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半導体産業100兆円時代到来をもたらす5つの要素〜ニッポン復活はアナログ

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2021年の世界半導体生産額は、前年度比20%増の60兆円は確実な情勢となっている。しかし今のところは、これを上回り、3割増という予想も出始めた。まさに爆裂の勢いなのである。2022年および2023年についても二桁成長を予想する向きは多い。すなわち、半導体産業は100兆円時代の到来がはっきりと見えてきた。自動車産業の300兆円に次ぐ存在となり、まさに今後の10年間は半導体産業が世界経済を引っ張るという展開。

半導体の爆裂成長は、5つの要素によって構成されている。一番大きいのはSDGs(持続可能な17の開発目標)革命であり、直近10年間では世界全部で1000兆円の投資が断行される見通し。20年以上のスパンで言えば、実に3000兆円という空前絶後の世界を巻き込む投資が実行されるのだ。この投資額のうち、少なくとも5%くらいが半導体企業に流れ込む金額だと言われている。それだけでも大変なインパクトになる。

5G高速に伴う投資計画も加速する。さらに、その上には6G〜10Gが見え始めた(編集室注1)。データセンター投資は毎年10兆〜15兆円ピッチで進んでいくわけであり、このうち30%以上はこれまた半導体業界に流れ込む。第3の波は、コロナ禍におけるテレワークをきっかけとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)革命が推進されることであり、家庭やホテルにおけるテレワークの環境が世界全てで推進される。一旦動き始めた流れは、コロナが収束しても変わらない。ワーケーションという考え方も出てきており、DXを中心に新しい時代の始まりは、半導体が引っ張っていく。

第4のポイントは、次世代自動車革命である。EV、HV、FCVなどエコカーの加速、自動走行運転の進展、AIとつながるコネクテッドカーの推進により、自動車向け半導体は凄まじい勢いで拡大し、現状の約10倍の市場が現れる。

スマホとクラウドしかないという集中制御から、自律分散制御へ時代は移る。こうなれば、全てがクラウドに上がるわけではなく、エッジコンピューティングの時代が到来し、ここに新たなマーケットが生まれていく。

ニッポン半導体の1988年の世界シェアは51%となっていた。これが2020年段階で実に8.3%まで凋落した。もうここまで来れば、死に物狂いの巻き返しを図る以外に手がない。しかしIoTの先端の世界においては、もはや日本の立ち位置はない。

日本の成長エンジンは、実のところアナログ分野(パワー、センサ、アナログIC)などの分野であり、こちらが急成長することは間違いない。この分野は、日本の得意技なのだ。そしてまた、エッジデバイス(パワー、センサ、MCU、AIチップ、5G/6G、ロボット、SSD)に大きな活路がある。

さらには、世界トップシェアの一般電子部品産業や、日本のお家芸である製造装置産業、部材/素材産業との連携を強化すれば、日本ならではの製品群が生まれてくる。また、ロジック市場においては、最先端の2nm、3nm、さらには7nmという世界ではなく、40nm以上のロジック市場で戦うのが重要だ。自動車向け半導体は、2030年で7兆円〜10兆円が予想されているが、なんと先端SoCは10%未満である。一番多いのはアナログチップであり、全体の約3割を占める。パワーデバイスは全体の15%、メモリは全体の15%、そしてMCUが20%、さらにセンサは20%を占めるのである。つまりは、自動運転やEVなどの世界では、思ったほど先端ナノプロセスは使われない。その意味では、評価の低いルネサスではあるが、その戦略は実のところ正しい。

データセンター向け半導体も急成長するが、NTTの核心的な光電融合技術が一気に走る。
データセンター向け半導体市場は、2030年には20兆円を軽々と超えてくると言われている。その段階で一番重要なチップは、実はDRAMである。全体の約40%を占める。しかしDRAMの限界がすでに出てきている。ここを一気に打ち破るのが、ニッポンの新たな半導体戦略であるSRAMの積層化にある。これを成し遂げれば、日本はもう1回メモリで復活する。

産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉

編集室注
1. 現実には6Gでさえもまだイメージが明確に描かれていない。5Gの次だから6Gだと単純に数字を一つ上げた言葉遊びにすぎない。5Gで大きく変わったことは、データレートやレイテンシというより、携帯電話だけの規格でないことだ。それだけに6Gでは通信だけではなくイメージング技術も加わるという考えも出ている。通信業者の集まりである3GPPでは5Gの新しい規格リリース17、18などが続々控えており、6Gよりも5Gがさらに進化していくことを物語っている。5Gはまだ始まったばかりだ。

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