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ブームのメガソーラーは誘致合戦に拍車〜米中など海外勢の進出も浮上

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「メガソーラー(大規模太陽光発電所)誘致をめぐって地方自治体間の争奪戦がすさまじい。なにしろ、脱原発を旗印に自然エネルギー協議会を提唱した孫正義氏に対し、全国から35もの県が賛同したのだ。今や日本列島はメガソーラーの一大ブームに沸いている」。

こう語るのは週刊環境エネルギー産業情報の甕秀樹編集長である。甕氏によれば、円高の長期化によりIT、自動車、素材などの量産工場の海外への流出に歯止めがかからず、国内空洞化が進む現状にあっては、メガソーラーぐらいしか投資の目玉がない、とのことだ。

2012年度からは東日本大震災の復興投資も本格的に始まり、公共事業は活況となるが、それでも工場設備投資の低迷は避けられない以上、甕氏のコメントは実に正鵠を得ているといえるだろう。日本全国のメガソーラー建設候補地は、北海道から九州まで実に50カ所以上にも及んでいる。孫社長率いるソフトバンクは、全国10カ所以上に20MWのメガソーラーを建設することを構想しており,1カ所あたり80億円と見積もれば、800億円の大型投資が実行されることになる。このうち、自治体の負担分はわずか1億円で済むという構想を発表したため、各自治体の首長は「孫さん詣で」に躍起となっている有様だ。

既存の太陽光発電業者も黙ってはいない。国際航業ホールディングスは宮崎に大規模なメガソーラーを持つが、こちらも全国7カ所にソフトバンクと同じく合計20MWのメガソーラーを建設する計画で、用地を物色している。三井物産もまた、震災で被災した岩手、宮城、福島の3県にメガソーラーを建設する構想を明らかにしており、なんとその規模はトータル100MWであるからして、4000億円という巨額の投資計画が出てくるわけだ。各自治体が血眼になって誘致合戦を急加速しているのは、当然のことだろう。

「大雪の降る新潟県下においてもメガソーラーは十分に成立することを証明していきたい。曇天も多く、雪も多い新潟ではあるが、少なくとも200ヘクタールを超える大規模な工業用地を保有しており、ここに目をつけるメガソーラー事業者も実は多いのだ」。

若き宰相として知られる新潟県の泉田知事は、熱い目線でこう語る。既に同県は新潟県東部産業団地に1MWの太陽光発電設備を設置し、運用している。これは、地方自治体が設置する全国で初めての発電事業用メガソーラーなのだ。さらに、この後、第2期工事を計画しており、2MWへ増設するという。第1期分は三菱電機が受注し、セルについても同社のものを使用する。第2期分は東芝が受注したが、セルについては韓国のLG製を採用する。日本国内に作られるメガソーラーといえども、日本の太陽電池メーカーを採用するとは限らないということがよくわかるだろう。

こうしたことを反映し、海外からも日本のメガソーラー市場を狙いに、きなくさい動きが多く見られる。米国の太陽電池メーカーであるサンエジソンが、実に3500億円を投じ、日本国内数カ所にメガソーラーを設置する計画を持つことが明らかになった。候補地としては新潟県下、福岡県下など日本列島全エリアにわたる見込みだ。このうち、新潟では長岡、妙高、新潟市の3カ所に用地を絞り込みつつあり、実際上のデベロッパーはJCサービスという会社が担当している。この会社は新潟県下の大型病院などに省エネ設備を導入していることで知られる。一方、まだ企業名は明らかにされていないが、中国の大手メーカーが日本国内に100ヘクタールの用地物色を行っている情報も出てきた。今のところは北海道などで用地物色を行っているようだ。

「メガソーラーブームは本格化しているが、過度の期待は禁物だ。自治体は雇用機会の拡大に期待するが、太陽光発電システムそのものはそれほどの人員を必要としない。やはり、これをコアにスマートグリッドの構築や蓄電池の設置などによりスマートタウンにまで持っていかなければ、多大な経済効果は得られないだろう」(甕秀樹編集長)。

産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷 渉

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