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ウイルス蔓延で韓国ではセミコン展示会中止、中国半導体・FPD業界の操業に支障

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が欧州1月30日(日本時間31日)、中国を中心に感染が拡大している新型コロナウイルスについて、「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言したのを受けて、半導体装置材料の国際業界団体であるSEMIの韓国支部SEMI KOREAは、2月5~7日に韓国 ソウルの国際展示場COEXで開催予定だった半導体製造装置・材料国際展示会「SEMICON KOREA」を中止すると1月31日に急遽決定した(図1)。併催の技術シンポジウムを含むすべての関連行事も中止するとしている。

図1 1月31日、SEMICON KOREAのウエブサイトに突然掲載された展示会中止のお知らせ

図1 1月31日、SEMICON KOREAのウエブサイトに突然掲載された展示会中止のお知らせ


参加者の安全衛生を真っ先に配慮しての決断だという。中止決定前から、展示を取りやめる企業や事前参加登録者のキャンセルが相次いでいたという。SEMICON KOREA事務局は、2月3日現在、展示会を延期して後日開催するのか今年は開催しないのかを含めてまだ何も決まっていないとしており、さまざまな善後策はこれから協議するとしている。 

SEMICON KOREAには、中国からの出展企業の説明員や見学者・購買者が多数来韓することが予想されていた。韓国は、日本同様、中国湖北省武漢市へ大型救援機を派遣し、日本人よりはるかに多く武漢に滞在している韓国人を帰国させているが、韓国内でも感染者が増加している。

中国だけではない、世界の半導体関連業界への影響は必至

湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスの拡大を防ぐ狙いで中国政府は旧正月(春節)休暇を2月2日まで延長した。超大型連休が終わったことで、さらにウイルスの感染が広がる可能性が高い。そこで、北京、上海、重慶、蘇州、広州はじめ多くの地方人民政府は、さらに1週間延ばして当面2月9日まで(あるいは別に定めた期日まで)工場を稼働させぬよう、労働者には出勤せぬように要請している。コロナウイルスの蔓延にともない、さらにその期日を延長するところも出てきており、今回のウイルス発生源とされる武漢のある湖北省では13日(14日午前零時)まで事業所閉鎖要請を延長した。

韓国の2大メモリメーカーは、中国内に巨大量産ファブを運営している。Samsungは西安に3D NANDフラッシュメモリファブ、SK Hynix は無錫にDRAMおよびファウンドリファブがあるが、中央および地方人民政府の要請や命令で旧正月(春節)休暇の延長や社員の自宅待機を強いられているため、工場の労働力が確保できずに2月の稼働率は、大幅に落ちる見込みである。韓国は日本以上に半導体関係者の中国との行き来が頻繁で、韓国政府や半導体業界はウイルス感染拡大への警戒を強めている。

一方、武漢には、地元資本の3D NANDフラッシュメモリメーカーYMTC (長江存儲科技) および子会社のXMC(武漢新芯集成電路)の本社工場があり、YMTCでは64層3D NANDフラッシュメモリの量産立ち上げ段階にあるが、地方政府が、旧正月休暇の延長、工場稼働再開延期、工場勤務者の自宅待機を命令しており、湖北省へ出入りする道路も封鎖されている。日米半導体装置メーカーから派遣されていた装置立ち上げ要員が相次いで本国に帰国しており、増産計画が大幅に遅れる可能性がある。協力会社の状況も同様で、このため、半導体企業は製造に使用する素材や部品を調達することが困難となり、サプライチェーン全体に影響が出始めている。

それに輪をかけるように、米国務省は、1月31日、中国全土に関する渡航情報を最も危険であることを示す「レベル4」に引き上げ、米国民に「渡航禁止」を勧告し、中国に滞在するすべての米国民に一刻も早く中国外へ脱出するように指示した。コロナウイルスによる新型肺炎蔓延の影響で今後世界半導体業界全体へ様々な形での影響が懸念される。

中国ディスプレイ業界の稼働率低下、パネル価格上昇は必至

労働力不足や部材不足で中国内の全てのディスプレイパネル工場(韓国や台湾の中国内の工場を含む)や協力下請け会社が影響を受けるのは確実である。なお、コロナウイルスが発生した湖北省武漢市は、パネル大手の京東方科技集団(BOE)や華星光電(CSOT)、天馬微電子(Tianma)の工場が立地している。

英国市場動向調査会社IHS Markitの緊急調査(参考資料1)によると、中国内の多くのパネル工場では、2月の工場稼働率が少なくとも10〜20%減少する見込みである。工場作業者を確保できず部材も不足しているためである。

一方、テレビ用およびIT用パネルの需要は5〜10%上昇している。パネルバイヤーが心配して在庫積み増しを始めているからである。降ってわいた突然の工場閉鎖で旧正月休暇明けにパネルの価格が値上がりする可能性が高いという。

IHS Markitによると、中国最大級のLCDモジュールメーカーSkyTech Optronics (河南天揚光電科技) は、中国のディスプレイ業界の中で最も新型コロナウイルスの影響を受けているという。同社は当面2月11日まで操業を停止することを決め、社員は自宅待機となっている。コロナウイルスがさらに蔓延すれば操業停止が長引く可能性もある。


図2 SkyTechのある湖南省信陽市(赤丸表示):ディスプレイパネル工場群(青丸で表示)の中心に位置している(出所:IHS Markit)

図2 SkyTechのある湖南省信陽市(赤丸表示):ディスプレイパネル工場群(青丸で表示)の中心に位置している(出所:IHS Markit)


SkyTechは武漢市に近い湖南省信陽(Xiyang)市に立地している。同社は、BOEはじめ多数の大手パネルメーカーの下請けで大型LCDパネルモジュールを製造している。同社の立地する信陽市は、中国の主要パネル工場群の中心に位置しており、同社にとってはロジスティック上、非常に便利な中心的な場所に立地している(図2)。

TVだけではなく、スマートフォンやPCはじめ最終電子製品の製造や出荷にも影響が拡大する可能性が高くなってきている。冒頭にあげたSEMICON KOREAのように、中国だけではなくアジア各地で開催されるイベントが次々中止に追い込まれており、さらには、日本企業の中にも中国だけではなくアジアへの出張禁止や自粛を始めたところが増えている。

今までコロナウイルスによる肺炎の世界経済への影響を判断するのは時期尚早といっていた国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は、ついに「世界景気に短期的な減速をもたらす可能性がある」との懸念を表明した。すでに生産や供給網の混乱があることを認め、日本など周辺国経済にも影響を与える懸念を示した。
日本企業のビジネスにも様々な形で深刻な影響が出ることが懸念されている。
(本稿は、2月2日時点の情報に基づいており、最新の情報とは異なる場合があります)

参考資料
1. 服部毅:「第38回 ディスプレイ産業フォーラム 第1回 新型コロナウィルスの影響で中国のパネル工場の稼働率は1〜2割低下」 マイナビニュース (2020/01/31)

Hattori Consulting International 代表 服部 毅

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