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10年後にAmazonは存在しているか!〜盛者必衰の理は爆裂成長のIT企業に

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Amazon(アマゾン)というカンパニーは、いかにも新しいように見えるが、もうすでに創業して30年以上が経っている。筆者もまた年がら年中、アマゾンで買い物をするのであるが、先ごろの同社の株価の一気トーンダウンには驚かされた以外の何物でもない。何と、アマゾンの株価は超低迷の領域に入り、2021年7月の最高値から40%近くの下落を記録した。史上最大の株価引き下げと言ってよいだろう(編集注1)。

この有り様を見ていたら、平家物語でいう「盛者必衰の理」という一節を思い出した。そしてまた同じく、「おごれるものは久しからず」という一節も脳裏に浮かんだのだ。だいたいが今時の人たちは、DECというミニコンピュータの王者が存在したことを知らない。1957年に誕生し、1998年には消滅した。Compaqに買収され、そのCompaqがさらにHewlett-Packardに買収されたからである。Sun Microsystemsという会社があったことも今時の人は知らない。ワークステーションの王者であったが、2010年にOracleにより吸収合併されて消滅したのだ。

そんなことを考えていたら、1990年代の始めには、かの東芝が13年連続でノートパソコンの世界チャンピオンであったことを知る人がほとんど少なくなった。そして何よりも、NEC(後身はルネサスエレクトロニクス)が半導体における世界チャンピオンの座を80年代後半にずっと続けていたことを知る人ももう多くはない。筆者は半導体業界に身を置く記者としては、ほぼ現役最古参となったが、こうした栄枯盛衰を見るにつけ、会社の寿命というものをいつも考えるようになった。一瞬の輝きだけならば誰にでもできる。しかしながら、100年間にわたって輝き続けることはとても難しい。

そういう意味では、IBMはやはり大したものだと思えてならない。同社はバリバリの100年企業であるが、かつてメインフレームコンピューターで一世を風靡し、AIの時代に入ってもその存在感はかなりのものがある。そしてまた、半導体においても銅配線や新型パッケージなどの分野において、世界に最先行するというすごさを見せつけた。日本政府による異次元の半導体支援プロジェクトにおいて、そのIBMが技術面で徹底サポートするという声も聞いている。


AWSとArmが業界を革新 (AWS Graviton プロセッサファミリー) / Arm

図1 Amazonの独自開発チップGraviton 3


それはさておき、Amazonもズタズタであるが、Facebook(現Meta)もまた、メタメタなのである。1万人を大きく上回るリストラを発表した時の創業者のZuckerbergは、顔面が蒼ざめており、瀕死の表情であった。とにかく元気がなかった。世にいうメタバース革命が到来するというのに、同社の業績はどうにもならないところまで来ている(編集注2)。

Appleは、主力の中国工場が大量の社員が辞めるというショックで、まったく作れないために、スマホ生産量の20〜30%ダウンすら考えられるという情勢なのだ。Googleはまだ何とかなっているようだが、言うところのGAFAの後退ぶりは、半導体業界に暗い陰を投げかける。

こうしたことを反映して、昨今の半導体情勢は明確に下降局面に入り始めた。とりわけどうしようもないのがメモリであり、SamsungもSK hynixもMicron Technologyも皆、20%前後のマイナス成長(2022年第3四半期)となっている。ただしよく見なければならないのは、ファンドリを主力とするTSMCは、メモリ各社が低迷する中にあって、いまだ前年同期比50%増という好調ぶりを見せつけている(編集注3)。驚くべきは、伸びている製品の6割以上が5nm、7nmといった超微細の先端プロセス品であることだ。これすなわち、データセンターに使われるわけであり、こちらの投資はそんなには止まっていないと言えよう。

そしてまた、ドイツのInfineon Technologiesが同じ時期で前年同期比15%増、STマイクロが同13%増となっており、パワーデバイスやアナログ系にそれほど大きな影響が出ていないことがよくわかる。

とにもかくにも半導体の勢力分布図は変わっていく。数年後にはもう消滅するというカンパニーも一杯あるだろう。そして、アマゾンが倒れる日が来た時に、人々はどのような感想を漏らすだろう。100年のスパンで見なければ、企業の本当の姿はとらえることはできない、とつくづく考え込んでしまうことが多い昨今なのである。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉

編集注
1. Amazonはe-Commerce事業では激しい競争にさらわれているが、クラウド事業(AWS)では圧倒的に強い。2番手のMicrosoftが必死に追いかけているものの、消費電力を抑えた独自開発チップGraviton 2やGraviton 3(図1)を使うことで、電力を増やすことなくデータセンターのコンピュータを増やし、様々な顧客に対応できているからだ。
2. 直近の2022年第3四半期のMetaの売上額は、前年同期比3.7%減の272億3700万ドル、営業利益率20%の黒字である。このP/Lだけではそれほど悪くはないが、フリーキャッシュフローが2021年第4四半期の125億6200万ドルから前期には44.5億ドルに急落し、今期にはわずか1.73億ドルにまで低下した。その理由はメタバース事業への投資だ。Capexは、2021年の137億ドルから2022年は228億ドルも投資している。つまり人員カットは旧事業の人材を削減し、新規事業への投資を加速しているといえる。
3. TSMCの決算数字は、正確には台湾元ベースで47.9%増、米ドルベースでは35.9%増である。5nm品が全売上額の28%、7nm品が同26%となっており、用途別ではスマホが同41%、データセンターなどのHPC(High Performance Computing)が39%である。

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