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ポストコロナへ向け海外企業活動が活発化しているデジタル先進の韓国

安倍政権は、厚生労働省クラスタ対策班の西浦博北海道大学教授の「接触を8割削減しないと感染者数が指数関数的に増える」というシミュレーション結果、それを鵜呑みにする専門家委員会の判断に頼って諸政策を発表してきた。しかし、最近は、日本の検査数は少なすぎてその不十分なデータを前提とし、その前提条件さえも公開せず第三者が検証できない試算は信憑性にかける、と多くの識者から指摘されるようになった。西浦氏は巷では「8割おじさん」と呼ばれているが、「8割削減」の意味も未だにはっきりしないままである。

そんななか、九州大学名誉教授の小田垣孝氏(理論物理学、統計力学専攻)は「新型コロナウイルスの蔓延に関する一考察」と題する論文を発表し、ご自身のホームページで全文を無料公開している(参考資料1)。これによると、世界標準ともいえる「(多数の)検査と(感染者の)隔離」が正解であることを結論づけており、最後に「政府が、『接触 8 割減実現』のみを主張するのは、責任放棄に等しい」という厳しい見方を示している。読者の中には、シミュレーションの専門家もおられるだろうからぜひ比較検証して見てはいかがだろうか。

デジタル先進国の韓国の透明性のある取り組み

いまや世界標準となった「検査と隔離」の模範となっているのが、ドライブスルー方式などの簡便な検査体制を真っ先に採用して希望者全員にPCR検査を実施し、最新の自動化検査方式(日本はやたら人手がかかり相互汚染の心配のある非能率な旧式な装置ばかり)、ICT技術活用の感染経路徹底追跡手法を取り入れてコロナウイルスの抑え込みに早々と成功した韓国モデルである。企業活動も正常に戻りつつある。

韓国は、ICT技術で世界の先頭を走っており、スマートフォンの普及率もキャッシュレス普及率も世界トップクラスであるから、スマートフォンのGPS機能、防犯カメラの情報とクレジットカードの使用履歴から、感染者の分単位の経路追跡が可能で、濃厚接触者を自動的に特定し、すぐ連絡し検査・隔離する仕組みができている。韓国政府は、感染者などの全データを自動集計して毎日2回発表しており、その迅速性と透明性についても世界から評価されている。

一方、日本はというと、厚生労働省は5月9日時点の東京都のウイルス感染による死者数を19人から171人に密かに修正しており、11日の予算委員会で野党に追求され、加藤厚生労働大臣も把握していなかったその事実を認めざるを得なかった。保健所はじめ各機関からの情報をFAXで入手し手入力で集計してきたというのが日本の悲しい現実である。

ポストコロナに向け海外展開再開した韓国勢、それを支援する韓国政府

韓国では、感染者数が2月末にピークをうち、4月には1桁台にまで減少し、企業活動は正常に戻っている。ただし、5月8日にソウルのナイトクラブで、規則を守らない若者によって集団感染が発生したが、クラスタであるため、企業活動には影響していない。

韓国勢の海外進出も活発化し、韓国企業が多数進出している中国とベトナムとの政府間協議により多数の韓国人技術者の海外渡航が盛んになってきている。

韓国政府外交部(日本の外務省に相当)によると、韓国と中国は4月29日、局長級の防
疫協力対話を開催し、両国の企業関係者の迅速な例外入国を認める「ファストトラック」制度を5月1日から開始することで合意し、韓国人技術者が続々と中国に渡航を始めた(参考資料2)。これまでは韓国企業が1件ごとに例外的な入国許可を申請する必要があった。

韓国外交部によると、中国入国の際に適用されるのは上海市、天津市、重慶市、遼寧省、
山東省、江蘇省、広東省、陝西省、四川省、安徽省で、Samsung Electronicsの3D NANDフラッシュメモリ量産工場のある四川省西安市やSK HynixのDRAM量産工場およびファウンドリのある江蘇省無錫市も含まれている。

Samsung西安事業所の第2工場第2期拡張工事で拡張された3D NANDフラッシュメモリ量産ライン立ち上げのため、同社は、特例で4月中に200名の半導体技術者を中国に入国させることに成功したが(参考資料3)、今後は更に追加人材の派遣が簡単な手続きで可能になった。

韓国政府は外国人の入国を事実上禁止しているベトナム政府とも交渉の結果、143社の340人からなる技術者やビジネスマンの集団が4月末にチャーター機でベトナムに入国した。これまでSamsungグループや、LGグループの社員が各社の5G対応旗艦スマートフォン秋モデル製造準備のため例外的措置でベトナムに数百人が入国していたが、これらの下請け企業など中小企業からの出張は個別に交渉するのが難しい点を考慮し、韓国外交部が複数の企業からの申し込みを受け付けて一括して入国の承認を受けたという。

ポストコロナはテレビ会議中心の「スマートワーク」

韓国では多くの企業が4月から在宅勤務を解除して通常勤務に戻って来ているが、半導体メモリ大手SK Hynixを傘下に持つSKグループは、定時出勤退社制度、フレックスタイム制度を飛び越えて「スマートワーク制度」を採用し始めたという(参考資料4)。従業員を時間で縛るのをやめ、業務は基本的にデジタル空間において非対面で行うようにし、会議も極力物理空間での開催を廃し、どこにいても参加できるデジタル空間上で行うようにして業務のグローバル化にもさらに対応するようにしたという。

早い話、新型コロナウイルスの感染拡大によって生じた在宅勤務にて経験した業務の進め方をさらに発展させ効率化していこうというものである。こうした動きは韓国に限らず、各国でグローバル企業であればあるほど進むことが予想されるため、新型コロナウイルスの感染拡大が終息した後、世界的に仕事の進め方そのものがすっかり変わる可能性が高い。

参考資料
1. 小田垣孝:「新型コロナウイルスの蔓延に関する一考察
2. 服部毅:「韓国、新型コロナウイルスの収束で技術者がベトナムと中国へ続々と渡航開始」 マイナビニュース (2020/05/08)
3. 服部毅:「中国政府がSamsungのNAND工場拡張ための技術者200名に入国を許可」 同上 (2020/04/28)
4. 服部毅:「新型コロナの感染が収束に向かう韓国、産業活性化に向けた動きが活発化」 同上 (2020/04/09)

Hattori Consulting International代表 服部 毅

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