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「スーパーサイクルは死なず」と宣言したアナリスト〜懸念は米中貿易摩擦

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「確かに直近のメモリ市場は非常に悪い。世間ではスーパーサイクルはなくなったとの見方もある。しかし私は決してそう思っていない。データセンター投資が止まることはないからだ。さらにフラッシュメモリの価格がハードディスクに比べて20%くらい安くなれば、サーバ向けフラッシュメモリの売り上げは倍増するのである!!」。

今や半導体業界一のアナリストとして知られる野村證券のディレクター和田木哲哉氏は、またも壇上で吠えまくっていた。日本電子デバイス産業協会(NEDIA)設立5周年記念の新春セミナーにおける発言である。和田木氏が唱えるスーパーサイクル論は業界を驚かせ、これまでのシリコンサイクル論を一蹴するものであった。しかし昨今のメモリ大後退の局面では、彼の論法を批判する輩も増えて来たのだ。

「スマホおよびデータセンター向けのフラッシュメモリは一時的に後退しても、必ずや盛り返す。データセンター投資は止まっていない。Appleは米国に5年間で100億ドルのデータセンター投資計画をアナウンスしている。Googleもデンマーク、インドネシア、チリなどにデータセンターの展開を加速する。アリババもイギリスのデータセンターの充実を図っている。Facebookはオレゴン州、バージニア州に新たなデータセンターを計画し、Amazonはインドネシアに巨大なデータセンターを作る」(和田木氏)。

確かに昨年後半から世界におけるデータセンター投資は小休止という状態であった。最大の原因はIntelのMPUが不足し供給が滞ったからである。また一方で、意外にもゲーム人気によりPC需要が伸びたことで、データセンター向けにMPUが供給できないという事情もあった(編集室注)。しかしIntelの増産体制は着々と進んでいる。数カ月後には10nmプロセスのMPUが出てくる見通しもある。こうなればデータセンター投資が再開されるのは必然のことである。また、この投資無くして5Gの高速時代も次世代自動車のIoT対応もできないわけであるから、確かに和田木氏の主張する通り、データセンター向けのフラッシュメモリの上昇機運が高まることは間違いない。

和田木氏によれば、オンラインサーバに占めるフラッシュメモリとHDDの比率は半々だ。言い換えればフラッシュメモリの3分の1はサーバ向けに使われている。ここにきてフラッシュ普及が止まって来たのは、HDDがかなり安いという事情がある。しかし増産の努力と微細化の進展によりフラッシュの価格が20%くらい安くなれば、再びサーバ向けフラッシュの生産は上げ潮に乗ってくることもまた確実と言って良いだろう。

「ちなみに中国の監視カメラは現状で1億7000万台程度であるが、2020年以降に6億台以上に増やす計画がある。交通違反が日常化している中国の事情を考えれば、何としてもカメラで監視する必要があるからだ。加えて習近平氏の独裁とも言われる権力体制の強化が進んでいることもあり、政府要人のセキュリティ確保は監視カメラ抜きにはできないという理由もある。監視カメラのストレージ容量は2020年以降には世界中のHDDを使用しても足りなくなるのは確実で、ここにも新たなフラッシュメモリマーケットが登場してくる」(和田木氏)。

「スーパーサイクルは死なず!!」を高らかに宣言した和田木氏の勇気には敬意を払いたい。筆者もまた和田木氏の論法を支持するものであるが、米中貿易戦争による経済低迷が不安要因としてどうしても残ると思えてならない。中国は私達日本から見ているとわからないだろうが、かなり傷ついている。トランプ大統領はこの貿易戦争をやめる気配すらない。なにしろ半導体製造装置の中国への輸出を禁ずるとまで言っているのだ。驚くべきことに米国の大学院では、中国の学生の受け入れを禁止するという荒業も出て来た。この混乱を回避しない限り、和田木氏の予言は著しく修正される恐れは残っている。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

編集室注)Intelはここ数年、脱PCを打ち出しており、安価なデスクトップPCから手を引き、PC分野では比較的高価なモバイル系PCに特化してきた。それでもIntelの売り上げのトップは未だにパソコン向けCPUだ。現在、データセンター向け、オンプレミスサーバ向け、IoT向け、AI向けなどさまざまな展開を図っており、専用ハードウエア回路が欲しい顧客にはFPGAを提供する。IntelのCPUとAMDのGPUを搭載したボードの提案もある。PC以外のさまざまなコンピューティング技術を検討、開発している。今回、PCに重きを置かなかったために、メモリ価格の下落によるPC需要に対応しきれなかったという面があった。

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