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フラッシュ市場に匹敵する車載半導体〜Tier1企業の半導体内製化に注目

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「車載向け半導体市場は、世界景気にかかわらず、この10年間じわじわと確実に伸びてきている。2014年の車載用半導体の世界市場は約3兆円となっており、センサデバイスが最も伸びている。半導体の花形と言われるフラッシュメモリの市場規模にほぼ匹敵するほどに成長している」(半導体アナリストの南川明氏)。

同氏によれば、とりわけ伸びるのはADAS(先進運転者支援システム)用の半導体市場で、2013年から2020年までの8年間で2.7倍の市場規模(26億4600万ドル)となり、新車における搭載比率は今後限りなく100%に近づくという。

では1台の車にはどれほどの半導体が使われているのか。カローラなどの大衆車クラスに搭載されている半導体は、1台あたり3万円程度であるが、それがプリウスなどのハイブリッド車となると一気に7万円にはね上がる。しかも、増えた金額のうち約90%はパワー半導体が占めていると言われる。

こうした傾向の中で注意を払わなければならないのは、自動車電装のTier1メーカーの半導体本格参入の動きである。デンソーは公表していないが、すでに約2500億円に相当する半導体を生産していると見られ、国内半導体メーカーの生産ランキングでいえばロームに次ぐ第7位という高いポジションにある。生産品目はIGBT、パワーMOSFET、ASIC、各種センサ、SOIプロセスチップなど多彩である。富士通から取得したデンソー岩手は2017年度から100%自社向け供給の半導体を量産する計画であり、注目のSOIプロセスを採用する。この工場は総額240億円を投じ2016年春ごろには生産額1000億円前後を見込む大規模な車載向け半導体工場になっていく。

カルソニックカンセイは現状でパワー半導体を委託生産しているが、将来はIGBTモジュールの内製化を検討するという。アイシン精機もまたボディ用マイコンなどの設計・組立・テストを、資本参加した日出ハイテックで充実させていく考えだ。豊田自動織機は安城工場でDC-DCコンバータを生産しているが、今後はハイブリッドやEV向けのコントロールユニットにも展開するという。明電舎は国内電気自動車向けにIGBTモジュールとインバータを供給している。東海理化は4インチおよび6インチウェーハでBiCMOS技術を活用し、カスタムICや磁気センサを一部生産している。

外国勢大手のボッシュは、マイコン設計、MEMS、ASICなどを手がけている。エアバッグ用ASICなどはかなり早い時期からスタートしており、最近ではIGBTモジュールなどにも展開中だ。日立オートモーティブシステムズは、大型車や外国製自動車向けに強みを持ち、グループ内でパワーICやIGBTの前工程も所有している。今後は矢崎総業やGSエレテックなどワイヤハーネスを手がけるメーカーも半導体開発に参入するとも言われている。

半導体の最大の特徴は3つある。一つは正確な「再現性」であり、数十回も数千回も、はたまた数万回も同じことを繰り返し再現できることが強みだ。もう一つは「軽薄短小化」で、これまでのモバイル機器が証明してきたように、大型機器を限りなく小さくすることに絶大な威力を発揮してきた。そして3番目の特徴は「知財権防衛」ということにある。真似されてはいけないノウハウを半導体の中に封印し、他社には絶対使わせないようにするのである。車載向けTier1メーカーが半導体内製化に走る最大の理由は、やはりこの知財権防衛およびそれによる差別化の獲得に尽きると言ってよいだろう。

産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉

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