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ISSM2018:AIとIoT活用で変貌遂げる半導体製造

半導体製造・生産に特化したユニークな国際会議「半導体生産国際シンポジウム(26th International Symposium on Semiconductor Manufacturing; ISSM 2018)」が昨年12月に東京都内で開催された。ISSMは「半導体製造のノウハウをサイエンスに」を基本スタンスに、1992年以来、毎年、半導体生産技術者の議論・交流を通じて、新たな半導体生産技術の芽を育てると共に、半導体生産技術を科学する「新しい流れ」を作り出してきた。

ISSM2018会場風景 (両国KFCホールにて著者撮影)

ISSM2018会場風景 (両国KFCホールにて著者撮影)


AIを活用してスマートな半導体工場をめざす

今回は、半導体製造の生産性の向上のための「人工知能(AI)の活用」に関する発表が初めて登場すると同時に最大のセッションテーマとなった。IoT時代を迎え、様々な種類の半導体製造装置やプロセス状態の多角的なセンシング技術がさらに進化してきており、半導体工場では多数のセンサで収集された大量のデータを扱えるようになった。しかし、当初はこれらのデータは人手で多変量解析し、判断し、現場へフィードバックをかけてきたが、データ収集が先行し、データの有効活用は十分ではなかった。しかし、最近、AI技術の登場でIoT技術とAI技術が融合し、人手を介さないビッグデータの処理が可能になり、リアルタイムのプロセス最適化が可能になった。これによりプロセス制御性向上、製造歩留まりの向上、設備生産性向上、資材費低減活動などに新たな方向性を見出し、高効率のスマートファブの実現が可能になろうとしている。IoT/AIの追い風を受けて、半導体製造はダイナミックに変貌を遂げようとしている。

韓SK Hynixも台TSMCもAI活用で半導体製造効率化

韓国SK Hynixは、基調講演の中で、全社を挙げてAI(マシンラーニングやディープラーニング)を最大限に活用しスマートファクトリを目指していることを明らかにした。
半導体製造現場では、パターニング不良やプロセス欠陥発生などの問題が繰り返し登場しているにもかかわらず、いままでは技術者のスキルと経験で微細化プロセスになんとか対処してきた。しかし、最近は、各工程が高度化するとともに、工程間の相互依存性が複雑化し、プロセスステップ数が増えて生産サイクルタイムが長引くことで、不良プロセスを特定し問題解決するのが難しくなってきた。もはや技術者の経験やスキルに依存した伝統的な問題解決の方法では対応できなくなってきた。SK Hynixでは全社を挙げてML(Machine Learning、機械学習)によるプロセス最適化、ディープラーニングを活用したFDC(Fault Detection and Classification、欠陥検出・分類)、およびセンサとAIを活用したTTTM(Tool-to-Tool Matching、 機差調整)などの積極活用でスマートファクトリを実現を目指しているという。「市場の需要に応じた適切なサイズの工場を建設し、AIを活用して装置異常の予防保全を徹底し、最小のインプットで市場の需要に応じて適切に対応できる生産体制を敷く」のが目標だという。

台湾TSMCも招待講演の中で「フルオートメーションの人手を介さないインテリジェントな半導体製造を実現するためにマシンラーニングをはじめとするAI技術の活用が欠かせない」と述べていた。一般講演では、東京エレクトロン、東芝・東芝メモリ、ルネサス、三重富士通、ソニー、パワーチップ、国立台湾大学などから半導体プロセスにおけるAI活用の具体例報告が相次ぎ(参考資料1)、IoTやAIが単なるブームの段階を超え、半導体製造分野でも実用化の華を咲かせようとしていることを実感させられた。なお、本シンポジウム冒頭のチュートリアルセッションでセミコンポータル編集長の津田建二氏が「AIの半導体産業へのインパクト」と題してAI入門ともいえる講義を行った。

AIチップを積極的に活用してスマートファブを実現しよう

私が現役のISSM論文選考委員長を務めていた1990年代末ごろ、組織委員長はIntelのMike Splinter氏(同社製造本部長、のちにApplied Materials社長)だったが、彼はISSMで参加者に向かって、「皆さんは、半導体デバイスや装置 製造に大いに貢献してはいるが、半導体の利便性を最も享受していない人たちだ。もっと半導体チップを活用しようではないか」と言っていたのを思い出した。半導体産業は、AIチップを製造して顧客に使ってもらうだけではなく、自らも率先して活用して他産業の手本となるようなAIベースのSmart Fab/Intelligent Manufacturingを実現すべきだろう。この点では欧米を中心に海外勢の取り組みが先行しておりISSM、AEC/APCシンポジウムなどでの日本からの発表は、各技術者が担当する個別の装置やプロセス(のそのまた一部分)へのAI適用に留まっている場合がほとんどであるが、トップダウンによりファブ全体への展開が望まれる。

IoTとAIの融合によるAEC/APC(先進的装置・プロセス制御)の飛躍的、いやむしろ破壊的な進化で、半導体製造はダイナミックに変貌を遂げる予感がしている。次回のISSMやその姉妹会議であるAEC/APCシンポジウム(2019年11月13日に東京で開催予定)が楽しみである。多数の装置にまたがるAPCやそのファブ全体への展開の成果発表を期待したい。

参考資料
1. 服部毅:「脚光を集める半導体製造プロセスの最適化・生産効率向上に向けたAI活用」、(ISSM2018における半導体デバイス・製造装置メーカー各社の技術発表の内容紹介)
マイナビニュース、2019.1.10.

Hattori Consulting International代表 服部 毅

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