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コロナ蔓延長期化と米中関係悪化で半導体産業の今後はますます不透明に

2020年8月28日に開催されたバーチャルな「SPI マーケットセミナー:世界 半導体市場、 2020 年 後半の予測を議論」では、OMDIAシニアコンサルティングディレクタの南川明氏とSPI編集長の津田建二氏が講演された。そこでは、1)新型コロナウイルス蔓延長期化と、2)米中関係悪化が2020年後半の半導体産業にどんな影響を及ぼすか?が2大テーマだったように思われる。僭越ながら私もこの2テーマについてオンラインでコメントさせていただいた。限られた時間では充分意を尽くせなかったので、ここでもう少し整理した形で私見をのべさせていただく。

1) コロナ長期化:2Qはコロナ特需で予想外の好調だったが3Qはその延長線上にあるか?

主要市場動向調査会社および世界半導体市場統計(WSTS)の予測は、昨年末あるいは今年年初の時点ですべて「(昨年比)プラス成長する」としていた。しかし、新型コロナウイルスが蔓延し始めると、ほとんどの予測は「マイナス成長」へと下方修正した。ところが、第2四半期は、在宅勤務や遠隔授業によるコロナ特需とメモリクライアントの在庫積み増しで半導体産業は予想外の好況となった。そこで、今夏、すべての調査会社は「プラス成長」へと予想を上方修正した(参考文献1)。

例外的に、「調査会社の中で、今年一貫して「プラス成長」を言い続けているのはOMDIA(旧IHS Markit)だけである」(南川氏の講演中での発言)。同氏によれば、現段階で今年は5%成長を予想しているとのことだが、同社は今年、プラス成長の範囲内で6%→2.5%→5%と修正を行ったことになる。同社の予測は、メモリの売上高が前年比20%増加を前提にしており、メモリ産業の成長に期待をかけている。

第3四半期以降の世界半導体市場は第2四半期の延長線上にあるだろうか。たしかに、多くの先端ロジックファブレスは需要増を予測しており、その主たる製造委託先であるTSMCも好業績が期待できよう。しかし、ここで気がかりなのは、業界首位のIntelの第3四半期のガイダンスはマイナス7.7%である上に、Samsung、SK Hynix、キオクシアといったメモリメーカーが先行き不透明で第3四半期のガイダンスを発表していない点である。そんな中、8月以降、コロナ特需の一巡でメモリ供給過剰気味となり、メモリ契約価格の下落、メモリ企業の投資凍結などの調査情報が次々と出始めている。

第3四半期以降の半導体業界、特に最大のメモリ市場の状況は、予測外のコロナ特需に沸いた第2四半期の延長で類推することはできない状況が徐々に生じ始めているように見える。今後は、メモリ価格の動向を注視する必要がありそうである。

2) 米中関係:商務省の輸出規制強化にはSIAもSEMIも大反対だが中国企業は従順か?

米国商務省は、今年5月15日に、Huaweiおよび関連会社が設計した半導体デバイスをファウンドリが製造し同社に納品することを事実上禁止した(注1)。仕掛中のウェーハについてまで禁止するとファウンドリのダメジが大きすぎるのでファウンドリには120日間の猶予を与えた。米商務省は、多くの人々が関心を寄せるTSMCによる製造受託だけを禁止したわけではなく、中国を含む全てのファウンドリに向けた通達である。商務省の文書には、海外からの輸出だけではなく中国内の出荷もin-countryという言葉をわざわざ用いて禁止しているからSMICも例外ではない。

そこで、Huaweiは、通達の抜け穴を見つけて、禁止されていない標準品を台湾MediaTekなどから調達しようとした(注2)。米国商務省は、通達の抜け穴をふさぐため米国製ソフトウエアや製造装置を使って設計・製造した標準半導体製品のHuaweiへの販売を新たに禁止した。これにより(米国から見て)全ての外国企業の全ての半導体製品が規制対象となったため、SMICはHuaweiへ今後出荷しないと発表した。米国の主権が及ばない中国の半導体メーカーが、米国の通達に素直に従うのはなぜか。彼らが今一番恐れているのは米国政府が中国半導体メーカーに米国製半導体製造装置の輸出を禁止することである。すでに中JHICCに米国製装置出荷禁止の先例がある。だから、中国半導体各社は、半導体製造にあたり、米国の特許を無断使用したり、営業秘密を非合法的手段で入手したりして米国政府の怒りを買わないように細心の注意を払っている。

一方、米国の半導体企業はどうかといえば、米国商務省の各種の輸出規制通達に真っ向から反対している。すでに、米国半導体工業会やSEMIが米国半導体の輸出規制強化に反対の声明を出している。SEMIは、5Gに関係ない半導体デバイスには商務省は即刻ライセンス(注1)を与えるよう具体的な要請をしている。全ての標準品についても120日間通達の執行を猶予するよう要請している。しかし、商務省は、国家安全保障を盾に米国半導体企業や団体の要請を無視し続けている。

米国vs.中国の対決は、米国企業vs. 中国企業の対決では決してない。Qualcommが中国最大のディスプレイメーカ―BOEと5G技術で協業を始めているように、米国企業にとって、世界最大の中国市場を無視しては生き残れない。

米中覇権争いで経済圏の分離(デカップリング)が進みつつあり、国際経済は悪化し、両国と密接な関係にある日本の製造業にも深刻な影響を及ぼしかねない状況にある。南川氏によれば、米国政府は、中国半導体メーカーへの米国製半導体製造装置禁止をすべく検討しているという。確かに米国政府は、ASMLやオランダ政府に圧力をかけてEUV露光装置の中国企業への納入を阻止できているが、肝心の米国製製造装置をいまだに禁輸にはできてはいない。たとえこれが実現しても、日本製造装置メーカーが漁夫の利を得るようなわけにはいかず、TSMCのように米国をとるか中国をとるかの踏み絵を踏まされることになる可能性が高い。米中ハイテク覇権争いの今後の成り行きは、コロナ同様、極めて不透明で、半導体市場予測を難しくしている。


注1) 米国商務省は、Huawei および関連会社への販売を「禁止する」というような言い方はせず、販売を希望する者は商務省からライセンス(許可証)を取得することを要求している。しかし、以前は例外的にライセンスを与えることはあったが、今後はライセンスを与えないと公言しており、結局は事実上禁止と同じである。
注2)米国法律事務所や弁護士によると、Huaweiおよびグループ企業が直接設計しておらず、Huaweiが仕様書を渡して製造依頼した標準品やそれに準ずる半導体製品は5月15日の通達の規制を受けない。つまり、抜け穴があったということだ。Huaweiは、常にこのような抜け穴を見つけて生き延び続けてきた。

参考文献
1) 服部毅:「どうなる2020年下期の半導体業界 - 市場成長はメモリの動向次第か?」マイナビニュース(2020.8.31) 
2) SEMI声明文”SEMI Statement on new U.S. Export Control Regulations”の全文日本語訳(服部毅:「SEMIが米国政府の半導体輸出規制強化に関して懸念の声明を発表」)の中の囲み記事として掲載)マイナビニュース(2020.8.27)

Hattori Consulting International 代表 服部 毅

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