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中国、デバイスの世界制覇へ!!〜半導体に2兆円投資、FPDは16年世界2位

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いよいよというべきか。やっぱりというべきか。中国スマートフォンメーカー大手のシャオミ(小米科技)は、低価格モデルの「Redmi 2A」に初めて中国製のアプリケーションプロセッサを採用した。これまで米国や日本をはじめとする海外メーカーから半導体を調達していた中国が、ついに本格的な国産化への一歩を踏み出したのだ。

ほぼ同じ時期に中国の液晶パネル最大手のBOEが、DRAM製造に参入するとアナウンスした。半導体メモリーの中核を占めるDRAMにおいて、中国メーカーはほとんど国産化できず、その悔しさに爪を噛んでいた。しかし、驚くべきことにDRAMの設計の国産化には既に成功しており、いよいよ工場の立ち上げにまで乗り出したのだ。

中国政府は、日米欧に対抗すべく金融面でも次々と政策を打ち出し、先端ハイテク分野では、その持てる資金力を生かして一気に台頭して来た。太陽電池は、今や世界シェアの70%以上を握り、LEDや液晶をはじめとする電子ディスプレイ(FPD)の世界でも大躍進を遂げている。中国液晶産業の特徴は、すべての生産を中国大陸に集中させていることで、他国には一切工場を建てていない。しかし販売はグローバルに展開している。

「中国は、今や世界の電子ディスプレイ生産の27%を握っている。BOEは、中国全体の生産の39%を占有し、トップを疾走する。BOEのディスプレイ参入は1993年であるから、21年間を我慢し、ここまで来た。8.5世代のマザーガラス基板についても北京、合肥、重慶に生産拠点を持ち、成都にはスマートフォン、自動車向けLTPS(低温ポリシリコン液晶)の新工場(6世代)を建設中だ。当社のアプリ別の世界シェアは、タブレット31%、スマートフォン20%と高く、次いでモニター14%、TV7%、ノートPC6%となっている」(BOEジャパン・久保島副社長)。

また、BOEの凄いところは、液晶ディスプレイ+タッチパネルの一体生産を構築しており、1つの工場で液晶パネルからTV完成品までの一気通貫生産体制を確立していることだ。何のことはない、これはかつて日本のお家芸であった垂直統合をほぼ完全に実現しているわけで、日本はお株を奪われた格好になる。

かつて、中国のディスプレイ産業は明らかに立ち遅れていた。韓国、台湾、日本が次々と新技術を発表し、新世代のパネルに進んでいく状況に対し、中国は常に一歩遅れていた。だが、2010年頃から中国勢の設備投資が活発化し、一気に上昇、2014年段階では世界で3番手の地位まで押し上げてきた。このまま行けば、2016年には台湾を追い抜き世界第2位に躍進することはほぼ確実であり、トップを行く韓国も射程圏内に入ってくる。

太陽電池、液晶に続いて中国政府が世界制覇を目論むのが電子デバイスの中で最大の存在である半導体だ。すでに中国政府は「IC製造大国への道を進む」と明言しており、約2兆円の巨大投資を半導体に振り向け、徹底的な国産化を狙っている。一説によれば、2兆円どころではなく、最大4兆円は投入するのではないかとの推測もある。

金に物を言わせるような強引な手法で中国はITの世界に踏み込んできた。そしてまた、あっという間に世界のトップレベルにのし上がってきた。その持てる巨大な資金力を半導体産業に投入してくることは、世界各国の半導体企業にとって脅威という他はないだろう。しかし、半導体の本丸ともいうべきプロセッサやDRAMに中国が参入し、新たな巨額投資を行うことは、半導体や液晶の材料や製造装置に強い日本企業にとっては喜ぶべき事態と言って良いだろう。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉

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