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ソニー、5年ぶり黒字は好調な半導体がたたき出す〜CMOSセンサが切り札

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ソニーは先ごろ、2015年4-9月期の連結決算を発表したが、1159億円の黒字を計上し、上期としての最終黒字は実に5年ぶりのこととなった。ここで出した純利益は、パナソニック、日立、三菱電機の金額を上回るものであり、電機6社の中で最も多いのだ。見逃せないのはこの利益の多くをたたき出したのが半導体などの電子デバイス部門であり、実にここの営業利益は58%も増えた。

ソニーの半導体生産は2014年度に6100億円を記録し、実に前年度比で約3割も伸びた。2015年も引き続き約3割の伸びを考えており、8000億円前後を達成することはほぼ確実だろう。この時点でルネサスエレクトロニクスを抜いて国内第2位に浮上してくる。この勢いが持続すれば、国内トップを行く東芝の約1兆2000億円を上回ることは確実と視られている。

筆者は長くソニーの半導体事業を見てきたが、ほんの10年くらい前までは国内ランキングで10位前後をうろうろしており、とてもではないがこの水準まで伸びてくるとは予想もできなかった。その武器はなんといってもCMOSイメージセンサであり、スマホ向けのシェアはすでに40%を超え50%に近づきつつある。同社幹部の話では、今後3年はスマホ用に特化するが、5年くらいのスパンでは車載や家庭用が増えていくという。とりわけ車載向けはセンサ+信号処理のモジュールとして、自動走行用に情報を抽出するシステムソリューションとして提供していく考えだ。

ソニーのCMOSセンサは車載向けを意識し、月の出ていない真っ暗闇の中でも見事に見える画期的な製品開発にすでに成功している。また1億画素クラスの驚異的なセンサも生産できる体制が整っている。デザインルールは65nmがメーンストリームであるが、40nmまでは十分にこなせるのだ。

設備投資とM&Aも積極的だ。2015年はトップの東芝を大きく上回る3000億円を投入しているが、メーンは長崎県諫早の200mm(8インチ)から300mmへの切り替えとなる。ルネサスから取得した山形県鶴岡工場は、すでに諫早と同じレベルで生産できる体制を構築しつつある。2016年は鶴岡に更なる大型投資を実行するだろう。そしてまた、東芝の旗艦工場ともいうべき大分工場の300mmラインも先ごろ買収に成功し、併せて東芝のイメージセンサ事業部門を譲渡された。東芝からは約1000人の半導体関連の人員を入手し、マンパワーも増強されつつある。

業界筋ではさらに2〜3の工場を買収するだろうとの憶測が盛んであり、一方熊本工場の隣接地に新工場立地するとの噂も絶えない。ソニーは黄金の切り札であるCMOSセンサを中心とするデバイス事業の売り上げについては、2017年度までに最大1.5兆円に倍増させ、CMOSセンサだけで1兆円規模を稼ぎ出す考えを固めている。

ソニーのCMOSセンサの年産規模は現状で17億個と見られるが、中長期的にこれを100億個までもっていく考えを内部的には固めているようだ。そのレベルまで行けば、半導体の世界チャンピオンのインテル、巨大な存在となったサムスン半導体をキャッチアップできる世界3番手に一大飛躍することになる。

こうしたソニーの積極姿勢については、株式市場ははっきりと評価を与えつつある。株価は1年間で約7割も上昇した。時価総額は4兆3700億円となり、パナソニックや日立を1兆円程度上回ることになった。いよいよ、かつての世界ステージで戦うソニーが復活してきたのだ。そしてまた、その復活の原動力はCMOSセンサをメーンとする半導体事業であることに多くの人が注目する必要がある。とりわけ半導体事業を縮小または後退させた日本企業は、このソニーの姿をよくよく見てもらいたいものだ。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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