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台湾勢恐るべし!中国顧客も囲い込み独走体制を敷くTSMC

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先月は「中台勢恐るべし!」(参考資料1)というタイトルで、中国のHuaweiと台湾のTSMCの連携で世界初の7nm SoCが誕生した話題をお届けしたので、今回は台湾に注目してTSMC の将来を見据えた戦略について探ってみよう。その前に、再びHuaweiの話題から話を始めよう。

去る10月に日中国交正常化提言50周年記念式典が北京で開催され、安倍首相が多数の日本人経営者を引き連れて出席したが、日本経済団体関係者にHuawei幹部は、「米中摩擦の影響を避けるため、今後は半導体内製化を図っていきたい。そのためには、半導体企業や製造装置メーカーのM&Aや装置国産化を図る必要がある」と述べたという(参考資料2)。

しかし、先端半導体製品の内製化はいまのところHuaweiはじめ多数の中国企業の願望に過ぎず、中国勢による半導体企業や製造装置メーカーの買収には、米国のみならず、欧州、日本、韓国、台湾など各国政府も警戒しており、ますます難しくなっているので、簡単には実現しそうにない。米中貿易摩擦はさらにエスカレートし、トランプ政権は中国の特定半導体メーカーへの半導体製造装置や部品材料の輸出制限を始めたからなおさらだ。

中国勢は今後とも当分の間、最先端(7nm以下)ロジック半導体チップの製造を、国外のファウンドリに製造委託する必要がありそうだ。Huaweiはスマートフォンで激闘を繰り広げているSamsungファウンドリ事業部への製造委託は秘密保持の立場から考えにくく、となると当分TSMCへの委託が続くものとみられる。

TSMC の2018年売上高1兆台湾ドル突破は確実

TSMCは10月20日台湾新竹県体育場開催した毎年恒例の全社運動会で、トップの劉徳音董事長は、2018年通年の同社の売上高が1987年創業以来初めて1兆台湾ドル(約3兆6,500億円)を突破することが確実になったとして3万9000人の従業員に臨時ボーナスを支給すると発表した(参考資料3)。日本円やドルに換算すると中途半端な数字であっても、地元の台湾にとっては確かに目標となるすっきりとした数字ではある。

同社は、2位のGlobalFoundriesに売上高で5倍以上、専業ファウンドリ4位の中国最大のファウンドリSMICには、10倍以上の差をつけ、ダントツの一位であり、他社が追い付くことはもはや不可能であろう。兼業のSamsungのファウンドリビジネスの売上高を専業ファウンドリのランキングに当てはめると、3位の台湾UMCと4位のSMICの間に位置し、これまたTSMC に大差をつけられたままである。米IC Insightsの調査によると、台湾TSMCの2018年のウェーハ1枚当たりの平均売上高は1,382ドル(200mmウェーハ換算、ウェーハ投入枚数基準)で、これはGFの1,014ドルより36%高く、台湾UMCや中国SMICのウェーハ当たりの平均売上額(それぞれ715ドル、671ドル)の約2倍に相当しているという(参考資料4)。TSMCは他社とは異なり、28nm以下の技術ノードのデバイスの製造委託が過半を占めており、ウェーハ当たりの販売価格が高いことがトップ独走の主因である。今年、同社の7nm製品の製造受託売上高は、全体の10%余を占めており、来年には倍増するという。

GFが微細化最前線から脱落し、元親会社のAMDのハイエンドCPUやGPU はすでにTSMCへ製造委託しており(参考資料5)、GFの先端技術開発パートナーだったIBMまでがサーバーチップの製造をTSMCへ製造委託するという噂が流れている。すでに、AppleやHuaweiだけではなく、Qualcomm、 Broadcom、 Nvidia、Google、Amazonなど、ほとんどの先端半導体/IT企業がTSMCの顧客になっている。このため、TSMC は来年2位以下に6倍以上の差をつけ、専業ファウンドリ市場で6割以上のシェアを占めると予想されている。

TSMC南京工場が本格稼働

TSMCは、世界最大の半導体市場になってきた中国市場でのスマートフォンメーカーなど先進顧客囲い込みをねらって、2015年末に、南京に300mmウェーハを用いたファブ建設を決めた。ただし、台湾政府の指導もあり、中国への技術流出を避けるために、中国勢との合弁企業とはせず、自社100% 出資することで、16年3月に南京市地方政府と合意し、同7月に着工した。そして2018年秋から16nmプロセスで量産開始という当初の計画通り2018年10月31日に稼働式典を挙行した。実際には2017 年9月に装置搬入を開始していたが、予想外に早く立ち上がったため、今年5月には生産を開始しており、すでに月産1万枚体制が整っている。2019年末までに1万5000枚、2020年には最終目標である月産2万枚体制を敷く計画である。TSMCによる中国顧客囲い込みはすでに始まっている。

先行き不安の先の明るい見通し

景気の良いように見えるTSMCも、先行き不安がある。2018年年間売上高を年初には対前年比2桁(15〜10%)成長と予想していたが、春には10%ぎりぎり、夏には9~7%、そして秋には6〜5%と3回目も下降修正をしている。その主因は、仮想通貨の下落と違法流出による信用失墜などで、中国勢による仮想通貨採掘(マイニング)高速マシン用ASIC注文の急激な落ち込みによるという(参考資料6)。下半期にAppleやHuaweiはじめ高級スマートフォン向けプロセッサ需要が最先端である7nm製品の出荷額を押し上げたとしても、マイニング(採掘)向けIC需要の伸び悩みにより年初の目標は達成できないという。直近の第3四半期の連結決算は、売上額が2603億5000万台湾ドル(NTドル)で、前年度同期比3.3%増(米ドル換算では1.9%増の84億9000万ドル)に留まった。営業利益は852億5000万NTドルで、前年同期比2.9%減となった。Appleが強気の価格設定をしたiPhone販売が思わぬ不振に見舞われつつあると伝えられており、そのためのプロセッサを独占受注しているTSMCの業績に悪影響を与える可能性も出てきている。

しかし、TSMCは長期的には先行きに明るい見通しを持っている。来年は先端を走る顧客からの7nm製品の製造受託が急増し、テープアウト100製品以上、売上比率2割以上という目標を立てており、4月にも他社に先駆けて5nmデバイスのリスク生産を開始し、先端の顧客を独占する戦略を立てている。TSMCは3nmプロセスの準備も始めており、超微細化デバイス量産のトップランナーとして先頭を独走する構えである。

参考資料
1. 服部毅:「中台勢恐るべし!世界初の7nm モバイルSoCは中国勢が設計し台湾で量産」
 (2018/11/16)、セミコンポータル
2. 日中国交正常化提言50周年記念式典に参加した日本の経済団体関係者からの私信
3. 日本には伝わってこない台湾メディア情報
4. 服部毅:「TSMCが独り勝ちする理由 - 独走態勢の裏に根強く生きるムーアの法則」
 (2018/10/18)、マイナビニュース
5. 服部毅:「AMDの7nmプロセス採用サーバCPU - 2019年に市場シェア拡大の期待」
 (2018/12/04)、マイナビニュース
6. 服部毅:「仮想通貨用ASICの需要減で、スマホ頼みが続くファウンドリ業界」
 (2018/10/23)

Hattori Consulting International 代表 服部 毅

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