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中国半導体製造恐るべし!新興半導体メーカー経営者は在米数十年の国際人

本年1月の本欄でISSM2018のメインテーマである半導体製造革新に関する講演を紹介した(参考資料1)。これとは別に、主催者は実情を掴みにくい中国の新興半導体製造勢力の状況を日本人参加者に知ってもらおうと、実は、中国の大物半導体経営者2名に基調講演をお願いしていた。

新興半導体メーカーSiEn (QingDao) Integrated Circuits(中国名は芯恩(青島)集成電路)の創業者であるRichard Chang会長(図1)と中国の国策半導体企業である清華紫光集団傘下の新興フラッシュメモリメーカー、Yangtze Memory Technology Co. (YMTC, 中国名は長江存儲科技) CEOのSimon Yang氏(図2)である。


図1 SiEn (QingDao) Integrated Circuits 会長のRichard Chang氏

図1 SiEn (QingDao) Integrated Circuits 会長のRichard Chang氏


図2 Yangtze Memory Technology Co. (YMTC) CEOのSimon Yang氏

図2 Yangtze Memory Technology Co. (YMTC) CEOのSimon Yang氏


中国で新しい半導体製造モデルが誕生

Chang氏は、中国資本による最大のファウンドリであるSMICの創業者として世界的に有名であるが、2009年に退陣後、引退することなく中国半導体産業育成に奔走している。同氏は、よく知られたIDM (垂直統合半導体メーカー)とファウンドリ(製造受託企業)に次ぐ第3の半導体モデルを考案し、それに沿って自ら設立したばかりの新興半導体メーカーのビジネスプランを紹介した。


図3 「中国IC業界における新しい製造モデル」と題して講演するChang氏 東京都内のISSM講演会場で著者撮影、2018年12月

図3 「中国IC業界における新しい製造モデル」と題して講演するChang氏 東京都内のISSM講演会場で著者撮影、2018年12月


Chang氏は、中国にもっとふさわしい新しい半導体製造形態として「コミューン(Commune) IDM(略称CIDM)」モデルを提案し、中国で最初のCIDMを創業した」と述べた(参考資料2)。Communeとはフランス語で共同、共有を意味し、共同体や最小単位の自治体という意味でも使われ、共産主義的な響きのある言葉である。
 
このCIDMモデルでは、半導体設計から研究開発・製造、パッケージングおよびテスト、マーケッティング・販売、最終製品組み立て受託を経て最終製品サプライヤに至る10〜15の個別企業が出資したうえで、これらの出資者があたかも共同体(Commune)のように協業するので、参画者がみなwin-winの関係を築く半導体製造プラットフォームを形成する。このようにして、CIDMは、リソースを共有することで投資リスクを軽減できるとしている。CIDMは、最終製品サプライヤとも協業しているので市場最重視で顧客の需要を満たすビジネスを行えるという。

そんなCIDMの第1号がChang会長率いるSiEn(QingDao)Integrated Circuits (芯恩(青島)集成電路)である。同氏は2018年第1四半期に会社設立し、山東省青島(チンタオ)市内の40万平米の土地のうち25万平米を使って200mmファブ(生産能力月産6万枚)と300mmファブ(同4万枚)を建設中である。SiEnの詳細や将来プランに興味のある方は参考資料2をご覧いただきたい。

NANDフラッシュメモリ業界のゲームチェンジャ目指すYMTC

ISSM2018に登壇したもう一人の中国半導体製造業界の経営者であるSimon Yang氏が率いるYMTCについては、リスクを負ったゲームチェンジャとして本欄ですでに紹介した(参考資料3)。さらに、ISSMでのYang氏の講演内容は参考資料4で詳しく紹介してあるのでここでは触れない。

YMTCは、「今のところ、中国JHICCのような制裁措置を米国政府から受けておらず、順調に立ち上がりつつあるが、(国外の人々が危惧するよう)採算を度外視したビジネスはしない」(Yang CEO)という。このため、技術的、政治的、経済的理由で量産化が来年以降にずれ込むかもしれないが、中国における半導体製造が躍進するか否かの試金石として注目されている。

中国人経営者は在米数十年の国際人

以上紹介した2名の中国大物半導体経営者の履歴を調べると、驚くべき共通点が浮かび上がる。Chang氏は、国立台湾大学卒業後、米国New York State Univeristyバッファロー校で工学修士号を、テキサス州Southern Methodist Universityで電気工学博士号を取得した。その後、約20年に渡りTexas Instruments(TI)で研究開発に従事し、副社長として、ダラス、イタリア、茨城県美浦はじめ世界中の散在するTIの半導体工場のオペレーションを統括した。その後、2000年に中国でSMICを創業し、2014年に退陣後、300mm ウェーハ製造メーカーを創業し、いまは新しいファウンドリSiEnの立ち上げに奔走している。生涯現役といわんばかりにこんなに活躍している半導体経営者は、残念ながら日本には皆無であろう。
 
一方、Simon Yang氏は、上海科技大学卒業後、米国NY州のRPI(レンセラー工科大学)で修士号および博士号を取得した。その後、米Intel社のポートランド技術開発センサーで研究開発に10年以上従事し、シンガポールのChartered Semiconductor(現GlobalFoundries; GF)のCTO/SVP、SMICのCTO/COO、YMTCの前身XMC(紫光集団が買収し、現在はYMTCの子会社)のCOOなどを歴任した。Yang氏がISSMの招待を受諾してくれたのは、ISSM運営委員の一人が、Chartered/GFの大口顧客としてYang氏を通して製造委託していた間柄だったからである。

話は横道に逸れるが、中国半導体製造装置メーカーとしてめきめき頭角を現してきているAMECの創業者であるG. Z. Yin氏も米UCLA(University of Californiaロサンゼルス校)で物理化学分野に関する博士号取得後、Intel、Lam Research、およびApplied Materials で約20年間に渡り半導体デバイス開発や半導体製造装置開発などに従事した後、上海で半導体装置メーカーを起業している。いまや「中国のAMAT」と言えるような存在となっている。

ここで紹介した経営者のほか、多くの中国人半導体関連事業の経営者や技術者に共通するのは、米国で高等教育を受けて学位を取得し、長年にわたり米国のトップクラスの半導体メーカーや装置メーカーや大学・研究機関などで活躍した経歴を持つ、世界の半導体産業の情勢を知り尽くした国際人だということである。

参考資料
1. 服部毅:ISSM2018:AIとIoT活用で変貌遂げる半導体製造 (2019/01/11)
2. 服部毅:ISSM2018: IDM、ファウンドリに次ぐ第3の半導体製造形態が中国で誕生 (2019/01/17)
3. 服部毅:中国勢恐るべし!清華紫光集団がねらうNAND逆転の秘策 (2018/09/14)
4. 服部毅:ISSM2018: 3D NAND市場のゲームチェンジャー目指す中国YMTC (2019/01/24)

Hattori Consulting International代表、ISSM国際会議運営委員 服部毅

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