見た貢献度はほぼ同じである。

 このAnnual Reportは前半で全体の活動、成果をまとめ、後半にはその技術的な解説が詳細に行われている。技術者が最先端技術の現状を知るレビューとしても読み応えがある。
 一読をお勧めしたい。


<謝辞>この年次報告書を読む機会を与えて下さった財団法人武田計測先端知財団常務理事垂井康夫先生、及び専務理事赤城三男氏をはじめ同財団関係者に謝意を表する。


注1)小宮啓義、「日本半導体産業の課題」p.121、電子ジャーナル、2004
 2)平成19年8月15日時点

編集部注)SEMATECH 20周年記念シンポジウムは2007年9月13日(木)にANAインターコンチネンタルホテル東京(溜池山王)で開催される予定

財団法人武田計測先端知財団 プログラムスペシャリスト 鴨志田 元孝

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