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海外のミーティングでは日本人の存在感がない

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2年ぶりにサンフランシスコに来た。気候は東京都ほぼ同じであるが、なぜか、ソメイヨシノと八重桜が一緒に咲いている。Globalpress社が主催しているこのミーティング(30社の企業とメディアとの出会いの場)では、米国の半導体ベンチャーや知名度をさらに高めたい半導体企業と世界からエレクトロニクス関係メディアの専門記者が集まっている。イタリア、フランス、英国、韓国、台湾、中国などから来たエレクトロニクスメディアのジャーナリストたちである。総勢約50名。しかし、日本人は私一人しかいない。

海外へ行くといつも感じることではあるが、いろいろな場所に来ても日本人の存在感が全くない。先月、スペインのバルセロナでも韓国人、中国人は多いが、日本人をほとんど見かけない。エレクトロニクスメーカーだけではなく、ジャーナリストも少ないのである。

しかし、空港へ行くとまるで湧いてくるかのように日本人だらけになる。つまり観光客は多いのにビジネス客が少ないということなのだろう。どうやら外国人と話をしなければいけないという場に日本人が少ないということは、国際標準や国際的に一緒に歩調を合わせる作業では圧倒的に不利である。

スキーのジャンプ競技で日本選手が表彰台に上がれなくなった一因は、ジャンプ競技のルールが変わってしまったためだと言われている。ルール改正の話し合いの場にたくさんの日本人がいなかったためにこのような悲劇が起きている。猪谷千春氏一人だけでは限界がある。もし5名くらいの日本人が参加していれば、ルール改正の妥協案も生まれたはずだ。

同じことがエレクトロニクスの世界でもありうる。携帯電話の規格がそうだ。Bluetoothの技術では先行したのに結局置いてきぼりにされてしまった。一人や二人で参加しても限界がある。少なくとも5名以上が出て存在感を示せば海外勢の都合通りには進まないはずだ。

どうすれば日本人が肝心な会合に出ることができるだろうか。実は簡単で、会合の案内は必ずどこかの誰かが受けている。それを上司を通して海外出張を申請すればよいのである。それができていない。上司を説得できない。上司にも通知が来るように仕向けていない。さまざまな理由があろうが、せっかくの情報を無駄にしているということになる。英語が話せないだけではない。意志を通じさせようという熱意がない。ここに今の日本の低落ぶりの原因が垣間見える。

今いる会場では、世界初の技術や製品が並んでいる。米国人講演者の話の中には、高速製品のたとえに日本のJR在来線と新幹線を比較して見せている人もいるが、これを理解できるのは日本人くらいなものだろう。しかし、日本人は私一人しかいない。なんとも言われない気持ちになる。

英語の問題だけはない。こう言っては語弊があるが中国人記者の英語はおせじにもうまいとはいえない。しかしなんとかして意思を伝えようという努力は感じる。だから講演者もできるだけわかるような表現で質問に答える。今ここにいる中国人程度の英語なら、日本でも話せる記者は多い。ちなみに隣の中国人記者は講演内容のキモを私に聞いてくる。私もそれを彼に伝える。参加の案内は行っているはずなのに来てないということはジャーナリストにとって大事な情報を得るという機会を自ら放棄していることになる。とても残念である。

特に、ここでは日本にまだオフィスを開いていないベンチャーが発表することが多い。海外のベンチャーは企業規模こそ小さいが、”すごい”技術を持っている。しかもここにきているベンチャーは出資ラウンドが2回目、3回目という、有望とみられているところが多い。

とはいえ最大の問題は英語だろう。公的教育の英語の授業に問題があるから私営の英会話学校が流行っている。日本人のほぼみんなが中学・高校と6年間も英語を習ってきているのに、卒業時点で誰一人英語を話せないという英語教育の本質に問題があるはず。アジアに行くと同じ中学から高校まで6年間英語を習っているから片言ではあるが英語は通じる。いったいこの差は何だろう。文科省の責任は大きいはずなのだが。本当に責任を感じてくれていますか?このままではますます日本は世界から取り残されますよ。

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